*あなたは蟻のフン以下だ。*   作:一般通過ピアニスト

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*主人公の見た目*

あなたは黒くて長い髪をしている
あなたの目は赤い
あなたの前髪は目を覆い隠している
あなたは小柄な体型だ
あなたは『正実モブ』に近い見た目をしている
あなたは常に魔法書や杖などがギッチリ詰まった大きなバックパックを背負っている
あなたは常に★クーラーボックスを肩から下げている
あなたの背中からは少し歪な羽が生えている


*ウマイ! これはあなたの大好きな……*

 

 

パルミアからヨウィンへの護衛依頼の道中。

空腹を感じたあなたはいつも肩から下げているクーラーボックスからある物を取り出し頬張った。

口の中いっぱいに広がるクリームの甘さとフルーツの酸味の絶妙な調和を感じ取ったあなたは、その余りの美味しさに満面の笑みを浮かべた。

 

───ウマイ! これはあなたの大好きなトリニティの高級ケーキだ!

 

食欲を満たしたあなたは続けて一つの瓶を取り出し、その中身を一口飲む。あなたはえも言われぬ深い味わいと素晴らしい香りを感じ取り、またもや満面の笑みを浮かべた。

 

───ウマイ! これはあなたの大好きなトリニティの高級紅茶だ!

 

……今回の依頼のクライアントである大道芸人が物欲しそうな顔でこちらを見つめているが、残念ながら今食べたケーキが最後の一つなのであげられない。代わりに1ヶ月前にヴェルニースで購入したアップルパイをあげるのでこれで我慢して欲しい。

 

渡したアップルパイを頬張る彼を横目に、あなたは目的地に向けて歩く。さあ、目的地はすぐそこだ。雷雨にさえならなければ後数時間程で着くだろう。今回の依頼も無事に達成出来そうだ。

 

───この後、何故か降り始めた大雨の影響で到着が期日ギリギリになる事を、この時のあなたはまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

さて、あなたが何故トリニティ───以前通ったムーンゲートの行き先だ───のケーキと紅茶を持っていたのか。

 

話は数週間前に遡る。

 

あなたは数日間もの間、雨の降るヴェルニースで、件のムーンゲートの前に呆然と立ち尽くしていた。

結局あの時心が完璧に粉砕されてしまったあなたは、三人に深く謝罪をした後で扉を通ってノースティリスへと帰還したのである。

それからは依頼を受ける気にも何らかの技能(スキル)を鍛える気にもならず、例のムーンゲートを眺めるばかりの日々が続いた。もう何もやる気が起きない。

ひたすらにゲートを見つめ、腹が減ったら宿屋に向かい食事を済ませ、そうしたらまた穴が空く程にゲートを見つめ───

 

 

───ねぇねぇお母さん、あの人は何で何にもない所をずぅっと見つめているのー?

───しっ! 見ちゃいけません!

 

 

───やがて、あなたは住人達からまるで……まるで……

 

……気の利いた例えが思い付かないので、取り敢えず余り良くない目で見られ始めたとだけ言っておこう。

 

所で例のムーンゲートだが、親子の会話によればあなた以外には見えない様になっているようだ。ならば、そのムーンゲートから出てきた「やっほー! 遊びに来たよ☆」などと言いながらあなたに向けて手を振る桃色の髪の少女が誰にも見えていない様子なのも納得だろう。

 

「……あれっ!? 無視!? ちょっと酷くない!?」

 

……と、大声を出しながら翼をバサバサと羽ばたかせて自己を主張してくるので少々やかましい。正直今のあなたは??????

 

???????????????????????

 

あなたは激しい混乱に陥った。

何故自分の心を完膚なきまでにへし折った張本人がこんな所に居るのだろうか。

 

「あっ、やっと気付いてくれた! 聖園ミカ、遂に登場☆ ……所でここはどこ?」

「ミカさん! そちらは雨の様ですから早く戻って来て下さい! ミカさん!! ミカさん!!! ミカ!!!!!」

 

ムーンゲートの奥から、とても大きな声が聞こえる。恐らく呼ばれているので早く帰った方が良いのではないだろうか。

 

そう言うと、『ミソノミカ』と名乗った少女は混乱中のあなたを引き摺りながらムーンゲートへと向かった。抵抗も虚しく、そのままあなたは異界へと旅立った。

 

 

 

かくして、あなたは再び煌びやかな庭園に辿り着いた。

以前と違い、あの三人の他に銃を装備した何人かの少女が居る。彼女らは三人の護衛だろうか。

 

「やあ、また会ったね。こうして今日こちらに招いたのは、君に聞きたい事があったからだ。少々時間を頂くが、構わないかい? あぁ、勿論ちょっとした土産も用意しているとも。君の口に合えば良いのだが」

 

と狐耳を生やした少女が言うので、あなたは首を縦に振った。

 


 

Q.あのドアは一体何故現れたのか?

A.少なくとも『ムーンゲート』という異界に通じるという門を通った結果自分があのドアから現れた事は分かる。

 

Q.あのドアは何処に通じているのか?

A.ノースティリスのヴェルニースという町だ。比較的安全な町なので安心して欲しい。

 

Q.あなたは一体何者なのか?

A.ノースティリスの駆け出し冒険者だ。種族はイェルス、職業はピアニスト。年齢は見た目も中身も十五。性別は女。

 

Q.学校には通っていないのか?

A.通っていない。

 

Q.その頭上のヘイローは?

Q.ヘイローと言われても、自分の頭上には何もこれは一体何ですか???

Q.冒険者とは?

A.怪物の討伐や配達、物品の納品、護衛などの様々な依頼をこなして金を稼ぐ。またはネフィアと呼ばれるダンジョンを攻略する者。自分は主に配達と護衛と簡単な討伐依頼で金を稼いでいる。

 

Q.という事は戦えるのか?

A.その事に関しての自信は木っ端微塵に粉砕された。

 

Q.その巨大な鞄の中身は?

A.主に魔法書や杖やポーションや巻物や武具や食料や鉱物。こちらのクーラーボックスには腐ってしまう生もの製の食料が入っている。

 

Q.……魔法書?

A.魔法書。読むと魔法が使える様になるかも知れないあの魔法書。

 

Q.私にも読ませて欲しい。

A.却下。

 

Q.えーなんで?

A.読書に失敗すると最悪自分の手に負えない様な強い怪物が召喚されてしまう。お陰で以前ヴェルニースを核爆弾で吹っ飛ばす羽目になった。

 

Q.えっ?

A.召喚された怪物が自分や町の衛兵達の手に負えなかったので仕方なく、本当に仕方なく、真に不本意ながら核を用いて自分と町の住人ごと吹っ飛ばす事にした。勿論この事に関する罪はしっかりと雪いでいるし住人は全て復活済みだし建物も全て元通りになっているのでご安心願いたい。

決して、決して頭のおかしい廃人共の様な遊び気分での核の使用では無い事に十分ご留意頂きたい。そして勿論この場所を核兵器で吹っ飛ばすつもりは微塵も無いので安心して欲しい。自分の信仰する癒しの女神、ジュア様に誓う。

 

Q.えっ?

A.どの点に関して?

 

Q.人が生き返ると聞こえたが?

A.ノースティリスの住人は死んでも自力で這い上がれる。建物も数日で完全に元通りになる。自分がヴェルニースで核兵器を使用したのはこの点を踏まえての事である。ヴェルニースの住人も『終末よりは一瞬で事が終わる分マシだった』と言っている。

 

Q.具体的にはどうやって罪を雪いだのか?

A.這い上がって復活を果たしたヴェルニースの衛兵に幾度となくミンチにされて。

その他にはダルフィという犯罪者の町で依頼をこなす事で。後はしばらく牢屋の中で過ごす事によって。

 

Q.他に犯罪歴は?

A.配達依頼の失敗が数件、護衛依頼の失敗が数件。本当に反省している。配達依頼中の《帰還》の使用が犯罪行為だとは知らなかった。

 

Q.本当に反省しているのか?

A.心の底から。そうでなくては先程ミカがこちらに現れた際、自分は衛兵達にミンチにされている所だろう。

 

Q.ならこの件はここまでにしておく。本当に反省している様子だし、第一異世界で犯して異世界でしっかり精算した罪に対して、異世界に住む我々がとやかく言える筋合いは無い。

A.感謝します。

 

Q.所で魔法書の話に戻るが、あなたは魔法が使えるのか。

A.本当に初歩の初歩、簡単な魔法なら。

 

Q.やって見せて欲しい。

A.《壁生成》! 《ドア生成》! ……自分にしては珍しい、二連続で成功するとは……。

 

Q.今のは一体?

A.それぞれ壁と鍵付きのドアを作り出す魔法だ。

 

Q.自分にも教えて欲しい。

Q.読書スキルと暗記スキルと詠唱スキルはお持ちか?

A.持ってない……。

A.残念。しかし自分は振るだけで今使った魔法と同等の効果をもたらす杖を持っているがどうする?

A.やった! 使ってみたい!

Q.ミカさん、少しはしゃぎ過ぎでは?

A.いいじゃん、ちょっとぐらい。

 

 


 

 

かくして、あなたは自分の職業やら犯罪歴やら何やらを語り尽くした。

そしてあなたは、ムーンゲートの行き先である庭園についての情報を三人から教えて貰った。

 

どうやらあなたが辿り着いたのは、数千もの学園が集い形成された『学園都市キヴォトス』───に存在する学園の一つ、『トリニティ総合学園』だったらしい。学園とは言っても、キヴォトスで言う学園とは「国」と同じ様なもの。ちなみに羽や狐耳が生えているのはキヴォトス人なら普通の事であり、エーテル病などを発症している訳では無い模様。

更に彼女達とあなたの頭上にいつの間にか現れていた光輪は『ヘイロー』と呼ばれるものであり、詳しい事は分からないがこれのお陰でキヴォトスの住人達はあらゆる攻撃を殆ど無効化できるのだそうだ。

 

そしてあなたが出会った三人はトリニティを纏めるトップ、『ティーパーティー』のメンバーだそうだ。つまり彼女らはあなたにも馴染み深い言葉で言うと『女王』にあたる立場の人間である。

そしてあなたが無礼にもずかずかと侵入したこの庭園は、普段ティーパーティーの三人にしか入る事が許されない場所。正直先日のあなたは彼女達にぶっ殺されても一切の文句は言えなかった。

寛大な彼女たちに精一杯の感謝と謝意を示す為に土下座した所、なんと彼女たちは『この場所に扉が生成されたのは本当に事故だった様なので今回は不問にする』と言った。

ノースティリスでは信じられない位の聖人ぶりに、あなたは咽び泣いた。咽び泣きながら生成したドアと壁の破壊作業に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

……という事があり、あなたはトリニティに所属する三人の少女と知り合いになった。

 

今では、稀にムーンゲートの傍に立っている彼女ら───主に聖園ミカ───と軽い会話を楽しんでいる。

彼女はお土産と称してトリニティにあるという菓子やら紅茶なる飲み物をくれる。因みに紅茶は桐藤ナギサという彼女の幼馴染が選んでいるそうだ。

対価としてあなたは彼女達に《鑑定》などのちょっとした効果の巻物を渡している。どうやらキヴォトスには魔法が存在しない様で、未知との遭遇に彼女たちはとても喜んでいる様だ。

彼女らとの交流を経て、あなたはやる気を取り戻した。

 

 

───ねぇねぇお母さん、あの人は一体だれとおはなししてるのー?

───こらっ! 見るんじゃありません!

 

 

 

何故か───本当に何故か、彼女たちと会話しているとあなたの名声値が凄まじい勢いですり減っていくのだが、これは一体どういう事だろうか。

 




鑑定の結果、ミカの持っている銃は★Quis ut Deusだと判明した。

★Quis ut Deus

聖園ミカが愛用するサブマシンガンだ
それは貴重な品だ
それは炎では燃えない
それは酸では傷つかない
それは銃として扱う事が出来る
それはパッシブスキルをGloria Patri+に変化させる
それは屋内戦での戦闘力を強化する
それは貫通特攻を加算させる
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