一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO(ゴシック体対応版)   作:みなかみしょう

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第32話:連戦

「あばばばば! に、二層のボスがぁ!? も、もう駄目だぁ……。おしまいだぁ……。撮れ高しゅごい!」

「最後本音でたな」

「つよい」

「たくましい~」

 

 さすがは配信者。フィーカが即座に過剰なまでに反応した。撮れ高に言及できるあたり意外と余裕がある。

 そして現れた赤光の残骸。簡単にいうと大きな『赤のグール』だ。身長二メートル以上、ムキムキマッチョのパワー系で青い素肌の各所に真っ赤な線が走り、禍々しく輝いている。

 

「よし。トミオさんや。スティルチャンスだぞ」

「言うと思った……」

「やることは一つですからね~」

 

 赤き残骸は周囲に赤いグールを侍らせながらこちらにゆっくり向かって来る。迎え撃てるのは多分、俺達だけ。レッドキャリアーとの戦いが終盤になってて、警備はそちらに集中している。

 

「な、なんか皆さん余裕ないですか? ボスに挟み撃ちですよ!?」

「あれは推奨レベルが低い。少し持ちこたえればレッドキャリアーを始末した援軍が見込める」

「とりあえず範囲魔法使うから、それからフィーカさんと各個撃破。瑠璃は壁ね」

「わかりました~」

 

 フィーカがベテランと評したのに間違いは無かった。瑠璃さんもオリフさんも状況をしっかり見ている。

 

「それに加えて、第二層の客も援軍で来るんじゃ無いか? 推奨レベル的に怖くないから」

「むむ。たしかにそのようです。あ、イベント運営が「二層のボスはそれほど怖くないんでボーナスタイム!」的なことをアナウンスしてるみたいです!」

「というわけで、倒される前にスティルしてみる! ピタッとフック!」

 

 天井めがけてフックを飛ばし、一気に駆け上がる。赤のグール達は一瞬俺を見上げるが、その後に突っ込んできた瑠璃さんにターゲットを切り替えた。

 

「使いどきの、セイント・ウォール!」

 

 瑠璃さんが前に構えた盾から、光輝く壁が生み出された。幅四メートル、高さは二メートルほど。

 青白く光る壁に止められたグール達が闇雲にその場で攻撃を始める。

 

「壁を作る系のユニークスキルか。さっきは使わなかったな」

 

 多分、クールタイムが長いとか、燃費が悪いとか事情があるんだろう。切り札を切ったというわけだ。

 瑠璃さんが戦線を支え、そこにオリフさんとフィーカの遠距離攻撃を連射する。時間を稼ぐのに最適だ。

 

 俺は安心して赤光の残骸に接敵。レッドキャリアーより反応がいいらしく、タイミングを合わせて腕を振ってきた。

 

「おおっと!」

 

 再びフックを使って上昇して回避。即座に解除。落下しながら攻撃モーション後の背中めがけて鎖鎌を振り下ろす。

 

「スティルアタック!」

 

 手応えあり。しかしスティルは失敗。連続で決めればすぐに盗めそうだ。

 

「と、その前に……」

 

 ヘイトがこちらに向いたのを確認しつつ、素早く距離をとってMPポーション使用。直前で気づいたけど、頑張りすぎてMP切れ寸前でしたわ。スティルアタック一発できただけマシだね。

 

「さて、改めまして……ん?」

 

 鎖鎌を構えたところで、横をすり抜ける影があった。

 影の色は白と銀。すぐに知り合いに思い至る。

 

「コサヤさん!」

 

 俺の声に反応もせず、銀髪の少女は真っ直ぐに赤光の残骸へと駆け寄る。その両手が掴むのはきらめく白刃。――日本刀だ。

 

「って、せめてスティルしないと!」

 

 コサヤさんはエンジョイ勢だがプレイスタイルは廃プレイヤー並。レベルも相当高い。あの刀もNPC産の特別製だと聞いた。つまり、推奨レベルが低いボスなどあっさり倒してしまう可能性がある。

 

「せめてスティルを決めないと親方にドヤされるっ」

「誰が親方だ」

 

 パーティーチャットで喋ったら、しっかりオリフさんがツッコミを入れてくれた。こういうのがフィーカに気に入られたんじゃないだろうか。

 

 ピタッとフックで移動。後ろからコサヤさんを追い抜く。一瞬、刀が青白いオーラをまとってるのが見えた。カモグンさんがスキルでバフ入れてるな! せめてもう一回スティルを!

 

「グオオオ!」

 

 赤光の残骸が地面に腕を叩き付ける。瓦礫がこちらに飛んで来た。飛び道具の範囲攻撃か。有効だが攻撃が大味だ。隙間をすり抜けて接近。

 

「ファストアタック! スティルアタック!」

 

 お約束の三連コンボ。しかし反応は無し。コサヤさんが接近したら物凄い勢いで削りにかかるはずだ。チャンスはそう多くない。早めに決めねば。

 

「ピタッとフック!」

 

 何度目かのフック移動。今度は真上。赤光の残骸の頭上に上がる。奴は一瞬こちらを見たが、すぐに目の前に来た新たな脅威に狙いを変えた。

 紅白の衣装に身を包んだ銀髪の少女が、正面からボスを見据え、日本刀を構える。

 不思議なことにコサヤさんの呟きがしっかりと聞こえた。

 

「…………乱れ三日月」

 

 直後、魔法で刃を青く輝かせた日本刀が、連続でひらめいた。その数五回。シーフの俺より連続攻撃が多いスキルもってんじゃないですか……。

 コサヤさんの攻撃は終わらない。

 

「……二段斬り」

 

 追加とばかりに二連撃。燃費悪そうだけど相当効いたぞ。なんか体表の赤いとこ光ってるし。

 

「観察終わり! これでどうだ!」

 

 コサヤさんの攻撃がどんなもんか見たかったので留まっていた上空から落下。BWOにおいても落下ダメージは健在だ。つまり、細かい設定はわからないが重力がある。昨今のゲームなら、落下速度分の勢いがダメージ計算に乗ってくれるはずだ。

 非力で火力不足な俺でも、重力加速を加えた攻撃なら多少はマシになるはず。

 

「スティルアタック!」

 

 首筋めがけて速度の乗った一撃を叩き込む。

 

[赤光石を獲得]

 

 よし、スティル成功! でもこれ普通にその辺で拾えるやつだね!

 

「外れだな」

「そういうこともありますよ~」

「じゃ、仕事したんで離脱しますわ!」

 

 パーティーチャットしつつ着地して後ろに下がる。レッドキャリアーより弱いとはいえ、ボスには違いない。うかつに接近することはない。

 

「ショットォォ!」

 

 すかさずフィーカのチャージショットが直撃。赤光の残骸はあからさまに動きが悪くなる。相当効いてるな。

 

 気づけば、大勢は完全に決まっていた。やってきたのはコサヤさんだけじゃない。他の客達も武器を持って好き放題攻撃をしかけている。警備だけが向かってたレッドキャリアーとは全然別の展開だな。

 

「あの銀髪ネコ耳美少女サムライに続け!」

「今なら殴っておくだけでドロップ品!」

「銀髪の人、すっごい可愛い。スクショとっておこ」

「はいはい。怪我をした人は下がってねー」

 

 もはや、ボス戦もイベント会場だ。緊張感のかけらもない。推奨レベル28だもんな。人によってはソロ討伐もいけるんじゃないか?

 ユニークスキルで壁を作っていた瑠璃さんの方の取り巻きも援護があって敵は壊滅していく。もうこうなれば勝ち確ですわ。

 

「とりえず、もう少し殴ってくかな」

 

 そう思って『追憶』の鎖鎌を構えた瞬間、アナウンスが流れた。それも二回。

 

【赤光の残骸が討伐されました】

【レッドキャリアーが討伐されました】

 

【赤光結晶を獲得】

【欠けたゴーレム核を獲得】

 

【おめでとうございます! 特殊条件討伐を満たしました。その場で戦闘に参加された皆さんにボーナス経験値が付与されます】

【5000EXPを獲得】

 

 最後の意外なアナウンスに、その場の全員が一気に沸き立った。

 

 意外と細かいところまで想定してるんだな。このゲーム。二体同時にボスを相手にできるのは仕様か。

 

 そんな感想を抱きつつ、仲間達の所に戻って行くのだった。なんか、飛び跳ねてるフィーカがやたら目立つな……。

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