聖堂跡地へと向かう事になってから。
少しやらなければならない事があると言った先生と共に皆を見送った後、先生からマコトへの協力要請について話された。
"と言う訳で力を借りたいんだけど…"
先生は自信なさそうに言うけれど。
「そう言う事なら協力してくれるはずよ」
私がそう言うと少し安心した様子の先生。
…外から見るとマコトは大分様子のおかしい生徒に見えてるのかしら?それは間違っては居ないのだけど正しくもない。
「マコトは筋が通ってるなら一考してくれるわ。それに今回の件はトリニティに仕切りを任せてる節があるから」
ナギサが了承するならほぼ間違いなく話を受けると思う。
そう続けると…
"信頼してるんだね"
ふわりと笑う先生から目を逸らす。
「1年からの付き合いだから…それだけ」
少し気恥ずかしい…話を変える様に問いかける。
「マコトは兎も角。ナギサの方はどうするの?」
"ここなら連絡つくかなと思ってたんだけど…"
どうやら入れ違いになっちゃったみたい…と困った顔をする先生。
「取り敢えず万魔殿に連絡しておく?」
先に話を通しておいて損はないし。
"そうだね…そうしようか"
と、話していると驚いた様な声で話しかけてくるトリニティ生がいた。
シスターフッドの生徒たちの中から1人進み出て。
制服を見る限りシスターではなさそうだけれど…
「先生?どうして此処に?」
"ハナコ?ちょっとナギサに頼みたい事があって…"
入れ違いになっちゃったみたいで困ってるんだ、と続ける先生。
「ナギサさんに?通信でよければ専用回線を使えば繋がると思いますけど…」
私たちもそのために来ていますし。と続けて直接お話しなければいけませんか?と問いかける。
"話が出来るならどんな形でも!…頼めるかな?"
「えぇ、構いません。では此方へ…貴女もどうぞ」
先生を隣の部屋へと案内して据え付けの通信機前へと座らせる。
ハナコと呼ばれた生徒が私にも席を勧めてくれるけど…
「いえ、私はここで良いわ…ありがとう」
丁重に断らせてもらった。
何かあった時に直ぐに対処するためには立ってる方が良い。
「分かりました。…繋げますね」
少し機器を調節すると直ぐに通信が繋がった。
『…どうかされましたか?』
ナギサの声だ。無事なのはマコトから聞いていたけれど実際に声を聞いて安心した。
「ナギサさん?こちらは全員まとまりました。約束は守って貰うとマコト議長へ連絡をお願いします」
『ハナコさん…ありがとうございます』
通信越しでもわかるくらいに頭を下げているのだろう声が聞こえる。
「私が行かなくても皆さんの混乱は然程酷くなかったですよ?…それよりもナギサさんとお話ししたいと言ってる方がいらっしゃってるんですが…」
そう言うと先生にマイクを譲る。
"ナギサ?少し頼みたい事があって…"
『先生!?気がつかれたとは聞いていましたが…お体の方は大丈夫なんですか?』
“大丈夫だよ。エデン条約について少し聞きたいんだけど…”
最初に行うと決めた際の参加者とその意図について。
『最初に言い出したのは連邦生徒会長です。私がそれに賛同する形でゲヘナへと打診したところ、風紀委員長であるヒナさんに興味を持って頂けて…マコト議長が賛同して今日に至ります』
“連邦生徒会とトリニティ、ゲヘナの三つの組織で行われる契約なんだね?”
確認する様に問いかける先生。
『そうなりますね。…アリウスがどの様にして乗っ取ったのか不明ですが』
“であれば何とかできると思うよ”
先生の言葉は確信を持っている様に聞こえた。
『あのユスティナをどうにかできると?』
“私の考えが間違ってなければ間違いなく。仮に外れていても制御は狂うはず”
それにはトリニティとゲヘナ、両校の助けが必要なんだけど…と続ける先生。
『トリニティは先生の考えに協力しましょう。…マコト議長には?』
“それはこれからお願いするつもりだけど…”
そう言うと通信越しに特徴的な笑い声が響いた。
『キッキッキ…面白そうな話をしてるじゃないかナギサ?』
…マコト?何で一緒にいるんだろう?
『
それだけ言うと通信越しの声がナギサに代わる。
少し疲れた声で話し始めるナギサ。
『…と言うことですので。私たちはどうすればよろしいですか?』
“聖堂跡地でアリウスが契約の強化ないし更新を行うはずなんだ。そこに割り込む形で君達のETOを再定義させてユスティナの制御を奪う”
そこまで行かなくとも混乱させることは可能だ。と続ける先生。
『なるほど…連邦生徒会長の代役は先生が?』
“そうなるね。シャーレは連邦生徒会に所属するから私で役者不足という事はないと思うんだ”
契約の再構築。そのために必要なのは各学園の生徒と連邦生徒会の承認を行える人物。
であれば今の私たちでも可能なはずだと言う先生の言葉に無理な点は見当たらなかった。
『ではすぐに行動を。必要な人員は私とマコト議長でよろしいですか?』
“最低限ならそれで大丈夫なはず。…できるならあの時その場にいた全員がいれば確実だけど…”
流石に難しいだろう。あの時崩落に巻き込まれた人員は無事脱出できたとはいえ、現状に対処するため方々に散ってしまっている。
『できるだけ集めます。マコト議長もそれで構いませんね?』
通信越しにマコトへと問いかけるナギサの声が聞こえる。
それに対する答えも遠くから聞こえてきた。
『それがお前の意思なら是非もない。かき集めてやろうじゃないか!』
…楽しそうね、マコト。
こう言う時に即断即決できる人は好む所でしょうから当然だけれど。
『ヒナ、お前も来い!言わずもがなだろうが先生を任せるぞ?』
急に話しかけられて驚いた。私は一言も喋ってないのに…
私が此処に居る事を疑ってもいない。
…そういう所が貴女らしいと思ってしまうのはその言い方に慣れてしまったからなのかもね?
「えぇ、当然。今度はしくじらないわ」
『キッキッキ…ようやく本調子に戻ったか。では現地で会おう』
そう言うと通信が切れた。
相変わらず自分勝手な人…でもそれが良いと思う自分に笑ってしまう。
“話が早くて助かるけど…”
苦笑しながら私を見る先生。言いたいことはわかる。
「諦めた方が良い。マコトはああいう人だから」
決まった事なら直ぐにやるし、自分から約束したことは破らない。
相手にもそれを求めるから要求するハードルが上がってしまっているけれど…
「それでも信頼できる。やると言ったら必ずやってくれるから」
“そうだね…じゃあ、私たちも行くとしようか”
先に行ったヒフミ達も心配だし、と続ける。
「林檎がついてるとはいえ、あんな少人数で行かせて良かったの?」
そこだけは不安だった。
あの子なら大抵の相手は脅威にならないだろうけど、精鋭部隊相手だと流石に分が悪い。
“大丈夫。…心強い援軍が来てくれるからね”
自信満々に言う先生。
さっき部屋の隅で話してたけど…
「先生がそう言うなら信じる。…急ぎましょうか」
そう言って部屋を出る時に声をかけてくるハナコ。
「…先生、私もご一緒して良いですか?」
ヒフミちゃん達が心配で…と続ける。
“もちろん。…良いかな?”
先生は私に確認をとってくるけれど。
「貴方が望むなら構わないわ」
端的に答える。
護衛対象が増えようが、私のやることは変わらない。
私は護衛には向かないけれど。
「脅威を排除する事なら得意だもの」
先生の守護は他の風紀委員の子たちに任せれば良い。
私は先生に近づく危険を即座に排除すれば良い。
私は今1人ではないのだから。
頼る相手が居るなら存分に頼ればいいのだ。
"頼りにしてるよ"
先生の言葉と共に歩き出す。
「今度は絶対に守るから」
決意を胸に聖堂跡地へと向かうのだった。