転生ラージャンぶらり旅   作:黒木箱 末宝

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焼き肉が食べたいので初投稿です。

アンケートの結果により、幼少期編の投稿を開始します。


【クラフト】火起こし器

 リオレウスの牙を剥ぎ取った俺は、直ぐにその牙に木の持ち手を付け、リオレウスの解体を始めた。

 牙を数本と背中の大きな甲殻、翼膜を剥ぎ取る。

 そして剥ぎ取った素材を大きな甲殻に乗せて引き摺り、素材置き場に向かって。

 

(鋭くて頑丈な牙に、頑丈で柔軟な翼膜……それと草紐。これなら作れるな、ナップサックが!)

 現代社会なら容れ物は簡単に手に入るが、今の俺にとっては自作しなければならない程に貴重かつ必要な物だ。

 

 先ず翼膜の両端に、牙のナイフで二つ連なった穴を開けて行く。そうして開けた二つの穴が重なる様に端を折り畳み、そこに紐を通して行く。

 そうして出来上がった物を更に縫い上げ、絞り口にロープを通せば──

 

(…………巾着袋だこれ!?)

 下に紐を通すパーツ、もしくは穴を開けるのを忘れていた。

 まあ巾着袋も悪くないが、目指した物は荷物を背負うための容器だ。

 なので、ここから下方の両端に穴を開けてロープを通し、無理矢理ナップサックにする。

 

(我ながら良い出来だ)

 実際に素材を入れて背負ってみれば、バランスは悪いものの、ちゃんと背負えている。……これ、抱っこ紐のほうが良かったかも知れん。

 

(……紐の当たる部分を木とかのパーツで補強出来たら良かったが、高望みだな。今はこれで精一杯)

 ナップサックの背負い紐、その下に横向きの紐を追加してみる。そして抱っこ紐の要領で追加した紐を腰に当てると──

 

(すっげー安定する。これ良いな、四足歩行のリュックだわ)

 テンション上げた俺は、そのナップサックを試すかの様に周囲の物採取して回った。

 

 

 

(ナップサックは今の所は完璧。腹減ったし、飯にしよう)

 空を見れば、太陽は真上にいる。ちょうど良い時間だろう。

 昼寝している両親と弟を横目に、俺は少し離れた所で作業を始める。

 ナップサックからちょうど良い長さと硬さの枝を取り出し、その両端に草紐を結び、弦見たいに張って弓 を作る。弓の弦の真ん中に真っ直ぐな枝を絡める。

 

(“弓切り式火起こし器”完成~!)

 完成した火起こし器を動かし、可動に問題がないことを確認する。引っ掛かりも少なくちゃんと動いた。

 火起こし器が完成したなら、やる事は一つ。

 石で円を組み、中に木の端材や枯れ草、乾いた枝を積み上げる。後は火を付けるだけだ。

 

(久し振りにやるなから緊張するな……)

 乾いた木に、石ナイフでV字の切れ込みを入れる。そのV字に火起こし器の先端を当て、反対のてっぺんを平らな石で押さえる。そして板の側に丸めた枯れ草を積み、火種を直ぐに燃焼させる用意をする。

 

(後は足で板を踏んで抑えて……よーい……始め!)

 押さえた枝と垂直に重なる弓を思い切り引き、押し戻す。すると“キュコキュコ”という、木同士が擦れる異音が辺りに響き渡る。

 その音に、いつの間にか起きていた両親と弟が不思議そうな目で見ている。

 

(作業音で起こしちゃったか?)

 しかし、向けられる視線に苛立ちの様なピリつくものはないので、問題なしと判断して作業を続行する。

 すると、次第に摩擦熱によって木が熱を持ち、その熱によって水分が蒸発して白煙が上がり始める。

 ここまで来れば火は目前だ。弓を引く力を強め、速度を上げる。

 

(そろそろだが……よし、着いた!)

 煙を辿り木を見れば、赤い小さな光が見える。火種だ。そうして付いた火種を解した枯れ草の束に移し、それに軽く息を吹き掛ける。すると、火種は枯れ草に引火し、火が大きくなって行く。

 用意していた薪と枯れ草の焚き火台へと火を移し、息を吹き掛け引火させる。暫くのそうしていると、火は次第に大きくなって行き、やがて焚き火台の上で立派な輝きを見せていた。

 

(良し、久々にやったけど上手くいったな! ……ん?)

 火を付け一息ついた俺は、周囲の空気が変わっている事に気付いた。見れば、家族は立ち上がり、俺の前でゆらゆらと揺れる火を見てビビっている。

 

(んー? 弟ならともかく、大人のラージャンが今更火を警戒する訳が……いや、俺か。未知の方法で火を生み出した俺を警戒しているんだ)

 警戒する父の目。不審なものを見る母の目。火を怯えた目で見る弟の目。

 向けられる不穏な視線に、俺は捨てられる覚悟をした。

 

 

 

 だがしかし、いくら待っていても排除されたり、置き去られる事はなかった。

 何故と問い掛けるように父を見れば、父はパチパチと燃える火と俺を交互に見て、何かを期待した様に一吠えして寝転がった。しかし、視線は向けているので、恐らく父は俺に何かをして見せて欲しいようだ。

 

(……へへ、やってやろうじゃねぇの!)

 親が子供に見せる心配と期待の目。それを向けられてやる気を出さない子供はいない。少なくとも、俺はやる気を出す子供だった。今もそうだ。

 先ずは焚き火の四方に太い枝を刺し、五徳(ごとく)を作る。コンロの上にある、フライパンとかヤカンを乗せる金属の柱だ。

 五徳の上に、剥ぎ取っておいたリオレウスの背中の大きな甲殻を逆さにして乗せ、鉄板の様な物を用意する。

 

(後は脂と肉だな)

 火にかけられた甲殻は、表面が焦げることもなく、無事に熱を帯びてきた。それに満足した俺は、リオレウスを更に解体しに向った。

 リオレウス。親父に倒され、キモを食われて野晒になったそれを見る。内臓は全て取り出されており、傷口から血が出きっているのか、肉は血抜きがされた程良い赤色だ。

 

(先ずは脂を取って、解体する場所は……(あばら)だな。腹の肉はもう無いが、肋の周りにはカルビが残ってる。これを切り取って……そうだ、リュウノテール! 尻尾も切り落として、そう言えば火竜のタンとかあったな。それも持ってくか)

 リオレウスから剥ぎ取った肉を、先に剥ぎ取っておいた甲殻の上に積み上げて行く、それを焚き火の元へと引き摺る。

 

(荷車……いや、ソリが欲しい。後で作るか)

 “必要は発明の母”なんて言葉を思い出しながら、俺は焚き火の前に座る。そうして獣脂ならぬ竜脂(りゅうし)をアツアツの甲殻に落とす。

 脂が甲殻に触れた瞬間、肉の焼ける心地良い音が鳴り、リオレウスの脂独特の、鶏や牛に近い香りが立ち昇る。

 その溶け出した脂を、研いた木の枝を使って甲殻に満遍なく塗っていく。枝は齧って無毒を確認済みだ。夾竹桃(きょうちくとう)見たいなヘマはしない。 

 

 鉄板代わりの甲殻に異常は無く、脂にも問題無し。そして、火加減は良好。後は肉を焼き始めるだけだ。

 カルビを置き、その隣に小さく切り分けたリュウノテールと、皮を剥き輪切りにした火竜のタンを置く。

 途端に激しくなる肉の焼ける音と、本能を刺激する肉の香り。その匂いに惹かれたのか、父が寄ってくる。

 

(親父ィ……だが、ちょっと待ってくれ。まだ焼けて──あ、コラ!)

 表面しか焼けていない肉を、父が摘んで食べてしまった。生肉がどうとか今更問題はないが、もうちょっとでもっと美味くなったのにと思わないでもない。

 

「ッ────アァ~~…………」

 旨味に驚き、美味そうに目を閉じて唸る父。一気におっさん臭く見える。

 その後もリュウノテールや輪切りのタンを摘んでは美味そうに唸る父に呆れる。狩ったのは父だから問題ないが、剥ぎ取りも準備も焼いているのも俺だ。一つくらい食わせてくれても良いはずだ。

 俺は抗議に「ウー」と鳴くと、父はハッとした後にばつの悪そうな顔で視線をそらした。そんな顔をする程に美味いのか。これは仕方ないな。

 

(火の世話と剥ぎ取りの往復は面倒だが、まだリオレウスの肉はある。翼の付け根や脚の肉はどんな味だろうか)

 追加の肉を焼きながら、遠くのリオレウスを見てそう考える。すると父が徐に立ち上がると、リオレウスを近くまで引っ張って来たではないか。

 更に父は、俺の動きを真似して肉を爪で剥ぎ取り始めた。

 

(あー爪、汚れ、土があー……まー、良いか、うん。サンキュー親父)

 罪滅ぼしに作業を手伝う親父。文字通り不器用なそれに母や弟も参加し、俺達はラージャンで初めての焼肉パーティーをするのだった。

 

 

 

 不思議な子供を得たラージャン一家は、夜になるまで焼肉を続け、リオレウスを食べ尽くした。

 派手に火を焚き煙を上げ、挙げ句鼻孔を擽る良質な匂いを撒き散らした事を危惧し、父であるラージャンは腹ごなしも兼ねて見回りをする。

 そうして巣に帰って来て見たものは、腹を膨らませて眠る不思議な息子とその弟。そして愛しいげに子供達を見つめる、番のラージャンだ。

 父ラージャンは母ラージャンに帰投の挨拶を済ませると、息子達を内側に隠すよう母と父で挟む様にして横になる。

 父ラージャンは不思議な息子を見つめる。頭の片隅には捨てる考えが浮かぶが、もはやそんな考えは意味が無いと捨て去る。

 そして父ラージャンは、不思議な息子のさらなる成長を願い、眠りについた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

■主人公

・常に捨てられる覚悟で全力サバイバルに挑むアホ。

・四本指の手と獅子の下半身に「やっぱ類人猿とは違うんだな」と前世とは違う感覚に苦戦しながら適合して人と同じ事をする適合力の化け物。

・自重はしない。する気が無い。

 

 

■父ラージャン

・生態や強さ故の大きな悩みを持つラージャン。

・それを真っ向から解決し始める主人公に希望を見いだし始める。

・後に何時も通り生肉を食べたら物足りなく感じ、主人公の齎すモノの危うさにも気付く森の賢者。

 

 

■母ラージャン

・不気味な息子をそれでも愛する賢母系ヤンママ。

・焼き肉にどハマりして、その後も色んなものを焼いて食べようとする食いしん坊。

・主人公が解した木で歯磨きをしていたので真似した所、歯磨き後の口の爽快感に感動した。

 

 

■弟ラージャン

・火に指を突っ込んだり鉄板代わりの甲殻に触れたりするヤベーやつ。当然火傷した。

・その後、主人公がアオキノコと薬草をすり潰した回復薬モドキで火傷を治したので「アニキスゲー!」とはしゃぎ回って転んで怪我した。

・真っ先に火起こしを覚えた天然の天才。

 

 

■リオレウス(下位個体)

・巣立ち翌日の全能感でフリーの土地を見付け、地面にあった拳のマーキングに爪跡を重ねて縄張り宣言したアホ。

・その後、当然の様に父ラージャンにバレて縄張り争いに発展──する間もなく首の骨を折られて即死。ご飯になった。

・主人公一家に「リオレウスは美味い」と知らしめた戦犯。




あとがきにあった奴を、ここすき目当てに本編にねじ込んでみました。
全話もその辺を修正して置き、今後もやっていきます。

幼少期編のプロットが全部書けました。続編をお楽しみに。
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