チートで男の娘で推しの姿で転生した件   作:天童真影

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第10話騒動の結末

 

さて、と。当たり前の話ではあるが、大臣を殴ったのは非常に不味い。

当たり前なのだ・・・。

 

カイドウ「兄貴・・・、何をやっているんだよ?」

 

警備兵を引き連れてやってきた、カイドウのセリフであった。流石に毎日サボれないのか、今日は姿を見ていなかった。飲みに行くのを誘ったのだが、用事がある!と断られたのだ。それなのに、自分が用事でいない間に騒ぎを起こしているとなれば、呆れるのも当然だろう。逃げるだけなら簡単なんだが、それは悪手だろうな・・・。

 

カイジン「フン!そこのバカが、俺の客であり恩人のリムルの旦那とサオリの旦那に失礼な事をしやがるから、ちょいとお灸を据えただけの事よ!!!」

 

と、引き連れていた四人の騎士に介抱されている、ベスター大臣を指差す。ベスター大臣は、今だに驚きとショックから立ち直れていない。鼻血をボタボタ垂らしながら、呆けた顔でこちらを睨んでいる。殴られる等、まったく想像もしていなかったのだろう。驚き過ぎて、痛みも感じてはいない様子だ。

 

カイドウ「おいおい・・・、ちょいとお灸って、大臣相手にそれは不味いだろ・・・」

 

溜息まじりに、カイドウが呟いた。

 

カイドウ「ともかく・・・、兄貴達の身柄は、一旦拘束させて貰う!」

 

そう言って、部下に指示を下すカイドウ。だが、俺達にだけ聞こえるように、

 

カイドウ「悪いようにはしないから、大人しくしておいてくれよ!」

 

と、呟いていた。無論、俺に騒ぎを起こすつもりなどない!俺はママさんの元へコソっと移動し、ママさんに金貨五枚を握らせた。え?と、驚くママさんに、

 

リムル「迷惑料も入ってるから!また来るよん!」

 

と挨拶する。ここは質のいい店だった。こんな事で、二度と来れなくなっては面白くないのだ。

 

 

こうして俺達は連行される事となった訳だが・・・、何かを忘れている。そう! ゴブタである。あのバカは、店に連れてきていない。度重なるヤツの愚行に対し、お仕置き"蓑虫地獄"を執行中だったのである。最初は逆さ吊りにしようかとも思ったが、流石にそれは不味い。という訳で、『粘糸』でグルグル巻にして、部屋にぶら下げてきたのだ。

 

ゴブタ「ちょ!これ酷いっす!自分も連れてって欲しいっす!!!」

 

などと、悲痛な声で喚いていたが、甘い顔をすれば付け上がりそうだ。という訳で、

 

サオリ「バカめ!貴様の日頃の行い、目に余るわ!悔しかったら、相棒(嵐牙狼)でも召喚して助けてもらいやがれ!!!」

 

と、出来もしないだろう事を言いつけて放置して来たのである。ゴブリンならともかく、ホブゴブリンに進化した今のヤツなら、一週間くらいは飲まず食わずで大丈夫だろう。長い日数、拘束されるようなら、一度抜け出してヤツを助けてやろう。そう考えて、ヤツの事はそのまま忘れる事にした。ちょっとだけ、可哀想かな? とも思ったが、逞しいヤツの事だ、問題ない!

 

 

俺達五人は、王宮へと連行された。とは言っても、ものものしく拘束されている訳ではない。任意同行に近い感じだ。強制だけど・・・。結局、牢屋で2日程過ごす事になった。とはいえ、それなりに良い食事が出ているようだし、部屋の調度も整えられている。5人一緒に入れられているので、牢屋というより大部屋という感じだ。待遇は、そこそこマシな印象を受けた。

 

カイジン「俺が短気を起こしてしまったばかりに・・・、スマン!」

 

カイジンが謝ってきた。しかし、ここにそんな事を気にする者はいない。

 

ガルム「カイジンさん、大丈夫!問題ないさ!」

 

ドルド「そうそう、親父さんが気にする事ないですよ!」

 

ミルド「・・・・・・!」

 

 

三人も同じ気持ちのようだった。

 

ガルム「それより、釈放されたら、俺達もカイジンさんに付いていきますよ!」

 

ドルド「リムルの旦那、サオリの旦那、俺達がついて行ったら迷惑かい?」

 

ミルド「・・・・・・・・・??」

 

最後のやつは何が言いたいのか、俺の理解力では判断出来ないが、気持ちは分かった。 

 

サオリ「ふん!皆、まとめて面倒見てやるさ!ただし、扱き使うから、覚悟しとけよ!」

 

ドワーフの人達「「「おう!」」」

 

とまあ、こんな感じに、俺達は釈放された後の事を相談し始めたのであった。

 

 

一日目はそうやって過ぎて行き、二日目の夜。

 

サオリ「そう言えば、あの大臣、えらくカイジンを目の敵にしてなかったか?何か理由でもあるのかな?」

 

何の気なく、俺が質問をしたのだ。 これに対し、カイジンは苦虫を噛み潰したような顔になり、溜息をつくと話始めた。

 

 

実はカイジンは、元、王宮騎士団の団長の一人だったのだそうだ。とは言っても、王宮騎士団は全部で7つの部隊があり、その内の一つを任されていたらしい。工作部隊・兵粘部隊・救急部隊の裏方三部隊。重装打撃部隊・魔法打撃部隊・魔法支援部隊の花形三部隊。そして、最も重要な、王直属護衛部隊である。カイジンは、工作部隊の団長を務めていたそうだ。その時の副官が、ベスターだったのだそうだ。

 

カイジン「ヤツは、侯爵の出でな、金で地位を買った!と言われていてな…。俺が庶民の出だったものだから、妬んでいたんだ。複雑だったんだろうよ。庶民の下で命令を受けるのも屈辱だったのかもしれんしな…俺には、他人の気持ちなんて思いやる余裕がなくてな。王の期待に添おうと必死だったんだよ…。そんな時に、あの事件が起きたんだ…」

 

そう言って、当時の事件を語ってくれた。カイジンが、軍を辞めるきっかけとなった事件。

 

魔装兵事件。当時、ドワーフの工作部隊は、新しい技術革新もなく、7つの部隊の中で最低の評価に甘んじていた。技術立国の立場から、工作部隊は花形であるべきだ! そう主張するベスター派。今のままで、堅実に研究を進めるべき! という主張のカイジン派。両者は議論が拮抗し、会議で結論が出る事は無かったという。そんな中、エルフの技術者との共同開発の、"魔装兵計画"が立ち上がった。この計画を何としても成功させ、工作部隊の地位を確固たるものにしよう! そうベスターは考えた。そのベスターの焦りをカイジンが指摘したが、庶民出の上司の忠告には、聞く耳を持たなかった。結果、焦ったベスターの独走により、"精霊魔導核"の暴走を引き起こし、計画は頓挫。当時最高の技術者を集めて行われた、"魔装兵計画"はこうして終焉を迎えたのだ!

 

 ………

 ……

 …

 

結局の所、失敗の責任を取って、カイジンは軍を去る事になった。ベスターが、自分の失敗を全てカイジンに押し付けた上に、軍の幹部を抱きこみ、偽の証言まで用意した為である。しっかし、ベスター、絵に描いたような悪人だな。ある意味、解りやすい。要するに、カイジンがこの国にいると、いつまた軍に返り咲いて自分の地位を脅かすか解らない!と、こういう訳か。そんな卑怯なヤツ、死刑でよくね? まあ、死刑は言いすぎかもしれないが…。

 

カイジン「まあ、そういう訳で、俺がこの国から出たら、アイツも少しはマシになるかもしれんさ。」

 

そう言って、この話を締めくくった。三兄弟も、当時の事件の真相を知る者達で、ベスター大臣を嫌っていたのだそうだ。そんな話を聞けば、俺だって嫌いになるわ…。

 

しかし、貴族相手に殴ったのだ。このまま無事に、釈放されるとは思えないのだが…そうした俺の心配に、

 

カイジン「大丈夫だろ、一応。俺は退役したとはいえ団長にまでなったおかげで、準男爵の地位を戴いている。庶民が貴族に対して!ってのなら、裁判待たずに死刑もありえたけどな!」

 

そう言って、大笑いしている。俺はまったく笑えないけどな…。いざとなれば脱出しよ!俺、関係ない事にして、ほとぼり冷めるまで普通の女性のふりして過ごそう。俺は内心、そんな事を考えたのだった。

 

 

 

そして、裁判の日となった。俺達は、王の前へと連行された。ドワーフの英雄王。目の前にしたら、その圧倒的威圧感が半端ではない。現王、ガゼル・ドワルゴ。目を閉じ、椅子に深く腰掛けている。ドワーフらしい、がっしりとした体付き。迸るエネルギーを秘めた筋肉の鎧。その特徴ある、褐色の肌。後ろに撫で付けた、漆黒の髪オールバック。強い俺の本能が、久しぶりに全力で警報を鳴らしていた。両脇に、騎士が控えている。この二人も強いと感じるが、王の前には霞んでしまう。この王は、化物だ。簡単に逃げれるつもりでいたが、これは…俺の弛みきった意識は、王の前に来た途端に覚醒した。ひょっとすると、この世界に来てから初めて感じる"危機感"かもしれなかった。

 

 

一人の男が王の前に膝をつき、何事か確認した。王の許可を得て立ち上がり、

 

裁判者「裁判を始める!皆、静粛にせよ!!!」

 

裁判の開始が告げられた。

 

1時間かけて、双方の言い分が発表される。当事者である俺達に、ここでの発言は許されない。この場で自由に発言出来るのは、伯爵位以上の貴族だけである。それ以外は、王の許しが出るまで発言は許されない。発言すればどうなるのか?発言した時点で、罪が確定する。さらに、不敬罪まで上乗せされるというお得さで!冤罪も何も関係ない。それが、ここのルールなのだそうだ。代理人に、全てを任せるしかないのだ。この代理人とは、この二日、何度も顔を会わせて打ち合わせしている。言うなれば、弁護士みたいな者であろう。この代理人は大丈夫なんだろうな?そういう不安とは、得てして的中するものなのだ…。

 

弁護人「と、このように、店で寛いでお酒を嗜んでおられたベスター殿に対し、複数で店に押し入り暴行を加えたのです!これは、断じて許されるべき行為ではありません!!!」

 

裁判者「それは事実であるか?」

 

ベスター「はい!私も、カイジン殿からの聞き取りだけではなく、店側からも調書を取って御座います!先の言い分に相違ない事は、間違い御座いませぬ!!!」

 

…は? え、何だって?味方と思っていた代理人の、まさかの裏切りであった。これは…、不味いのではなかろうか?カイジンの様子を見ると、一気に顔が赤くなり、次第に青ざめ始めている。そりゃ、そうだ。なんせ、言い訳もさせて貰えないのだ。ちなみに…、代理人が嘘を吐く事は、許されていない。バレたら死罪である。余程の覚悟か、何らかの事情が無ければ、嘘を吐くなど考えられないのだが…王の前で、下賎な者(この場合は罪人)に発言を許さない為のシステムだが、今回は最悪の方へと運用されてしまったようだ。

 

ベスター「王よ!お聞き届け頂けましたでしょうか?この者達への厳罰を申し渡しください!」

 

ベスター、調子に乗って、王に進言してくれた。その時、

 

        おい

 

     ボワッ!

 

 

俺は我慢できず声を出してガゼル王の前に出る。

 

王は、目を閉じたまま、微動だにしない。その様子を確認し、傍仕えが王に代わって発言を行う。

 

裁判員「静粛に!!!これより、判決を申し渡す!主犯、カイジン!この者は、20年の鉱山での強制労働に処す。その他、共犯者!この者共は、10年の鉱山での強制労働に処す。それでは、この裁判を閉廷…」

 

ガゼル王「待て…。」

 

重く、深い静かな声が、閉会の言葉を遮った。王が目を開けて、カイジンを見つめた。

 

ガゼル王「久しいな、カイジン!息災か?」

 

カイジン「…は!王におかれましても、ご健勝そうで、何よりで御座います!」

 

一泊おいて、カイジンが返答した。王の問いかけには、返事しても大丈夫のようだ。

 

ガゼル王「よい。余と、そちの仲である。本題である! 戻って来る気はあるか?」

 

周囲がざわめいた。ベスターは一気に青ざめる。ふと見ると、裏切った代理人は、死にそうな程の土気色の顔色になっていた。

 

カイジン「恐れながら、王よ!某は、すでに主を得ました!この契りは、某の宝であります。この宝、王の命令であれど、手放す気はありませぬ!!!」

 

 その言葉に、周囲が気色ばむ。

 護衛の兵士から、カイジンに向けて殺気が放たれているが俺は呪力量をわざと出力を上げるがカイジンに怯えは無く、むしろ堂々と胸を張って、王を見つめていた。

 

その目を見て、王は再び目を閉じた。

 

ガゼル王「で、あるか…。」

 

そう呟く。辺りを、再び静寂が支配した。そして、

 

ガゼル王「判決を言い渡す。心して聞けえい!!!カイジン及び、その仲間は、王国より国外追放とする!今宵、日付が変わって以後、この国にいる事を余は許しはしない。以上。では、余の前より消えるがよい…。」

 

王が目を見開き、大音声で言い渡す。これが、王者の覇気!身が震える程の、威圧。それなのに…。俺には、王が寂しそうに見えたのだ。

 

 

 

 

 

こうして、裁判は閉廷し、俺達はカイジンの店に戻ってきた。ちょっと飲みに行くつもりが、大事になったものである。さっさと荷造りして、出発しなければ!そういえば…、ゴブタは無事だろうか?まあ、まだ三日目だし…ちょっとだけ不安に思いながら、お仕置き部屋の扉を開けると…、

 

ゴブタ「あ!お帰りっす!今まで楽しんでたっすか?今度は自分も連れて行って欲しいっす!」

 

などと言いながら、ソファから飛び起きるゴブタの姿が!なん…だと?コイツ…蜘蛛の『粘糸』から、どうやって逃げ出せた?よく見ると…枕にしているのは、嵐牙狼であった。マジか? 召喚を成功させたのか!?

 

サオリ「お、おい、ゴブタ君。君、狼の召喚に成功したのかね?」

 

ゴブタ「あ!そうっす!来てくれ!って念じたら、来てくれたっすよ!」

 

簡単に言いやがって…未だ、他のホブゴブリンで成功した事例は無いというのに…。もしかして、こいつ、頭の栄養が才能に行き渡っているんじゃ…?と、そこで、嵐牙狼を見て硬直しているドワーフに気付いた。

 

サオリ「何してるんだ?さっさと準備して行くぞ?」

 

ドワーフ達に声をかけると、

 

カイジン「おいおい、待て待て!なんでこんな所に、黒牙狼がいるんだ!!!」

 

ガルム「そうだぞ!さっさと逃げないと、アレは、Bランクの魔物だぞ!!!」

 

何やら大慌てしている。その様子は滑稽で、面白かった。

 

リムル「大丈夫、大丈夫!問題ない。唯の犬と大して変わらんよ!家で飼ってる狼だしね!」

 

安心させてやるつもりで言ったのだが、何故か、四人揃って絶句していた。

 

時間が無いので、今回は仕方ない。ドワーフ達に、旅の服装に着替えて貰うと、皆で外に出た。そして俺とリムルさんで家の中の持って行く物全てを、飲み込んでいく。容量には、まだまだ余裕がある。だが、流石に建物を飲み込むのは、悪目立ちしすぎるし怪しまれるので止めておく。こうして旅の支度を整え、俺達はリグル達との待ち合わせ場所である森の入り口に、向かったのであった。

 

武装国家ドワルゴン。今後、何度も関わりあう事になる国家。逃げるようにこの国から飛び出した俺達は、その事にまだ気付いていない。

 

 

 

 

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

 

 

 

その場は、静寂に包まれていた。さっきまで騒々しいやり取りがあったとは思えないほど…。五人の犯罪者が、逃げるようにこの場を去った後、誰一人として動く者はいない。その静寂を壊すかの如く、

 

ガゼル王「さて、ベスター。何か、言いたい事はあるか?」

 

ベスター「お、恐れながら、王よ!これは誤解です!何かの間違いで御座います!」

 

見苦しく、王に縋り付かんばかりに喚きたてるベスター大臣。対する王は、終始感情を覗かせない、冷徹な態度である。

 

ガゼル王「誤解、か…。余は、忠実な臣を一人、失う事となった。」

 

ベスター「何をおっしゃいます!あの様な者など、王に忠誠を誓うどころか、どこの馬の骨ともわからぬ…」

 

ガゼル王「ベスターよ!お前は、勘違いをしておる。カイジンの奴は、元より、余の元を去っておった…余が失う忠実な臣、それは、お前の事だ。」

 

静に、何の感情も覗えない、声。ベスターの喉が、ゴクリと鳴る。言い訳をしなければ…!ベスターの心臓は早鐘を打ち、頭は空転する。何も考える事が出来なくなっている。今、王は、何と言った?失うのは、お前!それは、つまり…ベスターはどうすればいいのか考える。だが、何も考えは浮かばない。

 

ガゼル王「もう一度、問おう。ベスターよ。何か、言いたい事はあるか?」

 

怖い。ベスターは恐怖で頭がいっぱいになった。王に問われている。返答しなければ!だが、何も言葉が浮かんで来ないのだ!!!

 

ベスター「お、おそれ、恐れながら…」

 

ガゼル王「余は、お前に期待していたのだ。ずっと待っていた。魔装兵事件の際も、お前が真実を話してくれるのを待っていたのだ。そして、今回も。見よ!」

 

そう言って、王が二つの品を指し示す。いつの間にか、近習が運んで来た物だ。ベスターは、虚ろな瞳でソレを見た。

 

見た事もない、液体の詰まった袋状の球体。一本のロングソード。

 

ガゼル王「何か解るか?」

 

そう問われ、よく観察する。球体は解らないが、ロングソードは見覚えがある。カイジンの持ち込んだ剣だ。

 

ガゼル王「教えよ!」

 

王の説明に、近習が説明を行った。ベスターの脳が、ソレを理解するのに、しばしの時間が必要であった。

 

蘇生薬ではないものの、ヒポクテ草の完全抽出液。それは、完全回復薬。ドワーフの技術の粋を集めても、98%の抽出が限界。98%では、上位回復薬の効果しか得られない。それが、99%!!!驚きに、ベスターの顔が歪む。知りたい!その抽出方法を!!!更に、驚くべき情報が、ベスターへと説明される。その、ロングソード。芯に使った魔鋼が、すでに侵食を開始し始めている、という報告。有り得ない…、普通、10年は馴染んでから、徐々に侵食は行われるものなのに!驚愕に、ベスターの思考が活性化される。その事が本当だとしたら! そういった考えがベスターを支配し、

 

ガゼル「それを齎したのは、あのスライムとあの女性だ。お前の行いが、あの魔物達との繋がりを絶った。何か言いたい事はあるか?」

 

決定的に、ベスターは王の怒りの深さを知る。もはや、何も言うべき事など、無いのだ…と。

 

ベスター「なにも…、何も御座いません、王よ。」

 

涙が込み上げて来た。自分は、王に見捨てられたのだ! と、初めて理解して。王の役に立ちたかった。そして、王に認めて貰いたかった。彼の望みは、それだけだったのに…。いつから、自分は間違ったのか?カイジンに嫉妬した時から?あるいは、もっと前…?解らない。ただ解るのは、自分は王の期待を裏切ったという、その事実。

 

ガゼル王「で、あるか。では、ベスターよ! お前には、王宮への立ち入りを禁止する。二度と、余の前に姿を見せるな…!だが最後に一言、お前に言葉を送ろう。大儀であった!!!」

 

ベスターは、王の言葉を聞くと立ち上がり、王へと深々とお辞儀をした。そして、その場を去る。自らの犯した、愚かしさの代償を支払う為に…。

 

 

 

 

 

 

ベスターの退出と同時に。近衛が駆け寄り、ベスターの共犯の代理人を捕らえる。その様子を視界に収め、

 

ガゼル王「暗部よ!あのスライムとあの女性の動向を監視せよ!絶対に気取られるな!絶対にだ!!!」

 

念を押してまで、王が命令を発する。寡黙な王が、念を押してまで発する命令!その重要さに、周囲の気が引き締まる。

 

暗部「この命に代えましても!」

 

暗部はそう言い残し、消えた。

 

王は思う。あの魔物スライムは何者だ?あの女性は何者だ?あれは、一種の化物だ。あんな魔物が解き放たれているのか…平和な時代が終わろうとしているのかもしれない…と。

 

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