一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO(ゴシック体対応版)   作:みなかみしょう

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第30話:緊急事態

「ええと、ええと。こ、これはどうしたものでしょうか。緊急事態らしいことはわかるのですが!」

「落ち着いてください~。まずはお茶でも飲んで」

 

 すすめられるまま、残った紫色の茶を飲み干すと、フィーカは軽く息を吐く。

 

「ふぅ……。この「あかがねの洞窟」は第二階層以降、定期的にボスモンスターが出現するんです。それが、どういうわけか、第三階層のが第二階層まで来ちゃったみたいです……」

「そんなことが起こりうるのか?」

「えーと……。チャット欄によると、第三階層で戦ってた人がこちら近くまで逃走。追いかけてきたボスがユーザーイベントのプレイヤーに反応したんじゃないか……とのことです!」

「プレイヤーが多いと、モンスターが湧きやすいって話の応用みたいなもんか……?」

「ボスはAIが良いからプレイヤーの多いとこに反応するのかもしれんね」

「なるほど~」

 

 オリフさんの推測は案外あたってそうだ。ボスのタイプにもよるけど、徘徊しながらプレイヤーを狩るようなのだったら、レーダー的な要素を搭載してても不思議じゃない。

 

「あわわ……。で、できれば皆さんも良ければお手伝いをば」

「あの~、廃の人達が警備をしているから平気なのでは?」

「あたしみたいのもいるんで、全員すごいわけでもないんですよぉ。あと、本当に強い人達は「最後まで店を守る!」と謎のこだわりを見せておりまして……」

「あらら~」

「さすがだ……」

 

 多分、今日の仕事は戦うことじゃないということなんだろう。廃プレイヤーの人たちにとってはボス襲来もイベントの一つくらいの感覚に違いない。警備の仕事はそちらに任せるスタンスで行くというわけだ。だいたい廃プレイヤーなんてのは一癖ある人が多い。

 

「それで、第三層のボスはどんなやつなんだ? 推奨レベルは?」

 

 戦いに行くのはやぶさかでもないが、相手次第だ。これで推奨レベル80です、なんて言われたら俺は帰る。

 

「ボスの名前は「レッド・キャリアー」、赤い色をしたウッドゴーレム。各所に赤いきのこが生えていて、胞子で取り巻きを増やしながら侵攻して来る。胞子にバッドステータス効果あり。推奨レベル……38」

 

 情報ウインドウを読みながら事務的な口調で言ったフィーカの説明に、俺を含めた全員が微妙な顔になった。

 

「びみょ~ですね~」

「トミオさん、レベルは?」

「23です。ちょっと厳しいかな?」

 

 レベル差が倍というわけではないけど、ちょっと厳しい。ただ、きのこたけのこ大将軍などを見ればわかるように、推奨レベルはあくまで目安でしかない。10くらいの差なら何とかなるかな、というのが個人的な感覚だ。

 

「わたし達も25くらいですからね~。どうします、オリフさん?」

「ボスがヤバい攻撃してきたら蒸発できるかもしれんね」

 

 その光景を想像したのか、オリフさんは遠い目をしながら言った。サングラス越しなんで想像だけど。

 

「ま、待ってください! 大丈夫、大丈夫ですよ! 当方に作戦あり! 主に取り巻きを倒しましょう! 本体は警備隊長にお任せ! しかも今ならパーティー組んで、トミオさんがボスにスティルアタックしてもOKですよ!」

「ぬ」

 

 それは興味深い話だぞ。たしかに、スティルアタックは殴る際に判定が起きてアイテムが入手できる。BWOはパーティー全員にドロップ品が配布される形式で、スティル品も同様の処理だ。つまり廃プレイヤーの影からこっそりスティって良いという美味しい話なわけである。

 

「それ、本当にやってもいいのか?」

「はい! そもそもレベル差があると成功率が低いんで、回数が必要になります。必要なリスクってやつですね。警備側としても、手が増える分にはOKですし、ドロップ品を請求しないと言っております!」

 

 手応えありと見たのかフィーカが自信ありげに言い切った。ついでに情報ウインドウのチャット欄も見せてくれる。誰かの「まあ、何度かチャレンジするうちに死ぬかもしれんけど」という発言があるんだが……。

 

「こうなると話が変わってくるな……」

「そうですとも! トミオさんのユニークスキルと組み合わせれば安全性ヨシ! って感じで! 今なら瑠璃さんとオリフさんの支援もついて更にヨシ!」

 

 いちいち「ヨシ!」でポーズを取るのはやめて欲しい。逆にすぐ死にそうな気がしてくるじゃないか……。

 

「お二人はどうです? 俺は悪くない話だと思うんですが」

「ごくり……。おっと。わたしは良いと思うんですが~」

 

 オリフさんどうです? と瑠璃さんが聞くと、返事代わりにパーティ申請のウインドウが開いてきた。

 

[パーティー要請:オリフシン]

[受諾しますか? YES/NO]

 

「さあ、急いですぐ出発だ。何か出るまでスティルして貰うゾ」

 

 なんだか凄くやる気を出していた。

 

「おおっ、オリフさんが久しぶりに本気ですね~」

「やった! ではでは、行きましょう! こちらです! あ、回復アイテムなかったら、その露店で補充しましょうね!」

「大丈夫だぞ。トミオさん、ポーションいくつかあげるよ」

「あ、どうも」

 

 品質良い目って書かれてるHPとMPポーションを貰ってしまった。これもクラフト産かな?

 

「ふと思ったんだが。もしかして俺が一番危険なんじゃ?」

「スティルするまで死なせないから安心してくれ」

「わたしがお守りしますよ~」

「いやー、頼もしいですね! よっ、泥棒王!」

「まだ何も盗っちゃいねぇよ……」

 

 なんだか不安を抱えながら、急造パーティーを編成した俺達は、「あかがねの洞窟」第二層の奥地へと向かった。

 

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