先生と連絡がつかないらしい。
シャーレに先生の手伝いとしてよく通ってるユウカ先輩からモモトークが来た。
アビドス高等学校に出張すると言ってから2日たつが連絡がつかないとの事。
最近私がアビドスのラーメン屋にハマってると話してたから連絡してくれたんだろうけど…連絡がつかないなら郊外じゃなくてゴーストタウン側に行ってるな。
アビドスは砂漠化が注目されがちだが元々は巨大な自治区だったためゴーストタウン化した一部が広範囲に広がっているのだ。
住民が居なくなったことで各通信会社も撤退。電波が届かない陸の孤島と化している。
そのため町の中で遭難するという字面から見ると阿呆みたいな事が起こり得るのだ。
砂漠化が進行中のため常に地形が変わっているので地図が役に立たない所も多い。…郊外はまだマシなのでそちらに行っていれば人もちらほら居るが。柴関の大将とか。
一般生徒の私達と違い体の弱い先生が2日も遭難しているとしたら一大事だ。捜索に向かうか…
いや、その前にダメ元でシロコ先輩に聞いてみよう。あの人ロードバイクで1日200km移動するって言ってたし、見つけたら連絡してもらうくらいなら頼んでも大丈夫だろ。
捜索の準備をしつつシロコ先輩にモモトークを送る。
『シロコ先輩、ちょっと頼みたい事が有るんですけどいいですか?』
しばらくして返信がきた。
『ん、今ちょっと忙しい。後で確認するから送っといて』
相変わらずだが忙しいにも関わらず聞くだけ聞いてくれる良い先輩だ。
『シャーレの先生がアビドスに向かってから2日連絡がつかないらしい。遭難してる可能性が高いんで見つけたらシャーレまで連絡下さい。私も捜索に向かってます』
ユウカ先輩には悪いがシャーレで待機してもらってシロコ先輩の連絡を待ってもらおう。
『ユウカ先輩、アビドスの知り合いに見つけたらシャーレに一報いれてもらえる様に頼みましたんでシャーレで待機してもらっても良いですか?私も現地に向かうので暫く連絡が取れなくなります』
すぐに返信が来る。
『わかったわ…頼んでばかりで申し訳ないけれど気をつけてね』
よし、これで準備完了だ。
迷子になった先生を探しに行くとするか!
ゴーストタウン側に来たのは初めてだがホントに誰も居ないな。
そこかしこに砂が積もってるが人が住んでいた跡があるのに誰も居ないというのは物悲しさを感じる。
「おーい!先生ー!いるなら返事してくれー!」
定期的に大声を上げながら移動する。…この辺には居なさそうだな。
ユウカ先輩が探してくれたアビドスの地図によると、アビドス高等学校の校舎はいくつか点在している事がわかる。
恐らくこのどれかに向かって進んだ筈だ。そのルートを追えればみつかる可能性は高い…と思いたいが既に半分くらい地図が役に立ってないな。砂に埋もれた箇所が多すぎる…
「おーい!先生ー!返事をしてくれー!」
廃墟になった家の中で倒れられてたらお手上げだが…
日陰になっている箇所ならまだ体力を保ててる可能性はある。
声に反応してくれることを祈って捜し続けよう。
「おーい!先生ー!…」
何十回目か忘れたが声を上げて路地を進んだ所に見覚えのあるロードバイクを見つけた。
シロコ先輩のだな…モモトークで何度も写真を見せてもらったから間違いない。
まさかもう探してくれているのか?あの人には頭が上がらないな…
近くを見回して見ると砂に足跡がある事に気付いた。
途中までは1人分、少しゴチャついてからまた1人分に成っているが…少し深くなってるな。何かを背負ったのか…?
ラッキーな方に考えるなら先生が此処でシロコ先輩に保護されたんだろうが全く関係無い第三者の可能性もある。
一度電波が届く位置まで移動して連絡してみるか?
…いや、見つかってるならユウカ先輩に連絡が行く手筈になっている。連絡を取るためだけに撤退する意味はない。
足跡を追いかけつつ捜索を続行しよう。
追いついた時に先生が保護されてればそれで良し。
追う最中にみつかってもそれはそれで良し。
全く関係無かったとしてもシロコ先輩に走ったルートを聞ければ捜索範囲を狭められる。
…足跡が砂と風で見えなくなる前に追いつければ良いんだが。
足跡を追って数分後、銃声と爆発音が耳に入って来た。
こんなゴーストタウンでドンパチしてるのか?
結構な大人数が撃ち合っている音がする。
…ミニガンを持ち込んでる奴がいるな。特徴的な発射音を聞いて顔を顰めた。
弾幕を張るタイプの武器と私は相性が最悪だ。回避しようがない。
戦闘に介入すると決まった訳じゃないが足跡は騒がしい方へと続いていた。
背負われてるのが先生だとしたらちと不味い。シロコ先輩だけじゃ守りきれないかもしれん。
面倒な事になってないと良いんだが、先生絡みだと望み薄だな…
ホルスターに入れてある愛銃を確かめながら全力で走り始める。
音はドンドンと大きくなり、開けた場所に出るとそこにはヘルメット団の連中が古い校舎に向かって銃弾を撃ちまくっている様子と…
校舎側からミニガンの掃射とドローンで後衛を足止めし、前衛で暴れるシロコ先輩、ラーメン屋のバイトの子と桃髪の女の子が目に入った。
シロコ先輩が強いのはわかってたがあの桃髪はなんだ…?
散弾でヘルメットを吹っ飛ばしながら盾で弾を受けてヘイトを稼いでいる様だが、時折見せる体捌きをみるにそんな事をしなくても余裕で殲滅できそうだが…
ッ!目が、合った?嘘だろ…この距離で私に気付いたのか?
目の前でドンパチしながらこっちに注意を払えるのかあの桃髪…
冷や汗をかいているといつの間にか戦闘が終了していた。
結局介入する必要も、暇もなかったな…
ヘルメット団が撤収していくのを見送りながら、さて、シロコ先輩に話を聞きに行こうかと考えながら学校の方へ向かう。
ん?桃髪の姿が見当たらないな…?
「で、君は何の用かな?」
一度引いた冷や汗が吹き出す。
いつの間に近づかれた…?
目の前に現れた桃髪に勝てるビジョンが浮かばない。
まるで初めて会ったときのヒナ先輩みたいなプレッシャーだ。
「…シャーレの先生がアビドスで行方不明になったと聞いてね。捜索してる最中に戦闘音が聞こえたから来てみただけだ」
緊張したまま答える。ここで誤解されると問答無用で撃たれそうだ。
「ふーん…君、ゲヘナの子でしょ?なんで先生を捜してるの?」
あ、ゲヘナ嫌いなタイプか?…終わったかもしれん。
「以前世話になってね。…シロコ先輩に話を聞いてもらえれば分かると思う。」
これで駄目ならお手上げだわ。何とかして逃げる隙を作れたら良いなぁ…
「シロコちゃん?…あぁ!ロードバイク友達の子かぁ〜」
急に態度が軟化した。…助かった、のか?
「友達…かはわからないけど世話になったのは間違いないよ」
シロコ先輩がどう話してるか分からない以上、適当に話を合わせるのは危険だ。
「そんな風にいったらだめだよ〜シロコちゃん喜んでたんだから〜」
「ホシノ先輩、なにしてるの?……あ、林檎。先生見つかったよ」
シロコ先輩が桃髪…ホシノとやらの後ろから声をかけてくる。
た、助かった。
緊張の糸が切れたのと先生が見つかったという安心感からか疲れがドっと噴き出して意識が薄れていく。
誰かの慌てた声を薄っすらと聞きながら完全に意識を失ったのだった。
ほぼ独り言な話でした。
アビドスメンバー、大好きなんですがホシノちゃんの喋り方が難しい…やる時は殺るといった雰囲気が出せていたら幸いです…