ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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ガンマンとアリウススクワッド

 

 

"ヒナ、大丈夫?"

 

先生が心配そうに声をかける。

先程の通信で救援を断られた挙げ句、手厳しい言葉を投げかけられていたから。

 

「えぇ、問題ないわ」

 

だから、少し嬉しそうな表情のヒナを見て驚いた。

 

"それなら良いのだけど…"

 

聖堂が崩れた後の大穴を背後に回して進みだすヒナと先生。

 

"…嬉しそうだね?"

 

つい口に出してしまった。そんな場合じゃないと言うのに。

 

「そうかしら…いえ、そうね」

 

少し考えた後に口にした言葉には色んな感情が混じっている様に思えた。

 

「皆を守らないといけない、そんな風に思って居たのだけれど」

 

クスっと笑いながら目の前に現れた亡霊を打ち砕く。

 

「マコトが言う通り、何時までも傍に居られる訳じゃないものね」

 

続けて現れた集団を水平射撃で一網打尽にする。

 

「私のやり方が全部間違っていたとは思わないけれど、マコトのやり方も間違ってないと思うから」

 

背後から迫る亡霊には背面撃ちで対処。

 

「色々肩の荷が降りた気分だからかもね?」

 

全滅させたのを確認して振り返るヒナ。

…雑談しながらサラッと全滅させてない?これは確かに頼りたくなる気持ちも分かる気がする。

 

"仲が良いようで何よりだよ"

 

最後の剣幕は相当怒ってる様に聞こえたからヒヤヒヤした…と先生が言うと

 

「どうかしら…私は今でも友人だと思っているけれどマコトは違うと思うわ」

 

あの時だって普通に怒ってたし。と続けるヒナ。

 

"そうなの?"

 

それにしては大分打ち解けた話し方に思えたけど…

 

「そう…先生、少し下がって」

 

指示通りに下がると正面にトリニティともゲヘナとも違う制服の一団が現れた。

 

「目標を発見。全部隊へ通達」

 

"君達は…"

 

先生が声をかけると同時に先程吹き飛ばして居た亡霊と共にマスクが特徴的な女が姿を現した。

 

「…やはり、そんな容易くは無いか」

 

先生を庇うヒナを目の前にしてリーダーと思われる女…錠前サオリが呟く。

 

「貴女達がアリウス分校?…舐められたものね」

 

この程度の数で私を止められるとでも?

 

手にした身の丈程の大きさの愛銃、終幕:デストロイヤーに凶悪な光が集まる。バチバチと音を立てるようにプレッシャーが増す。

暴発しそうな程チャージされた光と共に構えられた機関銃から銃弾が放たれた。

 

着弾した場所が大きく抉れ、外れた弾は木々を貫通して射線上の全てを薙ぎ払った。

 

当たった者は例外なく意識を飛ばし、亡霊に関しては纏めて吹き飛ぶ始末。

 

「規格外だな…だが」

 

2人の目の前に亡霊が無限と言って良い程に溢れ出す。

 

「ETOは既に我らのものと成った。我々は過去のトリニティに存在したユスティナ信徒の複製(ミメシス)をも戦力としている。無尽蔵に湧き出る戦力を前にどれだけ粘れるか見ものだな」

 

"これは…!?"

 

流石に無限湧きは無理じゃ…!?

 

 

「…ただ数を集めてもそれは烏合の衆。私にとっては障害になり得ない」

 

さっさと切り抜けて機甲部隊(イロハ達)と合流する。

 

そう告げるとユスティナ信徒を紙屑のように撃ち抜いて離脱するヒナ。

 

「先生、私の後ろに続いて」

 

殺到する銃弾も全て弾くヒナを見て思う。

 

("…これは期待してしまうのも無理はない")

 

文字通り格が違う。

前に林檎が口にした事が合ったがヒナを相手にして勝てる子は居るのだろうか?

 

「化物め…!」

 

まるで埃を払うかの様に消し飛ばされるユスティナ信徒を見て苦虫を噛み潰した様な顔になる。

 

「ただ集まっただけ、力の方向性が一致してるだけの有象無象に負けるとでも?」

 

私相手に数の力で押し切ろうとするなら緻密な部隊運用が必要だとマコト達が過去に証明しているのだから。

…逆に言えばそこまでしなければ勝負にならないという事だが。

 

「チッ…これを使う羽目になるとは」

 

懐から何かを取り出す。

嫌な予感がしたため狙い撃ちにするがユスティナ信徒が盾になるようにして妨害、弾丸は届かなかった。

 

「くたばれ、最強(空崎ヒナ)

 

その言葉と共に爆発、高温がヒナと先生を襲う。

咄嗟に先生を突き飛ばして範囲外へと押しやろうとするが想定以上に範囲が広く、2人で巻き込まれてしまった。

 

 

 

「先生!?」

 

煙が晴れるとそこにはヒナを庇う様に抱え込んだ先生が居た。

左半身を爆心地に晒したせいか、少し火傷を負っている。

 

"…大丈夫!私は意外と頑丈なんだよ!"

 

笑いながら答えるが、痛みに耐える様に引き攣った顔を見る限りまた同じ攻撃を受けてしまうのは不味い…!

 

 

「これにも耐えるか…全く、何一つ想定通りに行かないな」

 

スッと先生を指差しながら宣告する。

 

「シャーレの先生を狙え。空崎ヒナは無視して構わん」

 

お前の攻略が無理なら次善の成果で良い。

シャーレの先生…お前の命は此処で貰っていく

 

 

「…舐めるな!」

 

全てを弾きながら先生を庇う。

片手で弾を弾いて空いた片手で機関銃を連射、ユスティナ信徒を消し飛ばすが…

 

 

「やはりな…お前は単独なら化物(規格外)だが護衛としては(足手まとい付きなら)それ程驚異ではない」

 

さっきと違って動きが鈍い。移動するだけの隙を作れていない。

守る動きに慣れていない強者の驕りを討たせて貰おうじゃないか。

 

「そしてシャーレの先生。お前の防御機構も既に種が割れた」

 

威力減衰型の防御壁を張っているな?何処の技術か知らんが大したものだ。と続ける錠前サオリ。

 

「今のお前にこれは防げないだろう」

 

ホルスターから抜いた拳銃に怪しい光が灯る。

 

 

「先生っ!!」

 

「遅い!」

 

発砲音。

 

咄嗟に庇おうとしたヒナの手を掠めて弾丸は先生の脇腹を抉った。

 

"がッ…"

 

溢れ出る赤が地面に落ちる。

柔らかい肉を引き千切って弾丸は背後に抜けた。

先生が倒れる瞬間に目にしたのは此方に手を伸ばすヒナと。

 

錠前サオリへと襲い掛かる林檎の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クソがッ!なんだこの幽霊モドキどもは!?

聖堂へと走る途中で出現する様になった青白いシスターガスマスクの襲撃を退けながら聖堂へと走る。

 

幸いにも耐久力が然程無いおかげでただの的当て感覚だがこんなのが溢れ出るとかトリニティやば過ぎだろ!

ちゃんとお祓いしろよシスターフッド!

 

また湧き出た青白シスターを足蹴にして消し飛ばす。

弾がもったいねぇ…と途中から肉弾戦も交えてるけど本当に脆いなお前等。若しくは私にエクソシストの才能があるな。

 

「悪霊退散!!…ッとぉ!?」

 

幽霊をぶん殴って除霊した直後、右方向から木々を貫通しながらヤバい威力の何かが飛んでくる。咄嗟に伏せて回避すると周りの幽霊が消し飛ぶ。これって…

 

「ヒナ先輩?」

 

聖堂がフッ飛んだと思ってたけど無事だったのか!

あの人が無事ならマコト先輩達も無事だろう。少し安心したが未だ状況は不明だし、まずは合流するべきだな。

 

木々が倒れた方向へと足を向ける。

分かり易い目印になってくれてて有り難いわ。

戦闘音も近づいて来てるし、ちゃっちゃと合流して適当にしばいちまおう。

 

 

 

 

 

 

「先生っ!!」

 

「遅い!」

 

私が辿り着くとそこには先生を庇おうとするヒナ先輩と。

腹から血を流しながら倒れる先生と。

影武者じゃない本物の錠前サオリが手にした拳銃から立ち昇る硝煙が目に入った。

 

「テメェ、何してくれてんだ!」

 

真横から殴り込む。周囲に居た幽霊モドキを殴り飛ばしながら錠前サオリへと発砲するがそれよりも速く距離を取られた。

チッ、捕らえ損ねたか。

 

「誰だお前は?」

 

興味無さそうな顔と声色で問われたのはムカつくがそれよりも今は先生の方だ。ヒナ先輩に駆け寄りながら問いかける。

 

「ヒナ先輩!先生は!?」

 

「林檎!?…出血が酷い、弾は抜けてるけど…!」

 

思った以上に不味い状況だな…

 

「マコト先輩は!居ないんですか!?」

 

「未だ聖堂跡に…お願い、先生…死なないで…!」

 

必死に傷口を抑えるヒナ先輩。

…マコト先輩抜きでこの数の相手か。

 

「ヒナ先輩、あっちの方向に進めば正義実現委員会と合流できます。先生を連れて向かって下さい」

 

正義実現委員会には救急要員も同伴していた筈だ。

周囲を囲み始めた幽霊モドキを弾きながら伝える。

 

「コイツらの相手は私がします」

 

此処の連中を2人で叩きのめそうにもその間に先生が死にかねない。

2人で逃げようにもこの大人数相手に先生を庇いながらは難しい。

 

1人は残って時間稼ぎする必要がある。

私じゃ先生を庇いながら逃げれない。

消去法で私が残るしかない訳で。

まぁ何時ぞやの遅滞戦闘を本来の意味でやれば良いだけだ。

 

「それに…」

 

様子を伺っている錠前サオリを睨みつける。お前には落とし前着けてもらわないと割に合わねぇもんな?

 

「………任せたわ」

 

「任せて下さい。代わりにちゃんとぶっ飛ばしますから」

 

ニッと笑ってヒナ先輩の背中を叩く。

進行方向の幽霊どもを撃って道を開けさせると直ぐに飛び出したヒナ先輩が脇目も振らずに走り抜けた。

当然妨害してくる幽霊モドキだったが…

 

「遅い」

 

即リロードして3連射を2回。即時排莢、リロードしながら接近して何体か蹴り飛ばす。装填完了と共に2連射。

 

「通さねぇよ」

 

追いかけようとする幽霊モドキの頭に撃ち込む。

此方に撃ってくる奴らは無視してヒナ先輩の道を作る。

ヒナ先輩達の姿が見えなくなったのを確認して錠前サオリの方を睨みつけながら告げる。

 

「お前等は此処で…」

 

ギチリ、と奥歯が鳴るほど食いしばって言葉を飲み込んだ。

今は胸の内で燃え盛る怒りの感情を制御できる気がしない。

 

「邪魔が入ったか。まぁ良い…どのみちあの傷ではそう長くは持たないだろう」

 

その言葉を聞いた瞬間に先程飲み込んだモノが溢れ出した。

 

「…よく判った。お前は先生を殺すつもりで撃ったんだな?」

 

脳裏に血塗れで倒れた先生と、初めて見るヒナ先輩の狼狽した様子が過ぎる。…覚悟は決まった。

 

 

お前は此処で仕留め切る(ヘイローを壊す)

 

 

ごめんなさい、アズサ先輩。

コイツは今此処で確実に仕留めなければ。

次の犠牲者も私の親しい人かも知れない。

 

先生はきっと止めろと言うのだろうが…

 

そうなる(撃たれる)前に止めるべき相手(錠前サオリ)を止められなかったアンタの言葉は今の私には響かない。

 

 

 

此処がお前の墓場(終点)だ、錠前サオリ。

 





目の前で先生が撃たれる→明確な殺意を持ってスクワッドと相対するって流れはずっと書いて見たかったので書いてて凄く愉しかったです。
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