じゃあ俺の代わりに人生やってくれ   作:水溜まり

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作者は獪岳が大好きです!





残念無念また来世!

 

 

 

 

あのことがあった日から、女の態度が百八十度変わってしまった。

前までは、甘い声で僕を褒めたり撫でたりして優しかった。でも、今は違う。本当の自分をさらけ出して、前みたいなことはひとつもしなかった。お腹が空いても料理は作ってくれないし、泣いたりしたらうるさいと言われ叩かれる。

 

「ご飯が食べたいなら自分で取りに行きなさい。生きたいんでしょ? 餓死なんて嫌だもんね」

「前まではあんなにいい子だったのに……はぁ」

「私、日が出てるうちは出られないのよ。だから代わりに食料取ってきて? 」

 

「人殺しになってもいいわよ……母さんが許してあげるから」

 

無理だ。限界だ。 女と同じ空気を吸っているだけでも吐き気がする。 前まではしなかった血の匂いが、壁や床にこびりついて取れない。気持ち悪い。気持ち悪い。

男も何も言わずにただ毎日を過ごすだけ。女と気持ち悪い行為をして楽しんでいる。僕に見向きもしないで、まるでなかったように。いつまで耐えればいい?

血濡れた刃物を握らされる気持ちがわかるか?

あんなにも僕のことを褒めてくれていたのに、僕の期待を一気にどん底に落とされる気持ちがわかるか?

 

知らない。前に戻りたい。知らない頃の普通の自分になりたい。

 

どうして。

 

 

 

僕の体はこんなにも汚いのに

なぜ星はあんなにも眩しくて綺麗なんだろう

あぁ、気味が悪いほど丸い月が忌々しく思える

 

 

 

 

「はっ。惨めだな。俺の時はテメェよりもっと上手くやれてたぜ? 哀れだな」

 

殴られたせいであまり開かない目を無理に開いて声のする方を見る。

声主に頭を掴まれてがしがしと撫でられているような感覚は、あの気持ち悪い女を思い出して吐き気がしそうだった。きっと撫でていないのだろうけど、僕からは撫でているように思える。

ぼんやりとした視界から見えるものは、僕と正反対の格好をした子供だった。

ボロボロの布を着ている訳でもなく、髪が油まみれでシラミがわいていることもなく。

綺麗な格好をした男の子が僕の頭を掴んでいる。ちらっと綺麗な着物の袖から見える赤色の勾玉が月に照らされて輝いていた。

 

「俺は今とんでもなく幸せだ。テメェの体は俺が望んでいたものだ。人に愛され、死に恐れる暮らしなんてしなくていい。」

 

痛い

 

「泥水なんか啜らなくても、綺麗な水や豪華な食事が毎日食べられる」

 

強く掴まないで欲しい。すごく痛い

頭をゆらさないで。頭は痛いし、冷や汗が止まらないんだ。

 

「金なんて盗まなくても、強請ればいくらでも貰える。」

 

「普通になりたいか? それは一生無理だろうな。 テメェが獪岳である限り死なせないし、殺さない。残念だったな」

 

【⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎】?

 

 

 

 

 

「獪岳。死んでくれないかしら」

「は?」

女は唐突にそう言った。

いつも通り食べれるものを探して帰ってきたら、女は日が当たらないところに立って僕を待っていた。そして唐突に死ねと僕に振り向くことなく言った。

女の声はいつもより甘い声だった。前のような、僕を可愛がっていた頃の気持ち悪い声。

「獪岳はいい子じゃ無くなっちゃったし、あの人みたいに綺麗じゃないもの。それに……」

やっと僕の方を振り向いた。

「獪岳の代わりはこの子でも出来るから! 」

女の手にはぐっすりと気持ちよさそうにして寝ている赤子か抱えられていた。女は嬉しそうに赤子を突き出す。

「はぁ、全く。最初から食べるつもりで育てたろ、子供はあまり肉がないからやめとけって言ってるだろ? 」

「別にいいじゃない。食べられるならいいのよ」

 

僕はこいつらに殺されるのか……?

こんな気持ち悪い奴に食われて死ぬ。そんなの無理だ。死にたくない。

あの時に逃げとけば良かった。あの時からわかってたことじゃないか、こいつらはもう僕を必要としてないことなど。それでもまだ希望があると信じて耐えてきたのに。

こんなのってありなのか?

「できるだけ痛みがないように殺してあげてね。私子供が喚いている姿あんまり好きじゃないから」

「わかってるって」

いやだ。死にたくない。

「大人しくしてろよ、じゃないと痛いからな」

獪岳は生きていたじゃないか。なら

「いってぇ!! 何すんだよッ」

僕だって出来るはずだ。

「ちょっと、待ちなさい!! 」

男の大事な部分を肘で打ったから暫くは痛みで動けないだろうな。女は赤子を抱えている。赤子を投げ捨ててこっちに追いかけてくるとも思えない。それにまだ太陽が顔を出している。

首に添えられていた鉈が掠って少し血が流れてしまったけど、こんな量じゃ死にはしないだろう。これくらいの量が丁度いいと思った。

 

走って。遠くまで走って。

人が沢山いるところに走った。

怪我した首の血を、服や顔に大袈裟と思う程つけて。

僕が思う、可哀想な子共を演じてやろう。

あいつらは生きてちゃ駄目な奴らなんだから、罰を与えてもいいだろう?

 

「あのっ! たすけて、ください! あっちに化け物が居て、この傷切りつけられて……追われてるんです。このままじゃ殺されるっ!!」

「大丈夫……じゃないな。おい誰か医者を呼べ!」

「追われてるって、こっちに来てるってことか!? 子供にこんな深い怪我を負わせておいて、ただで済むと思うなよ」

「大変、これで傷口を抑えて」

「もしかして坊やが言ってるのは、あそこの家に住んでたやつか? おかしいと思ってたんだよ。早くどうにかするべきだったな」

 

生きるためにはこうするしかないんだ。(死にたくない)

そうだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ聞いた? あの不気味な家に住んでた女の人、いやあれは化け物ね。外に連れ出した瞬間体が灰になって消えたそうよ」

「怖いわね。あれ、男の人はどうなったのかしら? 」

「それ、聞いちゃうの? 鉈で反抗してたみたいだけど運悪く自分に当たっちゃって亡くなったらしいわよ」

「きっと罰があったったのよ。子供にあんなことするから」

 

 

 

 

 

これからどうしようか。家は無くなってしまったし、養ってくれる人も居なくなった。

僕が生きるためにはどうしても人の力を借りるしかない。こんな小さな子供が一人で生きていけるわけが無い。

僕が獪岳なら、助けてくれる人はいる。

獪岳なら……。

僕が獪岳だと? 嫌だ。無理だ。拾われる前はどうしていろと、泥水啜れと? 野宿しろって?

僕は最初に言った。泥水啜らない、金盗まない、同情は一生出来ないってな。あんなクズ好きになることなんて一生ないだろうって。

僕は前言撤回するつもりはない。獪岳に成ったとしていても獪岳みたいなクズにはならない。

僕は獪岳じゃない。獪岳だけど違う。そうであって欲しい、じゃないと吐き気がする。

ここが本当に鬼滅の刃の世界なら、並行世界なんかじゃなくて原作なら、僕は獪岳じゃないといけない。僕が普通の生活に戻るためには獪岳を演じるしかない。

これは仕方のないこと、これは仕方のないこと、これは仕方のないこと…………僕はまだちゃんと受け止められていないな。それもそうだ。ここが漫画の世界だとか信じられるわけが無い。それに一番嫌っているやつに成ったとか。

これって仕方ないことなのか……?

 

 

働こう。この歳でも働ける所を探そう。

悲鳴嶼行冥も探そう。獪岳はその人に会わなくちゃいけない。獪岳は悲鳴嶼行冥にとっての重要な(キー)だ。もし一つ違っていれば悲鳴嶼行冥は鬼殺隊に入らず寺での暮らしを続けていただろう。悲鳴嶼行冥にとっての幸せはそれかもしれないが、鬼舞辻無惨は倒されず鬼のいない世界は訪れなくなる。生きるためには鬼はいらない。普通の生活を手に入れるには鬼舞辻無惨を倒してもらわなくちゃ。

……獪岳は鬼側にとってすごい戦犯しているような気が。

 

とりあえず働けるところを探そう。

考え事は余裕が出来た時だ。焦りすぎても駄目だ。もっと落ち着かないとな。

僕は獪岳じゃない、僕は獪岳じゃない、僕は獪岳じゃない、僕は獪岳じゃ…………

 

 

 

 

 

「ここで働かせてください! 」

「……じゃ試しに十日程働いてみる? 」

「お願いします! 」

 

 

 

 

 

 





時間があやふやで申し訳ありません。
オリ主君の歳は一歳半から四、五歳になりました。
四、五年よく耐えた。
鬼狩りに殺されず四、五年女鬼はよく生きたな。

【何度でもいいます、獪岳が大好きです。】
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