大変長らくお待たせしました(土下座
とりあえずこれだけは叫ばせて下さい。
馬鹿ヤロー!!BO7のシナリオを作ったヤツのバカヤロー!(絶望)(血涙)(憤死)
最早皆さんの反応と感想だけが生きる糧です(瀕死
<02:33>
伊丹耀司 一等陸尉/自衛隊特地派遣部隊<特殊統合部隊・アルファチーム>
特別地域・アヴィオン海某所<非友好地域インディアンテリトリー>・監獄城
薄汚れ、燃えるような赤髪もくすみ、大陸を支配する一大国家の女帝とは真逆の奴隷同然の身なりでもありながら、それでもピニャが纏う気配には一片の陰りも見られなかった。
特に目だ。正気が一周回って狂気に転じてしまったかのような異様な気配を帯びた彼女特有のギラついた眼光は、伊丹達のフラッシュライトを反射してか瞳そのものが紅い光を放っているかのようである。
伊丹が暗視装置を外し顔を露わにすると、彼の顔を捉えた眼光が一際強さを増したかと思し、しかしすぐに緩んだ。
「ああ、きっと来てくれると思っていたぞ。記念すべき再会だ…!」
女帝としての威厳から一転、僅かに女らしい安堵の感情に声を震わせたピニャはおもむろに伊丹へと駆け出す。
そして躊躇いもなく抱き着いた。伊丹は慌てて20式小銃がピニャにぶつからないよう両手を上げなければならなくなった。今度は栗林の眼光が鋭くなる番だった。
「はいはいピニャ陛下離れてくださーい、抱き着いてたら隊長の邪魔になりますからねー」
「わっ!?、ぬぅっ、その声と体格はシノ殿か!? すまないシノ殿だがあと数秒だけでも…!」
「たはは……すんません陛下、今は作戦中ですんで」
体格はピニャの方が頭1つ分以上を上回るにもかかわらず、女帝の背後に回り込んだ栗林はあっさりとピニャの体を持ち上げて伊丹から引き剥がした。
20式小銃に装着したフラッシュライトを消し、代わりにボールペンサイズのペンライトを取り出してまずピニャの顔、目の動き、次に、上半身下半身手足の先、背中側も素早くライトと視線を走らせ状態を確認して回る。伊丹へ視線を移し、頭を上下に動かす。
「早急な処置が必要な怪我や症状は見られません。だけど下が裸足なのでこのままだと移動中に岩場や破片で足を負傷する可能性があります」
「分かった。富田、部屋の外で警戒しろ。それからさっき使ったポンチョ使わせてもらうぞ」
「了解です。ではこれを」
錠前の溶断を隠すのに使ったポンチョを受け取った伊丹は腰の鞘から銃剣を抜き、次の瞬間躊躇いなく部下のポンチョへ突き立てた。
手早く布地を切り裂き大きめの四角形の布を2枚拵えると、次に多目的ポーチから兵隊に必需品の1つ、細いが頑丈なパラコードの小さい束を取り出し50センチ程の紐も2本用意する。
「すんません陛下、ちょっと足を上げてくれませんか」
「こ、こうか?」
土汚れに覆われたピニャの素足へポンチョから切り出した布を被せると、手早く足首の辺りで
纏めた布地の端をパラコードで縛った。もう片方の足も同じようにする。
軍用のポンチョに使われている素材は軽量ながら防水性に優れているのみならず、強度にも優れた合成繊維だ。特地で一般的な動物の革よりも耐久性に優れているので少なくとも素足よりはずっと良いに違いない。
「隊長それ俺の私物だったんですけど……」
「この任務から返ったらちゃんと官費で弁償するから勘弁してくれ」
部下のボヤキに苦笑いしながら、ピニャを加えた伊丹達は脱出を開始する。
独房を抜け、細い横穴から巨大な縦穴を目指す。横穴のすぐ先では先程と変わらず大雨が降りしきり、時折瞬いた雷が縦穴の内側を照らし出す。
「止まれ」
出口の直前で伊丹は有無を言わせぬ声色で一行を停止させた。
栗林と富田、ピニャも躊躇いなく伊丹の指示に従った。こと戦場に於いて、我らが隊長はどんな最新鋭の無人機や偵察衛星よりも優れた能力と第六感を発揮すると、部下もピニャも身を以て体感してきたからだ。
そんな伊丹の勘がこの状況下で反応したのだとすれば、それは。
「……2人は俺が合図するまで出てくるなよ」
「隊長?」
言い残して伊丹は横穴から出ていく。
縦穴の中央に垂れたロープへと近づいた、その瞬間だった。
突然、雷ではない白光が伊丹を照らし出した。
1つ、2つ、5つ、あっという間に2桁に達する数の光はランタンや松明が放つ灯火などよりも遥かに眩く、だが魔導師の魔法の産物ではない機械的な物で。
次いで伊丹を激しい雨粒と雷鳴にも負けない程に増幅された声が叩いた。
「こちらはペトロフ少佐だ! 両手を上げて出てこい!!」
――――特地語ではなく、
伊丹は今や高所を取られた上で包囲されていた。
目の前にぶら下がっていたロープが穴の底に溜まった雨水の中へ落ちてくる。足場に展開した新手の警備兵が切断したのだろう、遅れて栗林と富田が使用したロープも後に続いた。
光に照らされた伊丹はゆっくりと、だが躊躇いなく両手を頭上へと掲げた。スリングで吊られた小銃が彼の胸元で垂れ下がる。
目を細めて見上げる。ピニャを独房から出す間に密かに展開していたのだろう、穴の入り口にかかった足場の上だけでなく、歪な螺旋を描く縦穴内壁の通路にも兵が布陣しているのが見える。当然のように全員が銃で武装していてその全てが伊丹へと向けられていた。
兵の種類は大まかに2つ。
只人もいれば獣人に亜人が混在した、現地軍の格好をした兵隊が持つのは余計な細工が一切施されていない簡素な猟銃に近い単発のライフル銃。
そして伊丹を照らす光の正体、即ちアタッチメントに装着した小型だが強力なフラッシュライト付きの銃を構えるロシア軍装備の集団。フルオート連射が可能なAK系統を持つ者達は全員が白人だ。
「侵入者の仲間に告げる! 5秒以内に出てこなければ発砲する! 良いか5秒だけだぞ!」
『隊長! 援護しますから今すぐその場から離脱を――』
「いやまだだ撃つな」
「5!」
焦る富田の声。だが狙われている当人の方が逆に制止する。
早くもカウントが開始され、幾つもの銃口から狙われているとは思えない程に伊丹の声は落ち着いている。
「聞こえてるよな爺さん?」
『勿論。お前さんをスポットライトで照らしてるロシア人どももハッキリ見えているとも』
「4!!」
別地点、ペトロフ少佐を名乗った敵の指揮官達よりも更に高所に陣取った老兵の声もまた極めて冷静なままだ。
「なら爺さん、プランBの出番だ」
「3!!!」
『何事も備えあれば憂いなしだ』
「全くだね」
無線越しに小さくカチャカチャと、起爆装置の安全装置を解除する音。
「2!!!!」
「志乃、富田、爺さん達がプランBを発動させたらすぐにそこから飛び出して上を目指せ。
『了解!』
「いぃち!!!!!」
伊丹の頭上で殺気が膨れ上がる。
――――それと同時に。
『――
プランBが発動。
0.1秒後、城砦に仕掛けられたC4が起爆し、ロシア兵達の後方で紅蓮の火球が物理的に膨れ上がった。
「!!!?」
驚愕。衝撃。動揺。
ロシア人と警備兵は思わずといった体で燃え上がる背後へと振り返り伊丹から視線を外す。
それを見逃す筈がなかった。
「今だ! 陛下を連れて上へ登れ!!」
爆発音越しでも部下へと届く音量で命令を発しながら、伊丹の手は素早く20式小銃を掴み上げ頭上へと銃口を向けた。
抑制された連射音。高速のライフル弾が動揺する兵達を襲う。
優先して狙うのは火力も練度も高いロシア軍装備の兵士からだ。短連射で確実に目標を射貫いては素早く切り替えていく。伊丹の援護を受けながら彼の背後を富田と、彼に抱きかかえられたピニャと、その次に栗林が駆け抜けていった。
「俺がピニャ陛下を運ぶからクリは援護任せた!」
「任された!」
「陛下は振り落とされないようにしっかり掴まってて下さい!」
「こ、心得た」
首の後ろと胴体へ回されたピニャの腕に十分な力が込められたのを感じ取ると、既に重装備に女とはいえ人ひとり抱えているとは思えない勢いで駆けながら、富田は背中と足の裏へ殊更に意識を集中させた。
「ブースト!」
次の瞬間、富田の体がピニャごとバネで跳ぶオモチャ宜しく斜め上へと射出された。
――――かつて
更なる研究と改良が重ねられたそれは数年の歳月を経て、炎龍の鎧部分を省いた簡略化型として少数ながら既に量産が行われ、特地に駐留する自衛隊の限られた部隊へと実戦配備された。
外骨格のフレームは軽量合金製。非電源式でありながら最新の人体工学を駆使し―非公式ながらゴーレムの作成技術等特地独自の技術も採用―装着者の身体能力の補助・強化し、装着したまま水中を泳げるだけの耐水性と自由度を両立させている。
地球と特地の技術を結集して生み出されたこの装備は
富田自身の鍛え上げられた優れた身体能力の相乗効果により、M-EXスーツが生み出す機動力の高さは運ばれているピニャが「お、おおおおうっ!?」と思わず驚きの声を上げてしまう勢いだ。
「ブーストぉっ!」
続いて栗林もブースト機能を発動させ、2人はあっという間にビル数階分の高さをものの数秒で駆け上がってしまった。
……ちなみにブースト機能自体は一々口に出さなくても発動自体は出来るのだが、口に出して発動した方が勢いとあと術式の気合の入り具合が違う気がするとか何とか、そんな理由でついつい叫んでしまう装着者が後を絶たないのは余談である。
「隊長援護します!」
足を止めた栗林も高所へ陣取る敵へ牽制射撃を開始。
殿として最下層に残っていた伊丹も栗林の援護を受けながらブーストを発動させて上層を目指す。
素早く彼らの下へと合流するなり、既に空になっていたマガジンを捨てて新しいマガジンを20式小銃へ叩き込む。連射を繰り返して高熱を帯びたサイレンサーからは雨粒を浴びて蒸気が立ち上っていた。
伊丹が射撃を再開し、富田と栗林がピニャを連れて上層を目指し、ある程度進むと役割を入れ替えて伊丹が後を追いかける。これを何度も繰り返し、繰り返す。
『侵入者が逃げるぞ!』
『囚人を逃がすな!』
混乱から回復した警備兵が伊丹達を逃がすまいと遂に発砲を開始する。
伊丹の耳には聞き馴染んだAKの連射音の合間から単発の重い銃声が頭上から轟いた。高速ライフル弾よりも派手に破片を撒き散らして足元に大きな弾痕が刻まれたので、思わず「おわっち!?」と奇声を漏らしてしまう伊丹。
「こいつぁあんまり食らいたくないね!」
潜入時に排除した警備兵が持っていた物を間近で確認していたので分かってはいたが、特地人の兵士が装備する銃は最低でも
銃弾を撃ち出す為の圧力を生み出す装薬の質にも左右されるとはいえ、地球産の優れた防弾装備でも当たり方によっては骨折か内臓破裂、生身で食らえば即死してもおかしくない威力である。
数も相当数揃っているのも踏まえ異世界の手生産品と侮っては命取りだ。何せ剣と槍と弓で武装した帝国兵相手ですら自衛隊は戦死者を出しているのだから。
伊丹も反撃の短連射。開口部から身を乗り出すようにして撃っていた警備兵がそれを喰らい、悲鳴を上げながら闇の虚空の中に落ちて見えなくなった。プライス達の狙撃を受けた兵士が仲間の後を追う。
とうとう縦穴の頂上へ到達した伊丹達が見たのは暴風雨の中、紅蓮の炎を上げて土台の一部ごと崩壊した城壁だった。
すると突然、特地兵のライフル銃よりも更に強烈な銃声がロシア兵のAKよりも更に速いレートでもって城砦内で轟いた。慌てて遮蔽物へ飛び込む伊丹達の周囲で曳光弾混じりの銃弾が跳ね回る。
『総員へ、監視塔にマシンガンが設置されてるぞ!』
「見れば分かるよ!」
プライスに同伴している救出部隊唯一のロシア人――――
『すぐに静かになる』
マシンガンの出現が唐突なら静かになるのも唐突だった。プライスの支援狙撃により射手を失ったマシンガンが沈黙したのである。
爆破によって生じた穴から伊丹達は監獄城の外へと脱出した。当然警備兵が黙って見送る筈もなく、大小入り混じった銃弾が全力疾走を止めない伊丹達を追いかけてきた。
「崖に沿って海まで行け! ボートが援護射撃してくれる!」
『ブラボーも脱出ルートに合流する!』
「トミタ殿、下ろしてくれ。いい加減妾も自分の足で走れる!」
走る、走る、走る。
命がけの鬼ごっこだ。幸いにもそれなりの期間を狭く劣悪な環境の監獄に閉じ込められていた筈のピニャは伊丹達に付いて行けるだけの健脚を維持していたし、ポンチョで即席の靴を彼女に履かせておいたのも功を奏していた。
「壁にも敵がいます!」
「無視しろ無視! ボートとの合流地点までとにかく突っ走れ!」
「こっちだ!」
「隊長、ブラボーチームを視認しました!」
先んじて辿り着いていたプライス達ブラボーチームによる援護射撃を受けながら、伊丹達は脱出地点へと辿り着いた。
自分達がどこに立っているかを認識したピニャは鼻白んだ。脱出地点と称された場所が急な傾斜が夜の海まで延々と続く崖の上だったからだ。
「も、もしやここを降りるのか?」
さしもの女帝も口元を引き攣らせて思わず伊丹を見た。
銃声が幾つも轟き続ける中、伊丹はニッコリとピニャに笑いかけた。反射的にピニャも雨粒とは別の雫を浮かばせながら笑顔を返した。
おもむろに伊丹は手を伸ばしてピニャを抱きかかえた
「失礼しますねしっかり俺に掴まってて下さいね!」
「やっぱりかぁぁぁぁぁぁ………!!?」
伊丹はピニャごと傾斜へと身を投げ出した。
栗林、富田、プライス達も躊躇う事無くその後へ続いた。
足の角度を傾斜に合わせ半ば自ら尻餅を突くような塩梅で崖へと着地すると、無様に転げ落ちるのではなくリュージュの選手のように、濡れて滑りやすくなった斜面をまるで見えない橇にでも乗っているかのように伊丹達は滑り落ちていった。
ピニャを伊丹が抱きかかえたのは、それ自体が簡易的な防護装備でもある耐久性に優れた現代地球の戦闘服を着ている救出部隊の面子とは違い、粗末な貫頭衣しか着ていないピニャでは間違いなく岩肌で傷つけてしまう為だ。
斜面の端へと到達しても伊丹達は全くブレーキを掛ける事なく、そのまま斜面から虚空へ飛び出した。
「息を止めて着水に備えて!」
落下先が十分な水深があり岩場も無いのは事前の偵察で確認済みだ。足を揃え両腕でピニャの体ごと抱き締め出来る限り表面積を小さくし、着水体勢を取る。
分厚い膜を突き破る感覚と共に伊丹達の体が数メートル下の海面下へと没した。暗く冷たい感触と窒息感に動じる事無く、冷静に海面を目指す。直前で警告されていたお陰でピニャもパニックを起こす事無く、伊丹の腕の中を離れて自力で水を掻き分けていく。
海面から再浮上するなり、またも熾烈な銃声が間近で轟音を奏でた。
発生源はすぐ目前の11メートル級複合艇の船首に据え付けられたM240B・汎用機関銃だ。
「当たると痛いから引っ込んでててくれー!!」
岩壁上に接近してくる警備兵へ派手にぶっ放しているのは徳島甫2等海曹である。
操舵手を担当する江田島五郎1等海佐が船の縁から身を乗り出してまずVIPのピニャを、それから伊丹を慣れた身のこなしで次々と船上へと引っ張り上げていく。富田や栗林といった体力自慢に至っては自力で船上によじ登ってみせた。
徳島も江田島も単純に海上自衛隊に於いて戦闘服装と呼ばれる格好ではなく、むしろ今の伊丹達や海上自衛隊内の特殊部隊に相当する特別警備隊のそれに近い。
戦闘用ベストや防弾ヘルメットに最新モデルのSIG・MPXサブマシンガンといった個人用の銃火器その弾薬類といった、要はより攻撃的な装備を身に纏い、実際に直接戦闘に加わっている。
「全員乗りましたか!? 乗りましたね! ここから離脱しますので掴まって下さい!」
「GOGOGO!」
プライスの喚声を受け、江田島はスロットルとハンドルを操作。理知的な顔立ちに似合わない荒々しくも見事な180度ターンを実行すると、一気にスロットルを全開に押し込んだ。
急加速した複合艇が監獄城の警備兵を置き去りにして瞬く間に島との距離を広げていく。
「妾達はここからどこへ向かうのだ!?」
「この先の海域で我々が乗ってきた母艦、海上自衛隊の潜水艦と合流します!」
「申し訳ありませんがその計画は変更になりました!」
ピニャの疑問に伊丹が答えるが、それを滅多に浮かべない深刻な表情で江田島が打ち消した。
顔を見合わせる伊丹とピニャ、そこに栗林と富田とユーリも加わり、何も知らされていない面々を代表して問いを投げかけたのは剣呑な顔を張り付けたプライスだった。
「どういう事か説明して貰おうか」
「――
「つまり俺達は孤立、自力で脱出ルートを確保しなければならなくなったんです!」
「……成程。つまり俺達にとっては何時も通りというワケか」
老兵はそう嘯いたのだった……