「で、ヒナ先輩の頼みって?」
運転席でハンドルを握るチナツに話しかける。
ヘルメット共を詰め込んだ車両とは別の車両で移動中だが、既に別れてしまっている。…これ、D.U方面に向かってないか?
「簡単に言えば私の護衛です」
「護衛ならさっきの子達で十分だろ?」
風紀委員は一般職の子でもヘルメット位なら普通に倒せる程度には腕が立つ。4人も居れば中隊規模でもでてこない限りはどうにでもなるはずだが。
「現在ゲヘナ全域でヘルメット団の活動が活発化しているのはご存知ですよね?」
「あぁ、今朝も絡まれた」
まぁ、最初の方の連中と違って練度も連携もチグハグだったが。
さっき聞いた話じゃ烏合の衆と化して来ている様だから少なくともゲヘナでのヘルメットバブルは長くは続かないだろう。
「圧倒的に人手が足りていません。それこそ事務員ですら回収要員にしなければならない程に」
風紀委員、学園の規模に対して少ないからなぁ…
混沌、自由が校風のゲヘナで秩序を尊ぶのが少数になるのは仕方がない。だから精鋭揃いになりがちなのか、少数精鋭だから人数がなかなか増やせないのか…
「そこで林檎、貴方に白羽の矢が立った訳です」
「私は風紀委員じゃないぞ?」
「えぇ、勿論知っていますよ?性格に難有りとは言え義理難く筋が通っているなら裏切る心配もない。猫の手も借りたい現状、逃す手はありません」
…まぁ、知らない仲じゃないし困ってるなら手伝うのも吝かじゃ無い。
「それに…ヒナ委員長に借りがあるんでしょう?」
「…?、あっ!?」
夕飯奢って貰った時の話か!?
ヒフミ先輩の件で勝手にチャラにしたと思ってたがそもそもヒフミ先輩トリニティだし…ヒナ先輩知りようがないじゃないか…
ま、良いか。こう言うの口に出すとカッコ悪いしな。
「そうだったな。今回の一件で返させて貰うよ」
「交渉成立ですね。では詳しい内容を…」
聞いた話をザックリ纏めると
連邦生徒会の機能麻痺による犯罪の増加
違法武器の流通量の増加(概算で2000%とかイカれてるな…)
都市インフラの不調
これらの対応を連邦生徒会に求めていたものの返信は一辺倒、改善している様子も見られないのでしびれを切らしたヒナ先輩が直接話を聞きに向かおうとしたのを必死に止め、代表者を向かわせる事で納得してもらったらしい。
この状況であの人が一時的にでもゲヘナを離れたら目も当てられない状態になるのが分かりきってるしな。
そこで風紀委員を代表してチナツが向かう事になったものの今のD.Uはヘルメットが闊歩する世紀末状態。ゲヘナの治安維持を考えると人員をそこまで割く訳にも行かない。
そこで浮かんできたのが私という訳だ。
「成る程ね…」
そこそこ腕が立ち、チナツと知り合いでヒナ先輩に借りがある。
そりゃ使えるものは使わせてもらおうってなるわ。
「D.Uに入ったら最悪徒歩だな」
インフラが麻痺してるなら放置車両で道が塞がってる可能性がある。
車で移動して目立つ位なら簡単に隠れられる徒歩での移動の方がまだマシだろう。
「そうですね…連邦生徒会本部付近まで近づければ流石に安全でしょうけど」
「簡易的な要塞だって話だからタレット位置いてるだろ」
まだ機能していれば、だが。
一応連絡は着くとの事だからまだ設備が無事な事を祈ろう。
…ヤバい奴が居なけりゃどうとでもなるが美食レベルが出てきたら何とかして逃がす方向で考えとかないとなぁ…