ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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ガンマンと聖園ミカ その4

 

 

 

昼間に訪ねた場所なだけあって迷うこともなく軟禁ルームのある建物まで戻ってきた訳だが。

 

「魔女を出せ!」

 

「すべて聖園ミカのせいだ!」

 

すげー人だかりで建物の入口が封鎖されてる状況だった。

…今度は何やらかしたんだアイツ?

 

「ちょっとすみませんねー…」

 

ギャーギャー騒いでるお嬢様方(鳥貴族共)を掻き分けるように退けながらガンガン進んでいると。

私の容貌を見てゲヘナ生徒と気づいた連中が別の意味で騒ぎだした。

 

「ッ!角付きが何の用です!?」

 

気合いの入った奴が私の目の前に立ち塞がる。

大人しくデモしてろよ…

 

「聖園ミカに用があんだよ」

 

だからさっさと通してくれ。

そんな思いで道を空けさせようとするも頑なに退かないトリニティ生徒。

 

「ゲヘナが…次はゲヘナと手を組むつもりですか!」

 

何でそうなる…頭ん中どーなってんだお前。

どう考えたらあの先輩がゲヘナと組むだなんて思うんだよ。

 

「あのゲヘナ嫌いが私達(ゲヘナ)と組む?寝言は寝て言えよお嬢様(鳥頭)

 

聖園ミカが自発的にゲヘナと組む事はあり得ねぇ。

トリニティ内部でも変わんないタカ派筆頭だろうに。

 

「あれだけ露骨に嫌ってんだ。それくらい頭スカスカでも判るよな?」

 

そんな事も分かんない位バカなのか?と少し哀れむ様な視線を向けた。

表情を取り繕うくらいはするかも知れないが嫌いなものは嫌いだと言っちまうタイプだろうが。

 

「角付き如きが偉そうに…その程度しか頭が回らないから低能だと言うのです!」

 

あーやだやだと言わんばかりの表情で見下して来やがった。

 

鳥頭が言ってくれるじゃねえの?

互いにヒートアップして行く。

 

「鳥頭なのは羽が生えてるからか?毮りゃ少しはマトモになるかもなぁ!」

 

ブチのめしてやるから掛かって来いやトリニティ(チキン野郎)

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

一触即発の状況で聞き慣れた制止の言葉が間に入って来たが…

 

「食らいなさい!」

 

それを好機と見たのか不意討ち気味に放たれた弾丸を身体を後ろに倒しながら避ける。

右に吊るしたホルスターが若干前を向いている状態からの最速の早撃ち(クイックドロウ)で勝ち誇ったお嬢様の額を正確に弾いた。膝から崩れ落ちるお嬢様。

何が起きたのか分かってないのか、全員固まっている。

 

「…で、なんか用かコハル?」

 

硝煙の上がる銃口を下ろしながら声をかけて来てたコハルに尋ねる。

 

「取り敢えず担架が必要ね…」

 

額を抑えるコハル。

そこでようやく動き出したお嬢様共が騒ぎ出す。

 

「まずはその角付きを捕らえるべきでしょう!?」

 

「そうです!そもそもなんでゲヘナが自由に出歩いてるんですか!?」

 

「人が撃たれたんですよ!?早く…」

 

ピーチクパーチクと喧しい!雛鳥かお前ら!

 

「今のは正当防衛だろうが?私は()()()()()()()()()()やり返したぞ」

 

なあ?と周りを見渡すが全員敵意を向けて来るだけで肯定する奴は一人も居なかった。

 

「…オーケー。んじゃ全員ぶっ飛ばすわ」

 

面倒くせぇが全員ぶっ飛ばした方が速い。

掛かって来い、と左手で手招きすると同時に左手を掴まれた。

 

「だから!ちょっと待てって言ってんでしょうが!」

 

「喧嘩売られてんのに?止めるなら喧嘩売った側だろうが」

 

私は買う側だ。ちゃっちゃとミカ先輩に話つけねぇといけねぇんだから手早く終わらせようぜ…

やる気満々な私を見て慌てた様子でコハルが周囲に呼びかける。

 

「貴女たちも落ち着いて!この人は私が責任を持って対処するからこの場は任せて下さい!」

 

コハルの必死さが伝わったのか、私にぶっ飛ばされたお嬢様がピクリともしない状態になってるのにビビったのか定かではないが徐々に捌けていく群衆。

それを見て安堵のため息を吐いて私の手を離してくれた。

 

「…で!アンタは何で此処にきた訳!?」

 

おっと、まだちょっと怒ってんな。

 

「聖園ミカに用がある。…万魔殿からナギサ先輩に話が通ってるはずだ」

 

マコト先輩の事だから既に承諾を得てるだろ…多分。

 

「ミカ様に?…一応確認はさせて貰うわよ」

 

そう言うと何処かに連絡し始めるコハル。

手持ち無沙汰になった私は弾倉に弾丸を込め直しながら待つ。

 

「…わかりました。ではその様に。…確認が取れたから行って良いわ」

 

そう言うと道を空けてくれた。

 

「手間かけさせて悪いな。また今度飯でも行こうぜ」

 

軽く手を振りかえされながら昼に行った軟禁ルームへと向かった。

 

 

何事もなく聖園ミカの軟禁ルームへと辿り着くと同時に扉を開ける。

 

「また来たぜ!ってふざけてる場合でもないな。悪いけどちょっと付き合って貰うぞミカ先輩」

 

「こんな時間に淑女(レディ)の部屋にノックも無しで入ってくるなんて礼儀ってものを知らないの?」

 

呆れた表情で返されるが…

 

「悪い、ちょいと急ぎの用事でよ…先生が居なくなった。連絡もつかねぇ。多分地下じゃねぇかなと」

 

端的に現状を伝えると…

 

「…アリウスが?」

 

話が早くて助かる。

 

「そう睨んでる。何が目的か知らねぇがスクワッドの連中を解放して、その現場に向かった先生が行方不明になってんだ」

 

これで無関係だと考える方が間抜けじゃねぇかなって。

 

「つまり、私に案内して欲しいって事かな?」

 

ニコニコと笑ってるが表情と内面が一致しない女だから実際はどう思ってんのかわかんねぇなぁ…まぁ言うだけ言ってみるか。

 

「そういう事。…一応ナギサ先輩に話は通してあるぜ」

 

アンタの友達(トリニティの長)がゴーサイン出してるから問題ねぇだろ?

 

「…林檎は私を信じられるの?貴女達の敵だったのに?」

 

何故か不安気に聞いてくるミカ先輩。

相変わらず何考えてんのかわかんねぇ奴だな?まぁ正直に答えるなら…

 

「…?今は敵じゃないし別に良くね?」

 

確かに襲撃時はやべぇバケモンが来やがったと思ったけど。

そっから先はまぁ…少し話した感じじゃあの時の悪意を感じないし。

ミカ先輩なら自分の身は自分で守れるってのもデカい。

 

「別に信頼してる訳じゃねぇけど。今のアンタなら信用しても良いと思ってるよ」

 

信じて頼るには心許ないけど信じて用いるならこれ程の人材は居ない。

 

「本当に…」

 

なんとも言えない表情で何かを呟いた様だが…

 

「まぁ、アンタが何と言おうと着いてきてもらうしかねぇんだが」

 

万魔殿とティーパーティの約束だし。

今のミカ先輩に拒否権はない。

 

「本当に!意味分かんない!」

 

そう言うと何処かサッパリとした表情になったミカ先輩が立ち上がる。

 

「意味分かんないけど…取り敢えず助けてあげる」

 

ほら、行くよ。と先導して部屋を出るミカ先輩。

続いて部屋を出て追いつくと

 

「私の銃は?」

 

「…要るか?」

 

ミカ先輩なら拳で十分じゃね?

 

「要るに決まってるじゃん!私を何だと思ってるの!?」

 

心外だと言わんばかりに怒っているけどさぁ…

 

「いや、ぶっちゃけこの距離(至近距離)でヨーイドンなら素手のミカ先輩に勝てる奴なんてそうそう居ないでしょ…」

 

ヒナ先輩にホシノ先輩、ネル先輩。凌ぐだけならシロコ先輩とアズサ先輩もギリいけるか?…私もまぁ何とかやれるだろう。

各校の純戦闘員の上澄みでどうにか対処できる…かもしれない?レベルなのやっぱりバグってるよミカ先輩。

 

「そんな事!…ない、と思う…」

 

少しずつ声が弱くなっていくところを見るにある程度の自覚はあると見た。

まぁあんだけ強けりゃ自覚がない方がおかしいわな。

 

「…一応許可は出てるな。こっちの部屋だ」

 

モモトークを見るとナギサ先輩からミカ先輩の連れ出しの許可と武装を許可する旨が送られて来ていた。序でに保管場所も。

 

「ほら、コイツだろ?」

 

そう言うと壁際の棚からマシンガンを取り出して手渡す。

 

戦力的にはあった方が良いのは間違いないし。

…裏切られたら近くにヤバい化け物が現れることになるが。まぁ至近距離なら私に分があるし大丈夫だろ。

 

「許可があるなら最初から出してよ…」

 

「いや、ワンチャン要らねぇって言うかなと思って」

 

それならそれで構わないし。

ナギサ先輩からは万全を期して下さいとも来てたけれど一応ね?

 

「無駄に時間使っちゃったじゃん…さっさと行くよ!」

 

「了解、頼むぜ先輩!」

 

駆け出すミカ先輩に追従して走る。

 

しばらく走っていると段々速度を上げていく先輩。

…やっぱ身体能力おかしいってこの先輩!

月明かりだけで足元不安な道を何で躊躇いなく走れるわけ?

全力疾走してる様に見えないのに私の最高速近い速度でてんだけど!?

 

「ほらほら、急ぐんでしょ?もっと速く走って!」

 

「無茶、言うな!これが限界だっての!」

 

喋らせんじゃねぇよ!息切れしちまうだろうが!

 

「うーん…しょうがないなぁ」

 

ちょっと速度を緩めると私の横に着く。

 

「ちょっとごめんね?」

 

そう言うと同時に私の腰をガシッと掴んで持ち上げた。

 

「へぁっ!?」

 

自分でも驚くほど間抜けな声が出た。

いきなり何すんだコイツ!?

 

「口閉じて。舌噛んじゃうよ?」

 

そう言うが速いか私を肩に担いで一気に速度を上げる先輩。

人1人担いで私より速く走るとかアンタやっぱおかしいよ!?

 

「やっぱりこっちの方が速いね?じゃ、行くよー」

 

更に速度を上げる先輩。

ガッツリ休んだ後だからか襲撃の夜とは段違いの身体能力してらぁ…

 

「…やっぱ先輩、正実とか実働部隊に行った方が良いんじゃね?即戦力でしょ」

 

「揶揄うんなら放り投げながら行くけど?」

 

お手玉みたいに運ばれるのは流石にゴメンだ…

 

「すんません、黙ります」

 

本心なんだけどなぁ。

 

 

米俵みたいに担がれながら流れる景色を眺めているとこんなところを知り合いに見られなくて良かったと思う。

ぱっと見、誘拐されてる様にしか見えないだろうし。

友人に見られたら大爆笑もんだ…その後1年はそのネタを擦られる事間違いなし。

 

そんな役体もない事を考えていると。

 

「此処からは自分で歩いて。…何が出てくるかわからないから」

 

廃墟になった聖堂っぽい場所に入ると地面に降ろされる。

 

「先に言っとくけど私もアリウスの本拠地までの道を知ってる訳じゃないからね?…あくまで途中まで、そこから先は手探りになると思って」

 

そう言うとさっさと地下に続く階段を降りていくミカ先輩。

味方だと頼りになるなぁ…

 

「了解…気合い入れて行きますか」

 

装備を整えて準備万端、地下に詳しい個人プレイなら最上に近い人員。

これで無理ならもうゲヘナの大部隊を突入させて貰って人海戦術に頼るしか無くなりそうだな…

そんな事を考えながら足を進める。

暗がりを一つ曲がる度に空気が澱んでいる様な気がする。

先生、無事だと良いけど…錠前サオリが絡むと碌なことにならねぇからな。

見つけ次第手足をへし折って行動不能にしねぇと安心出来ない。

決意を新たに地下へと潜るのだった。





ミカの自暴自棄フラグになる群衆の言葉が途中でキャンセルされました。
多少不安定ではありますがまだ善性のまま魔女化せずに同行する事に…書いてる途中でまた勝手に動き始めて最初の筋書きと変わりましたが、もうこれで走り切ります。
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