今、銀行を襲うって言った?
…アビドスの連中がいつの間にかお揃いの覆面を着けてやがる。
こいつら、常習犯か?
シロコ先輩の顔…覆面で目と口しか見えないが…を見つめると真剣な目でこちらを見つめている。
いやいやいや、流石に無理だろ…
先生?あんたの出番だぞ?ちゃんと止めてよ?
"いや、流石に許可できないよ"
良し。いい大人だった。
"でも、3つ約束をしてくれるなら手伝うよ"
あぁ、ダメな大人だった。
"必要なのはアビドスの集金記録だけ。それ以外に手を出さない"
指を1本立てる。
"中の人を誰も傷付けない"
指を2本立てる。
"君達が誰もケガをしない"
指を3本立てる。
"…どう?約束できる?"
ふわっと笑う。コイツ、本気か…?
「ん…!約束する!」
「おじさんも〜?…もちろん約束するよ〜」
「はい☆私も約束します!」
「欲しいのは集金記録だけだからもちろんできるわよ!」
『私は現地には行けませんが…お約束します』
"ヒフミと林檎はどうする?もちろん断ってくれていい。参加する事の方がおかしい選択だからね"
「わ、私は…」
ヒフミ先輩は躊躇しているようだ。無理もない。
闇銀行はブラックマーケットでも随一の要塞。この無法地帯において貴重品を1箇所にまとめておけるという異常事態を押し通しているのだ。
加えて彼女はトリニティの生徒、捕まった場合のペナルティはゲヘナの私じゃ想像も出来ない。
ゲヘナだとマコト先輩が謎の交渉力で他自治区でやらかしてもすぐに返還交渉を成功させてくれるからな…
その後暫くは万魔殿のパシリだが。
「私も、やります!」
マジか…初めて会った時も思ったけど大分胆が座ってるな。
「おお〜、ありがとうね〜」
「じゃあヒフミさんの覆面を用意しないと…」
「あ、これなんて丁度良くないですか?☆」
「あ、たい焼きの袋?これなら丈夫そうだね〜」
あっという間にたい焼きの袋で覆面を作り上げるアビドス対策委員会。手慣れてないか君達…
「番号は5番です☆」
額に書かれた 5 の数字が輝く。…それで良いのかヒフミ先輩…
残った私はどうするか考えを巡らせる。
銀行強盗…カッコ良くはないよな。
目的は金以外で、自分達の納得の為に行うのはセーフか?
セーフだな。私は自分が納得するためなら平気で銃を向けられる。
「…林檎」
シロコ先輩が不安そうにこちらを見ている。
…あぁ、シロコ先輩にはデカい借りが1つあったな。先生を見つけて助けてくれた。私がホシノ先輩に詰められかけた時も含めると2つだ。
シロコ先輩のためなら手伝えるか?
…やってやろうじゃないか。
「良し、決めた。今回は手伝う事にするよ」
シロコ先輩の目から不安の色が消えた。
「ん…!じゃあ林檎はこれで。」
覆面…?え、こんなの2枚も持ち歩いてるのこの人…?
しかもこれ覆面は覆面でもプロレスラーのヤツじゃね?
これを私につけろと?
シロコ先輩はキラキラした目でこちらを見ている。
「…林檎は6番。」
油性マジックで急遽書かれた6の数字を差し置いて派手さが勝つな。
「わかったよ…私は6番ね」
受け取ったマスクをマジマジと見る。意外といい出来だな…
モチーフは鷲か?
「じゃ、先生。例の言葉を」
"よし、銀行を襲うよ!"
銀行を襲うことになった。
まさか私が強盗側に回る日が来るとはね…
ソラ先輩には絶対にバレないようにしないとな。
普段しばき回してるのにそっち側だと思われたらどんな顔するか判らん。…最悪先生を巻き込んで有耶無耶にすれば良いか。
はい、銀行強盗に参加する事になりました…
シロコがレスラー覆面を持っていた理由は初対面時に林檎が金策してると聞いたからです。金策→銀行強盗と連想した結果、林檎の分を用意していたという流れにしました。
強盗を返り討ちの下りでちょっと疑問が生えてはいましたが。