「先生、最近調子はどうですか?」
バイト終わり際にシャーレに戻って来た先生に声を掛ける。…疲労は多少抜けたようにも見えるが、ちゃんと休んでるんだろうか?
"うん、ミレニアムでの仕事が一段落したからね"
大変そうだなぁ…でもミレニアムならユウカ先輩が居るし、あの人なら喜んで手伝ってくれそうだけど…
"色々あってね…今回はユウカに頼れないんだ"
…セミナーの幹部に頼れないって事はまた銀行強盗みたいな無法を働いてるのかな?
先生、倫理観とかその辺のブレーキぶっ壊れてるし。
アビドスの時も思ったけど生徒の自主性を重視し過ぎなきらいがある。
「あまり非合法な事はやらないで下さいよ…?」
ゲヘナやアビドスなら兎も角、ミレニアムでやっちゃうとユウカ先輩の胃が心配になってくるわ…先輩善い人で統治側の人間だしさ。
先生は苦笑して頷くと
"大丈夫、責任は私が取るから"
やった事の責任を取り上げちゃうのはそれはそれでマズい気がするけどなぁ。そこは先生だし上手いこと匙加減を…出来るタイプには見えないわ。
「ある程度は責任取らせてやらないと可哀想だと思いますけどね」
先生に全部引っ被せてラッキー!とか思うヤツも居るだろうけど。私達がやった事の責任を先生が全部背負っちゃうなら私達が自分で考えて行動した価値も、リスクを飲み込んで行う覚悟も、蔑ろにされていると私は思う。
「当事者なら尚更です」
やらかした時に責任があるから得られた成果に価値がある。
責任を全て先生が取るならその成果は生徒のものだと言えるか?
まぁ、20年も生きてない子供の意見だけどさ。
"そう、かもね…でも私はこのやり方を変える気はないよ"
「そうですか。ま、所詮小娘の意見ですから気にしないで下さい」
戯けて笑う。
"小娘?林檎は結構大きい…"
「おっと、身長の事なら口にチャックだ先生。…これでも少し気にしてるんだよ?」
砕けた口調で今の会話を水に流す様に話す。
先生もそれを察してか冗談を口にして笑う。…冗談だよな?
"勿論冗談だよ!"
慌てた様子で弁明する先生の様子が少し面白くてからかっていると先生の雰囲気も少し明るくなったようだった。
「ま、何か人手が必要になったら声を掛けて下さいよ」
大抵暇してるかバイトしてるんで。
"その時は頼むよ"
僅かに微笑んでそう答えた。これは多分私の出番はなさそうかな。ま、それも先生の選択だし私には関係ない事だ。
"そう言えば林檎、最近ミレニアムに行ったんだって?"
ソラから聞いたよ、と続ける先生。
「えぇ、まぁ。偶にはゲームでもしようかな、と思いまして。どうせなら最先端技術の集まるミレニアムに行ってみようって訳です」
結局半分以上は格闘ゲームしてたんですが。と返すと
"なるほど…ちなみにゲームは好き?"
「それなりですね…アクション系は結構やってましたが」
ふむ、風向きかわったか?
"RPGなんかはどう?"
「あんまりやって来なかったですね。有名どころを1〜2本て感じです」
"…今、新作のゲームを作ってる子達がいるんだけどテストプレイとか興味ある?"
ミレニアムでの仕事ってゲーム作りの手伝いかなんかなの?
シャーレの業務って本当に多岐に渡ってるんだな…
「少しは。怖いもの見たさの方が勝ってるな〜くらいですが」
"もし、興味が有るならその子達が前に作った奴持ってくるよ"
それを遊んでみてからやるか決めて良いってことか。
ゲームに詳しい訳じゃないから役に立てないと思うが。
「じゃあ、お願いします…日にち決まったら連絡下さい」
そういう事になった。
後日、とんでもないクソゲーを持ってこられてコントローラーを3個握りつぶす事になったが、最終的に製作者作成の攻略情報を貰って全クリまでこぎ着けた。
これ、攻略情報無いとクリア不可能だろ…初見でクリアできたらソイツは思考の次元が違う気狂いの類と言わざるを得ないわ。
ていうか、序盤でスライムに撃ち殺される展開ってソラ先輩から聞いたRPGまんまだけどまさかコレをプレイしたのかソラ先輩…
結局、テストプレイの件は丁重にお断りさせて頂いた。
人手がいるならとは言ったもののコレは私向けじゃ無さすぎる。
コントローラーが何個必要になるか分かったもんじゃない…
どうやら新作はこの電子ドラッグの続編らしいが、流石に短期間で続けて遊びたいとは思えないカロリーの高さだ…摂取し続けたら脳が壊れるぞこれ。
…でもまぁ、バカゲーとして遊ぶ分にはそこまで悪く無いな。
ストーリーの支離滅裂具合も変な設定も難易度も理不尽すぎて逆に笑えるし。と、先生に伝えて新作が完成したら遊ばせて貰えないか製作者に聞いて貰った所、大変喜んで一本贈呈してくれるとの事。
ありがたく頂こう。この怪作『テイルズサガクロニクル』の続編を…!