一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO(ゴシック体対応版)   作:みなかみしょう

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第13話:黄金蝶のクエスト

 カモグンさん情報によると、今回のクエストはソロでもクリア可能らしい。

 なのに二人は待っていてくれた。それどころか、とっととクラス取得できるよう手伝ってまでくれた。

 

 それにはちゃんと理由がある。

 俺は何故か、ゴシックPの作るイベントやクエスト攻略が上手い。いや、上手かったというべきだろう。

 理由はわからないが、何となく「なにかあるな」と察知できるのだ。もちろんいつもじゃないけど、仲間達が無視できない程度には嗅覚が効く。

 

 カモグンさんは「相性がいいのかもしれん。TRPGなんか一緒にやると嫌がらせできるかもな。その時があったら呼んでくれ」と言っていた。そういうもんだろうか? 俺にはよくわからない。あとその時が来るのはとても難しいと思う。

 

「ちょっと前から森で異変があったわけですから、情報があるはずです。それに、北の森はいつもここの人が生活に使ってるみたいだから、どんな所か聞いてみましょう」

「……わかった」

「時間制限のあるクエストでもないしな。手分けしよう」

 

 二十分後、以下のことが判明した。

 

・北の森で蝶が目撃され出したのは一週間ほど前

・金色の蝶には今のところ害はない。でもすぐ死ぬ

・北の森には休憩用の小屋がある

・モンスターが増えているなど異変はない

・蝶は最初森の中で目撃され、最近は町の近くでも見かける

 

 中でも重要っぽい情報を見つけたのはコサヤさんだった。

 

「……この蝶。魔力があるらしい。ウィザードギルドの人が驚いてた」

「凄いな。捕まえたのか」

 

 コサヤさんの手の中には金色の羽根を持つ小さな蝶がいた。まさか、実物が手に入るとは。

 

「……町の外に飛んでた。意外といる」

「かなり数が多いわけですね。それで、ウィザードギルドの人は他に何を?」

 

 コサヤさんはちょっと悲しそうな顔をしながら、首を振った。

 

「……なにも。アルケミストギルドでもよくわからなかった」

「そうすると、この世界特有の技術で作られてるってことだろうな」

 

 カモグンさんが顎に手をやりながら推測を口にする。アルケミストは俺達探索者の居た世界由来の技術だから、こっちの技術はわからないという解釈だ。

 

「つまり……具体的には何もわからないってことですね」

「魔法を使う何者かが関わってるってことだな」

「……情報集め、楽しかった」

 

 コサヤさんは満足顔だった。こういうの好きなんだな。

 

「僕らの聞き込みでわかったのは森の構造とモンスターくらいだな。毒とか麻痺を使うのはいないらしい。ボスはわからんがな」

「すみません。思ったより良い話がなかったですね」

「いいでしょ。こういうのは大事だよ」

「……森の中の様子がわかったのは助かる」

 

 念のため、回復アイテムを補充してから、俺達は近くの森へと向かった。

 

○○○

 

 北にあるという森は、ちょっとだけ鬱蒼とした感じだった。フロントタウン近くよりも少し植生が濃い。見通しも悪く、人の歩いた跡らしき道も細かった。

 戦うには少し手狭なんだが、しっかりとモンスターが出る。

 ここでの敵は白黒二色のモノクロ・スパイダーと名前通りの黒狐ブラック・フォックス。スパイダーの方は蜘蛛恐怖症対策のためか、極端にデフォルメが効いてるのが特徴だ。

 

 そこそこまとまって襲いかかってくるわけだが、相手が悪い。

 

「……終わった」

 

 出てくるモンスターはコサヤさんに蹴散らされていた。

 素早く動いて、切りつける。シンプルながら無駄のない的確な動き。ファイタークラス、メインアタッカーとしての面目躍如である。

 俺とカモグンさんはコサヤさんが集中砲火を受けないよう、ターゲットを散らすだけで良かった。いや、ちゃんと戦ってますよ?

 それと戦闘中、たまにエフェクトで剣が光るのが目を引いた。ファイターのスキル『パワースラッシュ』というのらしい。いいな、こっちはまだスキルはない。

 

「コサヤさん、やっぱり強いですね。武器はなんです?」

「……バスタードソード。両手と片手で持ったときの攻撃力が変わって面白い」

「相変わらず動きがいいね」

「……まだ、ステータスに差はないから。見た目だけ」

 

 ちなみにコサヤさんのレベルは15。とっくにソロで攻略可能だったのに、俺達と一緒に行くために待っていてくれたそうだ。

 

「これは道中の雑魚は楽できそうですね」

「……トミオはシーフスキル取るために戦え」

「はい……」

 

 軽口を叩いたら注意されてしまった。真面目に行こう。ショートソードでプチプチやるだけは寂しいしな。

 

「シーフは専用武器が多いそうだけど、どうするか決めたのか?」

「いや、まだ見てもいないですから。様子を見ながらかな? でも、中途半端になりそうで怖いなぁ」

 

 ゲーム序盤から悩ましいことだ。そもそも、まだ専用武器とやらを見ていない。まずは現物を見ないことには始まらない。

 

 雑談をしながら森の中を進む。たまに見かける金色の蝶に目を配るのは忘れない。紙とペンを買うとマップにメモできる機能があったので、そこに書いておく。

 たまに出てくるモンスターもさくっと倒す。装備も変わってないし、補正も少ないからまだ実感ないな。

 

「……お」

「あれが休憩小屋ですね。中間地点かな」

「ふむ。あんまり怪しい所はなさそうかな」

  

 それぞれ感想を述べながら休憩小屋に近づいた時。

 最初に気づいたのはコサヤさんだった。

 

「……なんか寝てる」

 

 見れば、小屋前に赤い髪の毛の塊が寝転んでいた。

 

「ああっ! まさかまさか! そこにいらっしゃるのはトミオさん! お願いします! この哀れな配信者をお助けください! 見ての通り、やられて動けなくてですね!」

 

 ちょっと前に別れたはずの三下配信者、フィーカがHPゼロの状態でくたばっていた。

 

「やられたって……。復活地点に戻ればいいんじゃないか?」

「それがあたし、フロントタウンに地点指定したままでして! こうして一か八か優しい方が通りがかるのを待っていたのです! へへへ、まさかトミオさんと再会できるとは。あたしの悪運もまだまだ捨てたもんじゃないですねぇ!」

 

 このゲーム、HPゼロになった瞬間に復活地点に戻るかその場に留まるか選択できる。とどまるなら、普通は仲間に復活をさせて貰うためなんだが……。

 

「他に誰も通らなかったの?」

「何人か通ったんですけどねぇ! アウェイクン・シンボル持ってる方がいなかったんですよ! もう諦めてました! そろそろ戻ろうかと思ってたとこです!」

「もうちょっとゆっくり来れば良かったな……」

「なんということを! ふふふ、わかってますよ。あたしと会えて嬉しいくせにっ。あ、その目は駄目です! 見捨てないで!」

 

 セルフツッコミが早くて見捨てる気も起きない。実は凄い奴なのではなかろうか。

 

「……これが噂の三下娘?」

 

 横からコサヤさんが覗き込むと、フィーカが目を見開いた。瞳を潤ませ、顔が少し赤くなる。死亡状態の表情が豊かだな、このゲーム。

 

「か、かわいいっ! なんですかトミオさん、こちらのお嬢さんは! こんな美少女と一緒なんて。おいくら万円払ってるんですか! え? 友達? あたしも友達代払えばいいんですか!?」

「先に行きましょう。二人とも」

「嘘です嘘です! 申し訳ありませんでした! ちょっと可愛い方に出会って取り乱しただけです!」

 

 俺の本気を察知したフィーカが慌てて弁解する。なんて物言いしやがる。たしかにコサヤさんのアバターは妖精のような可愛さで一緒にいるとたまに驚くが。

 

「……とりあえず起きろ」

 

 コサヤさんがフィーカの額にお札を貼り付けた。アウェイクン・シンボル。復活アイテムだ。ちなみに現状だとちょっとお高い。通りがかったプレイヤーがフィーカに使わなかったのも頷ける程度には。

 

「う、うおおお! 復活! あたし復活! あ、HPが少ない。ポーション使うので少々お待ちを! ……ぷはぁっ、文字通り生き返りますなぁっ。ありがとうございます!」

「……気にしないで。それより情報」

 

 コサヤさんはしっかり対価を要求する人だった。

 

「トミオ。初日に随分と濃いのに出会ったな……」

 

 ずっと黙っていたカモグンさんがぼそりと呟いた。すげぇよ、カモグンさんはちょっとのことくらいじゃ動じない大人だってのに。ドン引きしてる。

 

「へへぇ。このフィーカ。恩義には報いる女でございます。何でもお話し致しますとも!」

 

 土下座しながら自信たっぷりに三下配信者はそう言い切った。

 流れ的にこれ、一緒に攻略しなきゃいけないやつか?

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