"林檎、大丈夫?"
銃声と爆発音が鳴り響く中、意識を取り戻すと何故か目の前に先生とアヤネが居た。
「えぇ、何とか…なんで先生達がいるんです?」
確か便利屋と爆薬を回収して表に寄せておく最中に榴弾が降ってきて…
「ゲヘナの風紀委員会が便利屋の捕縛のため遠征してきたんです!」
爆発音を聞いて駆け付けたアビドス対策委員会が到着し確認した所、3km程離れた所に陣を敷いたゲヘナ風紀委員会が市街地に向けてぶっ放している最中だったと言う。
砲撃の理由を確認した所『便利屋68が潜伏している情報を得て捕縛のため行動中』との返答があった。
各自治区での保安活動は原則としてその自治区を治める学校のみが権利を有するものであり、今回の攻撃は越権行為であると自治区への砲撃を辞めるように要請しているが、返答が得られず現在に至るとの事。
"今、便利屋の皆が応戦しているところだよ"
頭が追いつかない…何で風紀委員会がアビドスまで来てるんだ…?
それも砲兵まで引き連れる大所帯だ…温泉開発部相手じゃあるまいし。
それに他所様の自治区に砲弾を叩き込むなんて真似、どう言い繕っても宣戦布告以外の何物でもない。
…ヒナ先輩は、風紀委員長は来ているのか?
あの人が居て攻撃を指示しているならもうおしまいだ。
それは殆どゲヘナの総意に他ならないのだから。
「いえ、風紀委員長の姿は確認できて居ません…」
ジャミングが酷くて近距離しか電波が届かないため通信が繋がらず、陣容を確認するにとどまってます…との事。
つまり…
「まだ下っ端が独断専行してきた可能性がある、と」
"まだ分からないけどね…取り敢えず自治区への攻撃を止めてからの話になるよ"
成る程…取り敢えず相手は分かったな。風紀委員だろうが関係無い。私に攻撃した落とし前はキッチリつけてもらう。
「先生、適当に暴れてきますんで私の事は気にしないで下さい」
"林檎?…ちょ、待って!"
先生にそう言い切ると返事を待たずに撃ってきてる方へと走り出す。
アビドス対策委員会の皆は…大将や他の住人の避難誘導中か。
…住人がまだいるにも関わらず盛大に撃って来るとはね。
「林檎、目が覚めたのね!…また巻きこんでしまってごめんなさい」
アル先輩が狙撃銃をぶっ放しながら此方に声を掛けてくる。
まぁ、大人しく捕まれってのも変な話だけど…何で逃げないで戦ってるんだ?
…あぁ、自分たちが此処にいると示し続ける事で攻撃を集中させてるのか。
標的の自分たちが逃げて見失ったりしたら自分達を狩り出すため無差別に撃ち込みかねない。
そうなったら住人に被害が及ぶ可能性がある…
アル先輩はそんな状況で逃げる事を選ばないだろう。
かと言って捕まるのも矜持が許さない。ならせめて被害の少ない場所で徹底抗戦し、避難完了まで時間を稼ぐ方向に舵を切ったんだな…
「アル先輩、何か手伝いますか?」
「いえ、大丈夫…前衛で皆頑張ってくれてるからもう暫くは問題ないわ」
前衛で撃ち合ってる便利屋メンバーを援護しながら言う。
「好きに暴れて来なさい、その為に来たんでしょうから止めないわよ。」
「…今のはちょっとアウトローっぽいですよ、アル先輩」
アル先輩から許可を得た私は前線を越えた更に奥、指揮官が居るであろう場所まで一気に回り込んで襲撃することにした。
…予想以上の人員だな。こんなに連れてきたらゲヘナは今殆ど空になってんじゃないか?
ま、これから更に減ることになる訳だが。
「よぉ!こんなとこで何してんだ?」
指揮官らしいヤツへフレンドリーに声を掛けながら近づく。
「!?止まれ!」
銃口を向けられる。
「まぁまぁ、聞いてくれよ〜」
他の連中も私に気づいたようだ。
「さっきさ~空から榴弾が降ってきてよぉ…」
「止まらないと撃つぞ!!」
殺気だつ風紀委員。全員知らない顔だな…やり易くて助かる。
「思いっきり吹き飛ばされたんだが、あれ、お前等だよな?」
話し方から抑揚を無くす。
ビビった数人の銃口が僅かに揺れた。…使えるな。
「だったらどうする?」
おもむろに早撃ちして目の前の奴の意識を奪う。
「勿論、こうする」
急に隊長格が撃たれて一瞬硬直する風紀委員共。
熟練の戦闘員が居ない風紀委員は頭が居ないとヘルメット団よりも即応性が悪いのが玉に瑕だな。
ま、今は都合が良い。このまま数人削らせてもらおう!
続けて5発、5人の意識を飛ばして一気に駆け寄る。
途中数発撃たれるが当たるコースじゃないため無視。
排莢、リロード、発砲。更に6人削った。
同士討ちを恐れてか敵の発砲が減る。
よっしゃ、まだ勝ち目があるな。当たる弾だけ避ける。
さっきビビってた奴を背後にして再度リロード。
散々弾を避けてる奴を最初にビビってた奴が同士討ち上等で撃つ度胸は無いだろう。
目の前の比較的根性のある奴へ1発。その後ろで乱射し始めた奴への遮蔽になってもらう。
遮蔽が倒れる前に背後のビビリちゃんの方に飛び、銃を撃ち落として体を引き寄せ新たな遮蔽物にする。
ビビリちゃんの肩越し1発。乱射女を倒した。
そのまま適当に近場の奴へ3発お見舞いしてリロード。
…おお、めっちゃ良いコンビになれそうだなビビリちゃん。
君のお陰で4人倒せた!コレは共同戦果で良いぞ!
これが終わったらモモトークでも交換しようぜ!
あ、気絶した。流石にもう盾にするのはマズいとその場に捨て置く。ごめんな…
一連の戦闘で弾倉3回分、18人か。
うぇ…まだまだいるじゃん…
一旦距離をとって一息つくと、相手が浮足立ち始めた。
良し、この調子なら後4回は同じ方法でやれるな。
さて、もう1回…と思っていた所にストップがかかる。
「双方直ちに戦闘を中止して下さい!!」
あー…知り合いが出てくるとやり難いんだよなぁ…
手の内がバレてる相手が多いしさぁ。
内心でため息をつく。
「この一件について、アコ行政官とアビドス高校、シャーレの先生の間で事情説明が行われます!その間、戦闘行為を禁ずるとの事です!」
行政官?…あぁ、あの面白いカッコの先輩か。
「林檎!あなたもこれ以上暴れないように!」
「はいはい、従いますよ…」
アビドスの人達に迷惑掛けたくないし。
また撃たれたら即撃つが。
ま、それはそれとして久しぶりだな〜
怒った顔でこちらを見ているチナツに軽く手を振る。
徐々に呆れた顔になり、深呼吸を1つ。…ため息かもしれん。
「シャーレの件以来ですか、久しぶりですね」
「あぁ、あん時以来だな。…何でアビドスまで来てんだ?」
部外者には秘密か…一応被害者だと思うんだが。
「すみません、現在アコ行政官が話していますのでその後であれば。…取調室になるとは思いますが。」
倒れたやつ等を解放する風紀委員を見送りつつそう言った。
「先に榴弾撃ってきたのは風紀委員だろ?私は悪くないね」
同じく去っていく風紀委員を見送る。お、ビビリちゃん意識戻ってんじゃん。ほほ笑みながら手を振ると目があったビビリちゃんがまた気を失った様だ。…大丈夫かな?
速度を上げて去っていくビビリちゃんと風紀委員を心配して居るとチナツに聞かれた。
「それにしては、やり過ぎじゃありませんか?」
「連帯責任って知ってる?そもそも大軍起こして撃ってきて事故なんです他の部署だから関係ないんですが通用する訳ないじゃん。そりゃやれるだけやるに決まってるわ」
まぁ、今はこうして停戦してる訳だが。
そもそも先生やアビドスが話す相手じゃなけりゃ私は停戦なんか受ける義理も理由も無いんだぞ。
一言添えると無言になってしまった。
さて、再スタートするならどうするかな…チナツがいるとさっきのやり方は通らないだろうし。
速攻でチナツを落とせればワンチャン行けるか…?
いや、いっそ便利屋の皆と合流するのも有りか?
先生やアビドスが参戦するならそっちに行っても良いな。
良し、停戦解除したら取り敢えずチナツを撃って、ダメなら便利屋と合流しよう!
そう決めてチナツを見ると距離を置かれてしまった。
まだ停戦中だから何もしないって。
え、停戦解除したら?…そりゃ敵なんだから撃つに決まってるじゃん。
更に距離を置かれてしまった。
VS風紀委員になりました。
この子はこういう状況ならこう動くだろうな、を考えて話を組み立てるのはとても楽しいんですが、人が増えると時々作中で分身してたりするのが難しいですね…
楽しんで頂けたら幸いです!