“なるほどね…”
先生がなんとも言えないと言った感じの感想を述べる。
まぁそうもなろうもんではあるが。
聖園ミカは訥々と今までの経緯と抑え込んでいた感情を吐露する様に話した。
最初はただアリウスと仲良くしたかっただけだという事。
それを夢物語だと、現実を見ていないと言われた事。
偶然、アリウスの連中に接触する機会を得た事。
セイアちゃんなる人物の事。
少し脅す程度の軽い気持ちで行動したら大事になってしまった事。
…最早引き返す事なんかできないという覚悟をした事。
「私、何がしたかったんだろうね…」
虚ろな目で語り終えると黙り込む聖園ミカ。
選択肢間違えまくった挙句、運が悪い奴だな…と頭の悪い感想しか出てこない。
別にその時点でのアリウスと仲良くしたかったってのは否定するべき所じゃないと思ったし。
ちょっと脅すってのもゲヘナ的にはまぁおかしな考え方じゃない。
…やるなら自分でやりゃ良いのに、とは思うけど。
それが全部悪い方へ転がった結果がコイツの現状だ。
派閥のトップである自分がやらかしたせいで下からは突き上げを喰らう始末。
話し合える相手のナギサ先輩はトリニティをまとめ上げるのに奔走していてそれどころじゃない。
もう1人のセイアちゃん…先輩はもういないと来た。
こういう時ってなんて言えば良いのかわかんねぇわ…
“ミカ。セイアは生きてるよ”
そんな事を思っていると先生がとんでもない事を言い出した。
虚ろな目で先生を見る聖園ミカ。
その目を見つめながら先生は話し続ける。
“セイアを襲撃した日。あの日アズサはセイアと話をしたんだ”
ゆっくりと語りだす。
“アズサも薄々勘付いていたんだろうね。だから一芝居打つことにしたんだよ”
ミカが殺意を持って動いたとは考え難い。
ならばこの行動はアリウスの独断だろう。
今、私が逃げ延びてしまえば次はナギサが標的になる。
だからここで
そうすれば少しは時間が稼げるはずだ、と。
“今もセイアは予知をし続けている。この騒動の結末をより良い物にするために”
居場所は秘密みたいだけどね。と話を結んだ。
「そんな…だって、死んだって。もし生きているならなんで私には言ってくれなかったの…?」
狼狽えてるな。まぁ無理もないけども。側から聞いてる外様の私でも意味わかんねぇもの。
「だったら、なんでもっと早く…」
今回の騒動で失った物が一番多いのは聖園ミカだ。
最初の引金を引いたのもコイツだけどさ…
先生は何を思っているのか沈黙している。
はぁ…ここまで事情を聞いちまったし、しょうがねぇ…
「まぁ、しょうがないんじゃね?そのセイア…先輩?だいぶ先を見てんだろ?」
突然口を挟んだ私に注目が集まる。
…私が口出す事じゃねぇのは分かってんだよ。
でもこのまま放っとくのは何か違うだろうが。
「お前がそれを知ってたらどうするのか、どうしたのかなんて私にゃわかんねぇよ?でも、その未来予知できる先輩は
私が同じ事やられたら一発ぶん殴るけどさ、と鼻を鳴らして続ける。
「でもお前のその後の行動は正直ヤベェじゃん?」
アリウスと手を組んでクーデター仕掛けるとか相当やってると思うぜ?
「だからまぁ…やっちまった責任はあると思うけど、その先輩は殴っても良いと私は思うね」
そう言うとコハルから
「いきなり何を言うのかと思えば…」
と呆れた様な声が上がる。
「コハルはそう思わねぇの?ムカつくだろそんな事されたらさ」
もしもあの後先生が死んだって聞かされてたら私は何が何でも錠前サオリを殺しに行ってたし、その後で実は生きてましたー。お前に教えたら計画狂うから敢えて黙ってたんだよー。とか言われたら殴るだろ。確かに私は頭悪いからそういう腹芸は出来ないけどさ。
「死んだ友達の仇を取る、もう止まれないって覚悟を決めて行動した後でそんな事言われたら堪ったもんじゃねぇよ」
それにどれだけの意思が、強い気持ちが必要だと思ってんだ?
不退転で転げ落ちる
そんな覚悟を決めさせておきながらまだ本人は先読みに忙しいとかで顔を出さねぇんだぜ?
「私が言う事じゃねぇのは百も承知だけど。互いに謝るのが筋だと思うね」
そう言うとまた沈黙が場を支配する。
“…そう、だね。贖罪の機会はまだある。やり直せないなんてことはないんだよ、ミカ”
誰も死んでないなら引き返せないことはない。
まぁその通りではある。
「………少し、1人にさせて」
聖園ミカは少し生気の戻った顔でそう告げた。
“……分かった。何かあったらすぐに呼んでね”
先生が席を立つと扉の外で待機していた風紀委員の元へと歩いていく。
それに着いていく形でコハルも席を立った。
「貴女も出てってよ」
私を見ながらそう言う聖園ミカへ最後に一つ、聞いておきたい事を口にする。
「最後に一つだけ良いか?セイア…先輩が死んだって聞いた時、何で
今までの話でそこだけがマジで分からない。
仮にコハルがそんなことになったら私は絶対に許さないし、ソイツの息の根が止まるまで追い続けるだろう。
「何で、だったかな…」
そう呟くと少し考えてから
「最初に決めた事だったから、かな。…私が言い出した事で、私の指示が原因で。それで辞めちゃったらセイアちゃんが死んじゃった意味って何なんだろうって思ったから…」
独り言を言うように語る。
「多分、貴女の言う様に選択を間違えたんだろうね。そんな私だからセイアちゃんは生きてる事を黙ってたんだ」
自嘲する様に。
「全部私のせい。私が考えなしだったからこうなったんだ…」
あー…もう!コイツ何でこんなウジウジしてんだよ!?
「お前、思ったよりネガティヴ思考なんだな」
一度口に出したら止まらなくなった。
「全部お前のせいな訳ねぇじゃん。少なくとも指示を曲解したアリウスにも否はあるし、生きてた事黙ってたセイア先輩とやらにも否はあるだろ」
勿論お前が悪くないとは言わねぇよ?と続ける。
「間違った事してごめんなさい、次は気をつけますで良いだろ別に。お前の行動で誰も死んじゃいねぇんだし、迷惑かけた全員に頭下げてそれで終いだろうが」
温泉開発部とか美食研究会とかは次は
勿論その偉い立場とやらは降りなきゃダメだろうが…お前くらい強けりゃどこでも、何でもやっていけんだろうよ。
「それでも許されないならもう受け止めるしかねぇけどさ。謝る前から悲観するのは違うだろ」
言い切って少しスッキリした。
何でコイツはあんな馬鹿みたいに強い癖にこんな自罰的な性格してんだ?
もっとこう傲岸不遜であれよ…それなら遠慮なく責め立てられるのにこの有様じゃもう叩く所残ってないレベルでボコボコな奴と一緒で殴れねぇよ…
「変な事聞いて悪かったな」
何でアリウスと手を組んだのかもまぁ分からなくもない話だったし、聞きたかった事も全部聞けた。もうコイツに聞きたい事も言いたい事もない。
席を立って部屋を出る直前で声をかけられた。
「…ねぇ、貴女、何て名前だったっけ?」
この女…私にどんだけ興味ねぇんだよ。
「西条林檎。ゲヘナ学園一年の西条林檎だ。…別に覚えなくていい」
どうせもう会う事もねぇだろうし。
そう言って部屋を出ると廊下で待っていた先生から質問された。
“何を話してたの?”
「アイツが何でアリウスについたのか不思議だったんでその事を聞いただけですよ」
理解は出来るけど納得はできない理由でした。と続ける。
「まぁ、聖園ミカについてはこの騒動が収まってから改めてトリニティで沙汰が下るでしょうし」
アイツと関わるのはこれで最後でしょうね。そう話を結ぶと
“……それはどうだろうね?”
先生は少し懐疑的な目を向けてきた。
ゲヘナの下っ端戦闘員の私がトリニティのトップ層と話す機会なんてもうないだろうに。
不思議に思いながら自分に割り当てられた部屋へと戻った。
林檎と別れてその背中に小さく呟く。
“多分、関わることになると思うよ…”
そんな子が今のミカの目にどう映るのか、他人からどう見られるのかを全く意識していない。
それは一歩間違えれば何かに依存しかねない今のミカには毒になりかねないんだけど。
本人に自覚がない以上、どうしたものかな…
この後にやらなきゃいけない事リストに新たに加わった問題に頭を悩ませながら。
風紀委員の子達と合流して正義実現委員会本部へと歩く。
まぁまずは差し迫った脅威を取り除いてからの話だね。
難産でした…自罰モードのミカってエミュレートしきれる気がしない…
林檎が説教みたいな事するかな?と言うのも考えましたが多分この子なら
「強いお前がウジウジしてんのはムカつく」ぐらいの感覚で言っちゃうかな?とこう言った感じになりました。