一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO(ゴシック体対応版)   作:みなかみしょう

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第58話:フェアリーガーデン(2)

 結論から言うと、なんか上手くできました。

 ちょっと上に向かってピタッとフックで移動。周囲の安全を確認したら瑠璃さん達を引き上げる。

 もし、登った先にモンスターがいたら位置を変える。

 これで大体うまくいった。

 

「ショ、ショートカットとしてはこんなもんでどうでしょう?」

「すばらしいです~。……まさか本当にできるとは思わなかった」

「よくない成功体験を与えてしまった気がする……」

 

 テーブルマウンテンを八割くらい登った所で、そんな会話になった。

 これでも完全に戦闘を回避するのは無理で、たまに戦っている。

 

 モンスターのレベルは海岸よりは控えめで、何とか倒せた。やはり、フェアリー自体が救済措置的なシステムで、クエスト自体の難易度も低めなようだ。

 

「ずっと思ってたんだけど、ハミィって普通に飛んでるよな」

 

 俺は瑠璃さんの横に浮かんでいるNPCの妖精に声をかけた。

 ハミィは爽やかな笑顔で答える。

 

「頑張れば上まで飛べるんですが。その、妖精が一人で飛んでいるとモンスターに食べられちゃうんです……」

 

 大変申し訳ないと、頭を下げられた。

 それもそうか、ちょっと大きめのフィギュアくらいのサイズだもんな。ロック鳥なら一口でいけちゃうだろう。

 

「なので、渡り人の皆さんに見つけてもらえたのは幸運なんです。村についたらお礼をしますねっ」

 

 うむ。実にわかりやすいクエストだ。嫌いじゃない。

 

「楽しみにしてるよ。そろそろ頂上近いと思うんですけど」

「たしかボス戦ですね~」

「トミオ君、ちょっと見てきてくれんかね?」

 

 もちろん、了承だ。俺はピタッとフックで上に上がる。

 

 

◆WARNING!◆

 

【ボスモンスター出現!】風の精霊(レベル45)【危険度:☆☆☆☆☆】

 

◆WARNING!◆

 

 

 俺は飛び降りて元の場所に戻った。

 

「ボスでした。真上。風の精霊」

「当たりでしたか~」

「風の精霊か、嫌な予感……。ハミィ、どんな攻撃をしてくるかわかる?」

「主に風の魔法を使ってきたり、風を起こして攻撃してきます! 風の属性は効きません!」

 

 俺と瑠璃さんが、同時にオリフさんの方を見た。

 サングラス姿のウィザードは小声で呟く。

 

「二人とも、頑張ってくれ。俺は見てる」

 

 オリフさんの主力魔法は風属性である。

 

 ◯◯◯

 

 このパーティで一番のダメージソースはオリフさんの魔法である。

 残念ながら俺は援護に向いた戦い方だし、瑠璃さんはわかりやすく壁。その点、オリフさんの風属性魔法は、範囲に単体、吹き飛ばしなど非常に頼りになる。

 実際、このクエストの道中で何度か戦ったモンスター相手にも大活躍だった。

 

 それがいきなり封じられた。もしかして、楽をした罰だろうか。

 

「渡り人の皆さん! 私も微力ながらお力添え致します! 共に戦いましょう!」

「ごめん。ちょっと話し合いタイム」

「あ、はい」

 

 設定通りだろうけど、テンションを上げているハミィに断りをいれて、俺達はその場で頭を寄せ合って緊急会議を始めた。

 

「オリフさん、今から土属性魔法いっことれませんか~?」

「別の属性とるならクエストしなきゃならない」

 

 システム的に対応はできるらしい。いっそ一度戻るべきだろうか。

 

「では、最悪一度戻るということで~。なんとかこのまま倒せませんか?」

 

 とりあえず挑んでみよう。瑠璃さんはそういう方針のようだった。

 

「いいですけど、俺と瑠璃さんだけだと火力不足で削れなそうですけど」

「でも、レベル45でしたよね。何とかなるのでは?」

 

 その考えも一理ある。ここまでの敵は比較的防御力が低めだった。レベル的にもいけそうだ。

 可能性はある、のか?

 

「一応、マジックアローっていう最初に覚える汎用魔法があるよ」

 

 あるんじゃん。対応策が。

 

「対策あるなら教えてくださいよ~。いじわるですよ~」

「だいぶ火力が低い。ダメージは期待できないんだよ」

 

 口をとがらせる瑠璃さんに対して、オリフさんはどこ吹く風だ。

 

「やるだけやってみますか。一応」

「そうだねぇ」

「頑張りますよ~」

 

 駄目そうだったら撤退という条件をつけて、ボスへの挑戦が始まった。

 

◆WARNING!◆

 

【ボスモンスター出現!】風の精霊(レベル45)【危険度:☆☆☆☆☆】

 

◆WARNING!◆

 

 中心に緑色の宝石を持つ、緑色の光の帯が回転する球体。

 光の精霊はそんな見た目のボスだった。

 登場アナウンスと同時に、風の精霊の全身から緑色の光が漏れだす。

 

「いきますよ~。作戦、みんながんばれ~!」

 

 瑠璃さんの号令で、俺達も準備にかかる。といっても、作戦は単純。俺と瑠璃さんが前で支え、オリフさんが後ろから魔法で援護。

 これしかやりようがない。周辺の地形も平地で、ピタッとフックでトリッキーな動きもできそうにない。

 カモグンさんでもいれば属性を入れ替えたりして、もっと有利に立ち回れたんだろうけど。ないものねだりをしてもしょうがない。

 

「セイント・ブレッシング! そして、プロテクト!」

 

 ステータス上昇とダメージ軽減の魔法をかけてもらった。確認次第、即座に突撃する。

 

「疾駆斬!」

 

 移動も兼ねた攻撃が風の精霊に直撃。残念ながら、あんまり効いてない。

 それとは別に接近した瑠璃さんがメイスで殴りかかる。

 その直前、風の精霊が動いた。

 

「…………ッ!!」

 

 空気を震わせる轟音がしたかと思うと、風の精霊から緑色の風の刃が無数に飛んできた。

 

「むんっ……耐えました!」

「あんまりダメージは多くないですね」

 

 予想が当たった。ここのボスはあんまり強く設定されてない。今の魔法、俺も少し当たったけど、ダメージ少なめで余裕がある。

 そう考えた所で、風の精霊に光り輝く矢が突き立った。

 マジックアロー、オリフさんの魔法によるものだ。

 

「よし、この流れでやっちゃいましょう!」

「ですね~」

 

 これはいけるのでは、そう判断した俺達は少し前向きな気持ちで戦闘を継続した。

 こちらの攻撃もまた、あんまり効いてないことに気づいたのは数分後だった。

 

 

 泥仕合になった。本来の言葉の意味ではなく、グダグダと長引いたという意味の方で。

 HPは多いが攻撃力が低めの風の精霊。

 メイン火力が属性的に活かせない俺達。

 

 この段階はまだマシだった。

 最悪なのは追い詰められた風の精霊が自動回復まで発動したことだ。

 殴る回復殴る、たまに回避という単調な殴り合いを三十分ほど続けて、何とか勝てた。

 

 一応、ハミィからの援護もあったけど雀の涙程度の回復だった。もうちょっと何かして欲しい。

 

 ともあれ、無事にボスを倒し、俺達はテーブルマウンテンの頂上に到達した。

 晴れやかな日差しの下、風にそよぐ草原に木々。美しい景色がせめてもの報酬とばかりに出迎えてくれた。

 

「渡り人さん、こっちよ!」

 

 ハミィに案内されるまま進むと、いつしか森の中に入り。小さな村に到着した。

 小さな、というのは村の規模ではなくサイズ的な問題だ。

 

 子供向けの玩具のような小さな家が並ぶ幻想的な場所。

 俺達は妖精の村に辿り着いた。

 

「ああ、ハミィ! 戻ってきたのですね!」

 

 ハミィが村に近づくなり、ちょっと豪華な服を着た妖精が現れた。顔の作りはハミィに似ている。

 

「お母様! ごめんなさい! ちょっとお外に出てみたら帰れなくなって!」

 

 涙を浮かびながら、母の胸に飛び込みハミィ。

 感動の再会。そんな場面だと思っていた。

 その時までは。

 

「ごるぁ! どの面下げて戻ってきたの! うちの金持ち出して遊んできたんでしょ!」

「ぐえっ!」

 

 母妖精の容赦ないラリアットで、ハミィが吹き飛び地面に落下した。

 

「…………」

 

 三人揃って、その様子を呆然と見守るしかない。

 地面に落ちて痙攣するハミィ。肩で息をする怒りの母親。

 一体、これをどうすればいいのか。

 

 何かアクションをとるべきか悩んでいたら、少し落ち着いたらしいハミィ母が笑顔でこちらを見た。

 

「バカ娘を連行してくださってありがとうございます。ようこそ、妖精の村へ!」

 

 なかなかチャーミングな笑顔だったが、すぐ側で痙攣する娘のおかげでバイオレンスさが増すだけの光景だった。

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