エンジェル24でのバイトを終えて帰る途中で先生とばったり出会した。
「あれ?先生、なんでこんな所に?」
此処は既にゲヘナ領内。正直治安が余り良くないから用が無いならさっさと出てった方が良いと思うが…
"林檎…ちょっと風紀委員に頼みたい事があってね"
あぁ、アビドスの一件か。…それにしては何か急いで居る雰囲気だが。
「それなら丁度帰り道ですし、一緒に行きませんか?」
先生1人でゲヘナを歩かせたら何回絡まれるかわかったもんじゃない…それで何かあったら寝覚めが悪いし。
"…じゃあ、お願いしようかな"
歯切れが悪いな…何かあったのか?
「はい、行きましょうか」
風紀員会本部に向かう途中でも普段と違う様子の先生が気になったのでストレートに聞いて見ることにした。
「先生、何かマズい事でもありましたか?」
答えてくれないならそれはそれで良し。私には関わりのない事だってだけだ。
"ちょっと、ね。…林檎はアビドスのみんなの事をどう思ってる?"
私の気持ちが何か関係があるのだろうか?
「…友人、というほど親しい訳じゃありませんがシロコ先輩には大分世話になりましたし、他の皆も嫌いじゃありませんね」
少し無法者で悪ノリが過ぎる部分はあるが。あれはあれで付き合ってて楽しい連中だ。
「なにより、覆面水着団のメンバーでしたから」
ちょっと戯けて笑いながら話す。
初めて銀行強盗をした日は今でも笑える思い出だ。…まぁ、2度目は無いだろうが。
"そっか…林檎。もし、アビドスを助けるために力を貸して欲しいって頼んだら"
協力してくれるかな?
こちらを真剣な目で見つめながら聞いてくる。
「…内容によりますが、力を貸すのは吝かじゃないです」
また銀行強盗をするぞ!とかは気が乗らないが、攻めてくるヘルメット団の撲滅とかの手伝い位ならやっても良い。…ホシノ先輩がいれば戦闘面に関しての手伝いなんか要らなそうだけど。
そんな事をつらつらと話すと先生は何かを決心したかのように話し始めた。
"実は…"
先生の話を要約すると。
アビドス砂漠でカイザーが謎の基地を建ててるところを発見。
偵察に向かうとカイザーPMCの理事が現れて借金の利息が訳わからん率に上げられた。
追い詰められたアビドスを救うためホシノ先輩がカイザーに身売りしたが、それが原因で自治区を統制する権利を消失したと見なされて侵攻される。
先生が黒幕と話して間一髪、ワンチャン何とか出来る状態に持っていった。
…何故、ホシノ先輩は身売りを選択したんだ?いや、理屈は分からなくもないが借金元が悪徳企業なら約束なんて守ってくれる訳ないじゃんか…
そんな所に行くくらいならウチに売り込んだほうがまだマシだろうに。あの腕ならマコト先輩が喜んで買うぞ。…こき使われるだろうけど、実験台よりマシだ。
あぁ、完璧に理解は出来なかったが気に食わない。
あれだけ強い先輩が騙されてなす術なく捕らえられ、アビドス自体が無くなろうとしている事が。
先生が付いていたにも関わらず、そんな選択肢を取ったホシノ先輩の事が。
「…話はわかりました。完全に理解したとは言えませんが」
内心で沸々と燃え始めた怒りを鎮めながら答える。
「良いですよ。役に立つかは疑問ですが、手伝わせて貰います」
相手がカイザーPMCなら私程度でも雑兵を狩ることは出来るだろう…最新式の装備が相手だと厳しいかも知れないが。
「それで、風紀委員も巻き込もうって事なんですね?」
"助力を頼めないかお願いに行くんだよ"
先生が苦笑交じりに答える。
風紀委員会、出来ればヒナ先輩を引っ張り出せればほぼ勝ち確定なんだけど…前回アビドスと便利屋が大分戦力削ったみたいだし、どれだけの戦力を出してくれるか…
「ま、その辺の話はヒナ先輩としてもらえれば大丈夫だと思いますよ」
あの人なんだかんだ優しいし。前回侵攻分は返してくれるでしょ。
そんな話をしている間に風紀委員会本部前に着いた。
…知らない奴がいるな。ま、先生の権限が有れば誰であろうと関係なく会えるだろうし問題無いだろうけど。
"こんにちは。風紀委員長と話がしたいんだけど今空いてるかな?"
「はあ?風紀委員長と話?ゲヘナの風紀委員長にそんな簡単に会えると思ってるのか?」
出直せ。と言外に言われた。
んー…流石ゲヘナ、アビドスの一件で先生の事を知らない筈が無いのにこの対応。
「そうだな、土下座して足でも舐めたら…」
凄いこと言い始めたなコイツ、と思ったのも束の間。
気づいたら先生が足元に膝を付いて足を舐めようとしている!?
「ひゃっ、辞めっ、まだ話の途中!人としての迷いとか大人のプライドとか無いのか!?」
"そんなものはない。"
うわー…ホントに迷いなく言い切ったよこの人。
ホシノ先輩のためとはいえ、覚悟が決まり切った奴って怖いわ…
「オカシイ、変態!歪んでる!!」
足を舐めろ発言した奴が何か言ってるわ。
「そこのお前!見てないで止めろよ!」
「いや、あんたの足舐めたら話し通してくれるんだろ?じゃあ止める理由ないじゃん。」
私に舐めろって言ったんだったら無視して進むけど。
先生が言われた事だし、それに従ってるだけなら問題ないね。
足を舐めようとする先生と何とか回避しようとする風紀委員を眺めていると、背後から声を掛けられた。
「何だか楽しそうね?」
振り返るとヒナ先輩がそこに居た。
目の前の先生と風紀委員をみて更に続ける。
「…自分の為に膝をつく姿ならこれまで何度も見てきたけれど、生徒の為に跪く先生を見たのは初めて。」
「顔を上げてちょうだい。先生」
「言ってみて。私に何をして欲しい?」
…感動的なシーンと思われてる?
実際は先生が足を舐めようと縋ってる面白い場面なんだけど。
「あの、ヒナ先輩。あれは跪いてるんじゃなくて、足を舐めようとして…」
説明している最中で真相に気づいたようだ。
顔が赤くなって驚愕の表情を浮かべている。…こんな顔してるヒナ先輩初めて見たわ。
「先生〜、ヒナ先輩がビックリしてるんでその辺で辞めて下さい」
風紀委員から先生を引き剥がした。
…ちょっと残念そうにしてないか先生…?
「なんなんだアンタは…!」
風紀委員も顔が赤い。そりゃお前が言ったことを実行したらああなるって。
「ほら、ヒナ先輩に話があるんでしょう?さっさとお願いしちゃいましょうよ」
"んんッ、そうだね。"
良し、先生も冷静になったな。
ヒナ先輩は…まだちょっと顔が赤いが落ち着いたようだ。
"実は…"
その後、ヒナ先輩と先生とで詳しい事情を話している側で私を恨めしそうに見てくる風紀委員から恨み言を言われた。
「お前…!止められるならもっと早く止めてくれよ!」
「いや、あんたが自分から言ったんじゃん?私が止めなきゃいけない理由はねぇよ」
「普通あんな風になるとは思わないだろ!」
まぁ、それはそう。一瞬反応が遅れるレベルで跪いてたからノータイムで足舐めにいってたもんな先生…
「まぁ、丸く収まったって事で良いだろ。…足舐められずにすんだみたいだし」
軽く笑いながら言うと風紀委員が少し溜息を付いて
「話に聞いてた通りの奴だなお前は…」
私の事を知ってたのか。この間までは良く通報してたしな…
「そうかい。どんな話を聞いたか知らないが私はあんたの事を知らないんだ。自己紹介でもしてくれないか?」
もう知ってるだろうが私は…と自己紹介をすると風紀委員は呆れながらも自己紹介してくれた。
「2年の銀鏡イオリ。……何か文句でもあるのか?」
…また年上?もう、面倒くさいからこの人にはこのままで良いか。
「いえ?なんでも…ヒナ先輩達、話終わったみたいだな。」
イオリ先輩との話を切り上げて、今後どうするのかの話し合いをしている先生達の方へ向かう。
さて、カイザーPMCとやるのは初めてだな。
ヘルメット団より強いのは確定だが何処まで通用するか…
ま、やれるだけやってみるか!
何とかアビドス編1章の最終決戦に参戦決定です。
多分後何話かでアビドス編が終了すると思います。
今後も楽しんで頂けたら幸いです!