CODE EATER:Cross Blood~改稿版~   作:Sillver

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探索3 死の感触

 この間、別の接触禁忌種とやりあって疲れたから、簡単なミッションを受けたのに。ピターの乱入を受けるとは少々運がなかった。とはいえ、だ。疲れていようがなんだろうが、私は引くわけには行かない理由があった。

 

「まあ、それでも。私が突破されるとまだ避難が済んでない民間人に被害が出る。それだけは、ねっ!!」

 

 飛びかかりを回避して、捕食。バーストして上がった身体能力を活かして斬りつける。プロトタイプとはいえ、フェンリルがその科学力を結集させて作ったプロトルシアは、確かな手応えを寄越す。

 

「人類最後の希望。そう称されるゴッドイーターがここで引くわけにはいかないの!!」

 

 私は猛然とピターに斬りかかる。何度も斬って喰いかかられを繰り返し、私が全力で戦闘を行える時間は残り15分ほどになっていた。回復錠・改も服用し、残りは1つ。

 何度もバーストが切れかけ、そのたびに慌てて捕食をする。ピターも、私が捕食をすると簡単に喰えなくなると分かりだしたのか、そういった行動をしようとすると明らかに逃げようとする。

 

「しょうがない。こういう補助アイテムって極力使いたくなかったんだけどなぁ!!」

 

 ポーチから取り出したスタングレネードのピンを口で引き抜き、その反動を活かして思いっきりピターに投げつける。腕で目を覆った瞬間、激しい光と音が私とピターを襲う。耳はどうしようもないけれど、視界は腕で保護した甲斐があって良好。ピターは未だに行動不能状態だ。その隙をついて、私は捕食をする。

 

「神機開放!!」

 

 何度目かのバーストモード。オラクルが活性化されて、ちょっとした全能感がやってくる。けれど、それに酔っている暇はない。ステップ2回分の距離をあけて、伸ばしたプロトルシアで比較的柔らかい前足を切り裂く。諦めずに攻撃を続けたからだろう、待ち望んだ現象が起こる。

 

「ディアウス・ピターに結合崩壊発生!!チャンスです!!」

「いよぉし!!」

「Gyaoooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!」

 

 喜ぶ私たちに、とうとうガチギレしたらしいディアウス・ピター。これまで見せたことのない伸びのような動作をしたかと思うと、奴の背中が盛り上がる。嫌な予感がして思いっきり距離を取る。結果的に、この判断が私を救った。

 そこそこ開けたはずの彼我の距離は詰められ、目の前を悪魔の翼と血塗られた剣にも似た黒と赤が通り過ぎる。ジャンプやステップで必死に回避していくうちに悪魔の翼だと思ったものはそんな優しいものではないと知る。

 

「いやいや、そんなのアリ!?」

「そんな、ここに来て……!!」

 

 私を睥睨するように、ピターがゆったり動く。それに合わせて、背中から生えた禍々しい刃でできた翼がその見た目に反して実に優雅に揺れている。先ほど、私の目の前を通り過ぎたのはこの刃翼だったのだ。アラガミの進化は早いと聞くが、まさかこの土壇場で進化したのだろうか。そんな考察を思わずしそうになる。

 

「Gurururuurur……」

 

 ディアウス・ピターは低くうなっている。恐らくこちらを誘い、宣言しているのだ。この姿にまで追いつめられたからには、私を全力を持って殺すと。

 そこからの戦闘は、まさに苛烈というしかないほどだった。それまでの戦闘スピードがおままごとに思えるほど高速化し、お互いに致命的なダメージは避けつつ斬りかかり、喰らいつこうとする。

 

「うわぁっ!?怖っ、怖いー!!殺意高すぎないですかね!?」

 

 口では、茶化したように言うが、内心は怖い。動作だけならば、猫パンチにも似たものだが、アラガミの膂力と素早さで繰り出されるそれは、そんな微笑ましいものでは無い。当たれば、それは必殺のものとなって私の命を軽く刈り取るだろう。

 何度も攻撃を防いで弾いた盾、捕食しては得ていたアラガミバレットを打ち出す銃形態は、今回のことでだいぶ派手に壊れてしまった。これは、整備班の人にどやされる。

 

「キミも、だいぶボロッボロになったねぇ。そろそろ倒れてくれないと、おねーさん本当に死んじゃいそう」

 

 ディアウス・ピターか神機へか。あるいは己か。どちらとも取れる軽口を叩きながら、回避し続ける。刃翼が目にも止まらぬ早さで振るわれ、雷撃が襲いかかってくる。何度もバーストが切れ、その度に捕食しては相手へダメージを与えていく。

 互いに息が切れて、にらみ合いになる。

 

「はあ、本当に妙な奴にはモテるんだから」

 

 ぼやきながら、最後の回復錠・改を口にする。致命的ダメージを喰らってはいないが、蓄積していた怪我が治る。怪我が癒えるにつれて、痛みは残っているものの、動きやすくなっていく。

 

「アルファ1、もう、もう……!!」

「撤退しろって?悪いけど、そりゃ聞けない相談だなぁ」

「でも、このままでは貴方が!!」

「このまま私が退いたら、甚大な被害になる。手負いの獣ほど怖いものはないんだよ」

「アルファ1、私は貴方に命じます!!すぐにて――」

 

 見ていられなくなったらしいフウラさんの言葉を最後まで聞かずに、インカムを投げ捨てる。彼女の補助はありがたいが、今のこの状況で撤退はあり得ない。自分でも言ったが、手負いの獣ほど厄介で危険なモノはない。

 どんなに疲れていようが、回復アイテムがなくなろうが、手足がまだ残っている。神機だって、銃形態が使い物にならなくなっただけで近接形態は依然として残っている。流石は、フェンリルが倫理その他を無視してでも作り上げた人類最後の希望。

 私を、神機を持っているだけでそんな大層な存在にしてくれる。幼いころに絵本で見た『英雄』、『ヒーロー』、『勇者』。どんな苦境でも、彼ら彼女らは決して諦めなかった。たとえ、物語だけの存在なのだとしても。今、この危機的な状況で臆病風に吹かれる私を叱咤して戦う力を与えてくれる。幼き日に出会った彼ら彼女らの軌跡が私に諦めない心を教えてくれる。

 大切な人の笑顔を守りたい。それだけで戦う彼ら彼女らと、ゴッドイーターにどんな差があるというのだろう?

 

「勇者とは、何があってもあきらめない者のこと!!私は死んだってお前を居住区に入れたりなんかしない!!」

 

 二段ジャンプからディアウス・ピターの背中に刃先を抉る様に突き入れる。これまでのやり取りで、お互いにボロボロだ。通常では攻撃がほとんど通らない背中も、ようやく刃を通した。この一撃で、ディアウス・ピターのコアが露出した。あとは神機でコアを捕食なり、砕くなりすれば、この戦闘も終わる。

 一般市民の避難も終わりきっていない。踏ん張らねばならなかった。最早、意地だ。コアを捕食されまいと狂ったように暴れるディアウス・ピターとの数え切れぬ攻防の末、奴が体勢を崩した。ように見えた。

 

「これでトド__」

 

 一度地面に着地し、再度飛び上がってプロトルシアが相手のコアへ届くその一瞬。滞空中の私はディアウス・ピターの刃翼で貫かれていた。

 

「かはっ……!」

 

 引き抜かれようとする刃翼を抜かれまいと、咄嗟に左手で掴む。

 

「あ、ああああああああ!!!!」

 

 舞い散る血飛沫。酷く生温いその感触が嫌に鮮明だった。投げ捨てたはずのインカムから、悲鳴が聞こえた気がした。

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