ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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ガンマンと万魔殿

 

 

補習授業部と温泉開発部と風紀委員で試験会場まで鬼ごっこ(大乱闘)しに行った翌日、マコト先輩に連絡を入れると少しなら時間を取ってくれるとの事だったので万魔殿の建物まで向かう事にした。

 

何度か来たことがあるが相変わらず豪奢な建物だなと考えている内に目的地に着いた。

 

此処は万魔殿の執務室前、マコト先輩の居城だ。

執務室に来るのは2回目だが相変わらず応接間と違ってシンプルな扉が周りの風景に自然に溶け込んでいるため初見でここが執務室だと分かる奴は居ないだろう。

扉をノックすると数秒立たずに中から入るように促された。

 

 

「失礼します」

 

「よく来たな…そこに座って少し待て」

 

デスクで書類に判子を押しながら声を掛けるマコト先輩。

忙しい中時間を取って貰って申し訳ないが此処からが本番だ。何とか納得して貰って要望を通させてもらおう。

 

「…良し。それで何の用があって来た?」

 

ただ世間話をしに来た訳じゃないだろう?と続けるマコト先輩。…既に私の目的は分かっているだろうに、自分から言うのを待ってくれるようだ。

 

「単刀直入にお願いします。私を先生の護衛としてトリニティ総合学園に立ち入る事が出来る様にして貰えませんか?」

 

ヒフミ先輩達や先生から聞いた話やナギサとやらの言葉からすると先の妨害以上の事を仕掛けてくる可能性がある。昨日の試験では最後に会場ごと生き埋めにしてきたし、次は先生の命に手が掛かる事だってあり得る。本当はヒナ先輩に行って貰いたい位だけど流石に無理だろうしな…

 

「キキキッ…それが容易ではない事は理解しているだろう?何せ今はエデン条約締結が間近に迫っている。余計な波風を立てる事はゲヘナ側の落度として突っ込まれかねん」

 

此方を楽しげな目でみながら返してくる。

 

「十分わかっているつもりです。しかし昨日のトリニティの試験をゲヘナで行う事を了承し、その上で先生ごと生き埋めにしかけた時点で既に此方の印象は大きく下がっているのではありませんか?」

 

何せ代わりの居ない人材だ。失踪した連邦生徒会長が直々に招集したというキヴォトス外部の大人。現在のキヴォトスであれほどの権限を持っている人は居ないのだから。

 

それに、美食研究会の連中がカチコミ掛けたらしいし。今更落度云々も無いだろうと思ってたんだけど…

 

「その件については報告は受けている。…事後報告かつ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と共に今朝受け取ったとも」

 

何処か()()そうに応える輩。昨日の件はマコト先輩がやすやすと受け入れるものじゃないとは思っていたが…ゲヘナ側(万魔殿)も一枚岩じゃないからなぁ。

 

「…誰がゲヘナでの追試を承認したんです?」

 

「私、という事になっているな。いやはや、最近少し甘過ぎたかもしれん…此処まで大胆に足元を掬ってくれるとは!」

 

ま、やらかしてくれた奴は既に処罰済みだが。

愉しそうに続けるマコト先輩。…先輩、そういう自分を出し抜ける奴(自分勝手な有能)は好みだろうからそこまで重い罰じゃないんだろうな。と考えていると先輩が話を続ける。

 

「…今回の件が仮にあの茶会の鳥(ティーパーティー)共が仕組んだ事だとしても私が承認したという書類がある以上、対外的には我らの失策と取られるだろうな。だがそれ故にこれ以上の失点が無いように立ち回らなければ、とは思わないか?」

 

少し戯けながら話続ける先輩。

 

「エデン条約が締結すれば今後トリニティと大きく争う事は不可能になる。つまり締結した時点である程度の力関係が決まる。勿論、細かな点でひっくり返すことは不可能ではないが…その労力を未然に防げるならそうするべきだろう?」

 

真剣な目で私を見つめる。確かにその通りではある。あるんだが…そもそも、マコト先輩はエデン条約に対して乗り気なのか?

 

「…マコト先輩、エデン条約の話を進め始めたのって誰なんですか?」

 

この人が自分から進めるとは考えにくい。別にトリニティとバチバチやり合ってても構わないし、寧ろ好き勝手出来る余地が減る事を嫌う人だ。

 

「トリニティ側からの提案だな。現ホストの桐藤ナギサが主導したと聞いている。…それとヒナの奴が乗り気だったからな」

 

ヒナ先輩の名前を出す時だけ嫌そうな顔をして答えてくれる。

桐藤ナギサから進めた話なのか…では昨日のあれは別枠の誰かが仕組んだ?いや、此方に責任を押し付けて戦争する口実にしようとしているって線も…というかヒナ先輩は乗り気なのか。

 

「私としては条約が締結しようがしまいが別にどちらでも構わないんだが。珍しくヒナが口出しして来た案件だから乗ったまでだ。それに条約が締結しても新しい治安維持組織が出来るだけ…そこに介入出来る度合いが大きいのに越したことはないがな」

 

つまり今は条約締結後のトリニティ・ゲヘナ同盟、その主導権を握るための準備期間という訳だ。

 

そして、万魔殿(マコト先輩)としてはできる限り新体制の治安維持組織に対して発言権を維持した状態でエデン条約に臨みたい、と。

 

なら条約が無効にされる可能性があるとしたら目があるか?

 

 

「…トリニティ内部にエデン条約を潰したい連中がいる可能性があります」

 

 

この段階でエデン条約を白紙にする利点はゲヘナ側には無い。…愉快犯や今朝処罰したらしい奴は除くが。大枠で見ればトリニティ側の利点に乗っかったんだろうし。

 

そもそもゲヘナの連中の大半がエデン条約に思う所は殆ど無いだろう。

 

万魔殿がトリニティと喧嘩すんなってさ。でも喧嘩売られたら買うよね(気に入らないなら殴るよね)位の認識でしかない。

 

条約があろうが無かろうがやる事は変わらないのだ。

正直企画倒れ気味だと思ったのはそういったゲヘナの気質(自由奔放さ)に有る。

 

比較的に(ゲヘナ基準で)冷静なマコト先輩もヒナ先輩が乗り気で進めてるなら裏から潰す真似はしない。ヒナ先輩を相手にする時は正面切って喧嘩を売る人だ。…他の奴が相手なら幾らでも裏工作するだろうけども。

 

なのでもし条約を白紙にする利点があるとしたらトリニティ側、例えばトリニティ内部の権力闘争によるものと考えられる…三頭政治だって話だし。他の派閥もあるってのも含めると…首領格が3人+αかつトリニティの風土だと派閥争いが無い訳が無い。

 

それに昨日も考えた事だが、何故補習授業部の試験をゲヘナで行わせたのか?それも温泉開発部の標的に成った土地で。偶然にしては出来すぎだろう。ゲヘナの立場を悪くする、もしくは先生を始末して条約を破綻させる為とも考えられる。

 

そもそも補習授業部の存在自体もおかしい。退学云々の話があるにせよ、態々この時期に先生を呼びつける程の理由じゃない。アビドスの様に学校自体が無くなりそうな訳じゃないし。

 

シャーレの権限を条約締結まで封じそれらの事情を探られないようにしている、それに加えてあわよくば始末しようとしている連中が別に存在すると言うのは考え過ぎだろうか?

 

何せ懐に居るんだ。この間のように事故に見せかけて消すのは容易いだろう。そして身内でやり合っているならトリニティの連中で信用のおける奴を見分けるのは難しい。

 

やっている事がチグハグだが、全てが繋がっているとしたら。

エデン条約を進めた桐藤ナギサには別の思惑があり、条約を反故にしようとしている…もしくは他の頭領が別枠で裏で糸を引いている可能性は十分ある…と思う。

 

と、いったことをつらつらと述べて最後に

 

「…もしエデン条約を白紙にしようとするなら、現状で1番狙いやすいのはシャーレの先生です。そして、害する可能性が高いのはトリニティでしょう」

 

だから、私を先生の護衛につけて欲しいのです。と伝えた。

私一人で正実全員を相手に勝つ事なんて出来ないが…補習授業部、最悪ヒフミ先輩だけでも味方になってくれれば先生が逃げる時間は稼げる…筈。

 

 

「成る程、貴様の意見はよく分かった!確かに先日の件といいトリニティの行動には不可解な点が多いとも。しかしそうだと言い切れる程の証拠は無い。そうだな?」

 

試すように、一言一言を強調して問いかけてくる。

 

「トリニティ側に何も作為が無く、ただの偶然だった場合は双方の関係に亀裂を入れる行為だろう。私達(ゲヘナ)からシャーレの先生を護衛する人員を出すと言う事は貴様ら(トリニティ)を信用していない、というのに等しい。その上で()()()()()()()()()()程度の疑念で貴様を送る利点はなんだ?」

 

ゲヘナの利点か…そんな物があれば既にアピールしてるが…

 

 

 

 

 

…もう、頭使うの面倒くさくなってきたな。ぶっちゃけて終わらせちまおう。どうなってもやる事は変わらねーし。

 

「ゲヘナに利点は無いですね。私情ですし」

 

そもそも、先輩との話が上手いこと運んだら問題なくトリニティに入り込めるってだけで断られても勝手に行くだけだ。行かないで予想通りに先生が死にでもしたら必ず後悔する。後悔する位なら退学してでも行ってやるさ。

 

「確かにトリニティの裏切りが無かった場合は先の失点と重ねてエデン条約後のゲヘナの立場は弱くなるかも知れません」

 

まぁ、既に結構ヤバい気もするけど。先生が死にかけるってそういう事だし。…マコト先輩なら何とか切り抜けそうだが。

 

「でもそれで何か問題が有りますか?」

 

別に立場が強かろうが弱かろうが関係なくね?立場の強弱で先輩(ゲヘナ)の態度が変わるか?変わらんだろ。気に入らないならどんな状況、条件だろうと跳ね除けて嗤うのが私達(ゲヘナ)だ。

 

 

「やりたいようにやるのが私達(ゲヘナ)流儀(やり方)、でしょう?」

 

 

私はやりたいようにやりますよ。

といつぞやの言葉をそのまま返すと

 

「キキキッ…キャーハッハッハ!」

 

腹を抱えて嗤うマコト先輩。

 

「そうだともその通りだ!私達は何時だってそうして来た!」

 

愉快そうな顔で続けて話す。

 

「暴れ回った後始末はこちらでつけてやる。好きにやれ。貴様はゲヘナからの護衛として先生に付けると茶会の連中(ティーパーティー)に伝えておく」

 

多少強引な手段をとる故針の筵かも知れんが構わんだろう?と愉しそうに続ける先輩。

 

「…最初からそうすると決めてませんでしたか?」

 

予定調和と言わんばかりの雰囲気を感じて少し不貞腐れながら返すと

 

「今朝の報告の時点で貴様がトリニティの連中と同行していたのは知っていたからな。そんなタイミングで私に用があるというのなら当然それ絡みだろうよ…しかしまぁ存外考えて来たものだと感心したぞ。それで少し興が乗った。許せ」

 

貴様が(万魔殿)を頼るのが珍しいというのもあるが。と変わらず愉快そうに嗤って続ける

 

「詰めが甘いし粗も目立つが中々愉しめた。…さっさと行け。後の業務が詰まっている」

 

礼をして扉に手を掛けた所で先輩から声が掛かる。

 

 

「貴様には期待している。精々励む事だ。」

 

 

後ろ手に扉を閉めて大きく溜息を着いた。

何とかなったがあの人と一対一で話すのは心臓に悪い。

今回の一件で今後何を要求されるのか不安にはなるが取り敢えず目的は達成したと言っていいだろう。

 

 

途中何言ったかイマイチ覚えて無いし、変な事言って言質取られてなければいいんだけど…とうろ覚えな会話を思い返しながら自宅へ向かっている途中で先生から連絡が入った。

 

"ナギサ(ティーパーティー)から連絡があったけどこっちに来るの?"

 

…いくら何でも早すぎじゃないですかね先輩。本当に最初からこうなると予想して準備してたとしか思えない速さだよ。

 

『えぇ、万魔殿の議長より許可を頂きまして。僭越ながら先生の護衛に着かせて頂きます』

 

"皆喜ぶよ!気をつけて来てね"

 

『了解です』

 

良し、準備を済ませたら出発するとしよう。

変装は居るよな…流石に角は隠した方が良いだろうし、制服じゃなくて私服でそれっぽい(フォーマルな)奴を選べばトリニティでもそこまで浮かないだろ。多分。

 

 

 

 

何事もなく終わってくれるならそれに越したことは無いが…

どうにも嫌な予感がする。気を引き締めて行こう。

 




大分頭がこんがらがってきましたが、漸く補習授業部に合流する運びと成りました。

林檎は色々考えてますけど知人の生き死にに関わらない事なら此処まで執着しません。そのため先生絡みだと少し違和感があるかも知れませんがそこは容赦頂けると幸いです…
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