ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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ガンマンとアリウス その2

 

 

「サオリは何処だ?」

 

影武者になっていた生徒に向かってアズサ先輩が質問している。

先程のミサイル迎撃を見てしばし呆然としていたアリウスだがその言葉には反応を返す。

 

「…裏切り者に言うことは無い」

 

フッと視線を逸らすアリウス生徒。

…素直に喋る気は無いか。

 

「…スクワッドの皆は?主力は何処に行った?」

 

「くどい!貴様に話すつもりは無いと言った!」

 

けんもほろろだなこりゃ。

アズサ先輩の肩を叩いて代わりに質問をする。

 

「まだやるつもりか?もう大勢は決しただろ?」

 

虎の子の爆撃すら初手で封じられてるんだ。お前等に何ができる?

 

「っは!ゲヘナの角つきが偉そうに…!」

 

おーおー威勢の良いことだ。でもさ…

 

「敗者が勝者に逆らおうって?いい度胸だ」

 

最大限まで掛けた(オールインの)勝負で負けたお前らに残るものは命だけだ。これ見よがしに振りかぶった拳を振るおうとすると後ろから腕を掴まれた。

 

「ちょ、待つっす!コイツらは私達が尋問するから暴力はダメっす!!」

 

イチカ先輩が私の目を見て諭す様に話す。

…確かにトリニティ領内ならトリニティの法に従うべきだな。

 

「…すみません。ちょっと頭に血がのぼってました」

 

ミカとやり合ってから沸点が低くなってんのかな…反省反省。

 

「判ってくれれば良いっす」

 

手を離すイチカ先輩。力を抜いて後ろに下がる私に向かって罵声を浴びせるアリウス生。

 

「逃げるのか角つき!所詮は蛮族、まるで犬だな!」

 

…あぁん?

 

「我らはまだ負けていない!今のうちに勝ち誇るが良い!」

 

…今の言葉は聞き逃がせないな?

回れ右してアリウス生の元へ戻る。止めようとする補習授業部の皆を押しやって目の前に縛られたアリウス生徒の襟首を持ち上げて無理矢理視線を合わせた。

 

「誰が負けてないって?」

 

額がぶつかる寸前まで面を近づけて睨みつける。

周りの正義実現委員会も行く末を見守って居るのか手出ししようとはしてこない。

 

「ヒッ…」

 

言葉が出ない様子のアリウス。…あぁ、足が浮いてるからか?自然と首が締まり気味になってるかもしれんがそんなん知ったこっちゃない。

 

「黙ってちゃ分かんねぇよ…喋れない無能な口なら犬らしくお前の喉笛噛み切ってやろうか?」

 

ガチリ、と食いしばった歯から音が鳴る。

顔が青ざめて来た辺りで口を開くアリウス。

 

「ま、まだ負けてない!私達には秘策がある!」

 

「まだ何か隠してんのか…さっさと話せ」

 

さっと手を離すと地面に落ちて咳き込むアリウス生徒。

…此処がゲヘナならさっさと話せボケと蹴りの1発でも入れる所だけど暴力はいけないとさっき学んだからな。

 

「なにしてんのっ!」

 

頭に衝撃、振り返るとコハルが私の頭に平手打ちしたようだった。

 

「何すんだよ?」

 

「こっちの台詞よ!さっきイチカ先輩に任せる流れだったじゃないの!なんでいきなり掴みかかるわけ!?」

 

ああ、あれか。

 

「?別に任せるなんて言ってない。それに暴力はいけないって言われたからトリニティ式に合わせて非暴力で対応したじゃん」

 

ほら、殴っても蹴っても撃ってもない。

ちょっと咳き込んでるけど。

 

「負けた分際で犬呼ばわりして来やがったからお灸を据えただけ」

 

その上まだ何かあるみたいな事言ってたからさ。この場で聞き出せるならそっちの方が良いだろ?と続けるとまわりから溜息が聞こえる。なんでだよ…

 

「エデン条約後のゲヘナとの付き合いは認識の擦り合せからやらないとダメっすね…」

 

イチカ先輩も頭痛を抑える様に額を抑えながら言う。

一応言われたこと(暴力はダメっての)は守ったじゃんか。

 

 

「ゲホッ…私達は囮だ」

 

 

あぁ?ミサイルまで持ち出して何言ってんだお前?

 

「!?まさか…」

 

ハナコ先輩が何かに気づいた瞬間、大きな爆発音と共に巨大な土煙が上がる。…聖堂の方!?

 

 

「あぁ…作戦は成功したんだな…」

 

 

アリウス生の言葉に愉悦が混ざる。

 

 

「これで私達の勝利は揺るぎ無いものになった…!!」

 

 

満面の笑みでそう告げるアリウス生に詰め寄る正義実現委員会を差し置いて聖堂方面へと駆け出す。

 

まさか、いやあり得ない!あの人が出し抜かれるなんて…!

 

「林檎ちゃん!?待って下さい!!」

 

ヒフミ先輩が止めてくるが申し訳ないがそんな暇はない!

 

「すみません先輩!先に行ってます!」

 

一言謝ってそのまま走り抜ける。

大丈夫だとは思う。あそこにはマコト先輩もヒナ先輩も居るんだ…あの2人が居て、ゲヘナの戦力も十分に居たはず。

 

それでも嫌な予感が消えてくれない。

胸の苛立ちを掻き消す様に走る。

聖堂までそう遠くない、直ぐに合流出来るはずだ。

 

「大丈夫ですよね、先輩…!」

 

何故か祈るような言葉が漏れ出た。

この時点では現状を知る由もないのに。

まるで何かに急かされる様に走るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜聖堂、調印式〜

 

 

「壮観だな…宗教と言うものには疎いが芸術としては素晴らしいと思う」

 

聖堂内部、祭壇前で調印を待つ書類の前で何処か浮かない顔のナギサに言うわけでもなく呟くマコト。

 

「…えぇ。歴史のある建物ですから」

 

少し上の空なナギサの言葉に振り返るマコト。

 

「なんだ?貴様の推し進めた条約がようやく実ろうという結実の時にする顔ではないぞ?」

 

平然とした様子のマコトと比較して少し沈んだ様子のナギサは少し目立つ。…見る目がある者なら気づくレベルの差ではあるが。

 

「いえ、そんな事は…」

 

言葉を濁すナギサに内心で溜息を吐きながら言葉を返す。

 

「…今ならまだ止めても構わんが?別に私はどっちでも良い」

 

その言葉を聞いたヒナが凄い顔でマコトを見る。

…流石に話に入っては来ないがマジかコイツ?見たいな顔をしてて面白い。

 

「それも良いかも知れませんね…」

 

おいおい、マジか貴様…

 

「そうか。では貴様を地下墓地に叩き込んで終いとしよう」

 

冗談めかして言うと流石にそれはとヒナが割って入ろうとするが

 

「地下墓地?…此処にそんなものはありませんが…」

 

ナギサのその言葉でマコトの表情が真剣なものに変わった。

雰囲気が変化した事に気付いたヒナが先生の側に控える。

 

「何?情報では確かに地下墓地があったはずだが…」

 

記憶を辿っても間違いはない。事前の調査報告では確かにこの古びた聖堂には地下墓地があったはずだ。

 

「いえ、もう使われていない地下水路ならありますけど…」

 

それが何か?と雰囲気の変わったマコトに気圧される様に答えるナギサ。更に顔が険しくなったマコトが更に質問を重ねる。

 

「それは何処に繋がっている!?物理的に閉塞させているか!?」

 

激しい剣幕にタジタジになりながらも答えるナギサ。

 

「文献には残っていません!古いものだからと立ち入り禁止処置はしていますが…」

 

その言葉を聞くやいなや全員に指示を出すマコト。

 

「総員退避!この建物から出ろ!ヒナは先生(ソイツ)を連れて行け!!」

 

そう言うと同時にヒナが先生を抱えて出口へと飛ぶ。

周囲に居た儀杖兵も出口へと向かって脱出を図る。

 

「いきなり何事ですか!?」

 

狼狽するナギサに慌てた様子で怒鳴る。

 

「馬鹿が!侵入経路になり得る箇所が有って敵の襲撃があったんだぞ!?本命にしろ囮にしろ確実にそこを狙うだろうが!!」

 

以前の貴様ならこの程度の事が判らないはずもなかっただろうに…!と歯噛みしながら自身も撤退しようとした瞬間、爆音と共に大きな揺れが建物を襲った。

 

「クソッ!間に合わん…!」

 

その場に居た側近、近衛兵と共に崩落に巻き込まれるマコト達。

近くに居たナギサを引き寄せると庇うようにして衝撃に備える。

 

「議長!」

 

「こっちは良い!表に出てイロハの指示を仰げ!私は後で合流する!!」

 

出口と祭壇側で配下と分断され、最後にそう言い残すと更なる爆発音と共に完全に沈み始めた聖堂と共に落ちていくマコト達。

 

この私が見落とすとはな…この借りは必ず返すぞアリウス…

 

落ちてくる瓦礫に耐えながら歯を食いしばる。

…ヒナを表に出せたのは僥倖だった。アレが居れば先生の身は安全だろう。後は如何にして反撃、殲滅するかだが…

 

「面白くなって来たじゃないか…!」

 

この状況に心が躍る。最大限の準備をしてもくぐり抜けてくる窮地をどう切り抜けるか、どう落とし前をつけさせるかを考えるのは最高に愉しい。

 

久しくなかったピンチだ。盛大に暴れさせて(最高に愉しませて)もらうとしよう。

 

 

我ら(ゲヘナ)に一撃いれた事は褒めてやる。

 

お礼に貴様ら纏めて全員丁寧にすり潰してやろう。

 

命以外の全てを貰うぞ、アリウス。




大分原作と乖離してますがもうこの辺りからはゴリゴリ創作していきますのでご容赦下さい。

また、資格取得の勉強が佳境に入るためしばし更新が止まります事をお許し下さい…
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