突然だが、僕は前世の記憶を持つ所謂転生者だ。
けれど前世の事はそこまで覚えてるわけではない。覚えているのは僕がそれなりのアニメオタクだった事とブラック企業で働いていた社畜だった事、そして過労で死んでしまった事だ。
気が付いたら赤ん坊になっており、驚いてしまったが今となっては良い思い出である。
さて、僕が一体誰に転生したのか…その答えは5歳の時、鏡に映る自分自身を見てわかった。
「…どう見ても乙骨憂太だよね」
乙骨憂太。呪術廻戦に登場するキャラクターであり、前日譚にあたる呪術廻戦0の主人公でもある。
作中で呪術師最強と称されている五条悟に次ぐ現代の異能と呼ばれており、その呪力量も底なしで五条以上である。当然乙骨に転生した僕にも底なしの呪力はあるし乙骨の術式である〝
それとこの世界は呪術廻戦の世界とは違うようだ。呪霊が存在しない代わりに妖怪と言われる奴らが存在している。妖怪と言っても妖怪ウ○ッチみたいなコミカルな見た目ではなく、伝承の絵巻でよく目にする見た目だ。妖怪はそこまで人間達に干渉しないみたいだけど中には人間を襲う奴らもちらほら見かける。まぁ僕の場合襲われたらそいつを一瞬で祓ってるけど。
そんな日常を送っていたある日の事だ。僕が彼らと…そして彼女と出会ったのは。
「ハァ…すっかり遅くなっちゃったな」
放課後に友達と遊んでいたらすっかり夜になっていた。早く帰らないと。
…そう思って家に帰ろうとしたわけだけど、どこからか禍々しい気配を感じて足を止める。
禍々しい気配の正体を探る為にビルの屋上まで移動して街中を見渡してみると不気味な城が建っているのが見えた。あんな城、昼間はなかったよね?
感じる気配は三つ…ほっとくと面倒な事になりそうだし、早く始末するか。
城内に入ると頭だけの妖怪と着物を着た女の妖怪と手が刃物になっている妖怪が地面から現れる。
「人間風情が我らが妖怪城に立ち入るとはいい度胸だ」
「へぇ、妖怪城って言うんだ…それはそうと、ここに来てからなんか子供の声みたいなのが聞こえてくるんだけど、どうなってるの?」
そう、ここに立ち入ってから大勢の子供の声が聞こえてくるのだ。『助けて』、『ここから出して』と、大半が助けを求める声だ。
「ハッハッハッ!それはこの妖怪城の人柱となった人間共のものだ!年老いる事も死ぬこともなく、永遠の苦しみを味わうのだ!」
頭だけの妖怪の話を聞いてある噂を思い出した。
「なるほどね…それじゃあ最近耳にする子供の失踪は君達の仕業って事か」
「おうよ!この妖怪城の力があれば人間共を妖怪に変え、この世界から人間という不要な存在を消し去ることが出来る!そうすればこの世界は我ら妖怪のものだ!」
頭だけの妖怪は高らかに声を上げる。
「…ハァ」
「なんだい?溜息なんて吐いて」
僕の態度が気に食わなかったのか、女の妖怪が険しい表情になっているのが見えた。
「ごめんごめん。あまりにくだらない野望だったからつい」
「なんだと…?」
「だってそうでしょ?話を聞くに君達は単に自分達の思い通りになる世界を作りたいだけ。君達も妖怪なんだし多少長生きしてる方なんだろうけど、僕から言わせればそうは思えないくらい子供染みたくだらない野望だと思うよ」
僕の言葉を聞いていた妖怪達は怒っているのか、わなわなと身体を震わせていた。
「さっきから散々言いたい事言ってくれるじゃねぇか!たんたん坊、二口女、こんな人間のガキ、さっさとやっちまおうぜ!」
「おうともかまいたち!」
「我らを怒らせたことを後悔するんだね!」
するとまず刃物妖怪…かまいたちだっけ?そいつが風を刃物の様な物をしてこちらに放ってきた。
「向かってくるんなら、容赦しない」
僕はその攻撃を避け、即座に袋にしまっていた刀を取り出してかまいたちを真っ二つにした。
「かまいた…」
「仲間の心配をしてる場合?」
二口女を呼ばれていた女の妖怪が驚いている隙に奴をバラバラに切り刻む。
「あとは君だけだ」
僕は残りの一体のたんたん坊に刀を向ける。
「バ、バカめ!この妖怪城がある限り我らは不死身だ!」
たんたん坊の言葉を聞き、倒した二体を見てみると奴らの体がくっついて復活していた。
するとたんたん坊の口から大きな液体が放たれ、その液体を真っ二つに切ると地面に落ちた液体はみるみる固まっていき、やがて石となった。
「あ、あれを刀一本で切り裂くって、テメェ本当に人間か!?」
「そうだけど、他にどう見えるの?」
さて、このまま奴らの精神が折れるまでボコボコにしても良いんだけど、出来れば早く終わらせたいところだ。だったらやる事は…
「な、なんだと!?」
僕が地面に向かって拳をぶつけると地面にヒビが入り、その下に広がる空間に僕は飛び込んだ。
「ま、まさか!」
「思った通りだ」
城の地下に飛び込んだ僕の目の前にあるのは石で出来た十三本の柱だった。きっとこれが奴が言っていた人柱だろう。これを一つでも破壊して人柱にされた子供を助け出せればこの城の力も維持できなくなるはずだ。僕は真ん中にある柱に向かってパンチをする。
すると柱が崩れ、中から女の子が落ちてきた。
「おっと!」
僕は女の子を両手で受け止める。
「だ…れ…?」
虚ろな表情で呟いた女の子はすぐに目を閉じる。どうやら気を失ったようだ。女の子は茶髪が少し癖毛になっていて学生服の様な物を着ていた。背丈的に中学生くらいだろう。すると辺りに地響きが起き始めた。恐らくこの城を支える人柱が欠けたことで城が崩れ始めたのだろう。
僕は女の子をお姫様抱っこしながらジャンプしてたんたん坊達の元へ戻ってきた。
「あ、怒ってる…よね?」
「おのれぇ!人柱を返せぇぇーーー!!」
そう言ってたんたん坊達が一斉に襲い掛かってきた。
僕は女の子を抱き抱えてるから両手での攻撃が出来ない。打つ手なしだね…
「何してるのォ?」
って、思うじゃん?
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「これは…」
この少年、鬼太郎は驚いていた。最近自分に関わってくる人間の少女がたんたん坊達に人柱として囚われた事を知り、仲間達と共に救出に向かったのだがそこで目にしたのは倒れている大勢の子供達と少女を抱きかかえている一人の少年だった。少年が抱きかかえている少女こそ鬼太郎が助け出そうとしていた犬山まなであった。
すると少年が鬼太郎達に気づいたのか、こちらに振り向いた。
「もしかして、この子の友達?」
「…君は誰だ?たんたん坊達はどうした?」
鬼太郎は少年の質問に答えず、警戒しながら少年に問う。鬼太郎は気づいていた。少年からあふれ出ている底なしの〝力〟に。
「僕は乙骨憂太。あいつらならもう退治しといたよ。ほっとくと大変な事になりそうだったからね」
少年は笑みを浮かべながらそう答える。
「乙骨憂太…まさかあの!?」
「知ってるのか?猫娘」
鬼太郎の仲間の一人である長身の女性、猫娘は少年を知っているようだ。
「…聞いた事があるの。各地で暴れまわってた妖怪をとてつもない強さで退治してる人間がいるって。その人間の名前が乙骨憂太。その人間離れした強さから付けられた異名が〝現代の異能〟」
「現代の異能…」
猫娘の説明を聞いた鬼太郎は更に警戒心を高める。
「もう一度聞くよ。この子は友達かい?」
「…君には関係ない」
「ふぅん…とりあえず、後の事は君達に任せるよ」
乙骨はまなを鬼太郎に預ける。
「それじゃあ」
「あ、おい!」
鬼太郎は乙骨に呼びかけようとするが目にも留まらぬスピードで走っていった為、乙骨の姿はすぐに見えなくなった。
しかし乙骨が去っていく間際、意識が戻ったまなの目には彼の後ろ姿が見えていた。
乙骨憂太(偽)
乙骨憂太の姿と術式を持った転生者。
乙骨らしい振る舞いをしていたらいつの間にか板についてしまったらしい。
高校一年生の16歳で現在は呪術廻戦0の時と同じ容姿と髪型をしている。