マコト先輩との会話を終えて直ぐに行動し始めたハナコ先輩についてったらあれよあれよと言う間にトリニティ戦力が集結している場所まで来ていた。
いつの間にこんな集めたん?
「ティーパーティーの指令通り聖堂の護衛と儀杖兵だけ残してそれ以外のベテランで出来うる限り抽出して来たっす」
糸目の正義実現委員が更に問いかける。
「聖堂の守りは万全を期す様にと言われてたのにいきなりこんな指令…本当に大丈夫なんすか?」
「えぇ、問題有りません。聖堂の守りは万魔殿議長閣下が保証してくれています」
ハナコ先輩が淡々と答えると周囲か少しざわめいた。
正義実現委員会が多いし、ゲヘナ嫌いも多いんだろ…
「信用出来るんすか?」
糸目の正実が口を挟む。まぁ、それが普通の感覚だよな。
「勿論。直接話させて頂いた時もそうですがあの方は理を解さないタイプではありません」
敢えて無視する事はあるけどね?
その辺のヒャッハーしてるヘルメットと比べれば全然理性的だけども。
「この様にアリウスの作戦概要まで入手、提供して頂いています」
さっと周囲の人に見えるようにタブレット?の画面を晒す。
驚きの声が上がるがそれよりも困惑が強いな。
周囲の正義実現委員会、おそらくは上級生だろう奴から疑問があがる。
「それが贋物でない証拠は?」
「そんなもんあるわけないじゃん」
つい口に出してしまった。やべ、と思った時にはもう遅く周囲の視線が私に集中していた。ハナコ先輩が目を少し見開いて私を見ている。…すみません、口が滑りました。
「そもそもあなたは何で此処に居るんすか?」
さっきの人だと喧嘩になりかねないと思ったのか糸目の正義実現委員が割って入る。トップはまだゲヘナ嫌いを表に出さないだけの自制心がある見たいで助かる。
それで私が何で居るのか、そんなん…
「成り行き、ですかね?」
ぶっちゃけそれ以上の理由が無い。元々顔出して合格祝って少し観光して帰ろう、位しか考えてなかったのにいつの間にかまた首突っ込む事になってんだよ。
「強いて言うなら
と補習授業部の方を軽く見やるといつも通りのアズサ先輩、軽く頭を抱えるハナコ先輩、こっちに突っ込もうとするコハルを抑えてるヒフミ先輩の姿が見えた。…ヒフミ先輩、コハルを抑えてくれてありがとうございます。
「その情報が正しいか否かがそんな大事ですか?…ゲヘナ側はそれが本当である可能性を重く見て準備して来たって事を鑑みて欲しいですね」
そもそもアリウスが信用ならない相手なんだし。そこからの情報に確信なんて持てるわけがない。と続けると少し顔を歪めて返してくる糸目の先輩…多分先輩だよな?
「そんなあやふやな情報で今から突っ込むんすか…」
それが嫌ならゲヘナで全部片付ける事になるんだけどな…
その場合は言葉通り全てを粉砕するだろう。
…マコト先輩の心証が地に落ちるから本当に更地にしそうだけど。
「まぁまぁ、落ち着いてください御二方。情報に確証はなくとも信憑性は高いと判断しました」
少なくとも隠し通路があるのは確かです。と続けるハナコ先輩。
その言葉を聞いて少し納得したのか此方に軽く謝罪する糸目先輩。
「こっちがちょっと神経質になってて…ごめんっす!」
「此方こそ棘のある言い方をしてしまってすみませんでした」
トリニティに囲まれてるのが思ったよりストレスに感じてるのかな私…?あんまそういうの意識した事無かったけど…
「さて、時間もあまり有りませんしそろそろ向かいましょうか」
ハナコ先輩の号令でゾロゾロと移動する正義実現委員会+補習授業部。割合的に補習授業部がおまけ見たいな感じだな。
「さっきは突っかかってごめんっす」
いつの間にか横に来た糸目先輩。律儀な人だなぁ…
「いえ、私が異物なのは理解してますし別に気にしてませんよ」
そもそもトリニティ内でもゲヘナ嫌いが多い正義実現委員会にゲヘナ生をぶち込んだらこうなるわな。
「それでもっす。…あ、自己紹介がまだっすね?私は仲正イチカ、正義実現委員会の2年生。今回はツルギ先輩から指揮を任されてるっす」
よろしく、と手を差し伸べられた。
「ゲヘナ学園1年生、西條林檎です。あー…役職とかは特にありません」
よろしくお願いします、と握手する。
「まだ1年生なのにしっかりしてるっすね?」
手を離しながらそう言うイチカ先輩。
「そうですかね?…まぁデカい方だとは思いますけど」
イチカ先輩より20cm位デカいし。てかこの集団だと私だけ頭一つ抜けて目立つな。
「そういう意味じゃないんすけど…」
苦笑してじゃ、またと離れるイチカ先輩。
と同時に背後から衝撃。
「アンタいきなり突っかかるとか何考えてんの!」
コハルだった。ごめんて。
「すまん、つい口が滑った。ハナコ先輩もすみません」
段取りが無茶苦茶になったし。
「大して変わりませんから大丈夫ですよ〜」
でも次からは気をつけましょうね、と釘を刺された。
「あはは…でもそこが林檎ちゃんらしい所でもありますよね」
ヒフミ先輩のフォローが追撃の様に刺さった。
「以後、気をつけます…」
少し肩を落としながら目的地へと歩きだす。
…アズサ先輩、少し気を張りすぎな気がするけど大丈夫かな?と目線を向けると目が合った。軽く頷くアズサ先輩。…まぁいつも通りにするってのも難しいか。
速く終わらせて安心してほしいもんだ。
歩き続けること数十分、目的地である修道院跡地に到着した。
「…此処の地下に通路があり、目標は此処を通って来ると思われます」
ハナコ先輩が話し始める。
「ルート自体は複数に渡るためここ以外にも幾つか候補地はありますが…そちらは」
チラリとイチカ先輩を見やるハナコ先輩。
「他の候補地は別働隊が向かってるっす」
抜かりはない、と言わんばかりに応えるイチカ先輩。
「問題はミサイルが何処から撃たれるのか、ですが…」
考え込むハナコ先輩。まぁ、そんなデカブツが通せる様な所には見えないわな。
「まぁ、最悪はマコト先輩が何とかしてくれますよ」
あんだけ色々持ち込んで対抗手段が何も無いって事はあり得ない。
「…そう、ですね。あまり考えすぎても仕方がありません」
思考をリセットして目の前の事を片付けるのが先決だ、と向き直るハナコ先輩。
「…来たぞ」
アズサ先輩が修道院から出てくる一団を見て注意喚起すると同時に全員が戦闘態勢に入った。流石は正義実現委員会、規律が取れている。
「仕掛けるっすか?」
「いえ、まだ…アズサちゃん、スクワッドのメンバーは居ますか?」
問いかけるハナコ先輩に視線を巡らせたアズサ先輩が答える。
「……居た。中心付近、黒髪のマスクを付けてる…」
目を向けると確かにそんな感じの奴が居た。…すげーマスクだな。コスプレ見たいでカッコ良いじゃん。
「あの人物は確実に捕縛を。事情を聴かねばなりません」
「了解っす…総員、準備は?」
無言で銃を構える正義実現委員会。
「オッケーっすね…じゃ、やっちゃいましょう」
号令を出すとそのまま静かに包囲していく。
風紀委員みたい…いや、統制の取れた軍隊って意味じゃ万魔殿の方が近いか。
「そこの君達、ちょっと待ってもらってもいいっすか?」
進行する前面に展開した部隊と共に問いかけるイチカ先輩。
進行を停止するアリウスとその先に立ち塞がる正義実現委員会。
「何をするつもり…とは聞かないっす。投降の意思が有るなら無碍には扱わないと…」
と、言った辺りで銃口が此方を向いた。
「馬鹿にするなよトリニティ…私達は止まらない!」
アリウス生徒の声と共に戦端が開かれる。
襲い来る銃弾から身を挺して適当な遮蔽物に身を隠す。
…此処が廃墟で良かったわ。隠れる場所に事欠かないし。
「抵抗を確認!発砲を許可するっす!」
その言葉と共に反撃を開始する正義実現委員会。
おぉ〜流石に正規兵、強い人達ばっかりだなぁ…
みるみる倒れていくアリウス。それでも抵抗を止めずに撃ち返してくるが…
「…!?背後からも襲撃!囲まれてる!?」
先回りして包囲した状態からの戦闘開始なら寡兵でも勝てるわ。
更に激しくなる銃撃を他所に中心で微動だにしないスクワッドのマスク女を見る。…何が狙いだ?
疑問に思っているとアズサ先輩が飛び出してマスク女に呼びかけている。
「サオリ!もう勝敗は決しただろう!」
その声に反応を返すことなく。ただ前を睨むようにしているサオリ。おっと、アズサ先輩狙われてら。
即座に3発、其々の頭に叩き込んで黙らせる。
…この距離で倒せるって事は相当弱ってんな?弱小ヘルメット団程度の体力しかないぞコイツら。
「致し方ない…!」
サオリに対して発砲するアズサ先輩。数発食らって崩れ落ちる。…呆気無い最後だな。
「サオリ!?」
倒れる時にズルリと黒髪が落ちる。下から出てきたのは茶髪の女だ。
「やられた…!」
咄嗟に周囲を見渡すアズサ先輩だったが既に大勢は決している。
もはや立っているのは正義実現委員会と補習授業部の皆だけだ。
空を見あげながらアリウス生徒が呟く。
「全ては虚しい…」
その言葉と共に上空を何かが飛んで来る。
飛行機でも、ヘリでもない。
迫りくるそれは、ミサイルに見えた。
「それでも、お前らには勝たせない…!」
道連れだ、と言わんばかりに嗤う。
それを見た正義実現委員会が絶望したような顔になるが…
「甘い。甘すぎるな」
私の言葉とほぼ同時に上空を通過したそれが空中で爆発した。
「私達を狙ったならまだしも
その言葉通りに続々と空中で爆発音が響く。
何発撃ち込んできてんだよアリウス。そんでもって幾ら掛けたんですかマコト先輩…
「ば、バカな…」
驚愕に染まるアリウス生徒に宣告する。
「喧嘩を売る相手を間違えたな」
最初からどう足掻いても貴様らに勝利への道は無い。
マコト先輩の嗤う顔がありありと浮かぶなぁ…
〜聖堂、調印式前〜
「…発射は止められなかったか」
耳打ちする側近にそう呟くと通信機に向かって指示を出す。
「予定通り迎撃しろ。あぁ、発射地点を割り出したら叩き潰せ」
控室で桐藤ナギサと対面している最中、いきなり指示を飛ばす羽沼マコトに目を白黒させるナギサに向かって
「キキキッ…貴様の所の…ハナコと言ったか?見所はあるが流石に時間が足りなかった様だな」
そう嗤いながら話すマコト。言葉を探している様子のナギサに構わず話し続ける。
「まぁ、及第点はやれるが。鬱陶しいハエを落とすのは手出しに含まれんだろう?」
ミレニアム製のミサイル迎撃装置…高い買い物だったが値段相応の働きはしてくれた様で何よりだ。と嘯くマコトに漸く口を開くナギサ。
「一体、貴女は何に備えて来たのですか…?」
淡々と迎撃の報告を受け取っているマコトに問いかける。
あり得ないだろう、ミサイルを迎撃する為の装備を持ち込んだのか?そんなピンポイントな対抗手段を態々?
「勿論、考え得る最悪に。例え今貴様らとアリウスの両方を相手取っても問題なく対処出来る様にな」
その言葉に絶句するナギサ。
その様子を意に介さず、私は臆病なのさ。と続けるマコト。
「臆病だから嫌な考えほど頭に過ぎる。もし裏切られたら?既に手を組んでいたら?諸共に殺しに来る可能性は?…心配の種は尽きないがそれに対処する方法は既に用意して来たとも」
おかげで高くついたが。と少し遠い目をする。
「だからまぁ、ついでに
アレは面白かった。うちの
思い出し笑いをしているとナギサが
「そ、その節はとんだ失礼を…」
と謝罪してきた。どうもこの間の一件から気弱になっているフシがある。以前なら皮肉の一つも交えて反撃してきただろうが…このままつまらん女と話してても時間の無駄だと言わんばかりに話を断ち切る。
「…まぁ良い。ちゃっちゃと署名して終わらせるとしよう」
迎撃の報告も途絶えた。全て処理したと見て良いだろう。
「厳戒態勢は解くな。何が来ても全て撃ち落とせ」
〜旧地下水路跡、同時刻〜
「フェーズ2だ。時刻になったら起爆する」
黒マスクに黒髪、リーダーであろう女の指示でセットした爆薬が爆発の時を今か今かと待っていた。
「ほ、本当に上手く行きますかね…?」
「上手く行かなかったら私達が生き埋めになるだけ。気にするだけ無駄」
「……」
エデン条約締結まで、後10分。
人が、人が多い…難しい…