一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO(ゴシック体対応版)   作:みなかみしょう

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ある程度書き溜めができたのでまとめて更新します。


第54話:日本の夏の過ごし方~接触編~

 日本の夏は暑い。

 それもう何十年も前からの話で、国民全員がよく知る所である。

 

 VRゲームを健全に遊ぶためにウォーキングという名の散歩を欠かさない俺だが、夏場は早朝でも暑い。

 特に、進学して関東に来てからは暑さが違って驚いた。俺の知ってる夏とは別の季節だ。もうちょっと涼しい地方の出身なんで普通に辛い。

 

 というわけで、夏場はクーリングシェルターという名目も付与されている大型商業施設をうろつくことが多い。幸い、住んでる場所の近くに関東有数のショッピングモールがあり、何なら散歩コースまで整備されているので非常に助かっている。

 ついでに買い物とか食事もとれるのでとてもお得だ。あと、一日寝てゲームをしていると発生するちょっとした罪悪感からも逃れられる。

 

 たまに店をのぞきながら、程よく歩き回り。フードコートで何か食べて、買い物をして帰る。基本はその行動パターンを繰り返しているんだけど、今日は午後早めに食事を終えた。まだ陽は高く、外気温は四十度近い。ちょっと、外を歩きたくないな。

 

 もう少し時間を潰そうかとモール内を見渡すと、人が増えてきていた。スーツ姿の人も多い。

 VRオフィスで勤務を終えた人達が来ているんだろう。フルダイブの二倍時間のおかげで、ホワイトカラーと呼ばれる人達は勤務を早く終えられるケースが多いらしい。

 

 過去、VRで十六時間労働とかしてた時代があり、それで大変なことになって以来、ガチガチに規制で縛られているとの話だ。

 対して、リアル世界で働く人達は拘束時間が長くなるため給料を上げてバランスをとっている。この形になるまで、色々あったと学校で習った。

 

 現代社会についての考察はともかく、人が増えてきたのは落ち着かない。少し移動するか。

 無料の水が入っていた紙コップを手に、俺は席を立つ。

 

 今いるショッピングモールはもともと大きかったのが増改築によって更に広くなったという巨大施設だ。公式で設定している散歩コースには7kmなんてのもある。

 そんな施設なんで、人気の少ない場所というのが存在する。ちょっと高めの店が並ぶ先にある、トイレ周辺の休憩用のスペースなどだ。時間を潰すのにうってつけなんで、俺はたまに来る。ちなみに、似たようなことをしてるモール常連も結構いる。

 

 今もそう、ソファ風のベンチにぐったり横になってる女性が……。

 

 あれ、大丈夫かな?

 

 昼間からベンチで横になる人はまずいない。しかも女性。体調でも悪いんだろうか?

 あんまり人の来ない所だから心配だ、ちょっと様子だけ見ておくか、一応。

 

「…………あの、だ、大丈夫ですか?」

 

 小柄な女性が、ぐったりと横になっている。タイトスカートに白いブラウス、黒タイツのいかにもオフィスにいそうな格好だ。顔が赤い。外を歩いた時に熱中症にでもなったのかな?

 

「う……」

「お店の人呼びましょうか? いや、それとも救急車?」

 

 意識はあるみたいだ。でも、顔色もよくない。もう俺がどうこうできる状態じゃないのでは……。

 

「運動不足と睡眠不足で歩いたら、思ったよりも体にダメージが……」

 

 疲れ切った現代人の悲しい姿だった。

 とはいえ、油断は禁物だ。この人が体調を崩しているのは間違いない。

 

「あの、お兄さん。できたらそこの自販機で飲み物を。三時間くらい何も飲んでない、今気付いた……」

 

 疲れ切った目で語るお姉さんの言葉を聞いて、反射的に自販機にダッシュ。水とスポーツドリンクを購入した。

 

「どうぞ。そこで買ったものだから、変なものは入ってないです」

「大丈夫、見てたから……」

 

 蓋を開けて渡すと、身を起こしたお姉さんはまずスポーツドリンクを飲み始めた。それも一気に。

 

「ぷはっ。ありがとう。た、助かったわ」

 

 あっという間に飲み干すと、顔色が良くなった。ゲームの状態異常が回復した時みたいな素直さだ。

 

「いえ、たまたま見かけただけですから」

「そんなことないわ。わざわざ声をかけて助けてくれるなんて、なかなかできないことよ。あ、そうだ……」

 

 お姉さんがバッグを開けて何枚かカード状のものを取り出してきた。

 

「こんなので悪いけれど、お礼に受け取ってくれる?」

 

 小さな手の中に収まっていたのは、ギフトカードだった。それも十枚くらい。ハンバーガーにアイス、コーヒー、ラーメン、一通り揃ってる。

 

「いや、ちょっと自販機で買い物しただけでこれは……」

「いいのよ。人助けしたならラッキーがないと。それにこれ、知り合いから貰って使い道がなくて困ってるものなのよね。この体格で、こんなに食べられないってね」

 

 にこやかに笑いながら、牛丼屋の券を見せてきた。たしかに、沢山食べそうな見た目はしていない。笑顔は華やかだけど、色白で小柄で細身。いかにもインドア派って感じだ。

 

「じゃあ、ありがたく。なんか、すみません」

「気にしないで。むしろ、こんなものでごめんね!」

 

 このままで問答を続けると変なことになりそうだったので、素直に受け取ることにした。学生の身としては有り難い。しばらく、昼は運動がてらここで食事だな。

 

「ふぅ、何とか立てるようになったわね」

「ほんとに大丈夫ですか?」

 

 立ち上がったお姉さんは、体調を確認するように何度か屈伸すると、笑顔になった。

 

「問題なさそう。時間をとらせて御免なさいね」

「気にしないでください。散歩みたいなものですから」

「本当、夏場は外なんか歩けないわねー……あ、連絡が来たわ」

 

 バッグから通知音がしたと思うと、ごつい見た目のスマホを取り出して、忙しく操作を始めた。

 

「知り合いが来たみたい。本当にありがとうね」

 

 良かった。誰か来るのか。一人で歩かせて平気なのかちょっと悩んだんだ。

 

「じゃ、俺はこれで。気を付けてください」

「もちろん。それじゃね」

 

 大分元気そうになったお姉さんを置いて、俺はその場を去った。

 良いことしたし、今日はBWOでいいことあるといいな。 

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