一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO(ゴシック体対応版) 作:みなかみしょう
フィーカの指定した座標は、ルクス山岳地帯に入って少し北上した場所だった。この前行った『あかがねの洞窟』よりは奥地だ。
山の中にあるちょっとした岩場。そこを登った先にある切り立った崖の上に、ダンジョンの入口が存在した。
その場には全員が集まっていた。カモグンさんにコサヤさん。瑠璃さんにオリフさんもいる。
「まさか、全員揃うとは」
「見逃せんだろう。イベント生成ダンジョンなんだから」
「楽しみだね」
カモグンさんとオリフさんは俺とほぼ同時に到着した。先にいたのは女性陣だ。それにはもちろん理由がある。
「いやー、驚きました。コサヤ様と瑠璃さんと山中を徘徊していたらまさかのダンジョンとは」
「三人で何やってたんだ……」
「山ごもりですよ~。イベント前の特訓~」
「普通にクエスト受けた方がいいんじゃないのか?」
「それ言おうとしたら既に居なくなってたんだよ……」
カモグンさんとオリフさんも驚いている。凄い行動力だ。コサヤさんに同行してレベル上げということだろうけど、特殊な訓練すぎる。
「しかし、この三人でまとまって行動できるのが驚きだな」
「失礼な! あたし達ほどの仲良しコンビは中々いませんよ。もう、ルクス山岳地帯を縦横無尽に走り回ってたんですから」
「危険モンスターに追いかけられたりしましたね~」
「……楽しかった」
「楽しかったならいいんじゃないかな」
一番負担が大きそうなコサヤさんが満足げだったので俺はそれ以上の追求をやめた。
「それで見つけたのがこのダンジョンかね? しかし凄い所にあるな」
「……瑠璃さんが、山頂の景色を見ようと無理矢理登ったらあった」
「わたしが見つけました~」
「えらいえらい」
カモグンさんに胸を張ってドヤ顔をする瑠璃さんをオリフさんが褒めている。今更だけど、瑠璃さんのモデル、胸のサイズが異常なほどでかいな。特殊な数値を引き当てたのか。
「……トミオさんも気になりますか。瑠璃さんの双丘が。あたしもです、何でもランダムでああなったとか」
「ランダムに色んなもん仕込みすぎだろ、このゲーム……」
コサヤさんの見た目もそうだったし。手動じゃ出せない数字を仕込むお遊びが好きな開発者がいるんだろうか。
「それで、見つけたのはいいですけど、ちょっと困りましてね」
フィーカが言いながら、ダンジョン入口に建てられた看板を指差す。
そこにはこう書かれていた。
『イベント生成ダンジョン306 推奨レベル:80 デスペナルティ:無し』
フォントはゴシック体でないが、酷く無味乾燥な文字列だ。
「本当に機能を試してるって感じですね」
「イベント終わったら消えるんだろうな。それで、三人は中に入ったの?」
カモグンさんの問いかけに、女性三人は首を横に振る。
「一番レベルが高いコサヤ様でも46ですからねぇ。さすがに怖くて」
「ですね~。瞬殺されちゃいます~」
「……ここは人数が必要な場面」
妥当な判断だ。いくらコサヤさんにプロゲーマー並のスキルがあるといっても、これだけのレベル差を覆せるかは怪しい。シンプルにダメージが発生しないことだってある。
「じゃあ、中も見ていないのか」
「レベル80はこわすぎですよ~」
「デスペナないのに」
「あ、そうでした~」
オリフさんに納得させられている瑠璃さん。多分、その場にいたら既にチェック済みだったろうな。
「大発見だと思い、すぐに皆さんを呼んだ次第です!」
「見つけたてってことね。じゃ、とりあえず行ってみようか?」
その場の全員が頷き、すぐにカモグンさんからパーティー要請が飛んで来た。
「レベル80。カモグンさん、いけると思いますか?」
「わからん。中の状況次第だね」
「……モンスターハウスみたいなのだったら手に負えない」
「デスペナ無しってことは、相応のものがいるってことよな。でも、倒せれば大きいはずだ」
カモグンさんの言葉に、フィーカの瞳が輝く。そして即座に録画の準備を整える。
「録画はいいけど、加工とチェックは必須な」
「もちろんですとも! さあ、行きましょう! イベント高レベルダンジョンへ!」
そのままフィーカを先頭に、俺達はダンジョンへと入っていった。
デスペナがないって気楽でいいね。
◯◯◯
結論から言うと、無理でした。
中に入るなり「危険モンスター:ミスリルゴーレム(推奨レベル80)」が登場。
でかい、遅い、強いの三拍子そろった巨大ロボみたいなやつで、広いドーム状の空間で戦うことに。
とりあず俺が囮になっている間に皆で削る作戦を選択。
作戦は成功した。ピタッとフックを活用していい具合にヘイトを稼ぎ、フィーカとオリフさんの遠距離攻撃で少しずつ削る。時間はかかるけど、何とかなりそうに見えた。いや、本当にいけそうだったんですよ……。
HPが半分を切ったところで、ゴーレムがロケットパンチとビームを連射するようになりました。
まさに暴力の嵐。ステータス差からくる容赦ない攻撃によって、全員が当たればワンパンチ。一撃でやられることに。
何度かスキルのかけ方とか、戦い方を工夫して挑んだけど、どう足掻いてもほぼワンパンチでやられる状況は覆せなかった。ロケットパンチとビームは速さと連射力を備えていて、現状の俺達じゃ回避し続けることは不可能。もちろん、防御手段もない。瑠璃さんが頑張ってたけど、根本的な所が足りてない。
「よし、諦めよう!」
一時間ほどチャレンジして、カモグンさんはどこか爽やかに宣言した。
「無理でしたね~。火力高すぎです」
「……でも、楽しかった」
「デスペナないと気楽にできるよね」
色々と方法を試すのは結構楽しかった。デスペナルティ無しはノーリスク。移動の手間とアイテムの消耗だけでチャレンジできるのは大きい。ついでに連携の練習にもなる。
とはいえ、無理なものは無理。多分、防御無効とかダメージ倍率が全然違うようなスキルがないとあのゴーレムは超えられない。あと圧倒的な防御力。ビームとロケットパンチは反則だろ。
「うぅ、しかし無念です。皆さんのお役に立てると思ったのに……」
フィーカが一人悔やんでいるが、実はそうでもない。まだ取れる手段がある。
「あんまり気に病むな。だが、どうしても何かしたいというなら、俺に案がある」
「トミオさんの案というのが不安ですが、聞くだけ聞きます」
こいつ、地味に俺に対する評価が辛くないだろうか。何か悪いことでもしたか?
「ユーザーイベントをやった廃プレイヤーと知り合いだよな。このダンジョンの情報と引き換えに、レベル上げに良い情報を教えてもらえないか?」
「え、いいんですかそんなの!?」
フィーカが周りを見回すと、全員が首を縦に振った。攻略できないダンジョンに用はない。なら、せめて役立てる方向に利用するしかない。
「満場一致だよ。フィーカさん、頼めるかな? もし倒せたらドロップ品の情報も知りたいな」
カモグンさんが申し出ると、フィーカは拳で胸を叩きながら返事をする。
「お任せください! ついでに動画出演まで取り付けてやりますよ!」
もちろん、動画出演の了承は得られなかったという。