*あなたは蟻のフン以下だ。*   作:一般通過ピアニスト

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お待たせいたしました。
ちょっとelonaを遊ぶ手が止まらなくてですね……。






第五話

 

トリニティ総合学園のとある空き教室にて。

 

あなたは非常に哲学的で概念的で難解でなんと言うか複雑な問いかけへの答えを模索していた。

 

 

問5.あなたには何が出来るのか、できうる限り正確に述べよ。(配点40)

 

 

それが、件の問いだった。

 

なぜこんな事をしているのか。

それはトリニティ総合学園に入学する為だ。

トリニティは学園都市キヴォトスに存在する高校の一つであり、入学する為には試験を受けなければならない。

それは良い。当然の事だ。

 

数学に理科、歴史、英語などなど───

それらの科目については聖園ミカや彼女の部下の方々が非常に分かりやすく丁寧に教えてくれたおかげでなんとかなった。今回の試験ではかなり良い点数が取れているはずだ。

 

問題は問5、お前だ。

 

質問の意図がちょっとよく分からない。

自分に出来ることといえば、食事をしたり物を拾ったり体当たりに休息に採掘などが挙げられるだろう。あとは眠ったり歩いたり浮遊したり武器を振ったりなどなど。

 

が、この問題は絶対にそんな事を聞いているのでは無い。と、キヴォトスに来る前にウイスキーを1瓶飲み干して思いっきり酔っ払っている*1あなたは感じた。

 

読解能力を高めるため、あなたは知恵の巻物を読もうと思ったが、しかしそれの使用は不正行為(カンニング)として禁止されている。

 

仕方がないので、あなたは試験の監督官をつとめる百合園セイアの部下に助けを求める事にした。あなたが二度目にトリニティに訪れた際、護衛としてその場にいた少女の一人である。

 

「……はい、問5の設問の意図ですね。いやー実はこれセイア様に頼まれて私が作ったテストなんですよほんとにすいませんねへへへへん"ん"っ(咳払い)、不明瞭な意図の問題を出題してしまい、大変申し訳ございません。えーと……その問題では、主に魔法や……スキル? で出来る事を記述して下さい。繰り返し申し上げますが、今回の試験には制限時間はございませんので、ごゆっくりどうぞ。書く為のスペースが足りない場合はお申し付けください。追加の紙を差し上げますので」

 

なるほど。

記述がとても面倒くさいが、まあやるしかないだろう。

 

あなたは自分が修めた魔法やスキルの細かな説明を問題用紙に記入し始めた。

 

 

 

 

 

───数十分後。

 

 

 

 

長時間に渡って文字を書き続けたペンを持つ手と腕に激痛が走る。とても痛い。苦しい。

 

だがもう《支配》の魔法まで来た。これが終わればあとは《魔術師の収穫》で終わりだ。あとはスキルを……スキル……。

 

 

まだ終わりが見えない。

このペンをへし折ってしまおうか。

と、絶望しかけたあなたは一瞬真剣に考えた。

その後で全てを諦めて再びペンを構えた。

 

 

ところで《支配》の魔法と言うと、まるで対象を意のままに操れる様に思えるが、しかし実際は違う。

この魔法は、あくまで『対象を仲間(ペット)にする』魔法。誰かを都合の良い奴隷にする魔法でも、操り人形を生み出す魔法でも無い。

 

魔法をかけた対象に対して嫌われる様な事をすれば普通に嫌われるし、頼み事を断られる事もあるし、下手な演奏を聞かせれば石を投げつけられるかも知れない。そんな魔法。

 

そして以前、訳があってこの魔法を猫に対して使用してみた所、なんと抵抗(レジスト)された。

余りにも低い成功率の魔法をなんとか成功させて、マナの反動で血を吐いてまで使った魔法は普通に猫相手に効かなかった。

あなたは静かに涙を流した。

 

まぁ、つまり。

 

猫を相手にまともに成功しない、なんならまともな発動すら怪しい魔法が果たして人間相手に効果的なのかどうか。

 

かなり疑問である。

 

もちろん、あなたの詠唱スキルが向上したり魔力が高まったり、その他諸々の理由で人間を支配する事が簡単になるかも知れないが、仮に成功したとしてもその人物の自由意志は保証される。

だからそう危険視する様な魔法でもないので安心して欲しい。

 

 

 

……という様な内容を、あなたは書いてみた。

 

 

さて、次は《魔術師の収穫》だ。この魔法は───

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

───数日後。

 

あなたはノースティリスの自宅に帰宅していた。

断っておくが、別に試験に合格出来ずにトリニティを追い出された訳では無い。試験には無事に合格した。今日こうして帰ってきたのは、トリニティ総合学園の寮に引っ越す為の準備だ。主にあちらには持っていけない危険物を置いていったり、逆に冷蔵庫やベッドなどの家具類・道具類を持っていったりなどなど。

 

荷物の整理を終えたあなたは、ペットの妹とお嬢と雇ったメイドに事の顛末と暫く家を空ける旨を伝えた。今までにも何度か同じ様な事があったので問題は無いだろうが。

 

さて、なぜトリニティの寮に引っ越すのかについてだが、単純に面倒くさいからだ。

自宅からムーンゲートのあるヴェルニースの街まで、あなたの足で片道2時間。

どうと言うことは無い距離だが、合計で毎日4時間を移動のためだけに浪費するのは正直な所とても嫌だ。自分としてはその時間で演奏の技術などを高めたい所だ。

という訳で、あなたはトリニティの寮に住まう事にした。

 

所であなたはトリニティに通う事になる訳だが、それに当たって新たに採掘スキルによる建造物の採掘の禁止、ポーションの他者への使用の禁止などがあなたに言い渡された。

前者はともかく、なぜポーションの他者への使用が禁止されたのか。

曰く、異世界で使われている薬品がこちらの人間にとってどう作用するのかが不明だから、との事。当然の理屈だ。

 

閑話休題。

 

あなたは自宅の住人達に『いってきます』を告げ、ヴェルニースへと向かった。短い上に何度も通った旅路だ。きっと問題なくたどり着けるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

《おまけ:採点にて》

 

「───……やっぱりあったんだ。他人を支配する魔法」

「そうだね……。まあ、これを読む限りでは某有名小説のインペリオ(服従の呪文)の様に真の意味での支配は出来ない様だが。それに猫相手に失敗した、ともある。余り気にする必要は無いんじゃないか? それよりもインコグニートによる変装や四次元ポケットによる物品の密輸などを警戒した方が良いだろう。 ……さて、魔法はこれで全てか。次はスキルの確認を───」

「ねえセイアちゃん。まだ一つあるよ?」

「……さて、なんの事やら。私の目には何も映っていないな」

「そりゃそうじゃんね、だって目を閉じてるんだもん」

「……目を開けたぞ。おやおや、やっぱり何も見えないじゃないか」

「そりゃそうじゃんね、だって手で目を塞いでるんだもん。じゃあ、読み上げるね? えっと───」

「……何も聞こえないが?」

「そりゃそうじゃんね、だって耳をぺたんってしてるんだもん。……いい加減に認めたら?」

「……ふざけるな! 認められる訳が無いだろう!? なーにが魔術師の収穫だ! 何を考えて大量の金貨やプラチナ硬貨や振ると願いが叶う杖やらが降ってくる魔法なんて創ったんだ!? この魔法の開発者は経済という概念を知らないのか!? それとも頭蓋骨に海綿体でも詰まっていたのか!?」

「お、落ち着いて……キャラが崩れてるから……!」

 

 

*1
以前言われたのは『キヴォトスで飲酒するな』であり、今日はちゃんとノースティリスで飲んできたので問題ない。雪深いノイエルで飲むウイスキーが1番おいしいと思う。

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