ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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ガンマンと補習授業部 その7

 

 

「出たな…総員、戦闘開始!」

 

道中でまたユスティナとかいう亡霊共が湧き出して来た。

こいつら数が多くてうざったいんだよなぁ……何か減ってね?さっきはもっとわらわら出てきた気がすんだけど…

 

「ツヴァイ、迎撃!ドライは側面に回り込んで援護!」

 

マコト先輩の指示に一切の遅延なく応えるゲヘナ学兵。

ツヴァイ(2)ドライ(3)…班分けか。

一糸乱れぬ連携で敵を撃ち倒していく。

個ではなく群としての強さを見せるのは万魔殿の得意とする所ではあるが…

 

「風紀委員との混成部隊で良く連携が取れますね?」

 

偶々抜けてきたユスティナを蹴り飛ばしながらマコト先輩に聞く。

…なんで驚いてんだこの人?

 

「…貴様今、蹴り飛ばしたか?」

 

あぁ。それか。

 

「今左手がコレなモノで。リロードが手間だから弾丸を温存したいんですよ」

 

包帯と簡易ギプスで固定されてる左手を見せながら無事な右手で適当なユスティナに近づいてぶん殴る。コハルはいい仕事をしてくれた。これなら直接当てなけりゃいくらでも暴れられる。

 

「悪霊退散!!…ほら、こんな感じで」

 

理解不能なモノを見る目で周囲の注目を集めてしまった。

…ヒナ先輩なら腕の一振りで10体は消滅すると思うけど?

 

「意味が判らん…何で殴って消せるんだ…?」

 

「私にはエクソシストの才能があるのかも知れません」

 

よいしょっ!と。突っ込んできた間抜けを殴り飛ばす。

…コイツら、更に脆くなってないか?

 

「まぁ、効くなら良いか。…暴れてこい!」

 

色々吹っ切った様子のマコト先輩こら指示を貰ってから一気に敵の中央まで突っ込んで縦横無尽に暴れる。ユスティナは味方がいようと構わず撃ってくれるからすげー勢いで亡霊が溶けていく。

 

やっぱ脆くなってんなコイツら。同士討ちで消えるのが早くなってる。

 

「林檎が目にもの見せたぞ!総員、討ち漏らしを殲滅しろ!」

 

現れたユスティナ共は数分と持たずに殲滅完了した。

 

「撃ち方止め!…敵の殲滅を確認、我々の勝利だ!」

 

応!と声を挙げるゲヘナ生。

 

 

「なんでもう走り回れるわけ?…もう意味わかんない」

 

「えぇ…少し、いやかなり気風が違うと言いますか…」

 

「あはは…今は頼もしくて良いじゃないですか…?」

 

「統制の取れた部隊と指揮官…この水準で揃えるのにどれだけ…」

 

 

補習授業部の皆はちょっと引いてた。

というかコハルは私個人に引いてないか?

ジト目で見られてつい目を逸らす。

…治療してくれた負い目があるだけだし。負けてないし。

 

「進軍再開!シャーレの先生の元へヒナを回収しに行くぞ!」

 

マコト先輩の言葉で我に返る。

 

「ヒナ先輩ですか?」

 

「一応な。声を掛けとかんと後でグチグチ言われては敵わん」

 

どうせまたウジウジ悩んでるんだろうが…と呆れた様な顔になるマコト先輩。

 

「ま、その時は我々だけでどうにでもするさ」

 

チラリと後ろを振り返るマコト先輩。

整列して進むゲヘナの生徒達が其々頷いた。

満足そうな顔をして前を向くと続けて話す。

 

「トリニティも直にナギサが纏め上げるだろうよ」

 

少し時間は掛かるだろうが、と笑う。

 

 

「その間はトリニティ領内でアリウス狩りだ」

 

 

ナギサとも協議済みだから心置き無くやれる。と嗤った。

 

ハナコ先輩の顔が強張る。…そういえばそんな話だったな。

 

「ハナコ、貴様らは仕損じた。ならば次は私のターンだ」

 

補習授業部の方を振り返ってそう告げた。

 

「約束通り我々が灼き尽くしてやる。草の根一つ残しはしない」

 

私は、約束を守るからな。

 

まるで新しい玩具を手に入れた子供の様な笑顔だった。

 

…あぁ、そう言う事か。大分気に入ったみたいだな…

 

先輩はその後一言も喋ることなく、目的地まで進み始めた。

補習授業部はまるでお通夜みたいな雰囲気になってるが…

 

 

 

「…皆どうしたんですか?」

 

コソコソと話しかけるとコハルが小さな声で応える。

 

「だってゲヘナが全部やっちゃうんでしょ!?先生が起きてももう遅いじゃない!」

 

小声で怒鳴るって器用な奴だな。

 

「…多分、言い方が悪すぎただけだと思うけど?」

 

チラリとマコト先輩を見る。いつも通りの自信満々な顔だ。

本気でやる気ならわざわざ補習授業部に伝える様な悠長な真似はしない。

既に爆撃と戦闘員による蹂躙劇が幕を開けているはずだ。

 

でもそうじゃないって事は…

 

「トリニティをナギサ先輩が纏めるまでアリウスを狩るって言ってたし。今のは領内の不穏分子を消して回ってやるって話でしょ」

 

どう言う風の吹き回しか知らんけど大分トリニティ側に譲歩したみたいだ。多分ナギサ先輩が上手い事交渉したんだろう。

…アリウスの殲滅は確定事項っぽいから本拠地への襲撃はトリニティと合同でやるのかもしれないが。

 

「それにスクワッドの連中が直ぐに動く事はないと思う」

 

私が与えた傷は浅く無い。少なくとも数日は安静にしてなければならないだろう。

 

「仮面女と錠前サオリは暫く行動不能なはず。私の銃弾を間近で食らわせたから」

 

錠前サオリは確実に。仮面女は銃を撃てない位には。

 

「…つまり?」

 

「スクワッドに関してはまだ干渉の余地があるって事」

 

まぁ、本拠地が割れたらその時点で全力で踏み潰しに行くと思うけど…今まで見つからなかった連中の本拠地がそんな簡単にわかるとは思えないし。と続けると少し安堵の溜息が漏れた。

 

「他の連中は知らんけど。さっきまでと同じならあの亡霊共だけで攻めて来るだろうし、多分亡霊狩りで終わるんじゃない?」

 

あの人はそれはそれで愉しくドンパチするんだろうなぁ。

ゲヘナ気質が強い連中は暴れられる機会があれば盛大にパーティーするし。

 

 

「…それならまだ希望はありますね」

 

ハナコ先輩が少し考え込む。

 

「私は先生の所へ着いたら少し別行動させてもらいますね」

 

シスターフッドの所へ、早期に纏まれる様に手を尽くさなければ。と続ける。

 

「わ、私は…」

 

コハルは少し戸惑っている。

 

「コハルちゃん。正義実現委員会が心配なんでしょう?」

 

ハナコ先輩の言葉に頷くコハル。

 

「私が戻っても何の役にも立たないかもしれないけど…でも、先輩達が心配で…」

 

この騒ぎだ。正義実現委員会もてんやわんやしてる事だろう。幸いなことにナギサ先輩が健在だから壊滅的な事にはならないだろうが…

 

「分かります…コハルちゃん、行って下さい」

 

ヒフミ先輩が力強く頷いて。

 

「私も、私に出来ることをしようと思います」

 

そう宣言した。

 

「アズサちゃんも…ね?」

 

そう声をかけると何処か上の空だったアズサ先輩も頷いた。

 

「そう、だな。その通りだ」

 

例え虚しい事だとしても抗わない理由にはならない。

 

その言葉通り抗う意思を固めた様だった。

…少し不穏な空気を感じたがそれも一瞬の事で。

いつも通りに見えるアズサ先輩に安心してしまった。

 

 

 

 

あんな事になるなんて分かってたら私はアズサ先輩を止めていただろうか?

 

…多分止められなかったと今でも思う。

どの口が言うんだ、と嘲笑すらするだろうな…

 

 

其々の意思と思惑が交差する中、混迷を極めるトリニティ。

エデン条約を巡る騒動はいよいよ最終局面を迎えようとしていた

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