ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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エデン条約編開始です。
しばらくは日常が続くと思いますがどうかお付き合い頂けますと幸いです


エデン条約編
ガンマンとブラックマーケット その3


 

 

「おーい、おっちゃん生きてっかー?」

 

今日は最近酷使した愛銃の本格的なメンテナンスのためブラックマーケットに来ている。

 

「やかましいぞ小娘!」

 

店の奥からおっちゃんが顔を出して答えた。元気そうで何よりだ。

 

「まったく…相変わらずだなお前は」

 

部品と工具類を持ってカウンターに来るおっちゃん。

…少し痩せたか?最近はブラックマーケットも静かなもんだが何かあったんだろうか?

 

「そう簡単に人が変わってたまるか」

 

頼んでいた部品を受け取りながら軽口をたたく。

いつものように作業スペースに向かうと後ろから話しかけられる。

 

「…いつまでソイツを使い続けるつもりだ?」

 

今まさに分解(バラ)し始めた愛銃を見て問い続けた。

 

「大分物持ちが良いが、いつダメになるか分からんぞ?」

 

何しろ骨董品だからな。消耗品だけは交換し続けてるが根本的なフレーム部分はそうもいかない。他のモノと違って予備部品が出回る事も少なく、実動品に限れば無いと言って差し支えないだろう。

 

「いい加減別の銃を使え。…お前になら格安で譲ってやる」

 

心配が僅かに滲み出た声でそう言った。

 

私は整備を続けながら呟くように答える。

 

「確かに言われた通りコイツはもう骨董品(アンティーク)だ。新規製造の部品なんざ無いし、消耗品だっておっちゃんのお手製(オーダーメイド)しか無い。それでも私はこの骨董品が良いんだよ」

 

消耗した部品を丁寧に外して新しい部品をはめ込む。

もう何十回と繰り返した作業を丁寧に、ミスの無いように行う。

 

「アンタから買った初めての銃だからな」

 

私がまだガキの時分、たまたま入ったこの店で唯一購入出来た銃だ。…大分割引きしてもらったが。

 

「それによ、おっちゃん。お前の右手はもう動かないかも知れないから取り換えろって言われてハイそうですかって頷く馬鹿はいねぇよ」

 

戯けて返しながら骨董品の整備を続ける私に、溜息をつきながら

 

「…わかった。もう言わねぇよ」

 

とこぼしたおっちゃんが黙り込むと銃を整備する音だけが響いた。

 

 

 

 

さて、これでまた暫くは問題ないだろ。

整備を終えておっちゃんに工具を返す。

 

「ありがとなおっちゃん」

 

「いつもの事だ、構わねぇよ。…小娘、あんま無茶な事すんなよ。最近ただでさえきな臭ぇんだ」

 

まぁ、連邦生徒会長とやらが消えてから治安は悪化しまくったが…最近は持ち直して来てると思うけど。

 

「そうか?最近は静かになって来てると思ってんだけど」

 

ブラックマーケットだって前ほどドンパチしてねぇじゃん。

 

「そうじゃねぇ……お前、ゲヘナに居て何も知らないのか?」

 

「ゲヘナならいつも通り毎日どっかでドンパチしてんよ?」

 

相も変わらずバカ共がバカ騒ぎして風紀委員会に鎮圧されてる毎日だ。捕まっても捕まっても繰り返すからいつも顔を合わせる風紀委員と友達になった奴まで居る。

 

深いため息をついてそうじゃねぇよ、と続けるおっちゃん。

 

「…エデン条約。トリニティとゲヘナの間で結ばれる不可侵条約って話だが、最近話が急に進んで締結寸前まで来てるって話だ」

 

「トリニティと不可侵?仲良くしましょうね〜って話なら別に悪い事じゃないだろ」

 

上手くいくとは限らんが。ガチで話を進めてるならマコト先輩が上手いことまとめるだろ。…ゲヘナに有利な状況で。

 

「急に進んだのが問題なんだよバカ娘。お陰で周りの連中がピリピリしてやがる」

 

ゲヘナも、トリニティもな。と続けて話す

 

「何せ3大校のうち犬猿の2校での不可侵条約だ。周囲に与える影響は計り知れん」

 

そんな話が急にまとまり出した。それで何かが起こっていると考えない奴はマヌケだな。

 

……この前、トリニティに行った時ハスミ先輩が言ってたのはこれ(エデン条約)関連か。そりゃいきなりトリニティに来て撃ち合いかましたゲヘナ生なんてすぐ釈放出来ないな。私でも怪しいと思うわ。

 

それに、マコト先輩が態々会いに来たのも納得だ。

トリニティに行って取調室に入り、専用回線で正義実現委員会の副長と話して何事もなく釈放されてんだ、何かあったと考えても不思議じゃない……私良く無事に帰れたな?マコト先輩に感謝しとこう。

 

「それは、ピリピリするわな…」

 

実感と共に重いため息をつく。

 

「しかし、なんでまたいきなり不可侵なんて結ぶ事になったのかね?」

 

今までどおり互いにいがみ合ってても不都合なかっただろうに。全体的に不仲でも別に個人として付き合えないわけじゃない。ヒフミ先輩とか結構な頻度でペロロを布教してくるし。

 

「んなこと俺が知るかよ。…兎に角、普段とは違うんだ。妙な事に巻き込まれないようにするこったな」

 

後ろ手に手を振りながら店の奥に消えるおっちゃんに頭を下げて私も店を出た。

 

 

 

 

 

 

 

何時もより静かなブラックマーケットが行きと違って嵐の前の静けさの様に感じて少し不気味に感じる。

 

気の所為だと頭を振って弱気な考えを吹き飛ばす。

私は何時だって好きにやってきた。

これから何があってもそれだけは変わらないし変えない。

気持ちを新たにして家路についた。

 

 

 

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