覆面水着団の活動初日にして解散日から数日後。
私はコンビニバイトを終えて柴関ラーメンへと赴いていた。
もうコイツが有れば私の心は安泰よ!
「こんにちは、大将!」
「おお、良く来たな。空いてるとこ座ってくんな!」
相変わらず闊達な大将だ。
今日も閑古鳥が鳴いてるな…美味さは本物だが立地が悪すぎて閑散としている店内を眺めながら
「今日は…柴関ラーメン、チャーシュートッピングで。」
「あいよ!柴関ラーメン、チャーシュー一丁!」
あれ?そういやセリカが居ないな…?
「大将、セリカは?」
「今日は休みだ。若いのに毎日働かせる訳にも行かねぇからな」
「そうですか…でも若いのにってのは逆じゃ?」
若いんだからもっと働け、的な。
「バカいっちゃいけねえよ。折角の学生時代、楽しまないでどうする?」
…出来た人だなぁ。
「無粋でしたね。すみません」
「嬢ちゃんもちゃんと今を楽しみな」
あぁ、ちゃんとした大人ってのはこういう人の事をいうのだろう。
「おっと、すまねえ。あっちのお客さんにラーメン届けなきゃならん。嬢ちゃん、また後でな」
「お気になさらず。」
ふむ、待ってる間溜まってるモモトークに返信するか…
「来たあ!いただきまーす!!」
「1人1杯…こんなに贅沢しても良いんですか…」
聞き覚えのある声がした。
喋っている方を見てみると…やっぱり、便利屋68が勢揃いしているボックス席が目に入った。
気づかれたら面倒そうだし、黙っておこう。
「アビドスさんとこのお友達だろ?替え玉位ならサービスするから声かけな」
大将…あんたって人はなんて器が大きいんだ…!
…あれ?アビドス対策委員会に聞いた限りじゃ、そいつら襲撃側だって話だったんだけど…
ま、まぁ良いか!言って変な空気にするのもアレだしな!
カウンター裏に戻って来た大将に話しかける。
「優しいんですね」
「苦学生の辛さを良〜く見てきたからな」
アビドスさんとこがまさにそうだったからよ…
しんみりしてしまった。
「…友達なんかじゃないわよぉ〜!!」
うるさッ!いきなり叫ぶなよアル先輩。なんなんだ一体…
「…喧嘩かね?」
「叩き出します?」
不意打ちでハルカとカヨコ先輩を取れれば何とか出来ると思うが…
「いや、良いよ。若いんだから喧嘩の1つや2つするもんさ」
大将…!
「嬢ちゃんにも迷惑かけちまったからチャーシューはサービスさせてもらうよ。こんなのですまないが」
大将…!!私、一生此処に通うよ!
「…私が一人前の悪党になるには、こんな店要らないのよっ!!」
あ?流石にそれは聞き捨てならんぞアル先輩……
便利屋の方に目を向けるとヤバい目をしたハルカが見えた。
…ヤバい、ハルカの奴何かやらかす気だ!!
「大将!早く伏せて頭を守って下さい!」
「あん?なんでまた…」
「いいから!」
大将が渋々カウンター裏に伏せ始めたのを確認して便利屋の方へと振り返ると、ポケットから何らかの装置を取り出したハルカの姿が目に入った。
「良かった…ようやくアル様のお役に立てます…!」
「起爆装置?なんで今…」
「ハルカ、ちょ、ちょっと」
あー!!もう時間がねえ!!
便利屋が止められる事に賭けるか?…いや無理だな、アル先輩固まってる。手綱握れるヤツが機能停止してるとかバカかよ!!
ゲヘナ以外の店内での発砲沙汰は最悪出禁まであり得る…!
他に何か方法はないか………………
畜生。最悪出禁だがもう知らねえ!やってやる!!
ハルカが起爆装置のカバーを開けた。
カヨコ先輩が止めようと立ち上がりかけているが間に合わない。
ホルスターからリボルバーを抜きハルカの左手に2発撃つ。
1発は耐えられたが2発目で起爆装置を取り落とさせる事に成功。
驚愕した顔で此方に振り向くハルカの頭に更に2発撃ち込む。
やはり1発は耐えられたが2発目で意識を飛ばしてやった。
起爆装置が地面に落ちた。
………最悪の事態は免れたな。
便利屋68の連中がコチラを凝視している。
何見てんだよ?助けてやったんだろうが。
お前達がハルカを抑えられそうに無いから私が態々撃ってやったんだ。
この女、最悪腹マイトしてる可能性もあるからちゃんと頭に当てて意識を飛ばしたんだぞ?
「林檎…」
アル先輩が声を掛けてくる。
くそっ、頭ん中グチャグチャだ。
アル先輩達とはちょっと落ち着いてから話そう。
カウンター裏の大将に
「すみません、大将。もう大丈夫です」
「お、おう?すごい音だったが無事か嬢ちゃん」
店の中で発砲したことを伝えて謝罪する。
「すみません、店内で知り合いを撃ちました。」
「…そうかい。何でかは聞いても?」
「…それは……」
「それはこちらの落ち度よ!彼女は悪くないわ!」
アル先輩が割り込んで。
「そうなのか?」
「はい、私達の連れが暴走しまして…ご迷惑をお掛けしました」
更にカヨコ先輩がフォローした。
「ま、若いんだから喧嘩の1つや2つはするもんだ」
大将が笑いかけて来る。
おぉ…これは…
「ラーメン食って仲直りしな!それで今回は不問だ!」
ちょっと泣いた。
難産でした(2回目)
最初の構想では便利屋68にブチ切れて決闘沙汰になるという流れでしたが一回間違って全部消して書き直してる最中に、アレ?こっちのが丸く収まるな?とケガの功名で内容がまるっと変わっています。
便利屋68の面々は勿論好きなんですが、アビドスの柴関爆破事件だけはちょっと擁護出来ないというか…今後はカッコ面白い便利屋を目指しますので楽しんで頂けたなら幸いです。