ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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ガンマンの日常 その2

 

 

ヒフミ先輩から補習授業部の試験合格の知らせが届いた。

全員頑張ってたし、良かったわ…

桐藤ナギサからの正式な謝罪も受けて晴れて全員自由の身という訳だ。今度また集まって合格祝いをやるのでその時は一緒にどうかと言う誘いも来てたが…私あんまり役に立って無いと思うんだけど…まぁせっかくのお誘いだし、参加しますと答えておいた。

 

そんなこんなで午前中を過ごした私は今…

 

「てかよー、最近林檎どこ行ってたのよ?」

 

いつもの食堂で飯食った後、クラスメイトに絡まれている。

まぁ1週間以上顔出してなかったからなぁ…

 

「トリニティ領までちょっとな…あ、これお土産」

 

詳しい事は話すなって念押しされてるしな。

適当に話作らせてもらおう。

 

「なんでトリニティ?…美味そうだなこれ」

 

「美味い店があるって先輩から聞いたから。そんで変装して行ったら想像以上にやべー所だったわ…」

 

世界は広いと痛感したね…

 

「ヤバいって何がよ?」

 

「まぁ、色々だよ色々」

 

詳しく話したら万魔殿に連れてかれそうな内容になっちまう。

 

「なんだよー、気になるじゃんかー!」

 

「万魔殿から口止めされてんだよ…それでも聞きたいのか?」

 

そう言うとピタッと不平不満が止まる。

 

「…今度は何して来たんだ?」

 

「心外だな。特に何もしてないって」

 

最後以外は。

 

「お前の"何もしてない"は信じられない言葉トップ3に入るぞ?」

 

「失礼な奴だな…本当の事だって」

 

言ってないことがあるだけで。

 

「…もうその件はいいや!聞いても碌なことなさそうだし」

 

それが賢明だな。私も面倒になって来たらぶっちゃけようと思ってきたところだったし。

 

「最近何かおもしれー事とかねーの?」

 

雑な話題振りだなおい。平和が一番だぜ?…少なくともリアルTSCみたいな奴と撃ち合わなくて良い日常は大歓迎だ。

ま、でも最近の話題って言ったら…

 

「最近だとほら、エデン条約関係じゃね?」

 

最近関わった件だが今は話のネタにする。

 

「それなー。いきなりトリニティと手ぇ組むって何言ってんだ?って感じだよなー」

 

発表もつい最近だったもんな。

 

「ま、偉い人は何考えてんのか分かんねえけどさ。結局の所アタシ達のやることはあんま変わんなさそうだよな」

 

喧嘩売ってきたなら買うし、腹が立ったら喧嘩売るもんな私達。

 

「違いないね。…まぁ、トリニティ狙いの営利誘拐とかは減るんじゃね?ゲヘナが出張るなら最悪ヒナ先輩が出てくるじゃん?」

 

条約後はゲヘナ生がトリニティ生を誘拐する件数は減りそうだな。

…そもそもあんまなかったと思うが。金に困ったら自領でカツアゲか強盗するのがデフォルトだしな…

 

「それな。空崎先輩が出てくる可能性考えたらトリニティに手ぇ出すの躊躇う奴絶対居るもんな…」

 

主に2年生と3年生。ヒナ先輩にボコされた経験が多い奴程理不尽な強さを目の当たりにしてきてるし。

 

「…トリニティ側も大概だと思うけどな」

 

正義実現委員会の長がどれほどのモノか知らんけど、政治の頭張ってた聖園ミカがあの強さだったんだからアレ以下って事は無いだろうし。あれ以上か…絶対睨まれないようにしよう。

 

「そーなん?…まぁ治安維持組織が弱い訳ねぇもんな」

 

そりゃそうだわ。と2人して納得した所でランチタイムに突入したのか人が増えてきた食堂を後にした。

 

今日は午後からバイトだな…ソラ先輩、元気してると良いんだけど…

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ~!…林檎さん!お久しぶりです!」

 

「お久しぶりですソラ先輩。お変わり無いようで何よりです」

 

バイト先に着くと先輩が出迎えてくれた。

…店舗の裏口が無いのは構造上しょうが無いとしても、従業員用の出入口は作るべきだったろ。

 

「1週間空けててすみません…これ、お土産です」

 

制服に着替える前にトリニティ土産を渡す。

 

「わぁ…これはご丁寧にどうも」

 

ロールケーキはさっきので品切れだから何かよくわかんない焼菓子ですわ。

 

渡した土産とともにバックルームへと引っ込むソラ先輩。

…タイミングミスったな。後で渡せば良かった。

 

制服に着替えてソラ先輩と並んで仕事をするが…

 

「…相変わらず暇ですね」

 

「ははは…そうですね」

 

久々だからか会話が覚束ない…!

 

「先輩、1週間どうでした?」

 

「相変わらずでしたよ?時々強盗が入りましたけど…」

 

ん〜相変わらずの治安の悪さで逆に安心するわ〜

 

「一応、ヴァルキューレの方にはパトロール強化してくれる様にお願いしといたんですが…」

 

あんま効果無かったかな?

 

「あぁいえ!強盗は来たんですけど、その都度取り押さえて頂いてました!」

 

おお、流石だなヴァルキューレ。

 

「普段から仲良くしてた甲斐がありますね」

 

「そ、そんな風に言ったらダメです!」

 

怒られてしまった。公権力と仲良くする理由ってその位なんじゃ?

 

「ヴァルキューレの皆さんも林檎さんの帰りを待ってたんですから」

 

私を?何かやらかしたっけか…?

 

「…すみません、心当たりがないんですけど」

 

本気で首を傾げると少し呆れた様に答えてくれる先輩。

 

「…寂しかったんですよ皆」

 

んん?私、そんなに愛想よくしてたか?

 

「…縛り上げた強盗を回収して貰ってただけで?」

 

大体事情説明とかはソラ先輩がしてくれてたからあんま話したりとかしてないし。

 

「それをほぼ毎日やってた訳ですから。突然無くなったら寂しくなるものですよ」

 

「毎日挨拶してくれる奴がいきなり居なくなった、みたいな感じですかね?」

 

それです!と指を差しながら肯定してくれる先輩。

 

「いつの間にか日常の一部になってたんですね」

 

強盗が日常的に襲ってくる日常ってのもどうかと思うが。

 

「はい!…まぁ、強盗は少ない方が良いんですけどね…」

 

先輩も同じ結論に至ったようだ。

いい加減見せしめに何人かズタボロにして入口に吊るすか?

ゲヘナじゃやり過ぎたバカが良く吊るされてたが…D.U.じゃ見かけないしなぁ…

 

「先輩、次に来た強盗を見せしめに吊るしたらマズいですかね?」

 

こう、てるてる坊主みたいな感じで軒先に。と続けると凄い勢いで首を横に振る。

 

「だ、ダメです!絶対にダメです!!」

 

ダメか…D.U.の法律は厳しいな。そういや三振法みたいなの無いんだ…

 

「三振法?ってなんですか?」

 

声に出てたか。えっとですね…

 

「三振法ってのは"2回目までは法で裁く、3回目は私刑も可"みたいな奴ですね。大抵1回襲った所は遠慮しますが3回も来るバカは地獄を見せても良いって法です」

 

マコト先輩が制定した奴だったかな?

これのお陰で何回も襲われる店舗が減ったし、私刑可になった奴は大抵賞金首になるし基本的にお小遣い代わりに四六時中狙われるから心休まることが無いしでWin-Winな法律ですわ。

 

「まぁ、ちょっとやりすぎる奴らも多くて風紀委員が超連勤する羽目になってましたが」

 

襲われた店舗の主人とかは比較的優しいんだが…そこでバイトしてた奴らは死なきゃ良いだろ!でシバく奴もいたから最初の悪法とも言われてるな。…主に風紀委員から。

 

一般市民からは概ね高評価だったのもあって未だ現行法だが。

大抵は1回で辞めるし。風紀委員にシバかれても反省しないバカを叩くための法律、みたいな立ち位置になっている。

 

「それだとウチの場合は…」

 

「大体昼過ぎ位に来る強盗(常連)は血祭りに上げて店頭に吊るせますね」

 

運が良ければ夕方までにはやれると思う。

 

「絶対にやらないでくださいね?」

 

真剣に私を見つめる先輩に笑いながら答える。

 

「当たり前じゃないですか、D.U.じゃやりませんよ」

 

…ゲヘナまで連れてってやっちまうのは法的にどうだろ?

やる予定は無いが今度万魔殿に確認してみよう。

 

「と、兎に角いつも通りにお願いします!」

 

「えぇ、任せて下さい。鎧袖一触ですよ」

 

ホルスターの上からリボルバーを軽く叩きながら答えた。

ようやく日常に戻って来た感じがするな…

友達と飯食ったりバイトしたり、メッセージでてんやわんやしたり。こういうので良いんだよこういうので。

 

 

 

 

 

バイトを終えて家路に着く途中ふとエデン条約の事が頭をよぎる。

 

…明日で条約締結かぁ。

どうするかなぁ…一生に一度だし、行くだけ行ってみるか?マコト先輩に頼めば席用意してくれるみたいな事言ってたし。

 

…うん、行ってみるかエデン条約調印式。

ついでに補習授業部の皆に合格祝い渡してこよう。

祝いの品は…ゲヘナの菓子で良いか。ジャンクフードっぽさが強いけどまぁ逆に珍しいだろ…多分。

 

そうと決まればマコト先輩に連絡しないとな!

 

 

 

 

 

 

エデン条約締結まで、後1日。

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