転生ラージャンぶらり旅   作:黒木箱 末宝

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 はじめましてorお久しぶりです。
 前作の最終話にて行ったアンケートでブッチギリの1位の作品。【転生ラージャンぶらり旅】を書いてみました。


第〇章【幼少期編】
【クラフト】石のナイフ


 俺は子供の頃からサバイバル技術に興味があった。

 

 小学生の頃に偶然見たサバイバル漫画──それが切っ掛けだった。目に映るサバイバル技術は何もかもが新鮮でワクワクしたんだ。

 そして当時の俺に取って、そんな未知の技術や知識を駆使し、被災した孤独の身で必死に生き残ろうとする主人公には感銘を受けた。

 途中までしか読めてなかったが、それでも強く影響は残っていたようで、その後も俺は遭難した子供が無人島で生き残るゲームをやったりした程だ。

 

 そして中学生になった俺は、いつ何が起きても生き残れる様に備え、遊び交じりで様々なことを試した。

 

 解けにくい紐の結び方から始まり、草を編んで紐を作ったり、石を砕いて石器を作って使ってみたりした。

 そこに小学校レベルの化学の実験や、科学館への遠足でより楽しさを覚えた俺は、夏休みの宿題で弓切り式の火起こし器を作ったりした。

 

 中学生の頃は動画やSNSで見た使えそうな情報を集め、できそうなものを放課後や休日に試して行く日々を送った。

 そうした遊びはやがて趣味に変わり、同じ趣味の友達が出来、そいつらの勧めでモンスターハンターを始めとしたゲームや、釣りやキャンプのアウトドアな遊びを楽しむ様になって行った。

 

 そうしてアニメやゲームからもサバイバルに使えそうな技術や発想を吸収し、楽しんで過ごした三十年と少しのある日の事。

 俺は友達の持つ山でキャンプを楽しんでいた所で熊に遭遇。襲われてしまい、死んだ。

 

 熊は落ち着きが無く、唸り声を上げ続けていた。

 その大きな身体には爪痕の様な傷があった。おそらく縄張り争いに負けて逃げてきたのだろう。

 そうして逃げた先で俺と鉢合わせてしまい、興奮や手負い故の緊張感から襲い掛かってきたようだ。

 顔面に迫る熊の手を見て、俺はその攻撃を受けた存在は()()()()と比喩されるものになる事を思い出した。

 

(大きな手に鋭い爪、それがこの速度で──当然か)

 

 そうして側頭部に強烈な衝撃を食らった俺は、気が付くと、水牛の様な角の生えたゴリラの様な生き物──ラージャンに抱かれていた。

 

 

 

 ■

 

 

 

 おそらく俺の母親であろう、少し穏やかなラージャンにしがみ付き、母乳を飲んで数年の日々過ごした。

 そうして赤子の状態で両親を観察して、幾つかラージャンについて分かったことがある。

 先ず、ラージャンは種としての強さと縄張り意識の強さから、群れを作らず、子も少ない。

 その強大な存在感は、周囲の生き物を辺りから一帯遠ざけてしまう。

 父が縄張りの証として地面に叩き付けた拳の跡。それが出来てから、周囲にあった生き物の気配や小動物の鳴き声が減り、最後には静かな地帯が出来上がる。

 その所為で餌に困り、移動が始まる。その繰り返しだ。

 

(目撃情報が少ない訳だ。それに、こうも移動を繰り返すなら、子供も多く作れないだろう)

 そんな俺の予想に反し、母が弟を産んだ。

 後に困った様子で弟の世話をする母を見て、俺は自分が手の掛からない赤子であり、それ故に母が子育てに対して誤認を生じさせたと分かった。

 まあ、弟の遊び相手は俺がするから、どっちかを捨てるなんて事はおきないだろう……多分。

 

 

 

 そうして大きくなって一人で歩く事を許され始めた俺は、慣れてきたナックルウォークで水溜まりへと歩き、覗き込んだ。

 

(突き出た口に、長い下顎犬歯。側頭部、耳の斜め上に生えた横向きの角……やっぱりラージャンだ)

 水面に映るラージャンの赤子は牙を撫で、角を触った。その触感をしっかりと認識できるので、俺がこのラージャンに転生したのは間違い無いようだった。

 

(ラージャンか~……)

 ラージャン。モンスターハンターと言うアクションゲームに登場する、金獅子と呼ばれる大型のモンスター。

 漆黒の体毛に側頭部から生えた巨大な角、怪力を誇る剛腕の持ち主。金獅子と呼ばれる牙獣種。その子供が今の俺だ。

 

(……まあ、何とかなるか)

 下顎をポリポリと掻き、俺は楽観的に事を済ませた。

 乳飲み子の頃から色々と考えて来たが、やはりいくら考えたところで悩みや問題は解決しない。

 そう実感した俺は、目的であるこの狭い範囲での探検を始めた。

 

(母は……ちゃんと見てるな。なら離れ過ぎないようにしよう。また吠えられても困る)

 探検と言うのに狭い範囲でしか動けないのには訳がある。それは俺がまだ赤子だからだ。

 昔すぐに歩ける様になった俺は、好奇心の赴くままに周囲をうろちょろした事があった。

 そして離れ過ぎた俺に対し、焦った母親はかなりの声量で吠えたんだ。

 

(その後見せた僅かに焦る様子を見るに、母は“母親”と言う役割におっかなビックリで、加減が分からないんだろうな)

 その後、吠えられた事に焦って母に駆け寄った俺は抱き上げられて毛繕いされた。ラージャンにとっても相手への毛繕いは友好的アピールを意味している。

 それで母が怒っていた訳では無いと理解し、自身の迂闊な行動に反省して今に至る訳だ。

 

(とはいえだ……この好奇心、抑えられんッ!!)

 うっひょ~キノコだ~~~~!! 青いから“アオキノコ”だろ! 薬効成分アリ!

 薬草は何処だ~~~? 探すぞ~~~! ……どれが薬草か分かんねぇわ。

 

「フーフー」

 アオキノコを片手に遊び回る俺に、何かが呼ぶ声がする。

 見ると、一つ年下の弟ラージャンが、おっかなビックリで母から離れ、へっぴり腰で俺の元へと近づいて来ているではないか。

 

(周囲を見回す視線。それでも鳴き続けるとは……)

 ちなみにこの“フーフー”という鳴き声は遊びたいアピールの鳴き声だ。

 

(そんなに怯えて尚遊びたいのか……仕方ない)

 俺はアオキノコをそのへんに置くと、弟と共にじゃれ合うのであった。

 

 

 

(ふぅ~~~~…………疲れた)

 弟とじゃれ合って翌日の朝。俺は遊んでは寝て、起きては遊ぶを繰り返す弟に時間を奪われていた。

 赤子だと思って侮っていたが、これがどうして、無限の体力を疑うレベルだった。

 

(赤子でもラージャンか……でもこのままだとキツイな~)

 幸いな事に、今日の弟は母に甘えたい気分な様子。

 それに今は父がいるし、おかげで外敵も居らず、少し騒がしくしても問題はないはずだ。

 ちょっとばかし試したい事もあるし、あたりには丁度良く素材もある。んじゃ今作るか、石器。

 

 石器。文字通り、石で出来た道具の事である。

 サバイバルを始めようとした時、まず最初にやる事は素材集めと道具作りだった。

 

 いつも通りに何気なく立ち上がり、離れ過ぎないよう気を付けながら目的地へと向う。

 

(取り敢えずガラス質の石か、無くても鋭く割れてるやつがいいな)

 先ずは手頃な石を岩場で探す。黒曜石でも有れば一番だが、今俺達が居る場所は火山の痕跡がないので諦める。一つ一つ石を持ったり、石同士をぶつけて音を聞いて見る。この時に軽い音が返ってる石が良い。

 

(叩き付けて割ってもいいけど、破片で怪我したら親に叱られて次がなくなるからな)

 手頃なサイズの割れた石を集め、目立つ所に置いておく。続いて木の枝を探す。

 

(握り心地の良い太さの乾いた枝があれば良いな。まあ最悪でも石に擦り付けて削ればどうとでもなる)

 そうして数本の程良い形の枝を集め、石の側に置いておく。

 

(よし、やるか)

 先ずは組み合わせやすい形の割れた石と枝を選ぶ。今回の石は平たい割れた石だ。

 石を選んだら、それを挟めるように枝を石か歯で縦に、出来るだけ真っ二つに割る。

 割った枝の間に石を挟み、前から用意して腕に巻いていた、このやたら頑丈な植物の繊維で編み込んだ草紐を巻く……と。……よし、完成だ!

 

(よし、じゃあ試しに枝の皮を剥いてみるか)

 出来上がった石のナイフを枝に当て、僅かに食い込ませて押し込む。

 

「オー……」

 多少ひっかかるものの、枝の皮が簡単に剥けた。

 その完成度に、俺は懐かしさと心地良さに声をこぼしてしまった。

 当然、この石ナイフの完成度は低い物だ。でもその程度の物でこの切れ味だ。頭の中で次に作るべきものが濁流の如く溢れてくる。

 

(この石のナイフがあれば、()()が取れる!)

 

 俺は石のナイフと木の枝を逆手に持ち、親父が狩って来たリオレウスへと近付く。

 今までは文字通り指をくわえて見ている事しか出来なかった、だが今は違う!

 

 例え小さくとも、俺にはこの石のナイフ(文明の力)がある!

 

 横たわるリオレウスの頭に登り、上顎の歯茎へ向かって石のナイフを突き立てる。

 すると、僅かに肉を裂くことが出来ていた。

 

(良し! 後はこれを繰り返すだけだ!)

 サクサク、ブチブチと肉の繊維を少しづつ断ち切り、狙いの牙がグラつき始めた所で木の枝で挟み、神経を引き千切る様にして引っ張る。

 

 ブチッ! と心地良い断裂音。とさりと落ちるリオレウスの牙。

 

(ヒャッホー! 初っ端から竜の牙とか最高の素材をゲットだぜー!)

 ナイフの様なサイズのリオレウスの牙を掲げる。

 

「「…………」」

 そんな俺を、両親が訝しげに見詰めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

■主人公(ラージャン)

・荒ぶる熊に殺されてラージャンに転生したエンジョイサバイバル技術好きおじさん。

・熊に対して恨みやトラウマは無く、ラージャン生を楽しむつもりでいる。

・前世のあれこれを隠す気が無い。

 

■母ラージャン(上位個体)

・主人公を一目見て変だと理解しつつ、手が掛からないので育てているヤンママ。

・あまりにも子育てが楽勝(誤解)なので、第二子を産んでみたら想像と違って困惑した。

・それでも子供達を愛している。

 

■父ラージャン(G級個体)

・主人公を一目見て異様だと気付き、一度は捨てようとした。そこを母ラージャンに止められたので、一応許した。

・紐を編んで腕に巻いたり、キノコ片手にはしゃぐ主人公にやはり捨てるべきかと悩んでいる。

・異様ではあるが害はないので放置する事にした。

 

■弟ラージャン

・強い父、優しい母、面白い兄に囲まれる幸せ者。

・兄の遊びを見て、その技術を僅かに吸収している。

・兄が大好き。




以前あったあとがきは本編にねじ込みました。ここすき下さい。

この話を含めて、幼少期変を12話書くつもりですが……

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