転生ラージャンぶらり旅   作:黒木箱 末宝

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【NEXT】独り立ち

 俺が父から試練を終えた日から数年の時が過ぎた。そして今日は、俺の巣立ちの時でもある。

 そんな俺の目の前には、沢山の料理が並んでいた。

 

(アプトノスにモスの丸焼き、親父が狩ってきたリオレウスの焼肉。そして、畑から収穫した野菜や果実にキノコ。それと、養殖した魚介類……豪勢な昼飯だな)

 

 巣立ち祝いと最後の団欒を兼ねた食事だろう、母や弟()が腕によりをかけて作ってくれた、最高の御馳走だ。

 

 親父の合図で食事が始まる。俺はアプトノスの丸焼きから後ろ脚をもぎ取り、それを齧りながら、ここまで文明的な生活に至る過去を思い起こした。

 

 

 

 あれから俺達はその場所に留まり、永住する事に成った。理由は“俺の用いる技術の全てを目にしたい”と言う父の我儘が原因だ。

 

 辿々しく伝えられた父の頼みと目的を理解した俺は、移動が多い事から止めていた行動を即座に始めた。

 真っ先に工具等の道具を木材で作り、その使い方を実際にやって見せ、やらせて見せ、正しい使い方をしたら褒めまくって覚えさせた。

 そして道具を使って森を切り拓き、集まった木材で床と柱を建て、そして葉っぱを敷き詰めて屋根を建てた。

 家族は、快適な床と雨風を防ぐ家に感動していた。

 

 家の建築を契機に、更に開発は進む。

 

 仕留めた獲物の内臓や屑肉を川に撒き、魚達に餌場と誤認識させて集め、擬似的な養殖場にする。

 血の臭いに引き寄せられたガノトトスやチャナガブルは、親父と協力して仕留める。

 

 拠点を拡げる為に森を切り拓き、土地を耕して果樹の苗や野生の野菜を植えたりした。

 肥料は俺達を含むモンスターの糞──は堆肥にするには時間がかかるので、森から腐葉土を回収。更に焼いて砕いた獲物の骨に、焚き火で出た草木の灰を集めておく。

 最初は家族達も怪訝な表情を浮かべていた。しかし、発酵する堆肥や、全ての肥料を使った畑に大きく実る作物見てテンションを跳ね上げた。

 

 更に土地広げた結果、湿気のたまる日陰も縄張り入りした。ちょうど良いので、その環境下で育つ作物を植え、木材を並べて穴を開け、そこに各種キノコの菌を植えておく。

 するとキノコを求めてモスが集まった。そこで俺は重要視していない特産キノコや、モスが好む見慣れないキノコを与えて俺達に慣れさせ、その場を柵で囲ってモス牧場にした。

 結果、モスを狙って肉食モンスターが集り、それを俺達が狩り、空いた縄張りに肉食モンスターが現れるという、ある種のループが出来た。

 

 こうして食料を安定して得た事で、俺達一家に変化が訪れた。父と母が二人きりで出掛ける日が増えたんだ。

 その時の俺は「たまには二人きりになりたいんだろうな」と考え、弟へ技術や知識の継承をしていた。

 

 ある日、俺は母のお腹が膨れている事に気付いた。何と両親が繁殖を再開していたのだ。

 両親は獲物を安定して得られる事に余裕ぶっているが、俺は弟を産んだ母が酷く消耗していた事を思い出した。母を死なせない為に森を駆けずり回り、薬草と苦虫、蜂蜜にマンドラゴラをかき集めた。

 

 それが良かったのか悪かったのか、安心した両親は今までの我慢を取り戻すかの様に愛し合い、結果的に二年おきに子供を作り、最終的に四匹の弟妹が増えたのだった。

 

 その間にも色々な事があった。

 武器や力を得て勘違いした弟が、俺の真似をして大型モンスターに挑んで大怪我を負ったり。

 

 複数種の鳥竜種の大移動が同時に現れ、それを相手にモスや、新たに家畜にしたアプトノスを守る防衛戦をしたり。

 

 喧嘩を売ってきた若いイャンガルルガを完封したら、以降何度も現れては戦う因縁が出来たり。

 

 アプトノスの丸焼きを極めている際に現れたヒョロヒョロのイビルジョーに肉を奪われ、以降も肉を求めて粘着されたり。

 

 そうして俺は激動の日々を過ごし、大人に成った。

 

 

 

 物想いにふける俺を心配してか、親父が“もっと食え”とリオレウスのカルビを差し出してくる。俺はカルビを受け取り、謝意を込めて深く頷く。

 親父……成熟し、群れのボスとして生き始めたからか、ラージャンとしては見覚えの無い、シルバーバックの姿をしている。

 大きな身体に、腕を除く全ての体毛が銀色に染まった親父は、大人しさを見せつつやる時はやる凄みを醸し出している。

 

 親父に続き、母がドスサシミウオの串焼きを差し出して来た。それを親父と同じ様に受け取り、食らう。

 母……沢山の子を産んだ母は、満足気な笑みを常に浮かべる、ラージャンらしからぬ穏やかな姿でゆったりとしている。

 角や額、首や腕に宝石や護石を身に着けており、それらは俺と弟が採掘した際に見付けてプレゼントした物で、母がそれを自身で研磨、加工した物だ。

 護石の効果を満足に扱えているらしく、外敵の接近を誰より先に感知したり、巣を襲撃して来たモンスターを相手に、右手を赤や青に光らせて殴り倒したりしている。

 

 両親の行動を何かしらの儀式と捉えたのか、次男が俺の為に取ってきたと自慢していたブルファンゴ、その丸焼きから後ろ脚をもぎ取り、差し出して来た。

 次男……俺の知識を一番多く継承し、その全てを扱えるようになった天然のイレギュラーだ。

 俺と長く過ごし、様々な実験や戦いを共にしたからか、互いに信を置ける友の様な存在に成っている。

 過去の失敗で付いた顔を横断する斜めの傷と、俺より少し大きな身体から恐ろしくみえるが、昔と同じ甘えたがりの可愛いやつだ。

 

 そろそろ満腹に近くなってきたが、流れからして次がある。水を飲んで一服していたら、予想通りに長女が自ら収穫し調理した芋の串焼きを、三男はお気に入りの果実を手に近づいて来た。差し出されたそれら受け取り、礼をして食べる。

 長女……初めての同性の子供だからか、母に愛情を目一杯注がれたおてんば娘。それ故か“アタシは母の一番だ!”と事あるごとに突っかかってきた面白いヤツだ。

 体格差や知識の差から、当然喧嘩は俺の圧勝。突撃を受け流し、噛み付きを躱し、互いに無傷の状態で長女を無力化し、徹底的に敗北を味わわせた。その結果、長女は幾度となく涙を流しては母に慰めてもらい、軈て敗北を噛み締め己の立場を理解した様だ。

 以降は不器用ながら俺の側に寄り添う事で謝罪したり、お気に入りの野菜を分け合い共に食べたりした。それでも何処か照れ臭いらしく、結果ツンデレじみた行動をとるようになった。そこが可愛いんだ。

 

 三男……最初は昔の次男の様に懐いて来る可愛いやつだったが、巣に襲来した手負いのイャンガルルガ相手に戦い、返り血に塗れた俺を見て以降、怯えて逃げる様になった。

 それっきり三男との関わりは薄くなったが、果実をくれた事で漸く俺に対する怯えが薄れたと分かった。

 そう思って見たら、三男はビクリと震え、母の腕の中に隠れてしまった。矢張りバックブリッカーで圧し折った後に引き千切ったのがダメだったか……。

 

 最後に次女と四男だが、次女は今だ赤ん坊で四男は乳飲み子だ。抱っこしようと近付くと何故か長女に妨害される為、関わりがゼロだ。まあ、元気に育ってくれれば嬉しいな。

 

 

 

 食事も終えたことで、巣立ちの準備が整った。その為に作ってきた灰被りの外装等の装備を身に纏い、荷物を背負って巣の出口へと向かう。

 見送りに来た家族と拳を合わせて頷き合い、分かれの挨拶を交わす。赤ん坊とは指でハイタッチだ。

 

(準備は万端、行くぜ大自然!)

 

 こうして俺は、原始人みたいになった家族の元から離れ、広大なモンスターハンターの世界へ一歩踏み出すのであった。

 

 

 

 ■

 

 

(やっと来た……待ってたよ、不思議なラージャン)

 

 森の茂みの中、そこに一人のハンターがいた。それは幻獣キリンの装備を身に纏ったG級ハンター、パトラだ。

 消臭玉で臭いを消し、立場を利用して作らせた草木の外装を纏って地面に転がり、自然に溶け込むこと数時間。パトラの側を、長年眺め続けた観察対象であるラージャンが歩いて行く。

 森の中を悠然と歩む、モンスターの素材で作り上げた武器や防具を装備し、ドスファンゴの毛皮を外装として身に纏う、摩訶不思議な姿のラージャン。

 

(明らかな特殊個体、名付けて賢獅子──しつこく聞いてきた癖に『嘘』とか言ってきたギルドだけど……まあ、こんなに面白いモンスターは一目見なきゃ信じられないよね)

 

 笑いを堪え、賢獅子を追う。ギルドの文献に書かれていた事が本当なら、この後はキリンの角を求めて旅をする筈だ。

 

(ああ、だからギルドにバレたのか。反省反省)

 

 実際、放浪ハンターと呼ばれていたパトラがギルドの書庫に入り浸り、ラージャンに関する文献()()を読んでいた事から、ギルドは“何かある”と察して独自に調査を始めていた。

 

 様々な存在に眼を付けられているラージャン。そんな事もつゆ知らず、本人は本能が訴えるキリンを求めて歩むのだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

★オマケ

 

■主人公改め賢獅子ラージャン

・遠慮も躊躇も無くひたすらに自由を行使する人入りのモンスター。結果、ラージャンの進化分岐に原始人ルートが生えた。文明が残るかどうかは父や母、次男の手に掛かっている。

・本能が訴えるキリンの角の捕食を叶えるため、雪山か火山か沼地を求めて進む。尚、道中でキャンプを楽しむつもりのもよう。

・灰被りの毛皮を鞣し、以降ずっと身に纏っている。お気に入りの一品。

 

 

■父ラージャン、母ラージャン

・主人公の活躍により大繁殖をかましたラブラブ夫婦。主人公が止めなかったらもっと増えてた。

・主人公に倣って、残してくれた石板の絵の見方や各種畑、牧場、養殖場の使い方を改めて教えている。その大変さに主人公が(こい)しくなっている。

 

 

■弟改め次男ラージャン。

・大きく強く、そして賢く成長した天然のイレギュラーラージャン。ハーレム主人公バリに目茶苦茶モテる(ネタバレ)。

・主人公の作り出した武器の力に酔い、若さに驕り高ぶった結果、リオレウス(上位)に単身で挑み大怪我を負った。その際に見た、主人公のダブルスレッジ・ハンマーによる脊椎破壊の一撃必殺に、“ボクは……弱いッ”と自惚れと驕りを捨て、考えを改める。

・主人公の事は最高かつ最強の兄と尊敬し、自身もそうなりたいと研鑽を続けている。

 

 

■弟妹ラージャン

・長女と三男と次女と四男。長女は主人公の様な雄に憧れを持ち、三男は世界の恐ろしさを垣間見て怯えている。後ろの弟妹に至っては主人公に対する記憶はほぼない。

 

 

■若いイャンガルルガ

・初戦で主人公に喧嘩を挑み、赤子の手をひねるが如く遊ばれて勝手にライバル視するヤベー奴。

・主人公に勝つことを第一目標と定め、それを軸に生きる少し特殊な個体。

・雌。

 

 

■若いイビルジョー

・飢餓で死にそうな所に脳天貫く香ばしい肉の匂いを嗅いで突撃、その時に食べたこんがり肉G級のアプトノスに、悍ましい飢餓の離散と初めての満腹を実感する。

・以降もその味と満腹による幸福な記憶を求め、焼けた肉の匂いに釣られてどこからともなく現れる様になった。下位ハンターのトラウマ。

・雌。

 

 

■パトラ

・暇ができれば森に入り浸り、長年主人公を観察し続けたストーカー。その際の不審な行動から、ギルドに目を付けられている。

・自身の性格や言動が他者にどう映るか理解しているので、嘘つき扱いも弊害が無ければ“さもありなん”と放置している。

・主人公に対し、己の渇きを癒す何かを見いだしている

 

 

■ハンターズギルド

・パトラの発言を一度は嘘と断じたが、冷静になって「あのG級ハンターがそんな嘘付いて何になる?」とこっそり調査を開始した。

・その際、銀の体毛を持つラージャンがリオレウスを投槍で仕留めている所を観測。気球で近付いては危ういと撤退した。

・その後パトラに話を聞こうとするも、何時もの奔放癖で主人公を追い掛け出し、何時もの行方知れずと知って発狂した。




幼少期編、完!

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【そこそこ重要なお知らせ】
今作“転生ラージャンぶらり旅”ですが、他に書きたい作品ができてしまったため、来年から年一〜二話投稿になります。
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