「ごちそうさまでした…大将、ありがとうございました」
「何、いいってことよ!」
便利屋とちょっとしたいざこざが合ったものの、決定的に決裂しないで済んだのは大将のおかげだ。感謝をいくらしても足りないが…本人がもう良いと、気にするなと言っているのに引き摺る方が失礼な話だろう。
「ちょっと洗い物で手が離せなくなるからよ。…その間にちゃんと話してきな。どんだけ時間掛かっても構わん、どうせ客は来ないからな」
便利屋68の居るボックス席を目で示しながら少し戯けて言ってきた。
…ありがたい人だ。本当に。
「すみません、ありがとうございます」
便利屋の方へと向かう。ハルカはまだ目を回したままだ。
…ちょっとやり過ぎたかもしれない。
「あの、先輩…」
「林檎…」
言葉が被った。
「すみませんでした!」
「ごめんなさい!」
互いに頭を下げて謝罪する。
「私がやり過ぎました…」
「いいえ、こちらがハルカを止められなかったのが原因だもの。感謝こそすれ非難は出来ないわ」
実際、ハルカが何をしようとしていたのか未確定の状態で頭を弾いたのはやり過ぎだった。
…頭に血が上って感情のままに撃ってしまうなんて、カッコ悪いことこの上ない愚行だ。
「いえ、意識を奪ったのは私の落ち度です…起爆装置を弾き飛ばした時点で止めても良かったのに感情的になってしまって」
「ううん、あの状況だもの。…大分このお店に愛着があるようだし、仕方がない事だわ」
互いの謝罪が続いて此方が悪い、いやこっちの方がと平行線になっていた時に
「林檎も、止められなかった私達も悪い。それでお相子にしよう」
ごめん、と横でハルカの介抱をしているカヨコ先輩が仲裁に入ってくれた。
「うん、私達もまさか爆発させる準備をしてたとは思わなかったしね~」
ごめんね?、とムツキ先輩もカヨコ先輩に続いて謝罪した時、ハルカが目を覚ました。
「うぅ…」
「大丈夫?ハルカ」
「ハイ…少し頭がクラクラしますけど…大丈夫です…」
相変わらずのタフネスだ。いや、今は謝らないと…
「ごめん、やり過ぎた…」
ハルカは一瞬何を言われたのか意味不明といった顔をしたが、徐々に顔色が青ざめて行くと
「あ…あぁ…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
いきなり謝り出した。ヤバい、まだ錯乱してるのか!?
「ハルカ!…落ち着きなさい。大丈夫、何も起きてないし何も悪い事は無かった。そうよね?」
アル先輩の一言で沈静化した。…流石社長、鶴の一声だ。
「私の軽率な言葉で勘違いさせちゃったけれど、このお店に迷惑をかける気はないの」
だから、落ち着きなさい。
アル先輩の簡単な状況説明と経緯を聞いて顔色は悪いものの冷静さを取り戻していった。
…アル先輩、カウンセラーとかの方が向いてるんじゃないかな。
落ち着いたハルカに改めて謝罪をし、柴関に仕掛けたという爆薬を撤去するのを手伝ったのだが。
コイツ、マジで頭ゲヘナだな……
覆面水着団やってる時にシロコ先輩がアビドスじゃなかったらヤバかった。みたいな話があったが、それと同様ハルカがゲヘナじゃない所に通う姿が想像出来ない…
初手爆破が選択肢に入って、行動に移すまでが脊椎反射過ぎて怖いわ……
仕掛けられた爆薬の量にドン引きしながら便利屋と片付けていると、何かが飛んで来る音がした。
「…っ!伏せて!!」
爆発。
爆心地に近かったからかふっ飛ばされながら見た光景は、便利屋の4人が伏せている姿と降り注ぐ榴弾の雨だった。
体が痛い…意識が飛びそうだ……
幸い、柴関ラーメンとは少し離れた位置に居たため店に被害は無さそうだが…
市街地に榴弾ぶち込む阿呆がいるとは思わなかったわ。
どこの誰が相手だろうと必ず痛い目を見せてやる…!
必ず落とし前をつけてやるという決意を胸に、意識を失った。
はい…対風紀委員の手前までですね。
2人で会話させるのは慣れてきたものの、3人以上になると途端に難しいものです…