ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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ガンマンと補習授業部 その3

 

 

"おーい、こっちこっち!"

 

先生達の方が先に目的地に到着していた様だ。…美食研究会とフウカ先輩が見当たらないが。そもそも車何処やったんだ?

 

「あはは…色々ありまして…」

 

ヒフミ先輩が苦笑気味に言葉を濁した。ま、今はそんな事より試験だな。さっさと受けてもらおう、そして帰ろう。…既に眠気が酷い。

 

 

"そっちは大丈夫だった?"

 

心配そうな先生だがこっちは楽なもんだった。

 

「問題ない。2人とも陽動と排撃を見事にこなしてみせた。もう一端の兵士だ」

 

…アズサ先輩は時々、いや結構な頻度で物騒な事言ってくるな。軍隊ヲタクと言うには骨身に染み込んでるし普通に強いし。どこぞの特殊部隊、それこそSRT特殊学園の出か?あそこ確か無くなってヴァルキューレと合併したって話だし何人かは別の学校行ってても不思議じゃない。

 

「えぇ、3人で息を合わせて精魂尽き果てるまで動きました♡」

 

ハナコ先輩の言動にはもう慣れたわ。通常時のフィルター1枚通すと一気にセクハラ塗れになる酔っ払い見たいなもんだな。そんな場合じゃなくなるとフィルター無くなって一気に有能ムーブ始めるから最初は薬物でもキメてんのかと思ったわ。

 

「まぁ私は指示通りに動いてただけなんで…あ、そういやイオリ先輩が追ってきてましたね。今頃トリモチ塗れでしょうけど。今度あった時優しくしてあげて下さい」

 

あの人変なところで抜けてるよな。模擬戦とかだったら勝つのは難しいけど、ここぞと言う実戦でならそんなに(ヒナ先輩程)怖くないのはそういう事なんだろう。

 

"仲良くなれたみたいで何よりだよ"

 

先生が笑いながら話す。

 

「座標は此処で間違いないんですけど…」

 

「此処って言っても、ここ住宅地だし詳しく解らないんじゃ探しようもないじゃない!?」

 

ヒフミ先輩とコハルは早々に試験会場を探している。

ハナコ先輩とアズサ先輩も続いて捜索に加わった。

 

「…先生。ちょっと良いですか?」

 

内緒話をするなら今しかないと先生に聞いてみる。

 

「何でゲヘナで追試なんかやるハメになってるんです?」

 

普通自分の自治区でやるだろ。態々他所の家に来る必要がない。

 

「んで、何でシャーレ絡みの案件に成ってんですか?」

 

アビドスの時見たいな感じなら…あり得ないがトリニティが崩壊する系?…今ならエデン条約絡みのトラブルもあり得るか?

 

"…ちょっと、ね。色々あるんだよ"

 

目線を少し外して話す先生。

…話せないか。まぁそりゃそうだわ。私トリニティじゃないし。

そう思っていると話を変えるように先生が聞いて来る。

 

 

"林檎はさ。エデン条約ってどう思う?"

 

 

これはヒナにも聞いたんだけどね。と続ける先生。

 

エデン条約ね。詳しい内容は知らないけど、ゲヘナとトリニティでもう争うの辞めましょうよ宣言だよな確か。

 

「いがみ合ってた連中を表面上仲良くみせるためのもの、ですかね?裏で殴り合うのは変わらないと思いますけど」

 

見えない所でどんな風になるか、想像出来ねぇよ私。発覚した際のリスクを考えると今までより手は出にくくなるだろうけど…バカな連中は変わらずな気もするし。

 

「学園併合とかならまだしも、噂じゃ不可侵条約って事ですし。そんなん末端の私達(下っ端)がカッチリ守れるとは思えませんよ」

 

"そう、だね…"

 

少し残念そうに、悔しそうに呟く先生。

 

「でもま、形だけでも作っておけば後から続く奴も出やすくなるでしょうし、全くの無意味じゃないと思いますよ?」

 

私はあんま興味無いですけど…

 

「少なくとも補習授業部の皆とは仲良くなれた訳ですし、他のトリニティの連中とも仲良くなれないなんて事はないでしょ」

 

全体は無理でも個人的な友誼は別だよな。

 

"…そうだね、うん。"

 

「それはそれとして気に入らない奴が突っかかってきたらぶっ飛ばしますが」

 

からかう様に笑うと先生も苦笑して程々にね。と続けた。

 

 

 

 

「これ、トリニティのL118の砲弾?」

 

捜索班が何か見つけたな。そろそろ時間もヤバいだろうし…

 

「…中身は無いな。これではただの箱だ」

 

「では、この中にティーパーティーの指示があると言う訳ですね」

 

「開けてみよう…中には試験用紙と、これは…通信機か」

 

ハナコ先輩とアズサ先輩がポンポン話と作業を進めてあれよあれよと言う間に試験用紙が発見された…いやいやいや、なんで宝探しみたいになってんだよ。ただの追試だよな?レクリエーションやってる訳じゃないだろうに…

 

と、部外者なりに今回の追試の変な点を挙げて内心突っ込んでると何処かと通信が繋がったのか、通信機から声が聞こえてきた。

 

 

『…これを見ていると言うことは無事に到着されたようですね』

 

うわ、丁寧に映像付き。ミレニアムの新技術じゃね?少なくともゲヘナじゃ風紀委員会と万魔殿しか使ってないぞあんなん。

 

「ナギサ様…」

 

ヒフミ先輩が少し驚いているようだ。知り合いなんかな?

 

「え、じゃあこの方がティーパーティーの!?」

 

コハルはもう少し驚いた様子。ティーパーティーの偉い人か…一応、映像に映らない位置まで下がろう。

 

『ふふっ、恨みの声が聞こえて来そうですがこの映像は録画したものなのでリアルタイムに皆さんの声は届いていませんが。なので私に話しかけても無意味ですよ』

 

すげー…悪役見たいな事言い始めたぞこのお嬢様。

 

『それでは約束の時間までに試験を解いて戻って来て下さいね?補習授業部のみなさん』

 

()()()()()()()()()

 

そう言って通信…再生は切れた。

 

 

「最後の言葉、何か含みがありませんでしたか?」

 

「そんな事より時間がない、早く始めよう。」

 

「は、はい!みなさん早く中に入って下さい!」

 

「う、うん!」

 

 

補習授業部の皆は思い思いの返事をしながら目の前の公民館?に入って行った。

 

…真面目か!うち(ゲヘナ)だったらトリニティまで行かされて襲撃超えた後にマコト先輩にあんなん言われたら試験なんて放置して回れ右だ。その後ボコボコにされるとしても取り敢えず1発殴らせろ!の精神で万魔殿に特攻するのが目に見えてる。んで、高笑いするマコト先輩を殴って御縄につくまでが定番よな。

 

"林檎、ここまでありがとう"

 

先生も続こうとするがちょっと待てい。

 

「先生。試験中に襲撃されたらどうするつもりなんです?」

 

あり得ないとは言えないのがゲヘナである。

試験中に補習授業部が応戦できる訳もない。万全を期すならまだ私は居たほうが良いと思いますけど?

 

と、伝えるとその可能性を否定出来なかった先生は私を同伴して試験会場へと向かった。

 

…半地下?態々降りるのか。

降りた先に学習机が4つと教壇が1つある部屋があった。

小さな明かり取り用の窓が牢獄を思わせてとてもいい趣味(悪趣味)だな。入口は1つだけか…なら、此処を固めときゃ問題ないな。

試験に関係のない私は外で見張ることにした。

 

ま、流石にもう来ないとは思うけど…と考えて居たのが悪かったのか。いきなりの振動が建物を襲った。

 

「地震!?いや、爆撃か!…先生、皆!!」

 

直ぐに引き返して試験会場へ向かう。

背後から爆発音が聞こえる。建物が崩れ始めた。ドアを開けて内部へ入り込む。

 

「全員、急いでこの建物から出ろ!」

 

このままじゃ生き埋めに…と続ける前に天井が崩れて来た。

 

補習授業部の面々は大丈夫だろうが、先生はヤバい!咄嗟に押し倒して崩落する天井から庇う。

 

"林檎!?"

 

先生が何か言ってるが無視する。

クソッ!まさか建物ごと壊しに来るとは…!

温泉開発部の連中の目的が市街地だと思い込んでいた私のミスだな…ってか温泉開発部、此処が目的地ならなんであんな道中で絡んできてんだよ!最初から此処ぶっ壊せよ!

 

内心で温泉開発部部長のにこやかな顔をぶん殴りながら落ちてくる瓦礫に耐えていると、漸く崩壊が収まった。

 

「先生、怪我はありませんか?」

 

"大丈夫…林檎は?"

 

「問題ありません。他の皆は…」

 

と、補習授業部の皆の無事を確認しようとした時に上の瓦礫の方から声と銃声が聞こえてきた。

 

「先生、林檎ちゃん!無事ですか!?」

 

ヒフミ先輩達がいち早く瓦礫の山から脱出している様だ。流石は補習授業部(特殊技能軍団)、行動が早い。

 

「先生も私も無事です!皆さんは…」

 

「無事です!今襲撃者を撃退しているので少し我慢して下さい!」

 

 

 

 

救助されるのにそんな時間は掛からなかった。

何とか先生を引きずり出させて本当に怪我がないのを確認したらどっと疲れた…

 

「ヒフミ先輩、皆さん。ありがとうございます…すみません、護衛するつもりが守れませんでした…」

 

助けてくれた礼を言って謝罪する。

今回の件では補習授業部の皆に助けられてばかりだな…

 

「いえいえ、こんな事になるなんて誰も想像出来ませんよ…」

 

ハナコ先輩が何かを考えながら慰めてくれる。

…何か気付いたのか?私的にはあのナギサとか言う黒幕モドキが怪しいと思う。本当に今回の事が全部アイツに仕組まれていたなら殴り込みに行く位には怒りゲージが溜まってるわ。…どちらにせよ温泉開発部には後で殴り込み(リベンジ)確定だが。カスミ先輩をピンポイントで仕留めれば少しは大人しくなるだろう。その時は補習授業部の皆も呼ぼうか?

 

「まだ、確証がありませんから…」

 

補習中なんで殴り込みは遠慮しますね、と少し苦笑しながら続けたハナコ先輩。後半が口に出てたか…失敬失敬。

 

「この場合、テストはどうなるんだ?」

 

アズサ先輩は試験の事を気にしている。…真面目か!

 

「テスト用紙は瓦礫の下ですし…」

 

ヒフミ先輩もか…どんだけ試験に執着してんの?

 

「今回の試験は不合格って事!?」

 

コハル…お前は私側(バカ組)だと思ってたのに…

 

"……そういう事になる、かな…"

 

先生も言いにくそうに続けた。その場の全員(ハナコ先輩除く)の肩が落ちた。トリニティってそんなに追試厳しいのか?

 

「ま、まぁまぁ!次の追試で合格すれば良いじゃないですか!」

 

連休は短くなるかも知れませんが…とこの場の空気をなんとかしようと態と明るく言ってみたものの、空気がさらに重くなった。

…もしかしてゲヘナと違ってこれで留年確定するの?

やっぱ腹癒せにナギサとやらを1発殴りに行かない?

 

「あ、あはは…そうですね…」

 

ヒフミ先輩が乾いた笑いと共に答えてくれるが…

 

「もう無理!次が最後なのになんでこんな目に合わなきゃいけないの!?」

 

コハルか爆発した。まだ最後の1回が残ってるなら希望はあるだろ…と言いかけると

 

「そんな簡単に言わないで!次で落ちたら退学なのに…!」

 

とんでもない事言いだした。退学ってそんな簡単にさせられないだろ?とヒフミ先輩先輩達の方を見ると少し引きつった表情をしている…本気で退学なのか!?

 

「先生、本当の事なんですか?」

 

先生が知っているなら何とかするはず、だよな。と確認を取ると

 

"……うん。3回の追試で全員同時に合格しないと全員退学、なんだ"

 

やべーなトリニティ…

 

「それは、その…すみませんでした…」

 

上手く言葉が出て来ない。退学とはそれだけの事なのだ…このキヴォトスにおいて学籍とは戸籍のようなものだ。それを取り上げると言うことはあらゆる権利を取り上げるのに等しい行為のため中々行われないのだが…

 

 

「大丈夫ですよ林檎ちゃん。次で合格すれば良いんですから!」

 

明るく言うヒフミ先輩だが、少し声が引き攣っている…

 

「そうだな。次が最後ならそれに向けて準備するだけだ」

 

アズサ先輩は変わらずだ。少し安心する。

 

「そうですね♡次の試験に備えませんと」

 

ハナコ先輩も普段通り?に戻った様だった。

コハルはまだ少しメンタルが持ち直して居ないようだがさっきよりはマシな顔つきだ。

 

 

"今回はありがとう、林檎"

 

先生から改めて礼を言われて、補習授業部の面々も口々に礼を言ってからその場で解散となった。

 

 

 

 

 

 

皆と別れて家路につきなから今回の一件について考えを巡らせる。

 

補習授業部の退学を掛けた追試。

シャーレの先生を補習授業部に同行させた理由。

試験会場をゲヘナに設定した理由。

ティーパーティーのナギサの言葉。

 

…エデン条約、か。

この時期に茶会の頭が出張る程の案件となるとそれ絡みが濃厚だろう。

補習授業部の面々を退学させようとしているのがナギサなら、先生を補習授業部につけたのも同じか?退学を理由にすれば先生は断らないだろうし。

 

試験内容はこの際置いておくとして、ゲヘナで試験を開催させた理由は…ゲヘナ領内で先生を始末しようとしたのか?

補習授業部について行かせれば自ずと危険地帯に行かせる事が出来る。

 

今回の件で一番危険だったのは先生だ。温泉開発部や風紀委員の襲撃で流れ弾が当たっても、最後の崩壊に巻き込まれても死にかねないキヴォトス外部の人間。

 

先生を亡きものにしようとしている奴がトリニティにいるとしたら。それもエデン条約前にゲヘナで始末する算段なら。

シャーレの先生と言う権限の塊がゲヘナ領内で死んだとなると大失態だ。不可侵条約を結ぶどころか一方的に殴る大義名分になり得る。

 

そうでなくともエデン条約どころではないだろう。仮にも連邦生徒会が承認した先生だ。何処で始末されても大問題だし。

 

先生は今、トリニティに出張中だったな…トリニティが一枚岩じゃないのは三頭政治からも明白だし、最悪トリニティ学園内部で消されかねないぞ、先生。

 

考え過ぎならそれで良いが、今回の件を考えると仕組んだ奴がいる可能性が高い。それもトリニティ内部にいる可能性が。

 

 

……気が乗らないけど、マコト先輩に頼んでみるか?上手く納得してもらえれば先生の護衛枠でねじ込んでくれるかもしれん。

ま、無理なら勝手に行けば良いだけだが。なんのかんの言いながらあの先生が死ぬ様な事があったら寝覚めが悪いなんてモンじゃないし。

 

 

 

取り敢えず、万魔殿に行ってみるか〜と明日の予定を決めてとぼとぼと帰るのだった。

 

 

 




現在サイバーパンク2077に嵌っているため、更新が遅れましてすみませんでした…ナイトシティが楽しすぎて中々帰ってこれてませんがじっくり進めて行きますのでこれからもよろしくしていただけると幸いです。
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