ブルムンド王国では、ベルヤードが、フューズからの報告を聞いていた。
ベルヤード「魔物の街と………そこに住む豚頭帝を凌ぐスライムと、魔人という存在………。これは、本当なのか?………いや、本当なのは分かるが………。信じられぬな………。」
ベルヤードは、フューズにそう言いながら、椅子に座る。
ベルヤード「…………だが、信じるしかないな。我々はそのリムルという名のスライムと、サオリという名の魔人に、救われたのだと。」
フューズ「そうだな。彼らとの関係を、今後どの様にすべきなのか、そのスライムと白狐が善意の存在であると見做して接するか。脅威として排除を試みるか。」
ベルヤード「排除と簡単に言うが、それは、そもそも可能なのかね?」
ベルヤードの言葉に、フューズはそう答え、ベルヤードは質問する。フューズは、しばらくの沈黙の末、答える。
フューズ「…………正直に答えて良いのか?」
ベルヤード「…………答えを聞くまでもないな。」
ベルヤードのその言葉に、フューズはため息を吐きながら、立ち上がる。
フューズ「ハァ………。一度、会いに行ってみるか。俺がこの目で、リムルとサオリとやらを見極めてみるさ。」
そうして、フューズは、シズさんと旅をしたエレン、カバル、ギドの3人を呼ぶ。
フューズ「よし、出発するぞ!お前達が会ったというスライムと魔人に会いにな。」
「「「はぁ…………。」」」
フューズの言葉に、3人はため息を吐く。魔王ミリム・ナーヴァが、この街に住む事になった。朝食は、食パン、ジャム、ミネストローネ、牛乳(牛鹿の物)だった。その後、ミリムは朱菜の服の工房に行き、リムルさんはベスターの研究室へと向かった。俺はというと、ゲルド達の方へと向かっていた。
サオリ「やっほ〜!ゲルド!」
ゲルド「うん?おお、サオリ様!」
サオリ「建設の様子はどうだ?」
ゲルド「はい。建設は順調です。これが終わったら、武装国家ドワルゴンへの街道の工事に着手します。」
サオリ「ああ。うまくやれてるみたいだな。」
どうやら、上手くやれてるみたいで、安心したよ。俺は、ゲルド達に労いの言葉をかけつつ、差し入れを渡す。そして、俺はその場を後にする。すると、魔力探知に何か引っかかる。それは、四つの魔力が、この街に向かってきている事だ。
サオリ「……………どうやら、お客さんのようだな。」
俺はそう呟いて、テンペストへと向かう。到着すると、リグルドが対応しようとしていた。
サオリ「リグルド。俺が対応するよ。」
リグルド「え、サオリ様!?いつの間に!?」
???「サオリ?お前がこの街の主か?」
サオリ「厳密には、片割れだ。…………で、アンタら誰だよ?」
俺がそう聞くと、その来客のリーダー格が答えた。
フォビオ「俺は、魔王カリオン様の三銃士、黒豹牙フォビオだ。」
サオリ「サオリ・テンペスト。このジュラの大森林の盟主の片割れだ。」
フォビオ「サオリね…………。ここは良い街だな。魔王カリオン様が支配するには相応しい。そうは思わんか?」
サオリ「…………冗談を言いに来たのか?」ボワッ!
俺がそう言うと、フォビオは俺に向かって殴ってきた。だが…………。
フォビオ「なっ…………!?」
サオリ「少しは落ち着けよ。」
俺は、呪力で肉体強化をし、フォビオのパンチを受け止める。すると、後ろの方から、とんでもないオーラを感じた。そのオーラの発生源は、ミリムだった。それには、俺は冷や汗を流す。やばい、ミリムがキレてる!俺は、すぐにフォビオから離れる。
フォビオ「なっ!?魔王ミリム!?」
フォビオは、ミリムに気付いて、驚愕した。ミリムがすぐにフォビオの方に向かうのを見て、フォビオも動く。
フォビオ「くっ………!豹牙爆炎掌!」
ミリム「親友に何するのだ〜!」
ミリムのパンチで、炎の柱が上がる。その炎の柱は、爆発するが、周囲に被害は特になかった。すると、クロガミ、イブキの2人がやって来る。
アリス・イブキ「サオリ様!」
サオリ「おお、皆。」
蒼海「何か、とてつもない爆発音が聞こえましたが、大丈夫ですか!?」
サオリ「俺は大丈夫だ。ただなぁ。ハァッ。」
ミリム「おお!サオリ!」
イブキ達と話していると、ミリムが近づいて来る。フォビオの方を見ると、泡を噴いて気絶していた。
ミリム「あやつが舐めた真似をしておったから、ワタシが代わりにお仕置きしておいたのだ!」
ミリムはそう言うと、褒めて欲しいと言わんがばかりに、俺を見る。でもなぁ…………。俺の為とはいえ、魔王の1人であるカリオンって奴の部下に手を出してしまった。流石に、褒められる物ではないな。そう思い、ミリムに話しかける。
サオリ「なぁ。俺かリムルさんの許可無く暴れないって、約束しなかったか?」
ミリム「うぇ!?え~っと………。そ、そう!これは違うのだ!この町の者ではないからセーフ、セーフなのだ!」
サオリ「ごめん。アウト。」
ミリム「えええっ!?」
サオリ「…………まあ、でも。俺を思っての行動だったから、今回はお咎めなしという事にしておくよ。」
ミリム「わ、分かったのだ…………。」
まあ、昼飯抜きとか言ったら、確実にフォビオに八つ当たりをしかねない。すると、リムルさんと蒼影が到着する。
リムル「大丈夫………っていうか、どういう状況!?」
サオリ「色々とあってな。そこで倒れているのは、魔王カリオンの配下だそうだ。会議室に運ぶぞ。」
リムル「あ、ああ…………。向かう途中で説明をお願い。」
サオリ「ああ。」
俺たちは、フォビオを始めとする魔王カリオンからの従者を、会議室に案内する。ミリムが昼食を食べる中、俺たちは、フォビオ達と向かい合う。
サオリ「…………それで?」
リムル「何をしに来たんだ?」
フォビオ「フンッ!下等なスライムに、この俺が答えるとでも?」
「「「あ?」」」
フォビオがそう言うと、紅丸、紫苑、イブキ、シラカミ、クロガミの6人がフォビオを睨む。
リムル「下等と言うけど、貴方よりは、私達の方が強いよ。」
サオリ「ていうか、さっき、お前のパンチを受け止めたのを、忘れたのか?」
俺たちがそう言うと、フォビオは目を細めるが、気にせず会話をする。
リムル「私達は、魔王カリオンとやらを知らないし、貴方の態度次第で、カリオンは、私達と敵対する事になるんだよ。」
サオリ「アンタの一存で、このジュラの大森林全てを敵に回すつもりなのか?」
フォビオ「ハッ!偉そうに。…………ッ!?」
フォビオの言葉が途切れたのは、俺が少し抑えていたオーラと呪力を出したからだ。
サオリ「…………俺たちは、スライムに魔人さ。だけど、この森の3割を支配しているのは確かだ。」
リムル「サオリの言う通りだよ。そちらがその気なら、戦争するのもやむを得ないと思っている。なので、よく考えて返事をする事。」
フォビオ「…………チッ!謎の魔人達を配下へとスカウトする様に、カリオン様より命じられてやって来たんだ。」
なるほどな…………。どうやら、ミリムだけでなく、他の魔王達も、俺たちの戦いを見ていたという事だな。やっぱり、俺たちを自分たちの勢力に取り込もうとして、躍起になっているのか?すると、ミリムの方から、何かオーラが出たのを感じて、振り返ると、ミリムは違う方へと向く。
リムル「まっ、話は分かった。じゃあ、帰って良いよ。」
フォビオ「えっ?」
紅丸「リムル様………!?」
紫苑「宜しいのですか?」
アリス・イブキ「紫苑、落ち着け………。」
サオリ「殺す訳にはいかないしな。」
リムル「魔王カリオンに伝えて。私達と交渉したいなら、日時を改めて、連絡を寄越すようにと。」
リムルさんの伝言にどこか不満があるのか、フォビオは俺達を睨みながら立ち上がり、扉の前に立つと、ジュースを飲んでいるミリムを見た。
フォビオ「…………きっと後悔させてやる。」
そんな捨て台詞を吐きながら、フォビオ達は去っていく。あの様子じゃあ、伝言なんて無理だろう。すると、リムルさんがミリムに近寄る。
リムル「さて。魔王カリオンについて、話が聞きたい。」
ミリム「それは、リムル達にも教えられないぞ。お互い邪魔をしないと言う約束なのだ。」
どうやら、秘密があるっぽいな。その手のやり取りは、俺よりリムルさんの方が適任なので、任せておく。俺は、思念伝達で、リムルさんに話しかける。
サオリ《リムルさん。ミリムの交渉は、任せたぞ。》
リムル《うん。任せて。》
俺の言葉に頷いたリムルさんは、ミリムに近寄る。
リムル「それは、魔王カリオンとの約束だけ?それとも、他の魔王も関係してるのかなぁ?」
ミリム「あ、いや………それは………。」
リムル「大丈夫だって。カリオンって奴だって、部下を使って邪魔して来たんでしょ?」
ミリム「え…………。」
リムル「私達はマブダチなんだから、お互いに助け合うじゃん?…………だったら、私もミリム以外の魔王の事を知っておいた方が良いと思うんだよね。」
ミリム「うう…………。」
リムルさんの言葉に、ミリムは葛藤していた。ていうか、リムルさん。貴女の今の顔、凄く悪い顔になってるぞ。
リムル「ミリムがどんな約束をしたか知っておかないと、私が知らずに邪魔しちゃうかもしれないしさ。」
ミリム「確かに…………。でも、マブダチ…………。」
リムル「………そうだ!今度、私が武器を作ってあげるよ!やっぱり、マブダチとしては、ミリムが心配だしさ。」
ミリム「新しい武器?アハハハハ〜!そうだな〜!やはり、マブダチは一番大事なのだ!」
はい、落ちた。チョロすぎるだろ。少し、ミリムの事が心配になって来るな。ミリムが話したのは、クレイマン、カリオン、フレイ、ミリムの4人が、ゲルミュッドを使って、傀儡となる魔王の誕生を目論んだ事だった。
サオリ「なるほどな………。」
ミリム「単なる退屈凌ぎだったのだ。」
リムル「ミリムにとってはそうでも、それを邪魔した以上、私達が狙われるのは当然か。」
紅丸「…………これは、他の魔王達も絡んでくるでしょうね………。」
リグルド「なんという事を………。トレイニー様にも相談せねば…………。」
紫苑「大丈夫です!リムル様とサオリ様ならば、他の魔王など、恐れるに足りません!」
アリス・イブキ「そうですね。」
なるほどな…………。これは、他の魔王達の動向にも、気をつけないといけないな。ファルムス王国。それは、西側諸国の玄関口と呼ばれている、商業の大国だ。ファルムス王国は、金で雇った荒くれ者達を集めて、豚頭帝の調査団を派遣した。その集団のリーダーは、ヨウムという男だ。ヨウム達は進んでいると、何かに気づいて、動きを止める。すると、地響きが起こる。カジルというスキンヘッドの男性が、ヨウムに話しかける。
カジル「カシラ。」
ヨウム「シッ。」
ヨウムは、カジルにそう言って、剣を抜刀する。全員が、武器を構えながら、周辺を警戒していると。
ギド「ちょっ!ヤバいでやす!」
エレン「でも、でも………!」
カバル「おい、お前ら………って、うおっ!危ねぇ!」
フューズ「こんな出鱈目で、今までよく生き延びてきたな、貴様ら!」
ヨウムは、自身のスキルである、遠視を使って、フューズ達を見つける。
ヨウム「…………魔物と遭遇した人間が居るようだ。」
カジル「カシラ、どうしやす?」
ヨウム「あっ………。」
カジルがそう聞く中、フューズ達が飛び出して来て、ヨウム達の一団にしれっと混じる。
ヨウム「来るぞ。」
ヨウムの言葉通り、出てきた。それは、でかい蜘蛛だった。
ロンメル「ひっ!」
カジル「槍脚鎧蜘蛛!」
ヨウム「よ〜し、お前ら。陣形を組め。負傷者はすぐに下がらせて回復。命令だ。全員生き残れ!」
部下達「おう!」
ヨウムの指示で、部下達は、後衛の魔法使いを守るように配置する。ヨウムは、カジルとロンメルに話しかける。
ヨウム「カジル。指揮を取ってくれ。」
カジル「分かった。」
ヨウム「ロンメル。俺に強化魔法を。」
ロンメル「フッ!」
槍脚鎧蜘蛛が迫る中、ヨウムはそう指示をして、フューズ達に話しかける。
ヨウム「テメェら。俺たちを巻き込んだ落とし前、後できっちり付けてもらうからな。」
ヨウム達は、迫り来る槍脚鎧蜘蛛を見据えて、緊張していたが、ゴブタがカバルに声をかける。
ゴブタ「あれっ?カバルさんじゃないっすか?」
カバル「なっ………!?」
ゴブタ「お久しぶりっす。」
カバル「ゴブタ君!」
ヨウム「あっ?」
ゴブタ「毎回、魔物と戦ってるようっすけど、そんなに戦うのが好きなんすか?………でも、ここはオイラが。今日の晩御飯っす!」
ゴブタは、小太刀を持ちながら、槍脚鎧蜘蛛に向かっていく。そして、あっさり倒してしまう。それを見たヨウム達は。
ヨウム「嘘だろ…………。」
ゴブタ「こいつ、滅茶苦茶美味しいんすよ〜。」
ヨウム達にゴブタはそう言って、ヨウム達とフューズ達は、呆然とする。その後、槍脚鎧蜘蛛は、テンペストへと運ばれ、今日の晩御飯となるのだった。一方、フューズ達とヨウム達は、俺たちが対応する事にした。
リムル「私達がこの街というか、国というか………。ジュラ・テンペスト連邦国の代表をしている、リムル・テンペスト。」
サオリ「…………で、俺が、ジュラ・テンペスト連邦国の代表の片割れのサオリ・テンペストだ。」
フューズ「本当に、スライムと魔人が………!」
俺たちがそう名乗ると、フューズというギルドマスターが、驚く。カバルは、俺たちに話しかける。
カバル「ところで、リムルの旦那にサオリの旦那。以前には、見かけなかった方がおられるようですが………。」
リムル「ああ。紅丸に紫苑、蒼影。」
サオリ「朱菜にイブキ、クロガミにシラカミ。」
俺たちが、鬼人達を紹介していると、扉が開き、ミリムが入って来る。
リムル「それと、ミリムだ。」
フューズ「あっ………!」
フューズは、ミリムを驚いた表情で見ていた。おそらく、魔王の1人だと気づいたな。そんな中、シズさんとエレン達は、話していた。
エレン「シズさん!お久しぶり!」
シズ「エレン達も、久しぶり。」
エレン達が、再会を喜んでいる中、リムルはフューズに話しかける。
リムル「で、ブルムンド王国と、ファルムス王国から、それぞれ、ここの調査に来たと?」
フューズ「我々は………。」
ヨウム「…………っていうか、なんでスライムに魔人がそんなに偉そうにしてるんだよ。おかしいだろ?何なんだ、一体?何でお前らは納得してるんだ?」
まあ、そう思うのは無理はない。スライムは、この世界でも弱い部類の魔物だし、魔人なんて、珍しいだろうからな。すると、紫苑が声をかける。
紫苑「リムル様とサオリ様に無礼ですよ。」
ヨウム「うるさい、黙ってろ、オッパイ!」
サオリ「?」
ヨウム「ぐあっ………!?」
紫苑に対して、そんなセクハラ発言をした事で、剛力丸の納刀状態でぶっ叩かれる。
ロンメル「ヨウム〜!」
カジル「カシラ!」
リムル「おっ………おい。」
紫苑「あっ、つい………。」
サオリ「ついじゃないよ。」
アリス・イブキ「気持ちは分かるが、落ち着け。」
シズ「アハハハハ………………。」
まあ、セクハラ発言をされたら、怒るのも無理はないよな。そんな中、リムルさんがヨウムに回復薬をかける。
リムル「うちの紫苑がごめんね。ちょっと、我慢が足りない所があるの。許してやって欲しい。」
紫苑「ひどいです!これでも、忍耐力には定評があるのですよ!」
アリス・イブキ「いや、紫苑。もう少し、相手の煽りに関しては、落ち着いてくれ。」
紫苑とイブキがそう話す中、リムルさんはフューズ達とヨウム達に話しかける。
リムル「私達は、人間とも仲良くしたいと考えている。その内、貿易とかして、交流出来ればいいなと思ってるしさ。」
フューズ「貿易?」
サオリ「ああ。実は、ドワーフ王国とも、国交を開いているしな。」
フューズ「ドワルゴンと?」
リムル「この地を経由すれば、商人達の利便性も向上すると思うけど………。どうかな?」
フューズ「いや、待って下さい。ドワルゴンが、この魔物の国を承認したというのですか?」
まあ、フューズが驚くのも無理はない。すると、扉が開いて、ベスターが入って来る。
ベスター「その話、私が保証します。」
フューズ「ベスター大臣!」
ベスター「…………元、大臣です。」
フューズ「貴方ほどの人物が、どうしてここに………?」
そういや、ベスターって、大臣だったな。エレン達が首を傾げる中、ベスターはフューズに話しかける。
ベスター「お久しぶりです、フューズ殿。リムル様とサオリ様の仰っている事は、本当です。」
ベスターはそう言うと、俺たちに頭を下げる。頭を下げて、すぐに上げ、説明を続ける。
ベスター「ガゼル王とリムル様、サオリ様は、盟約を交わしておられます。」
フューズ「あっ………!」
ヨウム「ん?」
リムル「納得してくれたかな?」
フューズが驚き、ヨウムが首を傾げる中、リムルが声をかける。
ロンメル「うん。」
フューズ「は、はぁ………。そういう事でしたら、我々としても、協力はやぶさかではありません。ただし…………あなた方が本当に人間の味方なのかどうか…………しっかりと、確かめさせて貰う事にしますが、構いませんね?」
サオリ「ああ、構わない。滞在を許可する。俺たちが脅威でないと、分かって欲しいから。」
フューズ「ん…………。」
まあ、分かってもらうには、身近で見て貰う方が手っ取り早いしな。リムルさんは、フューズに話しかける。
リムル「ところで、フューズさんとやら。豚頭帝が倒されたという情報は、既に知れ渡っているの?」
フューズ「いや。この情報を知るのは、国王と、ごく一部の者たちのみですよ。」
サオリ「なるほどな………。」
なるほど、情報は規制されているのか。なら、もしかしたら………。そう思っていると、リムルさんがヨウムに話しかける。
リムル「なら………ヨウム君。俺たちと契約しない?」
ヨウム「はあ?一体何を言って………はっ!?」
ヨウムは、途中で、話すのを止めた。なぜなら、紫苑とイブキの2人が、ヨウムを睨んでいたからだ。
ヨウム「…………何を言っておられるんですか?」
サオリ「確か、ファルムス王国には、金で雇われたって言ってたな?」
リムル「だったら、雇い主が変わるだけの事だ。簡単に説明するとだな………。君たちに、豚頭帝を倒した英雄となって貰いたいのだよ。」
リムルさんがそう言うと、その場には静寂が包み込む。しばらくすると、ヨウム達が叫ぶ。
ヨウム達「はあっ!?」
サオリ「俺たちは、ヨウムに協力しただけで、実際には、ヨウムが豚頭帝を倒したという風に、噂を流すって事だろ?」
リムル「そういう事!………そうすれば、英雄を助けた信用出来る魔物という立ち位置を、確立出来るのではないかな〜って。」
サオリ「確かにな。謎の脅威的な魔物というよりも、そっちの方が親しみやすいしな。」
紅丸「なるほど…………。」
蒼影「流石です。」
サオリ「どうするのかは、ヨウム自身で決めてくれ。」
ヨウム「…………そうさせて貰う。」
そんな感じに、話は終わった。しばらくして、ヨウムの下に向かう。
サオリ「話はまとまったか?」
ヨウム「リムル………さん。サオリ………さん。これは、大した街だ。アンタ達が邪悪な存在じゃないってのは、アイツらを見て、よく分かった。それに、愛されている事もな。」
リムル「…………私の形をした物ばかりなのが、気になるけどね。」
そう言うヨウムの手には、リムルさんを模した食べ物を持っていた。まあ、リムルさん状の物を食べて、スライムを食べた気になる為だろうな。ヨウムは、語り続ける。
ヨウム「…………俺たちは、脛に傷を持つ身だ。ずっと、自由の身になりたかった。今回の任務を受けたのは、途中で自分たちを死んだ事にして、どこか、安全な国に向かうつもりだったからだ。」
サオリ「そうだったのか………。」
ヨウム「決めたぜ。俺は、アンタらを信用する。今日からは、リムルの旦那と、エースの旦那と呼ばせて貰う。何なりと、命じて欲しい。」
リムル「うん。宜しく頼むよ。」
こうして、ヨウム達は、白老の下、修行を行う事になった。その前に、皆に紹介する事にした。
リムル「…………と、言う訳で、今日から一緒に暮らすヨウム君御一行だ。」
サオリ「仲良くして欲しい。」
ヨウム「まあ………宜しく。」
その後、ヨウム達を歓迎する宴が行われたのだった。まあ、メインの料理が、槍脚鎧蜘蛛の鍋だというのには、ヨウムも辟易していたみたいだが。俺たちが、ヨウム達を歓迎する宴をしている頃、魔王クレイマンは。
クレイマン「早かったですね。気づかれませんでしたか?ティア。」
ティア「あたいだって、中庸道化連の一員なんだ。少しは信用してよね!」
クレイマン「アハハハハ………!貴方が無茶をしないか、私は心配なのです。」
クレイマンがそう言うと、涙の表情の仮面を付けた女性が窓から入ってくる。
ティア「もう!いつまでも子供扱いはやめてよね!」
クレイマン「分かりましたよ。………ミュウランから報告がありました。魔王ミリムは、余程あの魔人どもを気に入った様子。」
ティア「へぇ〜。」
クレイマン「これは、思った以上に面白い展開です。愉快ですよ、全く。」
ティア「それなら良いけど、実際のとこ、どうなの?魔王ミリムが興味を持つくらい凄い魔人なの?」
ティアがクレイマンの言葉に、そう質問すると、クレイマンは少し上を向きながら答える。
クレイマン「無視はできない………という程度でした。私の敵ではなかったですし。しかし、ラプラスがですね………。」
ティア「ラプラスが?」
クレイマン「不気味さ………とでも言うのか、何かを感じたと言うんですよ。」
ティア「ふ〜ん、そっか〜。あの小狡いラプラスが言ったたんなら、やっぱり、なんかあるんじゃない?少なくとも、魔王ミリムが興味を持った理由は、知るべきだと思うよ。」
クレイマン「確かに。もっと情報を集めて、検討しないといけませんね。」
クレイマンは、ティアの言葉にそう頷く。クレイマンは、俺とリムルさんの事を侮って居た。
ティア「うん!それが良いよ!で、調査結果だけど………!」
クレイマン「伺いましょう。」
ティア「フレイはね、ジュラの森に関わる気はないみたい。何かを警戒している様子だった。まるで、戦争準備でもしている感じ?」
クレイマン「…………その原因は分かりましたか?」
ティア「分かったよ!なんと、びっくり!あの暴風大妖渦が復活するって、慌ててたよ〜!」
ティアの暴風大妖渦という言葉に、クレイマンは目を見開く。
クレイマン「んっ………!暴風大妖渦………。」
そう呟いたクレイマンは、椅子から立ち上がる。
クレイマン「なるほど………。では、ティア。次の仕事を頼みたいのですが。」
ティア「ニヒヒ!そう来ると思ってた!フットマンの奴も呼んでるから、多少の荒事も大丈夫!」
クレイマン「流石ですね、ティア。………ですが、なるべくは暴力は無しでお願いします。まずは、封印の地を探し出し、暴風大妖渦を手懐ける事が出来るかどうか。それを探って下さい。」
ティア「任せてよ、クレイマン!」
クレイマン「場所は………。」
ティア「任せてって、言ったでしょ!それじゃあ、あたいは行くね!」
ティアは、クレイマンの言葉を遮り、クレイマンの前から姿を消す。それを見送ったクレイマンは。
クレイマン「暴風大妖渦………ですか。魔王に匹敵すると言われるその力。どれほどの物か、非常に楽しみですね。クククク………ハハハハハ…………!」
クレイマンの居城に、笑い声が響く。俺たちの国に、災厄が訪れようとしていた。道化師達の暗躍は、続く。