うーむ…。
この三日間で魔物達は大きく育ってしまった。驚きである。これはそう・・・、進化と言える。名前を付ける、それは魔物の進化を促す行為なのか?
そういえば、ヴェルドラが名前をやる云々言っていたが・・・確か、"名無し"や"ネームドモンスター"そうか! 魔物にとっては、名前を得る="ネームドモンスター"という意味。それは、魔物としての格を上げる事となり、結果、進化したのか!なるほど・・・、それで大喜びしてたのか。俺の魔素が半分吸い取られた理由も、これでハッキリした訳だ。
魔物の進化は凄まじい。育ったというより、最早、別の魔物と言っていいほどだ。ゴブリンの濁っていた目はキラキラと輝き、知性の光を放っているし、雌ゴブリンに至っては・・・なんと! それなりに女性っぽくなっていた。驚き過ぎて声も出ない。
リムル「え? ・・・え???」
とリムルさんが二度見した程である。猿に近い、子鬼のような魔物だったのに。雄のゴブリンは、"ホブ・ゴブリン"に。雌のゴブリンは、"ゴブリナ"に。それぞれ進化していた。リグルドに聞いた所、"世界の言葉"が聞こえたそうだ。これは進化した者全てが聞いたらしく、とても珍しい事なのだ!と、興奮して語ってくれた。しかし、非常に不味い。ボロ布で全身を被えていた雌ゴブリン達だったが、進化のせいか、出る所が出て色っぽいのだ。ってリムルさんが言っていた。
もはや雌ゴブ!と馬鹿に出来ない。雄はそれを見て、非常に嬉しそうである。自分達は腰布しか巻いていないというのに・・・。まずは衣食住、衣から何とかしないと。
それとは別の問題として、"ランガ"だ。リムルさんが回復したのが余程嬉しかったのか、まとわりついて離れない。モフモフ好きには堪らないかもしれないが、俺はどちらかといえば、狐派だ。
リムル「で、ランガ、俺はお前の名前しかつけてないハズだが、なんで牙狼達全員進化してるんだ?」
そう、俺はランガの名前を付けた時点で魔素切れを起こしたのだが・・・
ランガ「我が主よ!我等、牙狼族は"全にして個"なのです。故に、我が名は種族名となったのです!」
ふむふむ。共通の名として、種族全体が進化したのか。彼によると、前のボスは"全にして個"である事を信じきれていなかった、との事。もし信じていれば、あの戦いはもう少し別の形になっていたかもしれない。それに対し、ランガは同胞への完全支配を成し遂げたそうだ。それにより、牙狼族から嵐牙狼族へと、種族進化を成功させたとの事だった。まあ、要するに強くなった!と言いたいのだろう。とても褒めて欲しそうにしているので、
リムル「良かったな!」
とリムルさんが声をかけると、千切れんばかりに尻尾を振っていた。5mの化物のようなデカさの狼に尻尾を振られると、風圧で飛ばされそうになった。睨むと、しょんぼりしていたのが笑えた。
しかし問題は、こいつらを何処で飼うかという事だ。ペアになった狼とホブゴブは、一緒に寝泊りしているようだが・・・というか、家もなにも無くなったので、狼の温もりで布団替わりにしているようだ。着るものも問題だが、家も問題だ。さて、どうしたものか。
目の前に、山のように積まれた食物があった。衣食住、食の事情を確認した俺の質問に対する、答えである。俺が魔素を使い果たすと同時に、皆も進化が開始したらしい。進化は一日で完了し、その喜びも戦の後の宴も、一緒に行う事にした!と。
しかし、俺等の回復がまだだったので許可を貰えず、先に食物だけ集めていたそうだ。
リムルさんが魔素切れを起こしている最中、リムルさんの身体を拭くのを奪い合ってるのには気付いたが、進化や食材集めをしているのは認識出来なかった。
俺等の命令を待たず出来る事をしようという意思、これは評価出来る。進化した事により、知性が大幅に上昇しているようだ。肉体よりも精神のほうが、より大きな影響を受けているのかもしれない。進化する前のゴブリンだった時、木の実や食草を集めたり食べられる魔物や動物を狩りしたりして、暮らしていたようだ。
現在、嵐牙狼族と行動を行うようになったおかげで、行動範囲が格段に上昇した。驚きな事に、ペアとなった者同士でも"思念伝達"が出来るようになったらしい。騎馬よりも優秀な、狼を駆るゴブリン達。
もはや、単純な戦闘力は足し算では語れないかもしれない。今までは勝てなかった魔物でも、簡単に狩る事が出来るようになった模様。
この二日で、これまでにない程の食材を集める事が出来たそうだ。
しかし、だ。森の恵に頼るだけの生活は、何かあった時に困る。いずれは、農耕や稲作なんぞを仕込む事にしよう。食の安定供給は基本だしな。農耕に適した作物や、稲なんて品種があるのか調べる事から始めなければならないけれども…それは今後の課題だ!今日は何も考えずに、宴を楽しむ事にしよう!その日、進化を祝い、戦の終わりを祝い、俺等の回復を祝い、宴は夜遅くまで続いたのだった!
明くる日。全ての者を集めさせた。今後の課題は山積しているが、最も重要な事柄を伝える必要がある。それは、この村で生活するルール!
こういう事は、最初に決めておく必要がある。集団生活にはルールは必須。日本人なら当然の感覚である。
"ルールとは、守らせるものであり、守るものではない!"
などと戯けた事を言う大人もいたが(主に俺とか)、そんな事では駄目なのだ!基本の四つだけ考えた。この三つは、最低でも守らせたい。その他の細かいルールは、丸投げする予定だ。
「集まったかな? では、ルールを発表する! ルールは四つ。最低この四つは守って欲しい。」
そう声をかけ、三つのルールを発表した。
1.人間を襲わない。
2.仲間内で争わない。
3.他種族を見下さない。
4 .人間が攻撃したら反撃する
の四つである。色々考えすぎると、もっと増えていくが、最初から守れるとも思えない。俺にとって、大事と思える事を挙げてみた。さて、反応はどうだろうか?
リグル「宜しいでしょうか! 何故、人間を襲ってはならないのでしょうか?」
リグルが質問して来た。リグルドが、鬼の形相で息子を睨みつける。俺の意思に反する行動に映ったのか?もっと気軽に接してくれてもいいのだが。
リムル「簡単な理由だ。俺が人間が好きだから! 以上。」
リグル「なるほど! 理解しました!」
え?理解・・・しちゃったの?いやいや、そんな簡単に?だが、皆の顔を見回しても、不満を持つ者がいない感じ。もっと反論が来るかと思ったのに、肩透かしもいいところだ。
サオリ「ええとな、人間は集団で生活してる。手を出すと、大きな反動が来る場合もある。本気で向かってこられると、太刀打ち出来ないだろう。そういう訳で、此方からは手出し禁止!それに、仲良くする方が得だしな…。」
仕方ないので、用意しておいた建前の言い訳を述べておいた。言うまでもなく、人間が好き! というのが本音だ。何せ、元人間だし!
この俺等の説明に、ランガは深く頷いている。何やら思う所があった様子。彼としても、人間に手を出すのは不味い理由があるのだろう。ホブゴブ達はより深く納得した!という表情だった。
リムル「他に何かあるか?」
ゴブタ「他種族を見下さない・・・というのは?」
リムル「いや、君達進化して強くなったでしょ?調子に乗って、弱い種族に偉そうにするなよ!って意味だよ。ちょっと強くなったからと言って、偉くなったと勘違い!いつか相手が強くなって、仕返しされてもつまらないでしょ?」
皆熱心に聞き入ってくれた。大丈夫そうだ。
所詮忠告したとしても、言う事を聞かない者も出るだろうけど。それでもトラブルの原因は、なるべく少なくなる方がいい。
サオリ「そんな所だ。なるべく守るようにしてくれ!」
そう言って、俺等はこの村での新しいルールを決めたのである。
しかし、このルールが、後に一つの悲劇を生み出す事になるのだ。
当然、この時の俺に気付く術はない。所詮、神ならざる者に全てを見通す力など、無いのだから…。
皆頷き、了承の意を示した。こうして、新たな共同生活の幕が開けたのだ。
さて、ルールの策定の後は役割分担である。村の周囲の警戒を行う者。食料を調達に行くチーム。村での生産用の素材を集めに行くチーム。家や、道具類等を整備する者達。
村の警戒は、"思念伝達"の可能な嵐牙狼族の余りの者に行わせる。ペアの残りは7匹だったが、ランガが俺にべったりなので残り6匹で警戒を行わせる。細かい割り振りは、元村長であるリグルドに任せる事にした。
サオリ「リグルド!君を、"ゴブリン・ロード(君主)"に任命する! 村を上手く治めるように!」
ぶっちゃけ、丸投げである。それこそ、思いっきり全力で放り投げた感じだ。だが、考えて見て欲しい。
この村に縛られて人間の町に行く事が出来なくなっても困る訳である。ここは多少強引にも、上手く引き受けさせねばならない。そう思っていたのだが、
リグルド「はは!!!このリグルド、この身命を賭して、その任、引き受けさせて戴きます!!!」
感涙に咽びながら、あっさり引き受けてくれた。うん。俺等は基本、口だけ番長でいいや。"君臨すれども、統治せず"とてもいい言葉だと思う。たまに口だけだそう。しっかし、このリグルド。よぼよぼでしわくちゃの死にかけたゴブリンだったのだが…今では筋骨隆々の逞しい、壮年のホブゴブリンである。下手したら、息子のリグルより強いのではなかろうか?一体全体どういうことやら…まさに、魔物は摩訶不思議といったところか。
リムル「うむ。任せた!で、家を建てる様子を見ていたが、下手だね。」
ぶっちゃけ、家と呼べた代物ではなかった。
リグルド「お恥ずかしい話です…。今までは、そこまで大きな建物など必要で無かったもので…」
リムル「ふむ。まあ、大きくなったしな。あとは、衣服関係だが…ちょっと露出が酷すぎる。調達出来ないの?」
リグルド「あ!今まで何度か取引をした事のある者達が居ります。その者達からならば、衣服の調達なども行えるやもしれませぬ!それに、器用な者達なので、家の作り方も存じておるやもしれませぬ!」
ふむ。指導する程、技術を持っている訳ではない。そこへ来て、指導できるかも知れない取引相手………行ってみるのが良さそうだ。
サオリ「なるほど。行ってみるのもいいかも知れないな。で、何で取引していたのだ?お金か?」
リグルド「いえ、冒険者の身包みを剥いだ金銭等も多少はありますが、放置してあります。金よりも、物々交換や雑用で物資を工面して貰っておりました。我らの道具は、その者達に用意して貰ったものなのです。」
リムル「ほう。で、何ていう者達だ?」
リグルド「ドワーフ族です!」
ドワーフ!鍛治の達人というイメージの、あの有名な種族か!行くしかない!そもそも、服に気を取られていて後回しにしていたが、リグルド達の武具も大概ひどい。鎧なんて、ボロ布と大差無しだったが、今はサイズが合わないのか誰も付けていない。そこらの改善も出来そうだ!だが…冒険者からの略奪品で使えそうなのは残っていないというし、お金も少ししかなさそうだ。何で取引したらいいだろう…。今考えても仕方ないか。
リムル「行ってみる。リグルド、準備は任せても良い?」
リグルド「!!!お任せ下さい!今日の昼には、全ての用意を整えましょう!!!」
おお張り切りのリグルド。ここは任せよう。金もあるだけ用意してくれるだろう。この世界の通貨か…紙幣だったら大笑いだな。人間の町に行くなら、金銭価値も調べないといけないな。まあ、それもドワーフに会ってみてからだ。この所、バタバタしていたし、見物がてらのんびりドワーフに会いに行くとするか。いつかは人間の町に行く事になる。亜人種ではあるが、ドワーフの住む所は結構な大きさの街であるらしい。
何でも王様もいるらしいのだが、流石にゴブリンでは会う事も出来なかったそうだ。もっとも、街に入れただけでも大したものだ。ゴブリンに対する差別とか、大丈夫だろうか?
俺等、一応魔物なのだが、驚かれたりしないだろうか?色々と不安はあるものの、ドワーフに会える期待の方が大きい。俺等は、久しぶりにワクワクとした気持ちになっていた。
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異空間〜
紫髪の女性「……!可愛い子発見!それに僕より強いようだね。それにめっちゃタイプの顔!」
白髪の女性「何を見ているのかしら?紫?」
金髪の女性「 白…どうせくだらない事を見てるでしょ。」
紫髪の女性「黙ってくれない? 黄。」
紫髪の女性と金髪の女性が喧嘩している。
白髪の女性「………可愛いわねこの子。」
最後に出てきた人物はスキル確認時に名前があらわになります!
ちなみにヒントは「悪魔」「髪色」「三人娘」です!