一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO(ゴシック体対応版)   作:みなかみしょう

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第52話:祭りの余韻

 完全勝利。良い響きだ。

 俺、カモグンさん、コサヤさん、フィーカの四人は何となく城壁の上に集まっていた。側には今回の功労アイテムであるカタパルトまである。何故かフィーカに飾られて花とかついて派手になっているが。

 全員、その場に座り込んで殆ど言葉がでなかった。精神的疲労が凄い。

 そこらじゅうに食べ物と飲み物が広げられているのは、イベント終了後、街でお祭りが始まったからだ。

 

「いやー、めでたいですねぇ。まさか打ち上げもゲーム内で出来るとは」

「街の人までお祭りモードになったのは驚いたな」

「……いつもより料理の味が濃い気がする」

 

 完全勝利によるものか、街ではNPC達が祭りを始めた。そこらじゅうで食料が振る舞われ、NPCとプレイヤーが大騒ぎしている。

 ちなみに瑠璃さんはオリフさんと共にイベント料理をかき集めるため消えた。元気すぎる。

 

 それぞれが黙々とお祭り料理を食べながら景色を眺めていた。特別製なのか、いつもより味はするけど腹は膨れない。なんだこの空間。

 

「なんか、疲れて会話する元気もないな……」

「ですね。でもログアウトするのも勿体ないですし……」

「……報酬アイテム、なんだろこれ?」

 

 言いながら、コサヤさんが古びた金貨を見せる。今回の配布アイテムだ。

 

「そのうち何かの交換に使えるんじゃないか? 経験値も金も入ったし、良いイベントだったよ」

 

 のんびり怪しい色のジュースを飲みながら、カモグンさんが言う。

 

「あたしはこれから動画編集です! ところで皆さん。今回こそは顔出しお願いできませんか? 特にコサヤ様! あの美しい桜色のお姿を是非!」

「あの距離で撮れたのか?」

「勿論! 最高望遠の課金アイテム使ってますから!」

 

 配信者らしい有用な使い方しやがって。後で無編集のものを見たいな。

 

「……顔出しはヤダ。恥ずかしい」

「なんとぉ!」

 

 予想通りの答えを返され、悶えるフィーカ。気の毒だが、嫌なものは嫌だからしょうがない。

 

「ぬぅ。仕方ありません。今回はあたしが最高ダメージ賞に輝いたことを強調する方向でいきますか」

「なんだそれ?」

「キメラゴドンを倒した瞬間、あたしの周辺だけ光ってファンファーレが鳴ったのです! ま、カタパルトがそれだけ強かったという証拠ですね!」

「あの魔力砲は複数プレイヤーの共同作業判定だったんだろうな。それで、一番ダメージを与えたのがフィーカさんになった」

 

 なるほど。そういう流れか。

 

「もしかして、追加で報酬があったのか?」

「ありましたとも! これです!」

 

 自慢げに取り出したのは金色の紐。投石機だ。

 

「え、これだけ?」

「何を言うんですか! これは匠の投石機『払暁』! スペシャルアイテムなんですよ! 攻撃力もちょっと良い感じ!」

「そっかー」

「あ、一瞬で興味を無くしましたね! わかりますよ、その目!」

「多分、受賞した人の戦闘スタイルにあわせてそこそこ良い武器を与える設定だったんだろうな」

 

 それがほぼネタ武器扱いされてる投石機とはな。価値はあるんだけど、需要は少なそうだ。

 

「うぅ……。もっと羨ましがってくださいよ。大活躍だったんですよ……」

 

 落ち込むフィーカの肩にコサヤさんがポンと手を置いた。

 

「……私は羨ましい」

「コサヤ様ぁ!」

 

 なんか、頭を撫でられている。夕日を浴びて良い光景みたいになってるけど、全然そんなことないな。

 

「思ったよりもスッキリクリアできたなぁ」

 

 キメラゴドンの跡地を眺めながら言うと、カモグンさんとコサヤさんが頷いた。ゴシックPのイベントを打ち砕いた。過去の経験を踏まえると、完全勝利は難しかったはずだ。イザベル・オリジナルを倒した廃プレイヤーも素晴らしい。ありがとう、ゲーマー達。

 

「あの、普通イベントはクリアできるものでは?」

「いや、完全勝利は難しいはずだ。だから良い気分なんだ。きっとゴシックPは悔しがるに違いない」

「あ、会ったこともないのによく想像できますね」

 

 フィーカが引いているが、根拠がないわけじゃない。カモグンさんが口を開く。

 

「ゴシックP、完全攻略されると次のイベントで声明を出すんだよ。それで、悔しがってたのがわかる」

「ユ、ユーザーフレンドリーなんですかね? 私情入ってませんか?」

「……楽しいからいい」

 

 そう、俺達は楽しんだ。だからそれでいいんだ。満足だ。

 

「楽しかったですね。今後もゴシックP主催のイベントは尽く攻略してやらないと」

 

 俺が言うと、カモグンさんとコサヤさんが笑顔で頷いた。

 

「ヒィィ、コサヤ様まで悪い笑顔を……。あ、レア表情のSS撮っていいですか?」

 

 コサヤさんに全力で断られるフィーカを気にせず、俺は再び景色を眺める。

 キメラゴドンとその経路はそのまま残されている。きっと、今後の冒険が広がる暗示だろう。

 

 これから先も楽しませてくれよ、ゴシックP。

 

 不思議な信頼感と共に、右手のジュースを夕日に掲げてから、俺は喉に流し込んだ。

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