息抜き回です。陰謀が絡まない話はスラスラ書けますね…
トリニティでの騒動を終えてから二日後。
諸々の面倒事からようやく解放された私は久々のバイトでシャーレ下のコンビニに来ている。
「お疲れ様です、先輩」
「あ!お、お疲れ様です!」
私を見るなりパタパタと駆け寄るソラ先輩。
「今日も1日、よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします。…壁の穴増えましたね?」
前に来た時よりポスターが増えてる。
要は強盗に入られて発砲された跡が増えてんだよ。
壁に開いた銃痕を隠すために貼ってるから季節とかバラバラなんだよな…
「あはは…最近結成されたらしい不良グループの方が来るんですよ…」
少し煤けた様子のソラ先輩を見てそいつらを吊るす覚悟を決めた。
…てかヴァルキューレの連中はどうしたんだよ?巡回増やすって言ってただろうに。
「次に来たら吊るしましょう。なぁに、どんな阿呆でも6時間も吊るせば身に染みます」
昔…中学生時代に風紀委員から聞いたから間違いない…はず。
温泉開発部の平部員はそれで1週間は黙ったって話だ。
…無気力になってたとも言うが。
「それは流石に…」
困った顔をするソラ先輩。でも強く否定しないって事は相当頭にきてるよな?
「安心して下さい。その昔、ゲヘナの風紀委員で行われていた安全な吊るし方を知ってますんで」
後遺症も残らないから安心安全。
精神面への影響は…まぁ考えない様にすれば良いだけだし。
少しの間記憶が飛ぶ事があるらしいが大した事じゃない。
縄を見ると震える様になる事もあったって話だしちょうど良い抑止力になると思う。
そう続けると
「……いや、やっぱりダメです!」
「少し悩みましたね…」
こりゃ相当だぞ?やらかしてくれてんじゃねぇか…
怒りが沸々と湧いて来たタイミングで来店の音が鳴る。
入り口の方を見ると見るからに不良です!みたいな見た目の学生が4人入って来た所だった。
「…でよ!アタシはこう言ってやった訳だ!痛い目見たくなけりゃ出すもん出せ!ってな!」
大声で話しながら入ってきたチンピラ風の学生4人がまっすぐレジまで来た。
「いらっしゃいませー」
私は何時ものように接客モードに入ったが…先輩が少し震えて下を向いている。
…このカス共が新しい常連か。
「あん?新顔だな?」
不躾に私の顔をジロジロ見てくるチンピラA。
「最近少し野暮用でシフト入ってなかったんです」
営業スマイルで答えると興味を無くした様に先輩の方へと話しかけるチンピラ共。
「嬢ちゃん、何時もの頼むわ!」
「アタシら金に困ってんだよー」
…まぁ、コイツらだろうなぁとは思ってたが。正にテンプレで笑いが込み上げてくるわ。
「…何がおかしい?」
ドスを効かせて尋ねて来るチンピラA…めんどいからAでいいか。Aが睨んでくる。
「いや、何でもないですよ」
目を逸らさずに微笑むとそれが癇に障ったのか私に銃口を向けてくる。
懐かしいなこの感じ…バイトしてるって感じがひしひしとするよ。
「態度には気をつけろよデカ女…アタシらを誰だと思ってんだ?」
ステレオタイプな奴らは久々でちょっと嬉しいぞ私は。
ニコニコと営業スマイルを崩さずに答える。
「はて…?存じ上げませんが」
お前らなんて知るかバーカ、と内心で中指を立てる。
まぁ、まだ撃ってないし一応まだ客の可能性も少しはある…
「舐めてっとこうなるって言ってんだよ!」
と思ったそばからぶっ放すA。飛んできた弾を回避すると後ろの壁に着弾する音が聞こえた。即座にホルスターからリボルバーを抜いて撃ち返す。カウンター越しに頭に命中、半回転してぶっ倒れた。…うん、近すぎたかもしれん。
まぁ死んでねぇし脳震盪くらいで済んでんだろ。
一瞬の静寂の後。
「な…!?テメェ!!」
「ぶち殺せ!!」
チンピラB、C、Dが咄嗟に銃口を向けて来るがまぁ遅い。ユスティナやら錠前やら聖園ミカやらとやり合った後だから尚更遅く感じるそれより早く3連射。全弾頭部に命中してAと同じ様にぶっ倒れた。
「はい、終わりましたよ先輩…先輩?」
「…あ、はい!縛り上げますね!」
少しぼーっとしてたから声を掛けたんだが、動き出したらテキパキとチンピラ共を縛り上げた。
「おぉ〜。相変わらずのお手前で」
暫くやってなかっただろうに手際が良いこと。
「…なぜでしょう、身体が勝手に動きますね」
「それだけ手慣れてるって事ですよ」
和気藹々と雑談しながら拘束されたチンピラ共を数珠繋ぎにして表まで引き摺り出す。その後街頭に端っこを引っ掛けて一気に引っ張り上げて反対側を固定。
「…これで良し!」
旧ゲヘナ名物不良の一本釣り(オーナメント風)の出来上がりだ!
懐かしいなぁ…ガキの頃は良くこうやって馬鹿共が吊るされてたもんだが。
風に揺られてフラフラしてる奴らを見ると昔のゲヘナを思い出して涙が…出てこねぇな、うん。
むしろ的当てに使ってやろうかと思う程度にはムカつく。
私の留守中に先輩脅しやがって…2度と歯向かえなくしてやるよ。
「何してるんですか!?」
追って出てきたソラ先輩から叱られた。
「?見せしめ若しくは釣り餌的なやつですよ」
常連になってんならこうしておけば
「テメェ何してくれてんだオラァ!」
「…ね?手っ取り早いでしょ?」
そう言うが早いか撃ってきやがった間抜けを撃ち倒して数珠繋ぎの端っこに加えた。
「これは新記録狙えるかもしれませんね…過去最長記録は確か14人だったはずなんで」
そん時は途中で台座が壊れたからそれ以降の数がノーカンになっただけで実際は20を超えてたらしいが。
ゾロゾロと近寄ってくる不良共を見ながら先輩に伝えると
「…程々にしてあげて下さいね?私はヴァルキューレの方を呼んでおきます」
そう言うと店に引っ込んだ。
やっぱキレてんな先輩…
「さて。久々のバイトだし張り切って行くとするか!」
ヘルメット団だかチンピラ集団だか知らねぇが。
先輩に迷惑掛けた分はシッカリ償ってもらうぞ…
その後は襲い来る馬鹿共を撃っては繋ぎ撃っては繋ぎを繰り返して18人繋いだあたりでヴァルキューレが到着して記録はストップした。
もうちょい遅く来てくれれば20人の大台が見えたのに…と若干しなってる街頭を見ながらため息を吐く。
「速ぇよ…いや、間違った。遅ぇよ!巡回増やしてくれって言っといただろうが!」
街頭に吊るしたオーナメントを取るのに四苦八苦してるヴァルキューレの生徒に抗議するが
「すまん、最初は良かったんだが今は何処も人手不足で…」
とか顔馴染みになりつつあるヴァルキューレ生徒から申し訳なさそうに言われてしまった。
「…まぁ、先輩に害が無かったから良いけどさ。アンタらが大変なのも分かってるし」
さっき引き渡しの際に話した感じ人員不足と装備不足が深刻化してるってぼやいてたもんな?
「一応今回ので常連になってたカス共は全員潰したけども。今後も続けて来る様なら専用の台座用意しねぇとな…」
後半は呟く様に言ったせいかヴァルキューレ生徒には聞こえなかった様でオーナメントを回収したらさっさと帰還して行った。…忙しない奴らだ。
さて、肝心の人を吊るす用の台座だが。…ゲヘナから取り寄せるか。風紀委員が使ってた中古品なら格安で手に入らねぇかな…
どう思います?と先輩に問いかけると
「ダメですよ林檎さん!人は吊るすものじゃありません!」
他のヴァルキューレと話し込んでたソラ先輩からお叱りを受けた。
「でも先輩、スカッとしたでしょ?」
縛り上げられた不良共、鬱血しない程度にキツく縛られてたし。
私と先生が居ない間に随分と暴れ回ってくれてたみたいだし?
同情の余地なんざありゃしないだろ。
「大丈夫!ちゃんと加減しますから!」
後遺症が残らない程度には。
私と縄と台座を見たら震えが止まらないのは後遺症に含まない。
それはやらかした阿呆共にとっては正常だからな。
「……いや、ダメです!お店の景観を損ねちゃいますよ!?」
そこは盲点だったわ…確かに見栄えはあんま良くないもんなアレ。
でも不良を綺麗に飾りつける方法なんて知らねぇよ私…
「…わかりました。ちゃんと勉強してからにします」
「わかってくれたなら…今なんて言いました?」
デコレーション関係に詳しい人知り合いに居たかなぁ…
考え事をしながら店内に戻ると、レジ裏に開いた穴は既に新しいポスターで隠されていた。
仕事の速い先輩だ事…こんなん慣れない方が良いに決まってるが。
「ん〜…!やっと日常に帰って来たって気がしますね!」
隣に立つ先輩を見やりながらそう言うと
「これが日常っていうのも考えものだと思います…」
と苦笑気味に答えられた。
強盗にカツアゲ、最近は少なくなったけど誘拐とか。
少なくともクーデターやら過去の因縁が襲いかかってくるとかマジカルヒナ先輩と撃ち合わなくて良いのは素晴らしいと思える。
「さ、バイト頑張りますか!」
気合いを入れてようやくコンビニバイトを始めた…のは良いものの。
やっぱ人来ないなこの店…殆ど先生かシャーレの手伝いに来た生徒しか買い物しやしねぇ。
偶にそれ以外の生徒が来るが体感6割が強盗だ。
…初期よりひどくなってんじゃねぇかよ。.D.Uの治安終わってね?
そう思いながら縛り上げた強盗3名様を街頭に吊るした。
「だから、吊るすのはダメですって!」
すみません、つい癖で…と平謝りすることになったがまぁそれも日常って感じがする。
だからまぁ…この後の呼び出しでまた非日常に引き戻された時に更にありがたみを感じた訳だが。
『林檎さん…ミカさんが少しお話しをしたいとの事なんですが…お時間よろしければトリニティまでご足労願えませんか?』
マコト先輩経由で伝えられたナギサ先輩からの
聖園ミカが今更何の様だよ?と思わなくもないが万魔殿から直々の通達だ。無視したら後が怖い
。面倒だなぁと思いながらも