ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

63 / 78
独自設定がございます。ご容赦頂けますと幸いです。





ガンマンとアリウススクワッド その2

 

 

キヴォトスにおける禁忌。

 

その中でも殺人は真っ先に上がるタブーだろう。

いつもの小競り合い(撃ち合い)程度では死ぬ様な事態にならない。

 

それこそ明確に殺意が有って気絶した後も執拗に、念入りに撃ち続けない限りヘイローが壊れる事はまず無い。

 

だからどの学区でも殺人は禁忌とされているし、どんな極悪人でも命を奪うまではやらない。

最低限のルールとして浸透しているからだ。

 

それを破った奴がどうなったのか?

 

気になった私は一度調べてみた事がある。

連邦生徒会へ問い合わせたり、ゲヘナの図書館で判例を調べてみたり…結果から言うとそんな判例は一度も無かった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()なんてあり得るのか?

そんな疑問を先輩に聞いた時のことを思い出す。

 

「…何処かの誰かが相手を殺し始めたら歯止めが利かなくなるからだ。互いにいがみ合うだけならまだしも、殺し合う様になったらどちらかが絶滅するまでやり合う事になると全員が理解しているのさ」

 

だからそんな奴が現れたら問答無用で()()する事になっている。これは学区を越えて行われる暗黙の了解だ。

 

「故に判例など残っている訳が無い。()()()()()()()()()()()()()。そういう事だ」

 

真剣な表情で私を見る先輩の目がとても印象深くて今でも一言一句違わずに覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺意を持って人を害する奴は最早人ではない。

キヴォトスのルールを踏み躙る奴には退場願うとしよう。

 

深呼吸を1回。溢れ出す怒りを鎮める為にもう1回。

…良し。準備完了だ。

 

抜け(撃てよ)…お前も同じ目に合わせてやる」

 

最後の言葉を告げる。これ以上コイツと話すことはない。

 

「ノーマークだったが、此処で始末しておいた方が良いか…」

 

 

錠前サオリが指示を出すと一斉に襲い来る幽霊モドキ。

 

弾倉には6発、無駄撃ちは出来ない。

 

放たれる銃弾を回避しながら近場の奴から殴り飛ばす。

 

消えるまで少しタイムラグが有るな。相手の撃った弾が殴って消えかけた奴に当たるのが見えて壁として利用出来るのが判明した。

 

殴ったり蹴ったりする度におかわりが来る。

 

少しの被弾を覚悟して姿勢を低く、足元を駆け抜けるように錠前サオリの元へと急接近するが…

 

「見た目にそぐわず素早いな」

 

難なく距離を空けられた。

 

また幽霊モドキが間に湧く。

発生源を止められれば一番良いんだが…見当たらないな。

 

幽霊モドキの集団に飛び込んで同士討ちを誘発すると一切躊躇せずに撃ってきた。味方より敵を優先するか…これならいけるな。

 

同士討ちで少し間引いた所で錠前サオリへの射線が僅かに通った。

 

 

1発目。左肩に命中した。

 

 

「なッ!?」

 

怯んだ隙をついて一気に詰め寄ったが驚愕しながらもアサルトライフルで応戦してくる。

…巧いな。聖園ミカ(お嬢様)のようには行かないか。

上手く弾幕を張られて一定距離から近づけない。

…仕方がない。

 

 

2発目。アサルトライフルの銃身を横から叩く様に着弾。

 

 

銃身が歪んだのか弾が真っ直ぐ飛ばなくなる。

 

「ッどうなってる!?」

 

直ぐにサイドアームに切り替えるが…この距離でその手間は大きな隙だ。一足飛びに懐へ入り込んで左手でホルスターごと錠前サオリの手を押さえ込む。

 

 

3発目。上手く身体を捻って避けられた。後ろにいた幽霊モドキが爆散した。

 

 

「お前の様な奴がなんでこんな所に居る!?」

 

押さえ込む左手も身体を捻った拍子に外された。

互いに銃を向け合う形になる。

 

 

4発目。ほぼ同時に放たれた銃弾。錠前サオリの弾丸は私の左上腕に命中。私の弾丸は錠前サオリの胴体に命中した。

 

「ぐッ!」

 

「…ッ!」

 

痛みに歯を食いしばりながら更に踏み込む。

 

 

5発目。殆ど取っ組み合いの距離から放たれた弾丸は錠前サオリの左脇腹を喰い破って背後の木に命中した。

 

 

「あ、がぁ!?」

 

態勢を崩す錠前サオリ。…これで終いだ。

 

 

6発目。銃口を腹に空いた傷口を押さえ込む錠前サオリの頭部に向ける。この距離で当てれば頭蓋を割れる(ヘイローを割れる)。5発目で相手の防御力が然程高くないと確信した私は躊躇せずに発砲…しようとした瞬間に咄嗟に左に跳んだ。直後に弾丸で真横に吹き飛ばされる。

 

「リーダー!」

 

目線を撃たれた方へ向けると少し離れた所から緑髪の狙撃手が私を狙い続けている。

増援か。面倒な…

 

「ヒヨリ…!」

 

アイツがヒヨリか。面は覚えたぞ。

 

直前で跳んだのと当たった所が運良くバイタルパートから離れた所だったため戦闘には支障ない。

 

 

跳躍中に最後の1発を錠前サオリへと叩き込んだが…

ダメか。ダメージは入ったみたいだが気絶までいかなかった。

 

 

「一旦退きましょう!目的は達成しました!」

 

 

 

……あ?

 

 

排莢、リロードしつつ幽霊モドキを蹴り飛ばして狙撃手への盾にしているとそんな声が聴こえてきた。

 

「…やむを得ない、撤退だ!」

 

撤退?撤退っつったか今?ふざけんなよ…!

 

怒りで目の前が真っ赤に染まる。

 

「錠前サオリ!!」

 

リロードし終わった愛銃(アンティーク)を向けながら問い詰める。

 

「お前、殺意を持って(先生)の事撃っておきながら自分がいざその状況に置かれたら逃げるのか!?」

 

それは道理が合わねぇだろ!

 

「殺す気で来たんなら死ぬ覚悟が有るんじゃねぇのか!?」

 

せめてその覚悟が有ると、それだけの何かが有ると言ってくれ…そうでなきゃ先生が撃たれた意味は、あの人が死にかけてる現状はその程度のもんだって事になるじゃないか…

 

「リーダー!!」

 

「……撤退する」

 

ふざけるな、待て…待てよ!

 

「待てよ卑怯者!!」

 

周囲に湧き始めた幽霊モドキを一心不乱に打ち据えながら声を張り上げる。

 

「クソが!テメェ、ふざけんなよ!戻って来い!」

 

吹き出した怒りを抑えることもできずに周りの幽霊モドキを蹴散らす。一瞬だけ錠前サオリと私との間に何も無くなり、視線が交差した。なんだその目は?お前が始めた事だろうが。何ビビってんだよ!

 

「テメェは此処で死ね!!」

 

被弾を無視して突っ込む。

周りから銃弾が殺到するが全て無視して最短距離を走る。

致命傷(クリティカル)になりかねない所だけ左腕を盾にして守ったが全身ズタボロだ。それでも目を逸らすこと無く接近する。

 

「先に地獄で待ってろ!!」

 

あの世でもう一回ぶっ殺してやる!

使い物に成らなくなった左手をぶら下げながら近距離で必殺の1発を錠前サオリの少し恐怖で歪んだ顔に撃ち込む。

 

「………!」

 

いつの間に現れたのか仮面の女が間に入って錠前サオリを庇った。必殺だったはずの弾丸はソイツの手を抉って明後日の方向へと外れる。

 

「次から次へと…!」

 

何時もなら左手を駆使して連射出来たが今は無理だ。

右手で撃鉄を起こして2発目、3発目と撃つが全て仮面の女が受け止めたせいで錠前サオリには届かない。

 

「姫…っ!」

 

「姫ちゃん!…このっ!」

 

ヒヨリが私に向けて発砲しようとしているのが見えた。

 

「外野が邪魔すんじゃねぇよ!!」

 

4発目を緑髪のヒヨリとやらの狙撃銃に当てる。

当たったと同時に発砲されたがズレた照準でまともに狙える訳もない。明後日の方向へと外れるのを見ることもなく5発目を撃つ。

 

「な、なんなのこいつ!?」

 

「ッ足止めしろユスティナ信徒!」

 

「…………!?」

 

動揺してるアリウススクワッドに構わず弾丸は錠前サオリに命中した。畜生、距離減衰で致命傷にならねぇ…!

 

「速く逃げよう!?」

 

「………!」

 

傷跡を庇ってふらつく錠前サオリを両脇から支えながら走り出すスクワッドに追いすがろうとするが、また大量に湧き出した幽霊モドキに阻まれて追い討ちが不可能になった。クソが、取り逃がした…!

 

 

「錠前サオリ!!」

 

逃げていくアリウススクワッドへ向けて。

 

「何処に隠れても、何をしてても、必ず見つけ出してやる!」

 

声が枯れんばかりに叫ぶ。

 

「テメェに安息の時は無い!絶対に落とし前はつけさせるからな!!」

 

幽霊モドキを同士討ちさせながら。

 

「必ずだ!」

 

弾倉に残った最後の1発を既に遠く離れたスクワッドへと撃つ。

当たったとしてもダメージは無いだろうが。

これで終わったと思うなよ錠前サオリ…!

 

次は確実に殺してやる…!

 

 

 

 

スクワッドの連中が見えなくなるとユスティナとか言われてた幽霊モドキも消えていった。

このカス幽霊モドキ、数だけは多くてうざったい事この上なかったな…火力は高めだが防御力が紙だから対処は楽勝だがひたすら湧いてくるのが本気でウザい。

 

 

戦闘が終了して興奮状態が冷めてきたせいか左腕の痛みが酷くなってきた。…こりゃもう使いもんにならないかも知れんな。

指一本でも動かそうとすると激痛が走る。

 

 

 

激痛で更に頭が冷えて少し冷静になった。

一先ずヒナ先輩が向かった方角、正義実現委員会が居るはずの方へと歩き出す。…先生は無事だろうか?ヒナ先輩は皆と合流出来ただろうか?あの傷口を見る限り望みは薄いと分かってはいるものの無事(奇跡)を祈らずにはいられなかった。

 




アリウススクワッドが弱く見えるような展開になってしまいましたが、これはサオリが林檎の特異性を知らず、最初に近距離で1:1交換で撃ち合ったのが原因です。そこからなし崩しにボロボロになった所でヒヨリが投入されましたが、狙撃銃と林檎は相性が良く、またガチ切れ補正でこの様な形になりました。

来たのがミサキだった場合は林檎がズタボロになってたと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。