ゲヘナのガンマン   作:トニートニー

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久々に更新します…

※捏造設定を含みます。苦手な方はブラウザバック願います。


ガンマンとアリウススクワッド その4

 

 

トリニティ領、某所

 

 

 

「議長閣下。温泉開発部部長、鬼怒川カスミ以下温泉開発部一個中隊が到着しました」

 

「通せ」

 

ハッ!と頭を下げて退室すると同時に良く見知った白衣の少女が悠々とした足取りで入ってくるなり

 

「ハーッハッハ!議長殿直々の喚び出しとは珍しい事もあるものだな!」

 

カラカラと笑いながらからかう様に話し出す鬼怒川カスミに

 

「事情は既に伝えた通りだ。単刀直入に言おう。手を貸せ、カスミ」

 

何時もの芝居がかった台詞回しではなく、素に近い言葉で端的に述べる。

 

「穏やかじゃないな…ごほん!勿論、我らが議長殿の頼みと有れば手伝うのは吝かではないとも!」

 

一瞬素に戻るも直ぐに何時もの温泉開発部部長としての態度になるカスミに苦笑しつつ

 

「そうか。では早速向かうとしよう」

 

席を立つと側に仕えていた生徒から上着を受け取って羽織る。机に置いた帽子を被れば何時もの万魔殿議長・羽沼マコトの完成である。

 

天幕を出れば既に戦闘準備を整えた万魔殿直属の学徒兵が戦列を整えて待っていた。

 

錚々たる軍勢の前に立っていつものように声を張る。

 

「待たせたな、諸君」

 

ニヤリと口の端を歪めて嗤いながら。

 

「我々に喧嘩を売った阿呆共に目に物見せてやろうではないか」

 

芝居がかった台詞回しとジェスチャーを交えながら。

 

「連中はどうやら地下に居る様だ…ならばやる事は単純」

 

カツッと踵で地面を叩く。

 

「連中を巣ごと掘り起こして叩き潰す。その為の道具も、専門家も用意した」

 

チラリと横に立つ温泉開発部部長とその一味を見やるとニカッと笑ったカスミと目が合った。

 

「大まかな座標は先行したゲヘナ生及びトリニティ生が示している。後はお前達次第だが…」

 

やれるな?と確認する様に問うと

 

「あまり舐めてくれるなよ議長殿。私達はプロだぞ?」

 

対象が温泉ではないのが残念だが。と肩をすくめて軍勢の端に無作為に並んだ同胞へ目を向けるカスミ。

 

それに答える様に口々に声を上げる温泉開発部員達。

 

「議長には他学区での温泉開発で世話になったしな!」

 

「掘るのは任せろ〜!」

 

「温泉!温泉!温泉!」

 

一歩間違えれば暴徒になりかねないゲヘナを代表する問題児達が元気よく片手を上げる。

 

そいつらに向かって軽く片手を挙げると次第に静かになる温泉開発部員達。

 

三年で構成された精鋭達は今の保証された自由を手に入れる前の雷帝時代を知っている。

 

それを終わらせた中心に立つ二人の俊英。

その片割れの言葉と有れば聞いてやっても良い位には感謝している。

 

「温泉開発部には期待している。それは諸君らも同様だ」

 

ゲヘナにおいて無軌道とも言える開発業務を行い続けた問題児達のスキルは一級品である。

 

中でも鬼怒川カスミは頭脳明晰かつ温泉開発…地下開発へ才能を特化させたためかある種の化物染みた嗅覚を持つ。

 

故にカスミが率いる温泉開発部は平時ではテロリスト予備軍だがこういった状況ならば非常に有能な工作兵と化す。

 

空崎ヒナ(風紀委員)が徹底的に潰さないのはそう言った背景があるからでもある。

 

マコトの手札の一つをもぎ取る訳にはいかないから余程のことでもない限りおしおきも軽めに(当人比で優しく注意するだけで)済ませているのだから。

 

「共通の敵が現れた今、互いに立場は違えど此処に立つ者は皆同胞であり戦友である」

 

自然と中央に開いた道を歩きながら続ける。

 

「諸君、売られた喧嘩はどうするべきだ?」

 

その場の全員に問う。

 

ゲヘナに、我々の自由の御旗に泥を投げつけた輩を如何とするべきだ?と。

 

「高額で買取りましょう!」

 

「舐めた真似し腐った奴は骨までしゃぶってやりますよ!」

 

口々に声を上げる学徒兵に満足したように頷くと

 

「議長殿。我々への見返りはないのかな?」

 

悪戯っぽく嗤うカスミに

 

「勿論あるとも。アリウスを滅ぼしたら跡地は好きに掘って良いとナギサに取り付けてある…好きに開発するが良い!」

 

そう告げると一気にボルテージが跳ね上がった温泉開発部からも歓声が上がった。

 

「トリニティで温泉掘っても良いんスか?良いんスか!?」

 

「テンション上がって来たー!!」

 

「温泉!温泉!温泉!」

 

戦意は十分、この一手で全て叩き潰してやると覚悟を決める。

 

「宜しい!進軍再開!!」

 

目標、アリウス!と号令を掛けて万魔殿の紋章が入った車へと乗り込む。

 

巨大なシールドマシンと掘削用爆薬を満載したトラックの群れに乱れなく分乗した軍勢と共に走り出した。

 

 

…林檎から連絡が無いのが少し気にかかるが途中で拾って行けば問題なかろう。

 

推定ヒナレベルの強者が共に居るならそうそう不味いことにはなるまい。

 

頭を過った考えを直ぐに消し去って前を向く。

 

私は決して言葉を違えない。それはこの席に座る事になった時から破った事のない誓約。

故に…

 

「私(・)が(・)滅(・)ぼ(・)す(・)。他の誰にも譲らん」

 

例え全てを生き埋めにするとしても。

それでどれだけ恨みを買う羽目になったとしても。

 

それは私(最高責任者)の意思に依るものでなければならない。

 

責任者とは責任を取るために存在するのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、地下にて

 

 

「…いい加減鬱陶しいな!」

 

銃弾をばら撒く様に6連射、リロードの隙をミカ先輩が埋める様に前に出て撃ち始める。

 

「だから先生たちの方に行けば良かったのに…」

 

自分からこっちに着くって言ったんじゃん?と呆れたような声で続けるミカ先輩。

 

リロードしながらその言葉に言い返す。

 

「私が頼んで来てもらったのに先輩一人残して行ける訳なくね?」

 

リロードが終わった愛銃を構え直してデカブツへ突撃、発砲。

頭を砕いて薄く煙を出しながら消えていくソレから目を離して続ける。

 

「怪我させたらナギサ先輩に何言われるか分かったもんじゃないし…」

 

だからまぁ…なんだ、無理しないでくれよ?

 

そう言うと嬉しそうな声で答えるミカ先輩。

 

「ん〜…じゃ、お願いね?」

 

私の騎士様?とイタズラっぽく。

 

バカスカと撃ってくる亡霊どもへ撃ち返しながら。

 

何でこんな事になってんだろうな…と少しげんなりした。

 

話は数十分前に遡る。

 

 

 

 

"皆、止まって"

 

先生の言葉で全員の足が止まる。

 

目の前には古びた大聖堂の様な空間が広がっていた。

 

「…何かありましたか?」

 

私の目には何も映ってないが…

 

「…ユスティナだ。数が多いな…」

 

錠前サオリの言葉と共にワラワラと現れる亡霊共。

 

「え?あの亡霊って先生たちで何とかしたんじゃないの?」

 

ほら、錠前達をとっ捕まえた時にさぁ。と続けるが

 

"…不完全だね…僅かに残った権限を駆使してるみたい"

 

存在自体が不確かなモノを無理矢理繋ぎ止めてるから前程の脅威ではない…と思う。

 

そう続けた先生に

 

「弱体化したけどまだ健在って事?」

 

ざっくり自分なりに纏めた結論を確認すると

 

"そうだね。…多分最大値が今の数で、呼び出せるのも此処だけって言うのが弱点かな"

 

そうは言うものの、目的地に通じる道に配備してんなら関係ないよなぁ。

 

まだこちらに気づいていないのが救いだな。

 

「こ、これじゃ間に合わなくなっちゃいますよリーダー…」

 

時計を見ながら小さな声で言ってくる狙撃手。

 

「他の道はないのか?」

 

黙り込む錠前へと質問するが…

 

「バシリカへ通じる道は此処だけだ…突破するしか無い」

 

「突破っつっても…」

 

チラリと覗き込むと普通の奴以外にもデカブツが数体、広い空間だってのに狭く感じるくらいにはいる。

 

「あれだけの数を相手にするのは骨が折れるぞ?」

 

外の連中と同じなら復活仕放題だろうし。

 

沈黙がその場を支配する。

 

全滅させるには骨が折れるが切り抜けた所で挟撃されるのもキツい。

 

どうしたものか、と考え込む先生を見て覚悟を決める。

 

単純な話だ。

 

「私が殿で残るよ」

 

「私が残りますよ。先生はさっさと先に…は?」

 

被った言葉に思わず聞き返す。

 

「私なら一人でも時間が稼げると思うし…あの程度なら負けないし?」

 

ミカ先輩!?何言ってんだアンタ!?

 

「…良いのか?」

 

錠前サオリが少し戸惑った様な声を上げる。

いや、駄目だろ!

 

「ミカ先輩はトリニティから預かった貴賓だぞ?殿なんてやらせる訳には行かないだろ」

 

だから此処は私が残る。

 

そう言うとミカ先輩が微笑みながら

 

「先生に着いててあげなきゃダメでしょ?」

 

何の為に此処まで来たのか思い出して。

 

言外にそう告げるミカ先輩の目は既に覚悟を決めている様に思えた。

 

「……ッ」

 

下唇を噛んで言葉を飲み込む。

 

確かに、当初の目的は先生の救出だ。

それを達成するには先生の傍にいる必要がある。

 

でも…と口にする前に。

 

"…ミカ。危なくなったら直ぐに逃げて"

 

こっちはどうにかするから。と続ける先生の言葉に何も言い返す事が出来なかった。

 

「まっかせて!私、こう見えて結構強いんだから!」

 

どっかで聞いたような台詞を吐く。

 

胸を張るミカ先輩の腕が僅かに震えてるのが見えた。

 

怖いんだろう…当たり前だ。

 

これまでまともに戦う術を学んで来てないお嬢様が、こんな大軍相手に一人で足止めするなんて初めての事だろう。

 

相手は亡霊とはいえその殺意は本物。

 

一度気絶させられたらヘイローが砕けるまで撃たれるだろう。

あいつらが容赦してくれるとは思えない。

 

「…時間ないんでしょ?早く行こうよ!」

 

恐怖を握り潰す様に握りしめた拳の震えを抑え込む様に急かすミカ先輩の言葉に。

 

「ッ…すまない!」

 

頭を下げて先陣を切る錠前。

 

「ごめんなさい…い、行きます!」

 

「ごめん…」

 

スクワッドの連中もそれに続く。

 

"林檎…"

 

先生の声で前を向く。

 

「…悪い、先生」

 

直ぐに行く、と謝罪する前に微笑む先生と目が合った。

 

"いつも助けてくれてるからね…好きな方を選んで"

 

後悔する様な選択はしちゃ駄目だよ、と続けた言葉を聞いて少し考える。

 

 

先生をスクワッドの連中に預けられるか…NOだ。

 

正直、私はこいつらを信用しきっていない。

当面は先生に危害を加えるつもりはなさそうだが…いざという時は先生を切り捨ててでも仲間を取る可能性が高いと思っている。

 

土下座してまで守りたい仲間と先生とで、どちらか一方しか取れないなら仲間を取る。そう言う奴らだ。

 

そして先生はそれを肯定してしまうだろう。

 

この人の天秤は常に生徒がいる方に傾く。

 

それは比重の軽重では無い。

 

この人は自分を天秤の外に置いている。

 

その選択をする時に側に居なければ守りきれない。

 

 

ミカ先輩を一人で残すのも嫌だ。

 

この数相手では私程度でも抑えられてしまうミカ先輩の戦闘経験の薄さが足を引っ張る…囲んで封殺するだけならそう難しい相手ではないのだから。

 

幾らミカ先輩がヒナ先輩以上の神秘を秘めているとは言え不安の方が勝る。

 

私が頼んで、こんな所に引きずり込んでしまったのに。

 

もしもミカ先輩が大怪我を(死んで)しまったら。

 

私は自分を許せそうにない。

 

 

「…どちらを選んでも後悔しそうな場合はどうしたらいいんですか…」

 

縋るように呟いた言葉に。

 

"選択しやすい様に助言するなら…私の方は大丈夫だよ"

 

いざという時はとっておきがあるから。

内ポケットを叩いきながら微笑む先生の顔を見て。

 

「…それを出す前に死にかけた人の言葉は信じられませんよ」

 

"あ、あはは…それを言われると痛いな"

 

苦笑に変わったが、それでもと確信を持って続ける先生。

 

"生徒相手には使わないと決めてるけど…今回は別だからね"

 

いざという時は迷わないし、皆も無事に帰らせるよ。

 

…具体的な方法は一切言ってくれないが、そのとっておきとやらに相当な自信があるようだ。

 

"だから…林檎。こっちは大丈夫"

 

どうする?と出口が見えてきた所で呟く先生。

 

先生に着いていくか、ミカ先輩と残るか。

決断の時が迫っていた。

 

 

 

…決めた。

 

先生を守りながら亡霊の海を弾きながら進む。

 

そろそろ出口と言う所で。

 

息を大きく吸い込む。

 

 

この選択でどう転ぶのかなんて分からないし、後悔するかもしれない。

 

でもそうすると決めたなら、振り返らずに最後まで走り切る!

 

 

「…錠前サオリ!」

 

前を走る錠前に大声で、確実に伝わる様に。

 

「先生に傷一つでも付けたらぶっ殺すからな!!」

 

振り返る錠前に襲いかかる亡霊を弾きながら。

 

「さっさと行って姫とやらを回収してこい!」

 

「…わかった。必ず無傷で返す」

 

すまない…と言う謝罪の言葉とともに駆け抜けるサオリ達を見送って。

 

"気をつけてね"

 

「先生も…いざという時はソイツらをちゃんと盾にして下さいね?」

 

私達は頑丈だから。と答えると。

 

"それは流石に…"

 

と戸惑う先生に釘を差す。

 

「先生がまた傷ついたら私は必ずアイツらに報復するって言ってんですよ」

 

次はもう止まらない。

 

貴方の言葉だろうと、マコト先輩が引き止めようと。

 

ヒナ先輩を敵に回したとしても必ず血祭りに上げる。

 

そう宣言する。

 

"…肝に銘じておくよ"

 

ここは任せる、と言って走り去る先生達の背中に

 

「本当、頼みますよ…先生」

 

そう呟きながら振り返ってミカ先輩の横に立つ。

 

「…なんで残ったの?」

 

心底不思議そうな顔で質問してくるミカ先輩。

その間も亡霊共の足止めに連射と拳を振るい続けている。

 

「先生を預けられる程信じてないんでしょ?」

 

あの子達、そんなに悪い子じゃなさそうだけどさ…と続ける。

 

…確かに私はアイツらの事を信じちゃ居ない。

 

でも、此処まで先生に危害を与える様子もなく、私たちの襲撃にも無抵抗を貫こうとした錠前サオリの気概は少しだけ…本当に少しだけだけど信じてやっても良い。

 

それに…

 

「あの時、錠前サオリは撃ってこなかった」

 

私が撃ったにも関わらず。

 

話を聞いてくれと頭を下げたあの女は一発も撃ち返してこなかった。

 

仲間のためにそこまで出来るならまぁ…心底悪い奴って訳でも無いんだろう。

 

「ま、これが終わったらキッチリ締めるけど」

 

それはそれとしてキッチリ取り立てるが。

 

今は緊急事態だから後回しにしてやるだけ。と続けながら近場の亡霊を殴り飛ばす。

 

「それよりも箱入りのお姫様一人残して行ったなんて言ったら皆に笑われちまうよ」

 

それにさ…と一拍置いて続ける。

 

「私、ミカ先輩の事がそこまで嫌いじゃなくなっちまったし」

 

アンティークを抜いてうじゃうじゃいる亡霊へと発砲する。

…狙わなくても当たるなこれ。

 

敵の多さに辟易しながら。

 

「私はビビってる友達を一人で残す様なダサい生き方はしたくないんだよ」

 

ゲヘナは仲間意識が弱いけど一度懐に入れたらダダ甘だぜ?

 

冗談混じりにそう言うと。

 

「…そう。私も今は貴女の事そんなに嫌いじゃないよ?」

 

両思いだね?と笑うミカ先輩の腕の震えはもう止まっていた。

 

それを見て笑い返しながら。

 

「んじゃま、暴れるか!」

 

こんなのゲヘナじゃ日常茶飯事だ!

 

増え続ける亡霊共へと走りながら言うと。

 

「やっぱりちょっと嫌かも…」

 

でも今はそっちの流儀に合わせて上げる!

 

少し嬉しそうな声を上げながら私の背後から援護し始めた。

 

 

 

 

 

「キリが無いね…」

 

そろそろ弾切れしそう…と呟きながらその辺の瓦礫を振り回すミカ先輩。

 

「こっちもそろそろ看板だわ…ッと!」

 

愛銃をホルスターに収めて拳で応戦する。

こんだけ密集してるとフレンドリーファイアしまくってくれるからまだまだ粘れそうだけど…

 

「先輩、あの謎隕石は使えないのか?」

 

襲撃の夜にぶっ放してた意味不明な宇宙からの攻撃。

強烈な神秘でもって押し潰すファンタジーをまだ使ってないじゃん?と聞くが…

 

「あれは少し準備がいるんだよ」

 

あの時は地上だったから簡単に呼べたけど。と答えながら亡霊シスターを殴り飛ばすミカ先輩。

 

「じゃ、しょうがないか…此処からはステゴロタイムだ!」

 

オラァ!と拳で殴りつけると霧のように消えていく亡霊。

 

脆すぎてVR系のゲームかと思うくらいに手応えが無いなぁ…数が多いから面倒なのは変わりないんだけども。

 

「ステゴロ?」

 

疑問符を浮かべながら適当に振った瓦礫が亡霊を纏めて吹き飛ばす。

 

ゲームはゲームでも私と別ジャンルやってるなー…例えるなら私はベルトスクロールアクションでミカ先輩は無双ゲーだわ。

 

「素手の喧嘩。ゴロは…なんでだろ?」

 

ゴロツキとか?と適当に答えながらミカ先輩の背後から撃とうとしてたマヌケを蹴り飛ばす。

 

「スラングかー。そういう言葉には馴染みが無いんだよ、ねっ!」

 

手に持った瓦礫を私の方に投げて来たのを回避、後ろに迫っていた一団をボウリングのピンの様に吹き飛ばした。

 

「ゲヘナに来れば嫌でも慣れるよ」

 

まともな言葉遣いしてるのなんて風紀委員くらいなもんだし。

後は万魔殿の外交担当とか。

 

頭からして自由を標榜する学園で自主的に丁寧な言葉遣いをしているのは変わり者にあたるんだよな…無法者気質な連中が集まってるから当然っちゃ当然だけど。

 

適当にミカ先輩を狙ってそうな奴を片っ端から殴る蹴るの暴行であの世に送り返しながら答える。

 

「…イメージ通りの世紀末っぷりだよね」

 

不良ばっかりなのになんで三大派閥校の一角を担えるわけ?とその辺の瓦礫を投擲して遠距離攻撃に切り替え始めたミカ先輩が質問を重ねる。

 

「別に一枚岩って訳でもないでしょ?」

 

支持率一桁で就任した議長なんて何の冗談かと思ったもん。と続けるミカ先輩。

 

「それはそう。…でもね先輩」

 

あの人の凄い所はそこなんだよ。と続ける。

 

「支持率が低い割に不思議と誰も彼もがあの人に従うんだ。恐怖政治を敷いてるわけでもないのにさ」

 

マコト先輩は天性の煽動者だ。

 

人をそれとなく乗せるのが上手く、力を向ける方向を間違えない冷徹さを備えた稀代の指導者でもある。

 

『数%が私に従うのなら残りは上手く踊らせれば事足りる』

 

なんて嘯いて実際にそうしてきた傑物。

 

そんなこんなで二年間破綻無くゲヘナと言う大学園を振り回して来たその手腕を疑うものは今のゲヘナには存在しない。

 

「それでもたまに変な方向に跳ね返る連中はヒナ先輩が適度に締めるから問題ないっていうね」

 

あの2人がいる今の世代はゲヘナ史上でも有数の黄金期だろう事は疑う余地がない。

 

噂に聞く雷帝時代を乗り越えた現3年生が率いる万魔殿と風紀委員会、先輩達の背中を見て育った私達は今のゲヘナに少なからず誇りを持っている。

 

「それに、トリニティもそんな変わんないでしょ…ッ!と」

 

飛んできた弾丸を避けてカウンターで早撃ち。ガトリング持ちごとお帰り頂いた。

 

「パワープレイ上等なミカ先輩ならわかるでしょ?要は力が全てなんだよね」

 

完全に管理するのではなく、要所のみを抑えて後は自由にさせる。

 

勿論反抗するのも自由だけどちゃんと叩き潰すぞ?といった形で今のゲヘナは妙にバランスが取れているのである。

 

「うちは…ほら、話し合いファーストだから」

 

暴力なんて野蛮な手段、そうそう使わないし…と小さな声で呟くミカ先輩。 

 

ハハッ抜かしよる。

 

「先輩の暴力レベルはキヴォトスでも上澄みじゃん」

 

最初は何でこんな危険思想もった奴が頭張れてんだ?なんて思ったけど…

 

「ミカ先輩なら拳を握りしめただけで相手は黙るでしょ」

 

あの夜に振るわれた暴力を見て納得したものがある。

 

この人の目の前で舐めた口を叩けばどうなるかなんて、今も涼しい顔して振り回している柱を見れば一目瞭然なのだから。

 

…まぁ、精神的に弱ってると投げやりになる弱点も知られてそうだけど。

 

謹慎部屋での出来事を思い出して少し眉間に皺が寄るが

 

「別に力で上り詰めた訳じゃないんだけど!?」

 

家柄とか、色々な事情があってのことだから!と反論された事で苦笑に変わった。

 

そう言う人だから上に立たされてんだなぁ…という納得とともに。

 

「確かにちょっとだけ人より強いかもだけど…」

 

それに今のトリニティの総領主はナギちゃんだし。と続けるミカ先輩に問い返す。

 

「政治力と暴力の組み合わせか…あんま変わらないね」

 

マコト先輩とヒナ先輩みたいだ。

ヒナ先輩(暴力担当)が政治分野に興味が薄いっぽいのもそっくりである。

 

「学園の運営を三人でやるか一人でやるかの違いでしかないんだなぁ…」

 

私達の決めた事に従えないなら潰す。それまでに十分な話し合いを挟むけど。

 

私が決めた事に従えないなら潰す。それでしくじったら風紀委員会に叩かれるけど。

 

力で頭を抑えつけられるブレーキが存在するって点ではあまり変わりない。

 

話し合いが有ったとしても最終的にそうなるならそこに何の違いがあるというのか?

 

「トリニティとゲヘナが犬猿の仲なのは案外同族嫌悪なのかもしれないな」

 

強い奴が決めたルールに従うなら縄張りの中で生きさせてやるって点では同じだね。

 

そう話を結ぶと

 

「極論だぁ…」

 

頭が痛い、と額に手を当てるミカ先輩。

 

「極論上等では?私は別に政治家じゃないし」

 

こんなん適当にダベってる時の会話と変わんないし。

 

「雑談なんてそんなもんじゃん?別に中身なんてどうだって良いでしょ」

 

何なら別の話にする?と抜いた愛銃を発砲。

デカブツを完全に黙らせた。

 

「そうしよっか…って、こんな事話してて良いのかな…」

 

今頃先生達も戦ってるはずなのに…と呟くミカ先輩に。

 

「大丈夫でしょ…多分」

 

先生にもとっておきがあるらしいし。

 

「それにこの分なら全滅させてからでも追いつけそうだし」

 

ドカンドカンと派手に暴れ散らかしたお陰で。

 

亡霊共も明らかに最初の頃より復活する量が減ってきている。

 

この分なら後4〜5回全滅させれば十数人規模まで減るだろう。

 

「それもそうだね…!?」

 

急に言葉を止めて奥を睨むミカ先輩。

 

「どうかした?」

 

「…ちょっと、不味いかも」

 

今までとは比べ物にならないレベルの奴が来る。

 

そう告げると自分の銃を構えるミカ先輩。

 

「おぉ…大物じゃん…」

 

ゆらりと景色が歪んで現れた重火器持ちのシスター。

明らかに雰囲気が他の雑魚どもと違う。

 

ヒナ先輩レベルとは言わないまでも弾切れが近い私達で勝てるかはちょっと怪しいぞあのデカシスター。

 

「私が時間を稼ぐから逃げて」

 

「何とか隙を作るから逃げてくれない?」

 

同じタイミングで同じ様な内容の言葉を発して顔を見合わせる。

 

「はぁ…言っても無駄か」

 

残弾を確認…残り少ないな。

 

再装填しながら提案する。

 

「粘れるだけ粘ってみる?先生達がマダムとやらを片して戻ってくるまでさ」

 

装填されたリボルバーを構えながら。

 

「そうだね………いざとなったら投げ飛ばせばいいか」

 

ボソッと最後に何か言った言葉は聞き取れなかったが、取り敢えず納得はしてもらえた様だ。

 

「んじゃ、私が突っ込むから援護よろしく!」

 

言うが速いかデカいシスターに特攻する。

道中の雑魚シスターは後ろからぶっ放された弾丸で塵に帰った。

 

目の前に立つ大ボスに向かって飛び上がる。

 

「デカい相手には零距離射撃!」

 

デカシスターが拳を振り被ると同時に撃ち抜く。

 

「オラァ!」

 

銃弾の衝撃で軌道が逸れた腕を足蹴にして顔面を殴る。

少し蹌踉めいた所に右手に握った愛銃で追撃。

 

一発、ニ発。

 

片手で撃てる限界速度でぶっ放した弾丸は大シスターの顔面を抉って背後の壁に突き刺さった。

 

それを意に介さず残った右腕が襲いかかってくる。

頭吹き飛ばされて尚動くのかコイツ!?

 

「やべッ!?」

 

「危ない!」

 

咄嗟に飛び出したミカ先輩だがコレは間に合わない。

 

襲い来る右腕に対して咄嗟に防御するも…衝撃は来なかった。

 

 

「ハーッハッハッハ!どうだ見たか議長殿!ドンピシャだ!」

 

 

上から降ってきた不審者がドリルと共にデカシスターの真上に着弾したから。

 

デカいシールドマシン?に見事に潰されたデカシスターが消えていく中、更に聞き覚えのある声がした。

 

「キキキッ…良くやったカスミ。温泉開発部の予算に色を付けてやろう。楽しみにしておけ」

 

お陰でクライマックスには間に合いそうだ。

 

カラカラと笑いながら亡霊達へ攻撃を指示するマコト先輩…なんで此処にいるんだこの人…

 

ゲヘナに居るはずでは?という疑問を他所に

 

「隊列を崩さず撃ち続けろ。所詮は烏合の衆、我らの敵ではない」

 

了解!と息を合わせて迎撃する万魔殿の生徒達。

それを尻目に私たちの方を見て問いかけてくるマコト先輩。

 

「さて…林檎。先生は無事か?」

 

天井をぶち抜いたドリルの後から悠々と降り立ったマコト先輩と万魔殿の精鋭部隊と温泉開発部の面々。

 

ゾロゾロと着地する端から隊列に加わって亡霊共に射撃し続けている。

 

数の暴力で押しきる、万魔殿お得意の戦術でみるみる内に亡霊が溶けていくのを尻目に

 

「え、えぇ…多分、無事ですが」

 

何でマコト先輩が此処に?と問うと

 

「…?アリウスを叩き潰すためだが?」

 

何を言ってるんだ貴様は。と呆れたような口振りで答えられた。

 

「…いや、どうやっても間に合わないでしょう?それにどうやって場所を把握したんです?」

 

ゲヘナから此処までどれだけ距離があると思ってるんだ?

 

それにピンポイントで私達の真上から降って来れたのも意味が分からない。

 

「貴様の位置は端末のGPSを追えば途中までは分かる」

 

幾ら地下とは言え、大筋で進む方向が分かれば問題ない。

 

後は温泉開発部の連中を駆り出して位置を予測させながら一直線に掘り進めれば良い。と嘯くマコト先輩。

 

「地下からの襲撃があったからな。専門家を用意するのは当然だろう?」

 

チラリとドリルを見やるマコト先輩に

 

「専門家とはまた偉く評価してくれたものだ」

 

それを受けて満更でもない表情のカスミ先輩が答えた。

 

それで温泉開発部か…確かにあちこち掘りまくっている土木系の部活だけどそれだけじゃ無理じゃない?

 

鬼怒川カスミ先輩…温泉開発部部長にしてゲヘナでもトップを争うレベルの才媛である。

 

人心掌握に特化したマコト先輩と違って地質学に傾倒した彼女はミレニアムでも十分やっていけるレベルだと噂で聞いてはいたが…自由を標榜するゲヘナにおいてもテロリスト予備軍呼ばわりされている片割れ、その頭の登場に目を白黒させながらマコト先輩がしれっと告げた言葉に開いた口がふさがらない。

 

テロリストを別の学区まで連れてきている事もそうだが、そ(・)れ(・)の言葉を信じて突っ込んで来たと言う事実に。

 

そんな事を考えているとそれを察したのか苦笑しながら言葉を続けるマコト先輩。

 

「カスミはこう見えて頭が回る。特に掘削と地下構造の予測についてはミレニアムの連中ですら遠く及ばん」

 

最早一種の異能と言っても良いな。と続ける。

 

「普段は温泉源の特定にしか使っていない宝の持ち腐れ状態だが…カスミがその才能を十全に奮うなら私はオールインできるとも」

 

「いやーハッハッハ…照れるじゃないか議長殿!」

 

「キッキッキ!褒めたわけではないが…そうでなくてはお前らしくないか!」

 

愉快そうに笑い合うマコト先輩とカスミ…先輩。

 

「私がこうも早く来れたことは簡単な話だ。そもそもエデン条約の日から私はゲヘナに戻っていない」

 

アリウスを完全に葬るまでは枕を高くして眠れんからな?と微笑む。

 

それを見て唖然としていたミカ先輩が

 

「いや、私が言うのもアレだけど問題しかなくない?」

 

他の学区の地面を掘り返してるのも、それをテロリスト予備軍にやらせているのも。

 

貴女という頭が不在のゲヘナもどうなっているのか分からないじゃん。

 

そう続ける言葉に対して

 

「これらはナギサにも了承を得ての事だ。首領から許可を得ているのだから問題あるまい?」

 

存分に掘り返しても構わんと言質をとってある…案外ノリノリだったぞ?と続けた言葉に『あぁ…ナギちゃんが汚されていく…』と肩を落としたミカ先輩。

 

「ゲヘナについては私が不在の間はヒナに議長代理を任せているから何も問題は無いとも」

 

そろそろアイツにも頂点に立つ経験をさせたいと思っていたから丁度良い。残してきた官僚を上手く使えば十分運営出来るだろう。

 

そう呟いた後、真剣な表情で私に問いかけてくる。

 

「さて、次は私の番だ…先生は何処に?」

 

無事だと言っていたが姿が見えんのは何故だ?と。

 

「…話せば長くなりますが」

 

先生の事。

 

アリウススクワッドの事。

 

アリウスの指導者の事。

 

全て話している間に掃討し終えたのか亡霊達は全て消えてしまっていた。

 

 

 

「…なるほど、なるほど」

 

やってくれるではないかあの青瓢箪め、と吐き捨てるマコト先輩。

 

「やはりシャーレと言うのは連邦生徒会にとっては過ぎた玩具だな」

 

先生…連邦生徒会の権限保持者が保護した形になってしまった。と呟くマコト先輩の眉間にシワが寄る。

 

「スクワッドの連中に抵抗の意思は無いように思えましたが…もし逃亡するのなら地の果てまで追うと言ってありますし」

 

そう言う私に溜息を一つ吐いて説明してくれるマコト先輩。

 

「シャーレの権限は各学園の上位に設定されている。その権限はゲヘナでもトリニティでも及ばないレベルだ。まだ連邦生徒会が機能している以上、先に確保したという事実が有ると割り込めない構造になっている」

 

つまり今後そいつらに手を出すのが難しくなったと言うわけだ。と苦々しく吐き捨てるマコト先輩に疑問を呈する。

 

「…錠前サオリは罰を受けるつもりに見えましたよ?」

 

無抵抗で頭を下げたアイツが逃げるか?

 

…姫とやらの言葉次第だろうが流石に次はないと分かっているはず。

 

そんな思いから口にした言葉もスッパリ切って落とされる。

 

「甘いぞ林檎。今の状況ならシャーレが先手をとれる。そしてそれに対して異議を申し立てようにもシャーレを掣肘できる連邦生徒会にその力が無く、我々では口出し自体が出来ないんだ」

 

貴様から聞いた話によれば相当甘い先生の事だ。

最悪の場合、形骸化した奉仕活動で済ませられてしまうだろうよ。

 

続けた言葉に思わず唸る。

先生ならやりかねないからだ。

 

スクワッドの連中に協力して、私達(ゲヘナ)には何の連絡もなかったことから内々に済ませてしまおうとした可能性も否めない。

 

「全く…あの超人も余計な置き土産を残してくれた物だ」

 

こんな事なら発足と同時に叩き潰しておくべきだったか…と呟くマコト先輩は珍しく後悔している様に見えた。

 

「全てに干渉できる権限を持った日和見主義者など今のキヴォトスには不似合いだろうが」

 

それはあの超人だからこそ成り立っていた権限であり、責任で。

 

それに近い物を与えられた聖人など厄介以外の何物でもない。

 

そう話を結んで溜息を吐きながら私を見た。

 

思わずビクリ、と肩をすくめてしまったのを見て苦笑と共に続けるマコト先輩。

 

「…あぁ、貴様を責めているわけではない。この事態は私が想定して然るべき事だった。何にせよ進軍は続けるが…最早結果は見えているな」

 

貧乏クジを引かされた気分だ…と若干テンションを落としながら天井に開けた大穴から有線で引っ張った通信機を側近から受け取って何処かへ連絡を入れる。

 

「私だ」

 

『…無事ですか?』

 

開口一番に通信越しに聞こえてきた声は紛れもなくナギサ先輩のもので。

 

「何も問題は無いとも。貴様の友人も無事だ」

 

少々薄汚れてはいるが許容範囲内だろうと続けると

 

『良かった…先生は?』

 

「それがちと問題でな…」

 

私から聞いた話を簡潔に伝えた後。

 

どうやら油揚げが攫われそうだぞ?と皮肉げに話をまとめる。

 

『そう、ですか』

 

ナギサ先輩もシャーレに先を越された事実を重く受け止めている様だ。声色が少し安堵したもののようにも思えるのはミカ先輩が無事だからだろう。

 

「首謀者のアリウス首領だけでも先に確保出来たなら良かったがな。話を聞くにどうも理外の相手のようだ」

 

"雷帝"レベルを想定しないと不味いかも知れん。

 

「林檎の話から考えると…先生も奥の手とやらを使うつもりらしい」

 

"大人"同士の手加減抜きの殺し合いになるかも知れん。

 

ヒナを置いてきたのは失策だったかもな、と自嘲する先輩に対して

 

『それは穏やかではありませんね…貴女はどうするおつもりですか?』

 

雷帝の名が出たことに少し声色が硬くなったナギサ先輩が問いかける。

 

「勿論殴りに行くとも…私は交わした約定を破らないからな。貴様らはどうする?」

 

アリウスの残存勢力を全て、砂になるまですり潰す。

 

『増援を送ります。正義実現委員会の精鋭を向かわせていますのでよしなに』

 

「殴る部分が残ってなくても恨んでくれるなよ?」

 

私達はそこまで辛抱強くはないからな。と明るい口調で嘯くマコト先輩に

 

頼もしい限りですね、と苦笑したナギサ先輩が続ける。

 

『ミカさんと話させて頂けますか?』

 

「構わん…いつまで林檎の影に隠れているつもりだ?さっさとこっちに来い」

 

少し強引に引っ張り出したミカ先輩へ通信機を渡す。

 

『ミカさん?』

 

「…や、やっほーナギちゃん」

 

気まずそうに通信に応じるが

 

『まずは謝罪を…貴女の意思を聞かずに帯同を許可してしまった事、本当に申し訳ございませんでした』

 

通信越しにも分かる、頭を下げたであろうナギサ先輩に慌てて答えるミカ先輩。

 

「いや、謝る事無いよ!?悪いのは全部私なんだし…こっちこそ、色々ごめんなさい」

 

私は迷惑を掛けたどころの話ではない、と謝罪するミカ先輩。

 

 

 

その後も謝罪合戦を繰り広げているのを尻目に

 

「…外患誘致とクーデター未遂、それと比べれば多少の掘削など確かに可愛いものだな?」

 

カスミ先輩に向かってニヤニヤと嗤うマコト先輩に

 

「温泉開発は人類の夢と希望だ!!…それにしてもクーデターとはな。流石に私達でもそこまでは考えないぞ?トリニティはいつからレッドウィンター方式になったんだ?」

 

呆れたような口振りで続けるカスミ先輩。

 

普段のテロリストっぷりを考えると大分まともに見える。

所構わず地面を掘り返しまくってるイカれ集団だとばかり思っていたけど…と少し意外に思って見つめているとそれに気づいたカスミ先輩がニヤリと笑って続ける。

 

「そもそも議長殿以外に今のゲヘナを纏められるとは思えないからな」

 

断言するように。

 

「他の誰にも務められんだろうよ」

 

先程までと違い真剣な声色で答えたカスミ先輩だったが

 

「勘違いも甚だしいな…私は偶々落ちていた物を拾ったに過ぎん」

 

相応に利用させてもらったのは確かだが。と嘯く。

 

「それに私の後継は既に決まっている。ヒナの奴はどうだか知らんが…それも目処は着いているとも」

 

チラリと私の方を見た。

 

いや、私はそう言うの苦手だからパスしたいんですけど…と視線を逸らすと僅かに苦笑しながらカスミ先輩に向き直る。

 

「貴様らしくもない」

 

何時ものようにバカ騒ぎしている方が余程良いぞ?と嗤った。

 

「…ハーッハッハッハ!少し口が滑ったな、忘れてくれ!」

 

マコト先輩の返答を聞いて一瞬口惜しそうな顔になったもののすぐにいつも通りの温泉開発部部長に戻っていた。

 

「それにしてもだ。貴様はそれで良かったのか?」

 

今度は私に向かって問いかけてくるマコト先輩。

 

「アリウスには相応に恨みがあるだろうに」

 

撃ち殺しかけた下手人に先生を預けるほど信じられるのか?と問われるが

 

「…先生本人がそうと決めましたから。それに先輩も言っていたでしょう」

 

与えられた危害に対する応報はまず本人が決めることであり私にはその権利はない、と。

 

そう答えると意外そうな顔で私を見る。

 

「…ふむ。どういった心境の変化かは知らんが貴様がそう言うのなら是非もない」

 

落とし所としてはそんな所か。と呟くマコト先輩。

 

その様子に首を傾げているとようやく話が纏ったのか

 

『…では、お願いしますね?』

 

「うん…また、後でね」

 

そう言って通信を切ったミカ先輩は少しスッキリした顔に成っていた。

 

 

「私も最後まで付き合う事になったから…よろしくね?」

 

「キッキッキ…良かろう!今更一人二人増えた所で変わらん!」

 

 

仰々しく頷いたマコト先輩が号令を下す。

 

「進軍再開!アリウスを叩き潰すぞ!」

 

応!と意気軒昂に答えた万魔殿の生徒達が先の扉を蹴破って進む。

 

遠くから響き続ける戦闘音に向けて。

 

 

 

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