チートで男の娘で推しの姿で転生した件   作:天童真影

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第7話警備隊と取引

 

サオリ「本当にすんませんっしたーーーー!!!」

 

俺は深々と頭を下げた。俺達は、警備隊の詰め所に連行されていた。

あの後、あれだけの騒ぎを起こして無罪放免!と、その場で開放されるなんて事は流石になかった。俺達は、駆けつけたドワーフの警備隊に取り囲まれた。とはいえ…、相手の5人は絶賛気絶中だし、俺一人を取り囲んでいるようなものである。

 

           ぐわしっ!

 

と、身体を掴まれる。そして襲い来る、浮遊感。あっさりと、捕獲されてしまった。逃がす気はないよ?といった顔をして、兵隊さんが笑顔を浮かべている。だが、額に浮かぶ青筋が、彼の心情を雄弁に語っていた。

 

サオリ「ちょ、自分何もしてないっすよ!自分も被害者っす!」

 

と、ゴブタを真似て口走ってみたのだが…、

 

警備隊「うん。そうだね!でも、話は詰め所で聞くから!逃げれるなんて思わない事だね!」

 

いい笑顔で諭された。もう諦めた方がいいかもしれんな…。こうして、俺達は警備隊の詰め所へと連行されたのである。

 今回の三つの出来事!

 

 一つ、絡まれた!

 二つ、ギーツに変身した!

 三つ、ちょっとだけ大きな声で吼えた。

 

どや?俺、悪くないやろ?そう思い、チラッ、と兵隊さんを見上げた。相変わらずの、いい笑顔。髭もじゃの人の良い豪快な顔つきに、よく似合っておられる。残念だな〜、その額の青筋が無ければ…な。

 

ゴブタ「あの〜、自分、何で一緒に連れて来られたんすかね?」

 

リムル「ばっか!何言ってるの、貴方? 貴方が絡まれたから、私達怒られてるんだよ?」

 

ゴブタ「え!?そうだったっすか!スンマセン…。自分、またやらかしたんスね…。」

 

リムル「まあ、今回は仕方ないけど、次からは気をつけてね?」

 

ふー。何とか誤魔化せたようだ。実際のところ、冗談っぽく言ったが、三つの出来事は概ねその通りなのだ。見ていた者達からの聞き込みでも、同様の聞き取り結果が出た模様。俺達への態度が、若干だが緩くなったように思う。

 

兵隊「で?あの姿は、何だ?」

 

目の前の取調べ担当の兵隊さんが、問いかけてきた。何、とはどういう意味だろう?姿の名前とか?

 

サオリ「えっと、あの姿の名前はですね……」

 

兵隊「違う。名前とか、そういうのはいい。知ってる事を全て話せ!」

 

むむ?俺が変身したって、言ったのだが、信じてないのか?オープンにペラペラ喋ったというのに…。

 

サオリ「いや、だから、あれは俺が変身した姿だって、言ってるじゃないですか!」

 

兵隊「は〜。お前ね、変身はないだろ?」

 

サオリ「いやいや、じゃあ、やって見せましょうか?」

 

兵隊「ふん。まあいい。仮にだ、お前が変身した姿だったとしてだが、何で変身出来るんだ?人間だろ?」

 

え?そう言われれば、どう答えたらいいだろう?ユニークスキルっすよ!など、バカ正直に答えるのは不味い。そんな事をすると、ゴブタと同レベルになってしまう。考えろ!ナイスな言い訳を、今すぐ思いつけ!!!

 

サオリ「実はですね…、俺、魔法使いに呪いをかけられたのです。多分、俺の才能に嫉妬したのでしょう…。俺は幻覚魔法の使い手だったのですよ。」

 

兵隊「ふーん。魔法使いに呪い…ね。で?」

 

サオリ「ええと、はい。幻覚魔法を幾つか覚えて、勉強中の身だったのですが、邪悪な魔法使い女性の身体に変化させられてしまって…。今は、その呪いを解く方法を探して、旅をしていたと、こういう訳なのです!」

 

兵隊「なんで邪悪な魔法使いに出会ったの? 殺されずに呪いをかけられた理由は?」

 

ぐぬぬ…、素直に信じればいいものを…。しつこいくらい疑っているな。まあ、当然か。ここであっさり信じられたら、お前はゴブリン以下か!と思うところだ。そこから延々2時間程。俺と兵隊さんの攻防が繰り広げられた。

  ・

  ・

  ・

二人の熱い議論の末に、一つの物語が出来上がろうとしていた。一人の美少女が、悪い魔法使いに女性になる呪いをかけられる物語。

 

売り言葉に買い言葉ではないが、兵隊さんの指摘に一々反応していく内に、変な脳内ストーリーが出来上がっていた。俺っ娘の、変身系幻覚魔法の天才少女。彼女が魔女に呪いを受けて、それを解く旅にでる話。どうしてこうなった?俺がおかしな事を言うと、兵隊さんが尋問という名の修正を入れてくる。なるほど!と、話を直していく内に出来上がったのだが…俺と兵隊さん。成し遂げた!という感じで、熱い眼差しを交し合った。言葉はなくとも、気持ちは通じていた。

 

兵隊「よし!調書(内容は出鱈目だが…)が完成した!協力感謝する! しかし、君達の身柄は…、」

 

 バターーーン!!!

 

兵隊の部下「た、大変だー!!!鉱山で、アーマーサウルスが出やがった!鉱石を採取していた鉱山夫が何名か、怪我したみたいだ!」

 

兵隊「なんだと!?で、アーマーサウルスは討伐したのか?」

 

兵隊の部下「そっちは大丈夫!今、討伐隊が向かった。だが、怪我の具合の酷いのがいる。戦争の準備かなんか知らないが、薬関係が売り切ればかりで、城の備蓄も出せないみたいで…」

 

兵隊「回復術士は?」

 

兵隊の部下「それが…、"魔鉱石"の採取に、奥まで行ってるだろ?付き添いで行ってしまってて、ヒヨっこしか残っていやしねえ!!!」

 

兵隊「なんだと…!?」

 

大変な事になっている様子。俺達は空気だ。城に備蓄あるなら出してやれよ!と思うのだが…。回復薬か。持ってるけど…どうするかな?

 

サオリ「おい、旦那!旦那!!!」

 

渡す事にした。出来れば、心象を良くして無罪放免!的な考えが心をよぎったとか、そのような事は断じてない!人命救助は当然だからだ!!!言ってて、自分でも疑わしい…"情けは人の為ならず"という。巡り巡って、自分に良い事があるかもしれないさ!

 

兵隊「何だ? 今取り込み中だ! 取調べは終わりだが、まだ開放は出来ん。暫くこの部屋で待機してろ!」

 

リムル「いえいえ、そうじゃなく。これ、なんですけどね?」

 

リムルさんが懐から取り出す、回復薬。(見た目には、ペッ!と吐き出したように映るだろうけど。)

 

兵隊「…?あ、何だこれは?」

 

リムル「回復薬ですよ。飲んで良し!掛けて良し!の優れものですよ!」

 

兵隊「は?何でスライムのお前が、回復薬なんて持ってるんだ?」

 

リムル「まあそんな事はどうでもいいでしょ?使って見て下さいよ。何個必要ですか?」

 

兵隊「怪我人は、6人だが…、大丈夫なのか?」

 

知らせに来た若い兵隊が、疑わしげに見てきた。魔物が薬を差し出す。…俺が兵隊なら受け取らない。

 

兵隊「チッ!ここから出るなよ!行くぞ!」

 

兵隊の部下「え?でも、隊長…、こいつ魔物ですよ?」

 

兵隊「うるせえ!行くぞ!!!さっさと案内しろ!!!」

 

そう言って、リムルさんが出した6個の回復薬を引っ掴み、隊長と呼ばれた髭面の兵隊さんは駆け出した。話は適当に合わせてただけだが、俺の事を信用してくれたらしい。見かけどおり、人のいいヤツのようだ。隊長だったとは驚きだが。

 

ゴブタ「終わったっすか?」

 

終始無言で、俺等の話に頷くだけだったゴブタが聞いてきた。

 

サオリ「終わってはないが、まあ、暫くは様子見だな。」

 

ゴブタ「了解っす!」

 

ぼ〜〜〜っとする俺達。詰め所の中に時折出入りする兵隊達が、俺達を訝しげに見て首を傾げていたが…。

 

 

 

待つ事、一時間。暇つぶしに糸を操る練習をしていると、隊長達が帰って来る足音を感知した。糸を仕舞い、部屋に入って来るのを待つ。ゴブタは寝ていた。コイツ…案外、大物なのかもしれない!

 

鉱山夫「助かった!ありがとう。」

 

 部屋に入ってくるなり、そう言って、頭を下げてきた。

 隊長に続いて、鉱山夫達まで入ってきた。

 

鉱山夫「あんたが、薬をくれたんだってな!ありがとよ!!!」

 

鉱山夫「正直、腕が千切れかけてて、生き残れても仕事なくなるとこだった…ありがとう!!!」

 

無言の鉱山夫「………。」

 

感謝の言葉を述べる鉱山夫達。最後のヤツ…、何か言えよ!まあ、感謝の気持ちは伝わってきた。

 

 

それから一頻り、礼を述べて、鉱山夫達は帰って行った。何だかんだで、太陽はとっくに沈み、外は真っ暗になっている。その後、隊長と暫く話をした。今度は、真面目な話である。5人組は、この国の自由組合所属の冒険者達だった。才能はあるのだが、問題を起こすというので有名だったらしい。ぶっちゃけ、いいクスリになっただろう!と笑っていた。俺達が、実際には何もしていないのは確認済みなのだが、周囲の被害者の感情を考慮しての拘束だったと教えてくれた。被害届も出ていない。汚してしまった下着を弁償しろ!などと、恥ずかしくて言えたものでもないだろう。俺達の事情も話した。ゴブリンの村の復興に、衣類や武具の調達。出来れば、指導出来る者の派遣依頼、等々。隊長は熱心に聞き入ってくれた。事情を知った、他の隊員達も、色々話しかけてくれた。ゴブタのヤツも、色々話しかけられ、目を白黒させて答えていた。そうして、夜は更けていく…。

 

翌日。

未だ、詰め所に滞在中である。ゴブタは、仮眠室を借りており、今はいない。まだ寝てるのだろう。俺に睡眠は必要ないので、朝から裏庭で行われている鍛錬の風景を眺めていた。木刀(というより、丸太に近いが)を振る速度、模擬戦で軽く打ち合いを行う様子、その他走りこみの状況。全てノンビリと観察している。その状況を脳内シュミレートし、各種捕食した魔物と戦わせてみた。暇なので、ゲーム感覚である。しかし、創世之神(コンちゃん)をこんな事に使ってもいいものか?宝の持ち腐れのような気もしなくもない。だが、面白いのだから仕方ないだろう。問題ない。結果、魔物達の圧勝。条件を悪くしたとしても、蝙蝠とトカゲに勝てる者が何人かいる程度。1vs1では、魔物に天秤が傾くようである。ただし、5〜6人が1PTとなるらしいので、集団だと蜘蛛に勝てる組み合わせもあった。だが、ここにいる20人全員で掛かったとしても、ムカデには勝てないだろう。この兵隊さん達がこの国の最強戦力という訳ではないようなので、こんなものなのかもしれないけれど。

 

そうこうしているうちに、ゴブタも起きて来た。隊長も出勤して来たようだ。

 

隊長「釈放だ。拘束して悪かったな。面目もあって、一日は入って貰った。スマン!」

 

サオリ「いやいや、宿代が浮いて助かりました!」

 

隊長「そう言って貰えると、助かる。詫びだ、腕のいい鍛治師を紹介しよう!」

 

リムル「それは助かります!ありがとうございます!」

 

幸先良い。入国審査も何のかんの言って、優先でして貰えたようなものだし、宿代も浮いた。鍛治師探すのも面倒だと思っていたが、兵隊さんの紹介なら間違いはない!前向きに考えれば、良い事ずくめだ!

 

隊長「その代わり…」

 

む?良い話には裏があるのか?

 

隊長「回復薬の在庫がまだあるなら、譲って欲しい!」

 

なるほど。何やら、在庫少ないみたいな事、昨日言ってたな。在庫は山程あるから、売るのは別にいいんだけど…相場を知らないからな。どうしたものか?まあいい。どうせ、自分達で作った制作費無料の消耗品だ。欲しいというなら、何個か譲ってやろう。

 

リムル「良いですよ。といっても、こちらも必要ですので、個数によりますけど?」

 

隊長「余ってる分だけでも良いのだ。一個しかないなら、一個でいい!」

 

ん?おかしな事を言いよるな?予備に回復薬を置いておきたいのではないのか?一個だけあったって、いざという時に困るだろうに…まあ、よっぽど切羽詰っているのだろう。

 

リムル「んあ、じゃあ、5個くらいでいいですかね?」

 

隊長「5個!助かるよ!!!」

 

サオリ「ああ、それと多分、水で薄めても効果あると思いますよ? 普通の切り傷程度なら、1/10くらいで!」

 

俺が説明すると、もっともだ!という顔で頷いている。納得したようなので、5個渡したら、小袋をくれた。中を見てみたら、金色の貨幣が入っている。

 

隊長「少ないかもしれないが、出せるのはこれで全てだ。1個に対して金貨5枚で買い取らせてくれ!」

 

回復薬5個で、金貨25枚になったみたいだ。この際だ、損してるかどうかもわからないし、貨幣の価値を調べよう。

 

リムル「あのー、すみません…」

 

隊長「少なかったか?だが、これが精一杯なのだが…」

 

リムル「いや、金額はそれでいいんですけど、教えて欲しい事が!」

 

隊長「え?この額でいいのか?で、では聞きたい事とは?」

 

ん?んんん?この反応…これは、ボラれたか!もっと吹っかけても良かったかもしれん。まあいいや。この隊長さんも良い人そうだし、そこまでは騙されてもいないだろう。

 

リムル「金額もそうなのですけど、お金の価値や、物価なんかも、まったく判らなくて…。出来れば、その辺りを教えてください!なんせ、自分、スライムなもので!」

 

自分も、昨日の俺っ娘設定を否定する女性発言。だが、お互い様。どうせ信じていないのだ、問題ない!こうして、出発前の会話は長く続き、いざ出発!となったのは、昼食の後だった。美味しく戴きました。

 

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