ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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ガンマンと先生 その5

 

 

落ち着いたヒナ先輩が風紀委員達へ連絡をするため席を外したところで補習授業部の皆と話し合う。

 

「…どうしましょうか」

 

一連の事情説明と今後の行動について。

 

「先生は今のところ安静にしてれば問題は無いようですし、ヒナ先輩が着いていてくれるそうですが」

 

チラリと病室へと目をやる。

ヒナ先輩も少し気力を取り戻した様だったし、ここには医療部関係の生徒が多数居る。さっき連絡してたようだから風紀委員も来るだろう。

 

「私は先生が起きるまではここに居ようと思います…少し、話したいことも、聞きたいこともあるので」

 

マコト先輩が言った事、本人の意思確認と私の疑問も少しだけ。

 

「私はシスターフッドの皆様の所へ向かいます。…先生をお願いしますね?」

 

そう告げるとその場を去っていくハナコ先輩。

 

「私は、正義実現委員会の皆が心配だから…」

 

ヒフミ先輩達を見て申し訳なさそうに言うコハル。

 

「気にせず向かってあげて下さいコハルちゃん」

 

明るく答えるヒフミ先輩。

 

「出来ることを出来るだけやりましょう!」

 

私も、何か出来ないか考えてみます!と話を結んだ。

 

この状況下ならファウストとして動いても良いと思うけど…

流石にナギサ先輩に悪いかそれは。

 

「…少し、外の空気を吸ってくる」

 

アズサ先輩が浮かない顔でそう告げて表へと向かう。

 

「私も行きます…コハルちゃん」

 

コハルを促しながら外へと向かうヒフミ先輩。

 

「うん…林檎、その左腕ちゃんと診てもらいなさいよ?」

 

それは応急処置でしかないんだからね?と念押しされる。

すっかり忘れてた。左腕ズタボロにしたんだったわ。

そういえばちゃんとお礼言ってなかった気がする…

 

「わかった。本当にありがとう」

 

深く頭を下げる。この程度でどうにかなる恩ではないが感謝の気持ちはちゃんと伝えなければ。

 

「何か助けになれる事があれば遠慮なく言って。この恩は絶対返すから」

 

去りゆく背中にそう伝える。

コハルは軽く此方を振り返って

 

「別に返さなくて良いわよ…もうそんな怪我しないでよね」

 

心臓に悪いから。とさらに続ける。

 

「…でもまぁ、覚えとく」

 

じゃあね、と手を振って別れた。

根は良い奴というか情に厚いというか…ゲヘナに通ってたとしたらいつの間にか人が集まって勝手に旗頭にされてそうな奴だ。

 

 

 

 

その後は左腕や諸々の治療を受けて安静にしてろ!と病室に叩き込まれた。…先生と同じ病室だったのは幸運なのかどうなのか。

 

「先生……まだ寝てますか?」

 

返事はない。当たり前だ、そんな直ぐに目覚める訳が無い。

 

だからこれはただの独り言、先生と話す前に考えを纏める為に自分の気持ちを確かめているだけ。

 

「先生はそんな目に遭ってもアイツを許すんですか?」

 

撃たれて死にかけた。それも事故じゃない。

 

「私は撃たれた先生を見て、血の気が引きました」

 

先生は普通だから。一発の銃弾が死に繋がりかねないから。

 

「それでも何とか耐えようとしたんですよ…そしたら、あの女なんて言ったと思います?」

 

あの傷ならもうじき死ぬだろう、ですよ。と空笑いする。

今思い出しても怒りがこみ上げてくるけど、もう我慢出来る。

 

「それでブチギレて片腹に穴開けてやりましたが」

 

あの時に頭を撃ち抜いてたら、と一瞬頭を過ったがそれは私のやっちゃいけない事だ。あれで良かった、とも言えないが…

 

「盛大に撃ち合って結局取り逃しちまった訳ですが。その後はマコト先輩や補習授業部の皆に窘められて?励まされて?先生に会いに来た次第です」

 

ふぅ、と一息つく。

まぁ私としてはこんな感じなんだけども…

 

 

「先生は何処までが許容範囲なんだろうな…」

 

流石に自分が死にかけたらアウトか?

…なんやかんや許しちまいそうで怖いが。何なら自分を撃ったにも関わらず、事情が有るなら何とかしてあげたいと若干身内判定してる可能性まである。

 

私が錠前サオリを殺しに行った事は?

寧ろこっちがアウト判定食らいそうだな。

…それでも多分最後には許してくれるだろう。先生は甘いから。本当に殺しちまった場合は流石に無理だろうが。

 

 

「いつの日か考えていた事だけど…先生はどっちの味方に着くんでしょうね?」

 

身内判定の広い先生が、その内に入れた連中(生徒達)が撃ち合ってる所に出会したらどうするのか?

 

私は錠前サオリと出会ったらどんな事情があったとしても問答無用で撃つだろう。

殺すためじゃなく、無力化するために。同じ轍を踏まないために。

 

錠前サオリは目的のために殺せる奴だ。アイツの目的の邪魔になるなら誰であろうと第2の先生(被害者)になり得る。

 

私は、アイツが何を考えてそんな事してるのかなんてこれっぽっちも興味がない。

 

人食い虎に何故人を食うのかと問う馬鹿は居ないように。

ただ見つけたら細心の注意を払って駆除するだけだ。

 

だから次も遭遇したら必ず撃ち合いになる。

錠前サオリは私を殺すつもりで。

私は錠前サオリを殺さない程度に。

 

 

「ねぇ、先生?自分を撃った奴にも他の子達と同じように情をかけるのだとしたら、貴方は甘いんじゃなくて酷い奴だよな」

 

先生の事を大事に思ってる奴らからしたらたまったもんじゃない。だってそれは先生の中では自分と殺人未遂犯が同列であることの証拠であると同時に…

 

自分(先生)よりも犯罪者だろうが生徒(ソイツ)の方が大事だって事になるもんな」

 

そんな奴のために踏み躙られても構わないなんて悪い冗談だ。

流石にそこまでじゃないと思いたいが。

溜息を着いて横になると、隣から微かに声が聞こえた気がした。

 

 

 

"耳が痛いね…でも、それが大人の役割(責任)だから…"

 

ごめんね、と段々ハッキリと聞こえるようになった声で続ける先生。

 

"例え間違えたとしても、それが絶対に許されないなんて事はあってはいけないんだよ…"

 

君達はまだ子供なんだから、と此方を見つめて話し続ける。

 

"私は生徒達の味方だから。責任は私が取るべきなんだよ"

 

ふわりと何時もの様に笑う。

 

"だから、ごめん。それと…怒ってくれてありがとう"

 

 

畜生…何時から起きてたのかとか、腹の傷は大丈夫なのかとか、お前腹に大穴空けても変わんないのかとか色々言いたい事はある。

それでも今は…

 

「謝らないで下さいよ…!でも、無事で良かった…!!」

 

ただ、先生が起きてくれた事が嬉しかった。

 

"うん…心配かけてごめん"

 

 

 

深呼吸をして少し落ち着くとすまなそうにしている先生に尋ねる。

 

「…先生は、あの女(錠前サオリ)をどうするつもりですか?」

 

自分の腹を撃ち抜いた相手をどう処するのか。

 

"事情を聞いて、困っているなら助けたい"

 

ノータイムで答えられた。想像以上に甘い裁定だ。さっき言ってた"間違えたとしても許されない事はない"ってのが返答だろうが…

 

「先生を殺す気で撃った相手ですよ?次は他の人が()()なるかもしれない」

 

視線が先生の包帯が巻かれた腹部へと向かう。

私の視線に気づいた先生が傷口を庇う様に抑えながら答える。

 

"でもまだ殺してない。私は生きているよ"

 

それに…と続ける先生。

 

"次は止める。絶対に"

 

いつになく真剣な表情で見つめられたが…

 

 

「…既に1度、死にかけてる貴方の言葉は信用出来ません」

 

それでもそこは譲れない。譲らない。

 

「止められるなら撃たれる前に出来たはずでしょう?次は止める?一体どうやって?」

 

一度息を整えてから続ける。

 

「貴方は生徒の味方だとさっき言いましたよね?なら私の味方もして下さいよ」

 

この言い方はズルい、カッコ悪いと思いながらも言わざるを得なかった。放っておくとまた何処かで撃たれてしまいそうで…

 

「私があの女を撃ちますよ」

 

これが私の感情が許す最大限の譲歩だった。

先生の片腹に穴開けた事は先生が目覚めた以上、私の撃った弾がえぐり飛ばした脇腹でトントンだろう…アイツの傷は命に関わるモノじゃないって事を除けば。

 

「次に見つけたら問答無用です。…アイツは人食い虎と変わらないと思うから」

 

最低限のルールすら守れないのなら獣と同じ。人に害をなすならそれは駆除されるべきだとも思う。…まぁ殺す気は無いから無力化して先生に引き渡すだけだが。

 

"…止めるだけ、なんだよね?"

 

「それはまぁ…そうですね。お話はその後にしてくれれば良いと思いますよ」

 

ガチガチに拘束した後なら流石に危害は加えられないだろうし。

 

まぁどんな理由だろうと殺人未遂が許される訳がないが。

言っちゃなんだけど先生が被害者ってのが拙過ぎる。

連邦生徒会会長が直々に呼び寄せた権限の塊みたいな人だし。

それを殺しかけたとなったら連邦生徒会はその威信を賭けて処分するだろう。

 

情状酌量の余地があったとしても追放処分が妥当だと思いますけど…と心の内を話すと先生は何時もの表情で答える。

 

"そこは話を聞いてみないと判らないからね"

 

「人を撃って良い理由なんて無いと思いますよ?」

 

咄嗟にそう答えると怪訝な顔をされる。

 

"…結構皆撃ってない?"

 

あー…まぁ、確かにそうなんだけど…

 

「…先生を!キヴォトス外部の人を撃って良い理由なんかないでしょう!」

 

言葉の綾である。何か締まらない結果になったが何時もの雰囲気になって少し緊張が緩んだ。

互いに顔を見合わせて少し笑う。

 

「では、錠前サオリについてはその様に…」

 

そこまで話したところで医療部の生徒が病室をのぞき込んで先生の起床を知り、院内が大騒ぎになった。

なんで気づいた時に知らせなかったんだ!と詰め寄られたが申し訳ない…話せたことが嬉しくてつい…と俯くと許されたのか溜息を着いた後、先生の周りで色々検査が進んでいった。

 

 

 

 

なんにせよこれで先生の意思確認は済んだ。

想像以上に甘い裁定だったがまぁ、被害者の言葉は最優先されるべきだろう。

 

…それはそれとして。捕らえる際に少しボコボコにするのは別に良いよな?少し恨みが籠もっちまうかも知れないがまぁ死にはしないし。

 

 

サイドテーブルに置いてあるホルスターから覗くリボルバーを見つめながらそう決意した。





今何処で誰が何してんの状態で頭こんがらがってきましたが最新話投稿です。

後はサオリ関連とブルアカ宣言関連とミカ関連とベアトリーチェ関連ですね!終わる気がしない…まぁその内半分位は林檎不在のため描写無しになる予定ですがそれでも長いよ面白いけどエデン条約編…
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