行動を開始してから数十分。私達はそれぞれ別れて行動していた。
ハナコ先輩はアズサ先輩とペアを組んでナギサを確保。合宿所までアリウスを牽引しつつ数を削り、合宿所内部での決戦を挑むとの事。ヒフミ先輩とコハルは先生を護衛しつつ合宿所で待機。
そんな中、私の役割はと言うと…
「まさかまたコレを使うことになるとはね…」
何時ぞやの覆面水着団の時に使用した覆面を着用しながら独り呟いた。…念の為顔を隠す用で持ち込んだものだけどホントに使うことになるとは思わんかったわ。コレを取り出した時にヒフミ先輩が吹き出してたけどアンタも同じようなん持ってんだろ…
私に与えられた任務はハナコ先輩達がナギサを確保して連れてくるまでの間、先生やヒフミ先輩、コハルの待ち構える合宿所への襲撃を迎撃する事。
また、襲撃者が予想以上に多い場合や"スクワッド"と呼ばれる精鋭が現れた時の足止めだ。
…まぁ、うまく事が運べば私の仕事は無い。いわば保険のような物だと聞いてたんだけども。
「まぁ、全部上手く行くとは思ってなかったけどさ」
目の前に現れたガスマスク集団を見やりつつ溜息を着く。
予定より速いって事はハナコ先輩の予想以上に相手が上手の可能性が有るな。若しくは真の裏切り者とやらの情報収集能力が高いのか?…分隊規模か。話に聞くスクワッドの連中じゃないな。
「!…貴様、何者だ!?」
物陰からのっそりと姿を現すとこちらに気づいたアリウス生が誰何してくる。
まぁ、スーツに覆面とか不審者以外の何者でもないわな。
何者か…うん、今回に限ってはこう答えるべきだな。
「通りすがりの覆面水着団No.6だ!」
「バカみたいな格好しやがって!撃て!!」
うおっ!?容赦ねぇなこの野郎!!
銃弾から身を躱しつつホルスターから愛銃を抜いて3連射。
指揮官らしい奴と周囲の2人の意識を奪ったのを確認し、その内の1人を盾に再度2発、こちらに向けて発砲しようとしてる奴を撃ち抜く。
盾にした奴をまだ元気な奴へと蹴り飛ばして最後の1発をお見舞いしてやった。
「バカみたいな格好だと?お前等のガスマスクも大抵変だろーがバカが!!」
今の私は覆面水着団のNo.6。ちゃんとなり切らないとな。
弾丸を撃ちきった後、高速でリロードを済ませながら怯んでる連中に向けて吠える。
「なんなんだお前は!」
どこかビビってる様子のアリウス生が再度弾をばら撒いて来るがそんな撃ち方で当たるものかよ。
当たる弾だけゆるゆると避けるとより焦った様子で叫ぶアリウス生共。
「クソっ!なんで当たらない!?」
愛銃をゆっくり構えて相手の頭に照準する。
その間にも銃弾が飛んでくるが禄に狙えてねぇな…逆に動いたほうが当たるわコレ。
「下手くそが!こうやって狙うんだよ三下ァ!!」
1発、2発と当てて意識を奪う。…来た奴らはこれで全部か。
いやー覆面着けてテンションをヘルメットに寄せると大分アレな感じになっちゃうけど…これなら私だって分かりにくいし、結果オーライだな!
『あーあー。こちらNo.6、聞こえますかどーぞー』
『聞こえますよ…どうかしましたか?』
渡された無線でハナコ先輩に連絡を入れる。
『例の場所に襲撃有り。分隊規模だけど先輩の予想より動きが速い』
『了解。こちらも急ぎます…なんでそんな喋り方してるんです?』
余裕があるのかこちらのロールプレイに言及してくるハナコ先輩。
そりゃまあ、アレだよ…
『こっちの方がそれっぽいでしょう?一応変装してますし』
一旦普段の喋り方に戻して話す。
ヘルメット団ぽい話し方としては満点だと思うんだが…
『……まぁ、良いでしょう。ではまた後ほど』
何か溜息混じりに通信が切られた。
うーん…何か変なとこあったかな?ま、再襲撃に備えて身を隠すか…
「なんだこれは!貴様、こいつらをどうした!?」
おっと、おかわり登場だ。
「見ての通り寝かしつけてやったんだが…気に入らなかったか?」
返答は銃弾か。まぁ当たりゃしねぇんだけど。
反撃でまた指揮官ぽい奴を弾くと他の奴らは狼狽している様子。
…斬首戦術って軍隊方式の奴ら相手なら有効なんだなぁ。
「よーし、お前等も同じ目に合わせてやるよ!!」
んじゃま、もう1回暴れてやるか!!
……こいつら、何処からこんなに湧いてくんだ!?
既に4回迎撃したが、そのせいで周りが死屍累々だぞ…
途中からこっちの事を通信で知らされたのか無言で襲って来るようになったがどっちにしろ全員弾けばいいだけだし、楽なもんだったわ〜。
と、考えながら次の襲撃に備えて戦うのに邪魔なアリウス生を横に退けていると…
『No.6、聞こえるか?』
アズサ先輩から通信が入った。
『聞こえてます』
少し息を整えながら答える。
『私たちもそちらに合流する。例の場所へ下がってくれ』
私の仕事はこれで一段落だな。
『了解。それじゃまた後で』
合宿所の入口で気絶したアリウス共の山を気持ち程度に横に避けてから先生達の居る体育館へと向かう。
さて、ここからが本番だな。…ホントの裏切り者とやらが誰なのかとかはあんま興味無いけど、丸く収まってくれりゃいいんだがそれは高望みし過ぎかな。
「うぃーす、アタシん所は大分パーティーしてましたけどこっちはどう?」
先生達に合流するなり銃を構えられたが、すぐに私だと解り銃口が下がる。
「こっちは特に問題ありませんでしたよ…やっぱりその覆面使ってるんですね…」
「アンタ、覆面つけると人が変わるのね…」
覆面にしか興味無いんか君たち。
確かに何か感触も良いし凝った装飾だけども。シロコ先輩、結構良いものなのに譲ってくれたんだよな…今度ちゃんとお礼言っとこ。
「んな事は無いけど…まぁ一応変装なんで。容赦してもらえると有り難いですわ」
砕けた感じで返すと緊張が少し緩和された様だ。
んで、あとは本命が来るのを待つだけな訳だが…
…爆発音が近づいてくるな。アズサ先輩達もコッチに来れたみたいで何よりだ。
"そろそろだね。皆準備は良い?"
先生が最終確認を取る。
「は、はい!大丈夫です!!」
「勿論、準備万端よ!」
2人とも良い返事で何より。
「いつでもどうぞ…あぁ、もういらっしゃった様で」
私の返事と同時にハナコ先輩とアズサ先輩が飛び込んで来た。
その後ろからガスマスク装備のアリウス生がなだれ込む。
ひのふのみ…うん、20人位だな!!
「…成る程、ここで待ち伏せしていたと言うわけか」
「えぇ。それに、こちらにはシャーレの先生も着いています」
アリウスの指揮官が事態を把握するとハナコ先輩もそれに応える。
「たった6人でこの数をどうにか出来るとでも?」
此方を睥睨して蔑むように笑うアリウス。
…何いってんだコイツ?
「…え?寧ろ勝てると思ってんの?この程度の数で?」
表で伸した連中より少ないんだけど正気か?
「撃て!」
キレやがった。前衛の6人を適当に狙って撃ち倒す。
「こっちです林…6号ちゃん!」
ヒフミ先輩の声に従って跳ぶ。…デカいペロロ?が遮蔽物になってくれたお陰で安全に着地出来た。
「ありがとうございますヒフミ先輩」
礼を言いながらリロードする。するとコハルが手榴弾を投げながら
「なんで挑発すんの!?もう少し時間稼げたでしょ!!」
文句を言ってきた。いやー…すまん。
「すまん、我慢出来なかったわ」
ペロロの陰から狙い撃つ。…うーん、距離があるから1発で仕留められないな。
「やってしまったものは仕方がない。片付けよう」
淡々と応戦しているアズサ先輩がフォロー?してくれる。ありがてぇ…いや、すみません…
「そうですね〜6号ちゃん、後で少しお話ししましょう♡」
ハナコ先輩、違うんですよ…ちょっとヘルメットに成り切ってて、口が軽くなってたと言うか…
「ま、まぁまぁ!ここは協力して何とかしのぎ切りましょう!」
ヒフミ先輩…!やはり覆面水着団のボスはちげぇや!!
「んじゃ責任取って突っ込んで来るんで、援護を…しなくても良いや」
残り3人だし。返事を待たずに突っ走る。
突出した私に銃口が向くがそんな適当な狙いで当たるもんかよ…弾丸とすれ違いざまに3連射。全て頭部へ着弾、全員気絶したな。
「よし!全員制圧完了!!」
"よしじゃないが"
先生が後ろから叩いてきた。痛くはないけど何故?
"突っ込まなくても押し切れてたんだから危険な真似はしない!"
「あぁ…すみません、つい何時もの癖で」
"次からは気をつけてね?"
許された。うん、他の人がいる時は任せる方向で考えよう。
「こほん、では次のフェーズに移りましょうか」
ハナコ先輩が仕切り直すように指揮を執る。
「この後アリウスの増援が来るでしょうが、私達は此処で耐えるだけで大丈夫です」
作戦の概要としては。
時間を稼いでる間にナギサが居なくなった事に気づいた正義実現委員会が動く。そこにコハルからハスミ先輩へと今回の経緯が説明されて、コッチに向かってくれるという算段だ。
ティーパーティーの命令で配置された正義実現委員会を動かせるのはティーパーティーだけ。それを今回はナギサの身柄を使って動かすって訳だな。
「…既にナギサさんの身に何かあったというのは伝わってるはず。行動を起こすのにそんなに時間は掛からないはずです」
と、言った所で壁が爆破された。
正義実現委員会って結構野蛮なんだな…と思ったが。
見覚えのあるガスマスク集団、アリウスの連中がワラワラと乗り込んできてるな?
「増援部隊がこんなに早く!?」
ひのふのみ…沢山だな。数え切れんわ。
「数が多い、大隊単位での行動だ。アリウスの約半数が此処に…?」
「あ、あぅぅ…こんなにたくさんの方がトリニティに…」
大隊って…1000人規模!?弾丸足りないわ…半分以上は銃なしで倒す必要があるが、そんな余裕あるかなぁ…
「…まだ正義実現委員会が動く様子がない?」
ハナコ先輩の疑問に答える形でアリウスの連中から声が上がる。
「それは仕方がないよ。私が待機命令を出してきたから」
あからさまに偉そうな雰囲気で出てきた奴がそう述べる。
んん?あんま強そうに見えないのにヤバい感じがする…なんだコイツ?
"ミカ…?"
「ティーパーティーのひとり…聖園、ミカさん…」
先生とハナコ先輩の言葉で誰か判明した。茶会の頭の1人か。
「や、先生久しぶり!まぁ、私が声を掛けられる所は全て動かないように指示してきたからね…ナギちゃん襲う時に邪魔されちゃ困っちゃうし」
天真爛漫な笑顔で語る聖園ミカ。
「まぁ、なんていうか…黒幕登場☆って感じ?」
くるりとターンして先生を見つめる。
「私が本当のトリニティの裏切り者」
その言葉にコハルやヒフミ先輩は驚愕の表情を浮かべた。
…あー。マコト先輩、トリニティは思った以上にとっ散らかってます。ヒナ先輩もこんなんがいる所と手を組むとか正気ですか…?
「ってな訳でナギちゃんを何処に隠したか教えてくれない?私もそんなに時間ある訳じゃなくってさ」
友達に尋ねる様な口調で質問してくる。
「別に此処の全員を消してから探しても良いんだけどさ。面倒じゃない?そういうの」
うへぇ…コイツも
"ミカ、どうして…"
先生が悲痛な表情で質問する。
あー…仲良くしてた感じかー…どうしよ、最悪ヘイローぶっ壊すのも視野に入れなきゃなんないのにやり難いぞ…
「んー…聞きたいの?先生がそう言うなら仕方がないなぁ」
今、私を睨んだな?ゲヘナ生ってのはティーパーティーに連絡したはずだし、正体はバレてんだろーなぁ…
「それはね、ゲヘナが嫌いだからだよ」
うっわぁ…どストレート…
「あんな角が生えてるゲヘナの連中と平和条約?考えただけで反吐が出るよ」
ヤベェって、コイツマジモンじゃん…久しぶりに見たわゴリゴリのトリニティ生。
「絶対に裏切られるに決まってるじゃん?背中見せたら直ぐにでも刺されるよ?」
私から目を離さずに告げる聖園ミカ。…言ってくれるじゃん?私は覆面を外してポケットへと入れた。
露わになった角を見てやっぱり、と言った顔をする聖園ミカ。まあ、バレてない訳ないよな。そんでもってゲヘナ嫌いを公言するって事は私にも喧嘩売りたいわけだコイツは。
その喧嘩、買ってやるよお嬢様…
「
思いっ切り煽る様に嘲った。
うちじゃ少なくとも身内を背中から刺す様な真似をするバカは居ねぇよ。
「
言ってくれるわぁ…
「やれるもんならやってみろ。そん時はお前も道連れだ」
ヤベェ雰囲気は依然として変わらないが…ヒナ先輩程の脅威とは感じない。…戦い慣れた奴って感じがしない。
私を心配そうに見るヒフミ先輩達。
それを見て視線を私から外して先生へと話を続ける聖園ミカ。
…私と話す事はもう無いってか?上等だよ…絶対ボコしてやる。
「…えぇと、何処まで話したっけ?…あぁ、そうだ、要するにゲヘナは信用できないって事。私達はさ、ドロドロしたものの中でやり合うのがお似合いなんだよ。ナギちゃんはそういうの分かってないんだよね」
平然とした顔で続ける。
「だからさ、ナギちゃん返してくれる?大丈夫、酷いことはしないから。…残りの学園生活は監獄で過ごしてもらうかも知れないけど」
"…じゃあ、エデン条約は本当に平和条約なんだね?"
先生が確認するように聞くが…逆に何だと思ってたんだ?
「あぁ!あの夜に話したことだっけ?…確かに武力同盟って一面もあるけれど素直でおバカなナギちゃんにそんな考えが浮かぶ訳ないじゃん?だからエデン条約はれっきとした平和条約だよ?」
ゴメンね?ちょっと嘘ついたんだ。と続ける聖園ミカ。
あー…。ヒナ先輩はそっち目的っぽいな…自分が卒業した後の事を考えるとトリニティと組んだ方が戦力も確保出来るし、喧嘩も減るしで渡りに船だもんな…
「でもね、あの時に話した全てが嘘じゃないよ。私がアリウスと和解したかったのは本当。この子達はゲヘナを憎む同志だから」
周りからの視線が私に集まる。
…雑魚共がいくら睨んでもなんとも思わないが鬱陶しいな。
「だから手を差し伸べたの。一緒にゲヘナと平和条約を結ぼうとしてる悪党をやっつけない?ってね。これはそういう取引きなんだよ。ナギちゃんには正義実現委員会、私にはアリウスがつく。」
和解へのステップアップ、みたいな?と笑う聖園ミカ。
「私たちの目的は一致していた。共通の敵を倒すために一時的に手を組む。そのために私は密かにアリウスを支援してたんだ」
「…アリウスは、トリニティでクーデターを起こす為の道具だった?」
アズサ先輩が呆然と呟く。
「うん?…うん。まぁクーデターと呼べなくもないよね。ナギちゃんからホストの座を奪うわけだし」
アズサ先輩を見つめて微笑を浮かべる。
「白洲アズサ。私は貴女のことをあまり知らないけど…私にとって大事な人だって事は今も昔も変わらないよ?ナギちゃんを襲った犯人役をしてもらわないといけないしね」
おぉう…スケープゴートもやらせようってのか…
偏見で作ったトリニティ生そのまんまみたいな奴だなこの女。
「でも吃驚したよ?ナギちゃんが襲われたって聞いて最初は計画が破綻したかと思ったもん。…まさか犯人が補習授業部だとは思わなかったし」
"これまでの全ては、ティーパーティーのホストになるため?"
「うん、まぁ…そうだね。私がトリニティの実権を握ってアリウスをティーパーティーに参加させる。それでエデン条約なんて破棄してゲヘナと全面戦争するの!」
無邪気に笑う聖園ミカを見て全員が絶句していた。
小競り合いじゃなくて全面戦争?どっちかが滅ぶまでやる気か?
「ゲヘナを地図から消したいだけだからその後はナギちゃんにホストの座を返しても良いよ?」
ヤベェ狂人じゃん!?なんでこんなの抱えながらエデン条約なんて進めたんだよナギサぁ!!
"ミカ…!!"
「うわ、吃驚!先生そんな顔も出来たんだね。…説明が雑になった所もあるし、ゆっくりお話したいと思うんだけど…ごめんね?」
先生のキレた顔初めて見たわ。…この人に怒りの感情があったとは驚きだ。少なくとも生徒の前で出す人だとは思わんかった。
「じゃ、そろそろお開きにしよっか?…私はあの角つきをやっちゃうから皆は補習授業部をお願いね?」
おっと、ご指名入ったわ。
「油断するな、聖園ミカは強い…」
アズサ先輩から忠告があったが…正直コイツが強かろうが弱かろうが関係ない。散々喧嘩売って来やがったんだからコイツは私が仕留める。
「了解です。…アズサ先輩達もお気をつけて。相手は数だけは多いみたいですから」
周りのアリウス生を見回して答える。怖っ…全員殺気だってら。んでもって先生だけども…私は忙しく成りそうだし補習授業部についてもらうのが良さそうだな。
「先生…補習授業部の皆をお願いします。私は指名されたんで
聖園ミカの方を見るとあっちも私を睨みつけてるな。
嫌な相思相愛だなぁ…でも、アイツに実権握らせるとろくな事にならないのは目に見えてるし。気合い入れてぶっ飛ばすとしますか!
"……大丈夫?"
先生が少し心配してくれてるが…
「任せて下さい。…こう見えても結構強いんですよ私」
いつかの評価をそのまま返すと先生も安心したようだ。
「作戦タイムはおしまい?…じゃ、始めよっか!!」
その言葉を皮切りにアリウス大隊が一斉に動き出す。
補習授業部の面々も先生の指揮のもと応戦し始めた。
聖園ミカはゆっくりと此方に歩いてくる。
補習授業部対アリウス大隊と私対聖園ミカの戦闘が始まった。
原作を久々に読み返すと「あれ?ミカってこんなに露悪的だったっけ?」と思う所が多々あり、半分以上書き直したものになります。
こんな事言わない!ってところもあるとは思いますが楽しんでいただけると幸いです。