武装国家ドワルゴン。
ドワーフ達の王国である。初代ドワーフの英雄王グラン・ドワルゴが国を興してから1,000年。歴史と文化、そしてその技術を守り、発展させてきた。現在の王ガゼル・ドワルゴは、初代より数えて三代目であるが、若き日の祖父に似た覇気を纏っている。偉大な英雄であり、この地を公平に統治する賢王としての名声が名高い。そんな賢王の治める地。自由貿易都市にして、異種族間の交易の中心地。ゆえに、絶対中立都市としての顔を持つ。この都市内部での武力行為を、賢王が許す事はない。東の帝国でさえ、武装国家ドワルゴンに表立って事を構える事を避けている!というのは、冒険者の間では有名な話だ。一度、ドワーフと事を構えると、二度目はない!そう言わしめるほど過酷に、相手を蹂躙し尽くす。武装国家の名は、伊達ではないのだ!重武装の歩兵の壁に守られた、高火力の魔法兵団。戦う相手は、歩兵の壁を突き崩す事も出来ずに魔法の火力による攻撃で全滅する。この1,000年、不敗を誇るドワーフ軍の実力は有名であった。その実力を裏付けるもの・・・
それこそが、高い技術力で制作される装備品にある。最先端の技術で作られた武具は、人の造りし武具を圧倒的に上回る。ゆえに!
人は、ドワーフ族とは、争いではなく友誼を結ぶ事を選んだ。だからこそ、その支配下において魔物と遭遇したとしても、そこで争いを起こす愚を犯す者は少ないのだ。人と魔物が交わる都。それは、この地上に於ける、異質な地の一つなのだ。最も、武力の為の道具が溢れる都でありながら、平和を享受する国。武器商人の本拠地が、最も争いから遠いというのは、ある意味・・・皮肉な事であるのかも知れない。
門の前に、行列が出来ていた。天然の大洞窟を塞ぐように設えられた、大門。この大門が開くのは、軍の出入りの際のみであり、月に一度の頻度であるそうだ。残念ながら、今日は閉まっていた。その下に、小さな出入り専門の扉が設置されている。行列が出来ているのは、左側の通路である。どうやら、右側は貴族等のお偉い方々御用達の通路なのだろう。左側の通路に並び、周囲を観察しながら、俺はそう考えた。その左側にしたところで、フリーパスで出入りしている者もいれば、別室でチェックを受ける者など、様々である。武装国家の名に恥じぬ、厳重な警備体勢である。中に入ると比較的に自由に活動出来るらしいけど・・・。
しかし、すごい行列だ。旅よりここで待つ方が時間取られたりして・・・!俺がそんな事を考えていた時、
冒険者「おいおい!魔物がこんなところにいるぜ!まだ中じゃないし、ここなら殺してもいいんじゃね?」
冒険「なあ、何並んでるんだよ!生意気だな、お前ら。殺されたくなければ、その場所譲れ!あと、荷物全部置いていけ。それで今回は見逃してやる!!!」
などと、意味不明な供述をしており・・・じゃなく、こちらへ向けられた害意ある声が聞こえた。今ここには、ゴブタと俺、リムルさんの二人しかいない。何しろ、腰布だけの集団を引き連れていくと、悪目立ちする。ここは、案内役のゴブタと俺、リムルさんの二人で行く!と、俺の発言で決定したのだ。リグルも行きたそうだったのだが、断った。彼等は、森の入口で野宿し、俺達の帰りを待っている。という訳で、二人だったのだが、いいカモに見えてしまったのだろうか?列に並ぶのを嫌った二人組の冒険者に、目を付けられてしまったようだ。
サオリ「おいおい、ゴブタ君、何か聞こえないかね?」
ゴブタ「はい、聞こえるっすね・・・。」
リムル「前来た時も、絡まれたりしたの?」
ゴブタ「当然っす!ここでボコボコにされて、コボルトの商人さん達に拾われたっす!あそこで、拾われなかったら、俺、死んでたかもしれないっすね〜」
サオリ「・・・絡まれたんだ、じゃあ、しょうがないか?」
ゴブタ「弱い魔物の宿命みたいなもんなんすよ・・・。」
絡まれたらしい。しかも、当然なのだと…。先に言っておいて欲しかった。何やら、悟ったような目をして、項垂れていた。やっと、緊張せずに俺と話せるようになったのに、今回の失敗で元に戻ったりしないだろうか?少し心配だ。
冒険者「おい!雑魚い魔物のくせに、こっち無視してんなよ!」
冒険者「ってゆ〜か、喋るスライムって、レアじゃね?見世物として売れるんじゃね?」
などと、ウザイ会話を続ける二人組。仏のように慈悲深いと言われた事もあったような無いような俺だが、これには腹がたってきた。
サオリ「ゴブタ君…。前に、俺が言ったルール覚えているかね?」
ゴブタ「はい! 勿論っす!」
リムル「そうか。では、少し、目を瞑り、耳をふさいでおくんだ!決してこっちを見てはいけない!」
ゴブタ「?なんか良くわかんないっすが、了解です!」
さて、と。ルール決めた俺が、真っ先にルール違反…そういう風に思われるのも、教育上宜しくないだろう。邪魔なゴブタ君には目を瞑って貰った事だし…ゴミ掃除をしますか!その時、右側の男の視線が動いた。
その先を確認する…、三人組がニヤニヤと笑いながら様子を覗っていた。目の前の二人組みは、剣士と軽装備の男一人。恐らく、盗賊系の職業。三人組は、魔法使いか僧侶っぽいローブ姿が二人と、大柄な戦士。予想する。こいつらは一つのPTで、二人が俺たちを追い出し、順番を確保。そして、三人が追い出された俺たちを影で始末し、何食わぬ顔で二人に合流する。恐らくは、そういうシナリオだろう。そうやって、弱い魔物がいたら殺して荷物を奪ったりしていたのだろう。よく考え付くものである。しかし…今回は、相手が悪かったな!
サオリ「おいおい! 順番は守れよ!俺は寛大だから、今なら許してやる。さっさと後ろに並びな!」
挑発開始だ。二人組みは、一瞬きょとん!となってから、一気に顔を真っ赤にさせた。沸点の低い奴らだ。
冒険者「クソ雑魚の魔物と女のくせしやがって…舐めてんじゃねーぞ!」
冒険者「おいおい、お前、死んだぞ!身包み置いていくなら殺さずにいてやろうと思っていたんだがな!」
などと、三下っぽいセリフを言い出した。
サオリ「女?それは俺の事か?」
冒険者「てめーに決まってるだろうが! 女なんざ、雑魚だろうよ!」
冒険者「さっさと、こっちに来い。しゃべれるようだし、殺さずに奴隷にしてやるよ!」
奴隷?そんなのもいるのか?それは一先ず置いておく。周囲の商人や冒険者風の者達も、この騒ぎに気付き始めている。まずは注目を集めないと。正当防衛なんて概念が、あるかは知らないけど…後に、少しでも証言が出れば御の字だ。しかし、誰か助けてやろう! という優しい人間はいないのか?
サオリ「雑魚雑魚と、えらく舐めた口を叩くではないか!」
冒険者「てめーふざけやがって…!お前みたいな小物に馬鹿にされるなんて、許せんわ!やっぱ殺す!」
そして、武器を構える二人組み。あ!とうとう、こいつら抜きやがった。あーあ。最初に会話する人間がこれとは…、ついてない。魔物の方が友好的だなんてな。
周囲の者達は、俺達を遠巻きにするように離れ始めた。門番もこの騒ぎに気付いたのか、慌しく動きはじめている。さて、と。俺はゆっくりと前にでる。そして、
サオリ「ククク。俺が女、だと? 女?…いつから俺が女だ!と、勘違いしていた?」
思わせぶりに言ってやる。
どー見ても女なのだ。そんなもん最初からスライムと思われていたに決まってる。これは演出なのだ!…多分。
冒険者「なんだと?はったりも大概にしろよ!」
冒険者「ふん!女じゃないなら、さっさと正体をみせろよ! 死んだ後では、いい訳も出来んぞ!」
変身するの、待ってくれるようだ。計画通り!生身のまま戦っても、勝てると思う。だが! 手加減しにくいのでスパッ!っと真っ二つにしてしまいそうだった。丁度気絶するように、威力を調節するのは難しいのだ。
サオリ「いいだろう。見せてやろう、この俺の真の姿を!!!」
俺は腰にDESIRE DRIVERを当てると自動でベルトが出て巻きつける。
DESIRE DRIVER!
と音声が鳴り懐からマグナムレイズバックル、ブーストレイズバックルを取り出し装着する。
SET! SET!
俺は、冒険者に向けて指をキツネの影絵を作り、中指・親指でフィンガースナップをし、操作をする。
サオリ「……変身!」
DUAL ON
GET READY FOR BOOST&MAGNUM
READY FIGHT!!
上半身は白、下半身は赤の装甲で構成されている。首にはマフラー型のパーソナルアクセサリー「ギーツテール」、更に足にもバイクのマフラーが装着されており、脚部のマフラーは火を噴き出してキック力を高めることができる。
冒険者「は!見た目だけ厳つくしても、テメーが女なのは変わらないんだよ!」
冒険者「おいおい、それで俺らがビビッて逃げる!とでも思ったか!」
…全然気付いてない!!!おいおい、見たら判るレベルでヤバそうだろうよ!隠している仲間、三人がいる事に安心しているのかもしれないけど…。
使える技能が増えている。『創世の力(中)』か。創世の力(中)は、ギーツixのスキルだな。
サオリ「やれやれ…、もういいや。面倒くさいから、かかって来い!」
先制攻撃を譲った。俺の言葉に、
冒険者「へっ、死にやがれ!」
冒険者「うぉぉぉ!!! 風破斬!!!!!」
軽戦士がダガーを投擲して来た。そして、剣士がスキル攻撃だろうか?剣を緑に発光させて、俺に切り込んで来る。
カララーーーン!
ポキィーーーン!!!
三本のダガーを同時投擲は見事だが、マグナムフォームの装甲を貫く程の威力はない。剣士の方は、可哀相に…自慢の剣がポッキリ折れてしまっていた。
サオリ「今、何かしたのか?」
俺は、よく悪役がやるように、相手を思いっきり小馬鹿にしつつ尋ねた。というか、本当に何かしたのか?と言うほど、ダメージを受けていない。あのスキルは、見掛け倒しなのか?
冒険者「ば、バカな!なんて硬い鎧なんだ…」
冒険者「ありえん…こんな、こんな事、有り得ない!!!俺の剣は白銀製だぞ!魔物への威力増大効果があるんだぞ!!!」
…いや、そりゃ、銀製は脆いだろ?何言ってるんだ…コイツ。
冒険者「おい!お前らも手伝え!!!」
なりふり構わなくなったのか、剣士が仲間を呼んだ。やはり、あの三人は仲間だったか。
冒険者「ヘッ! お前はもう終わりだ!」
冒険者「やれやれ…、まさか、俺達に出番が来る、とはな!」
冒険者「見たことのない変身魔法?興味あるな。死んだら解剖するとしよう!」
冒険者「さっきからソイツ、動いてない。動くと魔法が解けるんだろ。どうだ?図星か!?」
などと、勝手な事を喚いている。そして五人は、俺を中心に散開し、同時に攻撃を仕掛けて来た。
軽戦士は、ショートソードによる切り込みを。剣士は、魔法を唱え、カマイタチによる斬撃を。(何気に優秀なヤツだ。)重戦士は、「重破斬!!!」と叫びながら、グレートアックスによる一撃を。魔法使いは、「火炎球!」と、魔法による攻撃。僧侶は、俺からの攻撃にそなえ、魔法の防御を構築している。PTとしては、バランスのいい構成なのだろう。彼らにとって残念な事に、その全ての攻撃が俺に効かなかったというだけで…。チラリッ、と彼らを見た。驚き過ぎて、声も出ない様子だ。
MAGNUM SHOOTER 40X
俺は、『ハンドガンモード』に変えた。
HANDGUN
そして、レバー(打鉄)を引いてエネルギーをチャージし、トリガーを引くことにより発動させる。
BULLET CHARGE
俺は、わざと攻撃を外したがこれは大失敗だった…見物していた者達まで、気絶したり色々漏らしたり…要するに、大惨事になっていたのだ。やっべ…、どうしよう?俺は頭を抱えるハメになる。
え?五人組?
攻撃を至近距離で喰らった、彼ら。そりゃあ、もう…。皆さんの想像通りでしょう。俺の『魔力感知』に、こちらに向かって走って来る、ドワーフ警備隊の姿が感知出来た。
一言。色々な物を垂れ流しにしている彼らを眺め、あれの後始末は嫌だろうな〜と、人事のように現実逃避を開始した。