ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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ガンマンとティーパーティー

 

 

補習授業部の最終試験の翌日の事。

 

 

「こうして顔を合わせるのは初めてですね?…初めまして、現ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します。本日はお越しいただきありがとうございます」

 

私は今、ティーパーティーの茶飲み用テラスに呼び出されている。

…場所の名前はもうちょい小洒落てた気もするが、ティーパーティー専用の場所ってのには違いないし。さして問題じゃない。

 

「…初めまして。ゲヘナ学園一年、西條林檎です。」

 

問題はティーパーティーの頭に呼び出されて一対一の状態だって事だ。…補習授業部の皆や先生は同伴不可だって言うからお断りしようとしたんだが、既にマコト先輩からGOサインが出てた。参加は決定事項だったらしい。

 

「そう固くならず楽にして頂いて結構ですよ?」

 

桐藤ナギサはあんまり強そうに見えないが…聖園ミカの事例もあるし油断大敵だ。

 

「…じゃ、遠慮なく。」

 

マコト先輩からは好きにやって来いって言われてるし。

まぁ、聖園ミカの一件で報復ってんならわかり易くて良い。最後に後腐れ無くリベンジ受けて来いって事だろうなぁ…エデン条約がどうとか言ってたけどあの人、時々何も考えてねー(テンションに任せ過ぎだ)と思うわ。

 

「時間かけてもしょうが無いし早速始めるか?」

 

ヒフミ先輩の話だとティーパーティーの三頭は仲が良いらしいし。敵討ちは当然考える事だろう。それならちゃんと返り討ちにしてから帰らないとしこりになるもんな。

 

「はい、この度は……はい!?」

 

何か動揺してるな…袋叩きにする予定だったのか?

それにしては周囲に人の気配は無いが…袋叩きにしたいなら先に呼んどかないとあんまり意味ないぞ……?

 

「…はぁ。あんまこういう事言いたくねーんだけどさ。次から増援呼ぶなら先に伏せとけよ。」

 

ま、伏兵なしだから今回はハンデとして先に抜いて良いぜ(先手は譲るよ)

 

そう続けて少々ボロくなったジャケットの裾を払う。

結果的に友人(聖園ミカ)をぶっ飛ばした訳だし、真っ当に相手してやるよ。

 

「そんなつもりではありません!!」

 

慌てた様子で否定するナギサ。

 

「今回の件については全面的に私達(トリニティ)の落ち度です!この度は申し訳ございませんでした!」

 

その勢いのまま頭を下げられた。…うん?

 

「…復讐するために呼んだんじゃないの?」

 

「違います!…………今回の件に関するお詫びをさせて頂きたくてこの機会を作って頂きました」

 

うわぁ、対応ミスった?てっきり校舎裏に呼び出す亜種型決闘かと思ってたわ。

 

「…そう、ですか。すみませんね…つい先日小さな大怪獣とバチバチ撃ち合ったもんですから気が立ってまして」

 

アレは歴代でもトップクラスのバケモンだったなぁ…次にやり合う機会が出来たら迷わずヒナ先輩の助けを乞う事にしよう。

 

「んんっ…そうですね、本当に申し訳ございません」

 

用意してくれてた紅茶を飲みながら聖園ミカの強さに思いを馳せていると何やら聞きたい事が有りそうな様子。

 

「桐藤さん。聞きたいことがあるならストレートに言ってくれません?私頭あんま良くないんで察するとか無理ですよ?」

 

マコト先輩から"もし話し合いをする時に困ったら最初にこう言ってみろ"と言われた事をそのまま伝える。

すると考え込む事数秒、意を決した様に問いかけてきた。

 

「…今回の件についてですが、万魔殿は何処まで把握されていたのですか?」

 

此方をジッと見つめるナギサ。

何処までって言われてもなぁ…

 

「私は万魔殿所属じゃありませんから詳しい所は知りません。マコト先輩が裏の事情まで含めて全てを把握していたとしても驚きませんが…全く知らずに楽しそうだから認可してたとしても納得出来ますし」

 

少なくとも昨日大筋を報告した時点では大笑いしてたから今回の結果は予想を超えられたんだと思うが。

 

「そもそも今回私がトリニティまで来たのは先生の身に危険が迫っていると思って万魔殿に直訴したからですし」

 

その点を鑑みるとあんま詳しくは知らないんじゃないかな?

 

「ではあくまで個人的な理由、なんですか?」

 

「そうですよ?…まぁそれも勘違いでしたが」

 

てっきりアンタが先生を亡き者にしようとしてる可能性が高いって考えてたんですよ〜、なんて言えないが。

 

少しの間沈黙が二人の間を流れる。

頭いい奴と話すと時々こういう時間があるんだが…色々考えてる奴は大変だな。私はそういうの苦手だからよくわかんねーわ。

 

暫く菓子を貪る私を放置して考え込む桐藤さん。

…あ、そう言えばなんか詫びがあるとか言ってたな?

 

「…あ、そうだ。お詫びがあるって言ってましたよね?」

 

「えぇ。私に出来ることでしたら…」

 

何でも良いんだろうか?1発殴らせろとかでも?

でも補習授業部の皆の方はなんか許してるっぽいしなぁ…

ゲヘナに有利になる事でも頼むか?

うーん、でも先輩には好きにしろって言われてるしな…

……良し決めた。

 

「補習授業部の面々に謝罪を。許されるまで頭下げて来て下さい」

 

迷惑を被った挙げ句クーデターを未然に防いだ立役者にそれだけじゃ少なすぎるだろうが…ま、私への詫びってんならそれでチャラでいいだろ。別に直接何かされたわけじゃ無いし。目の前の…なんだコレ?3層になってる皿の塔からロールケーキを取りつつ答える。

 

「それは勿論そのつもりですが…西條さんには必要ないのですか?」

 

「何か私に謝らなきゃいけない様な事しました?」

 

私には覚えがないが。覚えがないってことはどうでも良いって事だ…それにしても美味いなこの菓子。

 

「しかし、それでは…」

 

面倒な…。今回の件で言うなら私は勝手に首を突っ込んで勝手に巻き込まれたんだからそれで良いじゃん。

うーん、じゃあ適当に…

 

「何かくれるってんなら土産にこの菓子くれません?」

 

皿に乗ってるロールケーキを指差しながら答える。

 

「…こんなものでよろしければどうぞ。お帰りの際に包みますね」

 

言ってみるもんだな。有り難く頂こう。

 

 

それからまた暫く、黙々と目の前の菓子を食ってると突然疑問が飛んできた。

 

「…ミカさんの事、お聞きにならないのですか?」

 

いきなり出た思いも寄らない名前に少しむせた。

 

「グッ…んん。なんで聖園ミカが出てくるんです?」

 

アイツ、今はシスターフッドの所で静養と言う名で軟禁されてるって話だろ。

 

「あの日、ミカさんを止めたのは貴女だと聞いています。」

 

「補習授業部の皆と、です。私だけじゃない」

 

それに私だけアイツとやり合う理由が少し違ったし。

 

「クーデターとかそう言うのを止めようとか高尚な理由じゃなくて…少しは有りましたが、売られた喧嘩を買っただけですし」

 

つまりはただの私情だな。…補習授業部は違うだろうけども。

 

「だから別にどうでも良いんですよ。喧嘩の後の事は偉い人達にぶん投げて…あ、表歩けるようになったら飯でも食いに行こーぜって伝えておいてくれます?」

 

何とかぶっ飛ばせて満足したし。あのゲヘナ嫌いのお嬢様がどんな反応すんのか楽しみだな。

 

「一応伝えますが…多分断られますよ?」

 

もう、この大真面目さんめ。あのアンチゲヘナが私と仲良く飯食うわけねぇのは判ってるっての。

 

「ま、冗談ですよ冗談。アズサ先輩の知り合いやらがまだ潜伏してるらしいし?これから大変だろうけど私は一抜けさせてもらいます」

 

アリウスの大半は保護されたみたいだが精鋭のスクワッドとやらは捕まってないって話だ。

襲撃前に聞いた話だとかなりの凄腕だって話だしな。頼まれたら手伝い位はするけども…ま、後は正義実現委員会達がなんとかするだろ。

 

先生も補習授業部の解散と共にシャーレへ帰還するって話だしな。

だから私のトリニティでの護衛はお役御免となる。

 

「嵐のような人ですね…」

 

暴れた後の片付けもしないで帰るからか?

でも元はといえばよ…

 

「人ん家の庭で火遊びした代償としてなら相応では?」

 

他学園の領内で謀略すればそりゃ怒られるに決まってるじゃん。先輩じゃなくてもそれなら同じ事お前の庭でやるね?ってなるし、多少無茶やっても構わないよなって思うよ。

 

「"最初に手を出したのはお前等だというのを忘れるなよ"…マコト先輩からの伝言です」

 

マコト先輩からの伝言も忘れずに伝える。

…まぁ半分位冗談混じりだと思うけど。何せ混沌と自由が大好物な人だ。騒動の種はバッチ来いだろう。

 

「……肝に銘じておきます。」

 

「そうして貰えると助かります。また同じ事やるのはゴメンですし」

 

ま、それはマコト先輩の都合だ。私としてはトリニティのゴタゴタに首突っ込むのはこれで最後にしたいわ。

少なくとも聖園ミカとはもうやりたくない。

 

「…そろそろお開きにしましょうか」

 

桐藤さんが席を立つ。続いて私も席を立った。

 

「西條さん。この度のご協力、本当にありがとうございました」

 

「どういたしまして…ほとんど補習授業部の皆のお陰ですが」

 

大分尖ってるけど優秀さで言えば精鋭部隊にも引けを取らない連中と友達になれたのは今回の一件で得た最大の成果だな。

 

「またいつかお会いできる事を祈ってます」

 

「今度は補習授業部の皆と気兼ねなく集まれる事を願ってます」

 

こういう面倒な建前やら本音やらを探る会じゃなくて、普通に茶を飲む会なら喜んで参加するよ。

ヒフミ先輩と仲良いって聞くし、補習授業部の面々と一緒ならもっと会話に花が咲くことだろう。

 

「えぇ、その際は是非…」

 

少し引き攣った笑顔で見送られて今回の茶会は終わりとなったんだが…ありゃ拉致る時に何か言われたんかな?ま、ハナコ先輩結構怒ってたしさもありなん。

 

 

 

 

こうして私のトリニティへの短期出張は終わった。

結局先生が襲撃される事は無かったが、トリニティ転覆を狙ったクーデターに出くわすなんていうレアパターンを引くなんてな…

クーデターなんてレッドウィンター以外で聴いたことない単語だぞ…しかもガチのバケモン主導。割と危機一髪だったんじゃね?

 

ヒフミ先輩の補習って話からこんな事件に関わることになるとは思ってもみなかったが終わりよければ全て良しだ。

補習授業部の皆も合格してると良いなぁ。あんだけ頑張ってたんだし報われて欲しいわ〜…

 

ま、後はマコト先輩に詳しい事情を説明して、万魔殿にお土産持って行けば今回の件は終了だな!

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