先生からの連絡があったのは1週間後のことだった。
その間エンジェル24に顔を出す事も無かったため恐らくミレニアム関連の何かに対応していたのだろう。
"大分遅れてごめんね。例の新作、渡す準備が出来たそうだからいつ頃に取りに来るか教えて?"
『じゃあ、明日辺りで。先方が良いなら昼過ぎに伺おうと思います』
良し、これで明日土産持ってTSC2と交換するだけだな。
何持ってくか…ゲヘナのやつはちょっと土産としては不向きだし、トリニティ印のクッキー缶とかで良いか。高価いし、美味いし、日持ちする。最悪買えなかったらアビドスで何か買えば良いだろうし、早速トリニティ領まで行くとするか!
「いやー、悪いとは思ってますよ…いやホントに思ってますって」
トリニティ領内に入って暫くした位置にある学園からは少し離れた商店街、ゲヘナで言う繁華街的な所に着いて直ぐに絡まれたのを逆にシバいた辺りで正義実現委員会にとっ捕まった。
現在取り調べ中である…うーん、まだ外縁部なのにこの警備の厚さ。
「…では、何故ゲヘナの君がトリニティまで来た?」
「だから、手土産用のクッキー買いに来ただけですよ」
もう3回は話してるだろうが。…何時もより根掘り葉掘り聞いて来るな。ホントに何かあったんだろうか?
「そして暴行事件を起こした、と」
「私が喧嘩売った訳じゃないのは周りの人達が見てたはずだろ」
そいつらに聞けば全部解決だろうよ。
ってかそれについては5回目だぞお前もうぶっ飛ばすぞおい。…いやいや、冷静になれ私。大丈夫、ちゃんと正当防衛だしいつも通り小言を言われて解放されるだけのはず…
「そんな話は聞いていないな」
おっと、雲行きが怪しくなって来たな?
「私達が駆けつけた際に現場に居たのは君と被害者達だけだ」
「いやいやいや、確かに人通りは少なかったけど5人はいたでしょ?」
ちゃんと覚えてる。住人が3人とトリニティ生徒が2人。トリニティ生徒っぽい奴に至っては写真でも撮ってんのか携帯向けて来てただろうが。
「いや
「そんなわけっ…」
いや、そういう事にしたのか…ヤバいな、ここまでゲヘナに対する悪感情が強くなってるって知ってたらトリニティなんざ来なかったのに…!
「さて、他に何か言う事はあるか?」
どうするかな…周りを見渡す。目の前の尋問官と警備の2人の計3人か。始末するのは簡単だが表に出るともっと数が居ると考えると無理筋だな。であれば…
「その前に電話したいんだけど良いか?」
私じゃ無理なら他の人を頼らせてもらう。…それでもダメなら暴れよう、最悪マコト先輩が何とかしてくれる。
「電話?…構わないが、会話は聞かせて貰うぞ」
目の前に古めかしい電話が置かれる。
さて、と。先輩の番号って何番だったけか…
「お久しぶりですハスミ先輩」
名前を聞いて目の前の奴が僅かに動揺した。
「シャーレの一件以来ですね、林檎。…この回線は正義実現委員会専用のものですが何故貴方が?」
「実はちょっと買い物にトリニティ外縁部の店に来たらですね…」
事情を説明すると尋問してた奴に代わってくれとの事だったので受話器を渡す。何か緊張してるみたいだけど知ったことじゃない。
暫くして、此方に受話器を返してきた。
「もしもし、代わりました」
「この度はすみませんでした。正義実現委員会を代表して謝罪させて頂きます」
やけに腰が低い。いくら知り合いだからと言って全面的に謝罪されるのは些か不気味さを感じるが…
「こちらも騒ぎを起こしてしまいまして申し訳ありませんでした。…これで手打ちって事で良いですか?」
「こちらとしてはそうして頂けるとありがたいですね。…最後に1つ警告を。」
しばらくトリニティには近寄らない方が良いですよ。
そう言って通話は切れた。
絶対なんかあったな、トリニティ…面倒な時期に来た私も悪いがこんな外縁部まで緊張してるとかもっと上手くやれよと思わざるを得ない。
拘束を解かれて
結局土産も買えなかったし、アビドスで砂饅頭でも買っていくか…あれもそこそこ美味いし、珍しさだけならトリニティのモンよりも上だし。ついでに柴関ラーメンで癒されよう…久々に長い事取り調べ受けて疲れたわ…
後から聞いたことだがこの時期、エデン条約を巡って各所での暗躍が活発になっていた時期だったそうだ。そりゃあトリニティにきたゲヘナ生徒が暴れたって話が入って来たら怪しむ。
先輩に話がついて良かった。暴れ倒して脱走するとなるとロードバイクは置き去りになる。そうすると取り返すためにもう一度行かなきゃ行けないから準備してから正実を再襲撃して、ズタボロにしてから逃げなきゃいけない。…こんなんエデン条約前にやらかしてたらヒナ先輩に殺されても可笑しくないし、マコト先輩でも言い逃れ出来ないわ。
アビドス名物砂饅頭…ザラメのザラザラとした食感をアビドスの砂に見立てた逸品です。土産としては美味しいんですがそもそも観光客が少ないためドマイナー商品となっております。