何時ものアルバイトを終えて帰宅し、自宅で適当に時間を潰している時にヒフミ先輩から電話が掛かって来た。
「もしもし?珍しいですねこんな時間に電話なんて」
電話に出るとヒフミ先輩は少し焦った様子で話し始める
『こんな時間にすみません!あの、今からお時間大丈夫ですか?』
「えぇ。まぁ、後は寝るだけですし」
何かあったのか?と問う前に慌てた様子で続けるヒフミ先輩。
『実は次の試験会場がゲヘナ自治区に変更されちゃいまして…』
「はぁ?トリニティの試験をゲヘナでやる?午前3時に?」
イカれてんなトリニティ…いくら郊外とはいえゲヘナの一角だぞ?そんな所にトリニティの生徒がぞろぞろ来るとか…試験前に戦闘でヘロヘロになるんじゃね?
『はいぃ…それで、ですね…手助けして頂けないかと…』
申し訳なさそうに続ける先輩。
…まぁどうせやる事ないし、別に良いか。
「良いですよ。今何処にいます?」
合流してからサクッと送り届けておしまいだろ。
ゲヘナ領内なら庭みたいなもんだし、温泉開発部の現場に当たらなければ余裕で間に合う場所だ。
『ありがとうございます!今トリニティを出た所なので後1時間後にはゲヘナ郊外に到着すると思います』
「了解です。じゃ、1時間後に」
そう言って電話が切れる。さて、準備してさっさと迎えに行くか。
「こんばんはヒフミ先輩、先生」
予定より5分早く到着したヒフミ先輩達を出迎えると、そこには先生の姿もあった。
「こんばんは、林檎ちゃん…今回はありがとうございます」
"こんばんは、林檎"
後ろの3人が例の補習授業部メンバーだな。正義実現委員会の子は分かりやすく警戒してる。羽根飾りの奴は私に気づかれないように体勢を変えたな…コイツがゲリラ兵(仮)か。って事はあの桃髪がお色気担当だな。
「後ろの3人は初めまして。私はゲヘナの1年、西條林檎。ヒフミ先輩とは個人的な付き合いがあり今回皆さんを目的地まで案内する事になりました」
よろしくね。と続けると僅かに警戒を解いて自己紹介してくれた。
「トリニティ総合学園2年、浦和ハナコです」
「同じくトリニティ総合学園2年、白州アズサ」
「トリニティ総合学園1年、下江コハル…」
お色気が浦和ハナコ先輩、ゲリラ兵(仮)が白州アズサ先輩、正実が下江コハルね。覚えた。
「んじゃ、時間もあまり無いですしさっさと行きますか」
3時前にたどり着くのを考えると此処からはほぼ歩き通しになる。まぁ、絡まれなきゃ1時間位は余裕があるけど。
「んんー?なんだお前等、見慣れない奴らだな?」
…早速バカ共が寄ってきやがった。
「無視すんなよ〜悲しいじゃんか〜」
「あ、あの私達、試験を受けに行く途中でして…」
ヒフミ先輩が答えるが、馬鹿にしたように笑う不良達。
「頭大丈夫か?こんな時間に試験なんかあるわけねぇだろ!」
「ってかコイツらトリニティの制服着てね?」
補習授業部の制服を見て目の色が変わる。
…しょうがない。ヒフミ先輩を横に避けて不良共の前に出る。
「私達今急いでるんだ。…黙って通して来れないか?」
目を合わせて頼む。…ん?どっかで見た気がするなコイツ。
「あぁ!?テメェに何の…関係…が…」
喋りながら顔色が変わる不良A。お、やるか?
ホルスターに収まった銃に手を掛けながら再度問いかける。
「悪いけどさ、あんま余裕ないからやるならさっさとやろうぜ?」
時間的な意味で。ちょっと眠いのも含めると私的にも。
「あ、いえ、すんませんっした!!」
頭を下げて周りの不良共を押し留める不良A。
「なんで止めんだよ!?トリニティの連中とか最高のカモじゃねえか!」
「バカ野郎!ヘルメット狩り相手じゃ割に合わねえって!良いから退くぞ!!」
その声を聞いて周りの連中の様子が変わる。…引いてる?
「へへっ…すみませんね、コイツら新入りなモンで…」
下手に出られても困るんだが。
「?…んじゃ、私らはもう行くけど構わないな?」
「はい!どうぞお通り下さい!」
不良共が道の脇に避ける。…何か偉くなった気分だな。悪く無い。
「通してくれるみたいですよ。行きましょうか」
後ろに居る補習授業部の面々に声を掛けて歩き出すとフリーズしていた下江コハルが声を掛けてくる
「あ、アンタ一体何者なの!?」
「ゲヘナの1年、西條林檎。…さっき言ったじゃん」
物覚えが悪いのか?…補習受ける位だもんな、私側の人間じゃしょうがない。
「そうじゃなくて…あぁもう!」
頭を抱えながら着いてくる。もう警戒されてないな…ちょっとチョロくて心配になるがからかいがいのある良い奴だ。
「さっきのヘルメット狩りってなんですか?」
今度は浦和ハナコ先輩が質問してきた。
「あぁ、一時期バカみたいにヘルメット団が増えまして。その時に絡んできた連中を片っ端から潰してたんですよ」
そうしたら何時の間にか『ヘルメット狩り』とか言われるようになりました。と続けると
「相当腕が立つんだな林檎は」
白州アズサ先輩も話に乗ってきた。
「まぁ、それなりには。ゲヘナである程度好き勝手動けるレベルですね」
本当の強者には勝ち目が薄いけど。ヒナ先輩とかホシノ先輩とか。あとはネル先輩もちょっと怪しい気がしてる。
"林檎はとても強い子だからね。頼りになるよ"
先生も乗っかるの?
「運が良かったのも大きいと思いますよ?」
金欠気味の連中ならまともな武器持ってないし。弾幕張るほど弾丸消費して来ないからな…
「さて、此処からちょっと距離があるんで頑張って下さいね」
雑談をしつつ歩く事1時間ほど。
それなりに打ち解けて名前呼びで話すようになってようやく市街地に着いたところで違和感を感じた…いくらなんでも人が居なさ過ぎる。夜中とはいえ往来に人が居ないのは異常だ。
「夜中とはいえ人けがなさ過ぎません?林檎さん、何時もこんな感じなんですか?」
ハナコ先輩が質問してくるがそれに答える前に銃声が鳴り響いた。
「いえ、流石にこれは異常事態ですね。誰かが騒動を起こして地区か閉鎖されてる可能性があります」
最悪のパターンを答える。風紀委員が地区封鎖まで行う相手だと温泉開発部レベルの問題児が主犯の可能性が高い。
「…銃声が止まない。何処かで戦闘が起きてる」
アズサ先輩の言う通り、戦闘中だろうな。
「うーん…目的地はこの先なんですけど…迂回する道は有りますか?」
ヒフミ先輩に聞かれるが
「あるにはありますが…この先の大橋を渡る以外の道ですと大幅に時間をロスします。徒歩では3時に間に合いません」
遠回りしまくれば行けないこともない。車両が有るなら選択肢に入るが今は無理だと伝える。
「一旦様子を見にいきましょうか」
補習授業部の皆にそう伝えて進む。
橋の近くまで上がって見えてきたのは…
「あれ、検問ですか?」
ヒフミ先輩の言う通り風紀委員会が検問を張っている姿だった。
最悪のパターンを引いたな。…先生が居るし、チナツとかヒナ先輩とかイオリ先輩が居てくれれば顔パス出来そうだけど…
「止まれ!此処から先は立ち入り禁止だ!」
風紀委員から制止の声が掛かる。
知らない奴だな…まぁ、知ってる顔の方が少ないんだけど。
「そもそも今日は街全体に外出禁止令が出ているはずだ!今すぐ帰って……その制服、トリニティか!?」
あ、やべ。慣れてきたせいで補習授業部がトリニティだって事忘れてたわ。コハルだけでも後ろに隠さないと…
「な、何よ!いきなり変なとこ触んないで!」
「林檎さん…大胆ですね♡」
ハナコ先輩、今はそんな状況じゃねぇよ。
すまんコハル、咄嗟に庇おうとしたら胸辺りに手が当たったか。
でも、お前が見つかるとさぁ…
「!?そこのお前、正義実現委員会か!!」
ほらぁ…面倒な事になっちゃうじゃんか
「え、えぇっ!私のせいなの!?こ、これは違くて、私は正義実現委員会だけど今はそうじゃなくて…」
「皆!正義実現委員会の襲撃だ!!上層部に報告!全員集めろ!!」
あー…一応話してみるか?
「こっちにも事情があるんだ。先ずは落ち着いて…」
「貴様は…!アビドスの時の!!」
あ、やべ。あん時弾いた奴の1人か。
「林檎も何かやらかしてんじゃない!」
すまんて。まさかこんな偶然があるとは思わないじゃん?
「はうぅ、ど、どうしましょう…」
「仕方ない、倒そう。」
ヒフミ先輩は慌ててるし、アズサ先輩はやる気満々だし。
"皆、落ち着いて。まずは話を…"
先生が間に入ろうとした時、検問所で爆発が起きた。
うわぁ、何人か巻き込まれて吹っ飛んでったぞ…大丈夫かあれ?
「あ、アズサちゃーーん!?」
「いや、まだ手を出してない。あれは私以外の誰かだ」
ヒフミ先輩が真っ先にアズサ先輩を制止するが違うらしい。
じゃあ誰がやったんだ?
「あら★やっぱり先生でしたか」
「御機嫌よう。ここで何をされてるんですの先生と…林檎さん?」
"美食研究会のみんな!"
「お久しぶりですハルナ先輩」
なんでこんなとこに居るんだとか吹っ飛ばした風紀委員どうしてくれるんじゃとか色々言いたい事はあるけども。
「この間水族館を襲撃した…」
「この前の襲撃犯?なんでここに!?」
君達が知り合いだった事に驚きだよ。まさかトリニティまで襲撃しに行ってたのか美食研究会…
「あはは…もう、何がなにやら」
ヒフミ先輩は理解するのを諦めたみたいだ。
私もそうしたいけど…これからどうするか考えないとマズい。
風紀委員を吹き飛ばした奴らと談笑してるとこを見られたから全員同罪になった可能性があるし。私はまぁ良いとしても補習授業部は捕まるとヤバい。最悪退学まであり得るぞこれ…
そうこうしているうちに先生がハルナ先輩に事情を説明したらしい。ハルナ先輩は納得した顔で話し始めた。
「成る程、事情は分かりました。…でもタイミングが悪かったですね。この辺りでは今結構な騒動になってまして」
「温泉開発部がね、都市部でドカン★と一発爆発させちゃったみたいなんです」
アカリ先輩が続けて説明してくれる。
やっぱり温泉開発部かぁ…嫌な予感は当たるものだ。
「まぁ、その御蔭で風紀委員会の牢屋からこうして脱獄出来たわけですが」
さらっと脱獄宣言したぞこの
「ええ★非常事態と言う事でまたしても偶然居合わせたフウカさんが快く車を貸して下さって助かりました!」
「ムーッムーッ」
…フウカ先輩、また拉致られてね?
えぇ…どうしよ。何か助けを求められてる気がするけど…
「…その快く貸して下さった方が縛られてトランクに居るように見えるのですが…」
ハナコ先輩!やっぱり助けたほうが良いよね?
「問題ありませんわ。フウカさんはこういった形で車に乗るのが趣味みたいなものですので」
「ええ、もはやスペシャリストと言って差し支えありません★」
私、フウカ先輩の事が分からなくなってきたよ…
「さて、このまま脱出する予定でしたが予定変更です。先生とトリニティの皆さんを目的地までご案内しましょう」
あの時のお礼として。と茶目っ気たっぷりな笑顔で続けた。
補習授業部の面々は少し戸惑いながらも車に乗り込んで行く。
先生もハルナ先輩に礼を言って乗り込んだ。
私はどうするかな…美食研究会が案内するなら私より頼りになるし、ここで囮でもするか…?
少し迷っているとハルナ先輩が私に声を掛けてきた。
「さ、林檎さんも早く乗りなさいな」
乗り掛かった船なら最後まで付き合うのが筋でしてよ?
と、こちらにも笑顔を向けてくる。
まぁ、その通りだな。どうなろうと最後まで付き合わなきゃカッコ悪いわ!
給食部のロゴが書いてある車に乗り込む。
フウカ先輩、横失礼しますね。
アカリ先輩は私が乗ったのを確認して車を走らせた。
さて、久々に風紀委員と温泉開発部とやり合うのか。
ヒナ先輩が出てくる前に目的地に送り届けられるかが肝だな…
風紀委員を相手にする場合のタイムリミットを考えながらも車は目的地へ向けて走っていく。
最悪、ヒナ先輩は先生がなんとかしてくれる事を祈るしかないな。
ハルナの口調が難し過ぎました…単にお嬢様言葉にすると違和感が拭えず、丁寧にしただけじゃ誰?になってしまうという…
違和感がありましたら申し訳ございません。