一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO(ゴシック体対応版)   作:みなかみしょう

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第57話:フェアリーガーデン(1)

「ああ……楽しく空のお散歩をしていたら、鳥に襲われてこんなところに。外から来た人、どうかお助けください」

 

 背中に透明な羽根を持つ、金髪にワンピース姿の可愛く小さな少女。

 そんな、絵に描いたようなわかりやすい妖精が、目の端に涙を浮かべて懇願してきた。

 

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 『フェアリー・ガーデン~妖精の贈り物~』

 推奨レベル:45

 

 北の大地の麓で出会った迷子の妖精。

 モンスターに怯えて家に帰れない彼女を助けてあげましょう。

 

 報酬:12000EXP

6800Gn(ギニー)

   ※アイテム『フェアリーエッグ』を入手できます。

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 これがサポートキャラ入手クエストのスタートだ。情報通り、山の入口で困ってる妖精に話しかけるだけで始まった。物凄い手軽である。

 俺、オリフさん、瑠璃さんの三人はそれぞれクエストを受諾。パーティーは既に組んでいるのでこれでまとめて進むはずだ。

 

「ああっ! ありがとうございます! この山の頂上に私達妖精の隠れ里があるのです。どうか、そこまでお連れください」

 

 品の良さを感じさせる所作で妖精が一礼した。

 

「まかせてください~。このオリフさんとトミオさんがちゃんと案内してくれますよ~」

「襲ってくる鳥がいるのか……」

「やっぱりアレですよね……」

 

 瑠璃さんはにこやかだが、俺とオリフさんの表情は晴れない。山の上の方で飛んでたの、やっぱり崖登りを妨害するために配置されてる奴じゃないかな。

 

「私のことはハミィとお呼びください。さあ、こちらです」

 

 言いながら、ハミィがふよふとと飛んで、登山口へと案内を始めた。このクエストでは山道がダンジョン扱いになる。通常なら、テーブルマウンテン頂上まで登山の始まりだが……。

 

「その前に試したいことがあるんだ」

「え?」

「ちょっとこちらへ~」

 

 とりあえず、ピタッとフック作戦を実行するため、崖登りしやすそうな位置に移動する。

 ハミィは怪訝な顔でついてくる。すまんな、イレギュラーな行動を取るプレイヤーで。

 

「さて、やってみますか。鳥、見えますけど」

「いるよね、鳥……」

「ちなみにあれはロック鳥といって、大変凶暴です。危険です。死にます」

 

 ハミィから補足説明があった。

 これだけ警告されてるのに、やれって言うんですか。

 

「一回やってください~」

 

 瑠璃さんの方を見たら、上目遣いでお願いされた。こんなあざとい真似までして、自分のアイデアを試したいのか……。

 

「落ちてきて死んだら生き返らせてくださいね」

「すまんね。うちの瑠璃がワガママで」

「ちょっと試したい気持ちもありますから……」

「素晴らしい心意気ですよ~」

 

 シナリオショートカットは攻略の上での浪漫がある。それはわかる。

 一回試すくらいなら平気だろう。

 

「ピタッとフック!」

 

 試しに10mくらい上に向かってフックをかける。移動と着地は成功。なんとか崖にしがみつく。

 

「高さは稼げた。後は……ん?」

 

 手を離した瞬間にピタッとフックを使って登ろうとした時だ。

 なんか、音が聞こえる。ゴォォォって。方向は上。

 

 

◆【caution!】◆

【☆危険モンスター:ロック鳥(レベル82) 出現!】

◆【encounter!】◆

 

  

「ピピィィ!」

「うおおおお! ピタッとフック!」

 

 妙に鳴き声の可愛いロック鳥が物凄い勢いでダイブしてきた。もっとゆっくり飛んでくれよ!

 横移動で回避! でも次が来てる!

 

「ピピピィ!」

「ピタッとフック!」

 

 更に回避! 動きが直線的な突撃だから何とかなる。でも、多分一発でも食らったら死ぬ。落下ダメージで。

 

 その後、三回ほど回避した所で、なんとか崖に面する登山道を発見した。

 

「うおおお! ピタッとフック!」

 

 俺は全力でそこに飛び込んだ。

 バッサバサと羽ばたきながら攻撃を逃したロック鳥は俺を一瞥。

 

 「ピッ……」

 

 舌打ちのような鳴き声を残して、上空に去っていった。

 

「なるほど……。登山道には入らないルールか……」

 

 追いかけてこなくて助かった。そろそろ限界だったし。

 

「で、ここはどこらへんだ?」

 

 登山道から見える景色はとても良い。ルクス山地や海を見渡せる。遠くに来たからモリス・ルクスは見えないけど、山地の中にある一本道は見えるな。今となってはキメラゴドンも懐かしい。

 

 現在地を見せるのと眺望を楽しませることの両方を兼ねた場所だろう。演出として悪くはない。

 

「つまり、何箇所か避難所があると考えられるわけか……」

 

 下を見るとオリフさん達がこちらを見上げていた。しっかり追いかけてくれていたらしい。

 

『今からピタッとフックで引き上げます。ちょっとなら、ショートカットできるかもしれません』

『トミオさんならやってくれると思ってくれましたよ~』

 

 瑠璃さんから嬉しそうな返事が来た。

 しかしこれは、二度とやりたくないな。危険すぎる。

 俺は登山道を眺めた。つづら折りの山道だが、折り返すまでの距離が長い。垂直に近い崖を登る上で距離を稼ぐためだろうか。ゆるい上り坂を長く進んで折り返すのを繰り返している。

 

 そして、頭上を見れば少し上にかなり先に進まないと辿り着けない一段上の登山道がある。

 登るなら、こっちを使うほうが楽じゃないだろうか?

 

 ロック鳥は登山道には入ってこない。つまり、ショートカットするならここの方が安全。 

 二人を引き上げたら、試してみよう。

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