釣りしてみてーなー俺もなー
(魚を突く時に偶然見付けた方法だが、場所を絞れるなら行けるはずだ)
取った魚をバラして撒くという、食糧を無駄にするように見える俺の行動に、視界の端で親父が顔を顰めたのが見えた。
しかし、暫くしてエサを撒いた岩の周りに魚が集まり始めたのを見て、その顰めっ面が驚愕に変わる。
(ただ魚を集めただけで驚くなら、これ見たら吼えるかもな!)
俺は側に置いていた石のハンマーを掴むと、魚が集まる岩に向かって、背負い投げの要領で思い切りハンマーを振り下ろした。
(ガッチン漁だ! 小魚や稚魚は来てくれるなよ!)
ガッチン漁──石打漁と呼ばれるその漁は、水中の魚に対し、石同士を打ち付け発生した衝撃波や音をぶつけて気絶、または麻痺させ、浮かんで来た所を回収する漁のこと。
(対象を選べないから、食べない生き物も殺しちまう。その為に餌を小魚が食えないようデカくしたが……どうだ?)
ハンマーを下ろし、浮き上がってくる魚を待つ。すると予想通り、浮かんで来た魚は大食いマグロやドス大食いマグロの様な大型の肉食魚ばかりだった。
(よし、後は回収するだけだ)
俺は臆することなく川へと飛び込んだ。
時期は繁殖期の中頃で、気温も温かく、川は心地良い冷たをしている。
手脚を動かし、着衣水泳に近い感覚だったので力を調整。すると、問題無く泳げた。
そのまま浮かぶ大食いマグロ達を浅瀬へ向けて投げたりしていると、両親が慌てた様子で駆け寄ってくる。
(どうしたんだ? ──あ、そうか。大丈夫だって、俺泳げるから!)
心配そうにしている両親に向かって楽しげに鳴き、川の流れに逆らって泳いでみせる。
すると俺は溺れているわけではないと理解したのか、同じように泳ごうとしている弟を母が抱いて抑え、父がドス大食いマグロの引き上げを手伝ってくれた。
こうして俺は、魚を大漁に取る事で家族の空腹を満たしたのだった。
焚き火に当たりながら毛を乾かし、大食いマグロを捌いて胃の中身を回収、残りは焼いて家族と満足行くまで堪能したのだった。
ドス大食いマグロの丸焼きを食べながら、父であるラージャンは物思いにふけていた。
父ラージャンは、強さを求めて我武者羅に戦い生きてきた。そうして上り詰めた自身の強さの
しかしその力が醸し出す存在感と縄張り跡に残した臭いにより、外敵どころか獲物に逃げられてしまい狩りもままならなくなる日々に困惑した。
何せ今までは倒したモンスターを食らい生きてきたからだ。それ故に、ただ食う為の狩りが出来なくなっていたのだ。
そうして過ごす内に、父ラージャンは惚れた雌──母ラージャンと出会い、ぶつかり合いの果てに番となり、軈て子を二人も得た。
だがしかし、必要な獲物の量が増えた事で狩りの難易度が上がり、狩りの為に戦い周囲から獲物が去り、その度に獲物を求めて新転地へと移動を続ける事に。
そんな落ち着けない日常を過ごしていく内に、父ラージャンは焦り、心を蝕まれ始めた。
“子供達が大きくなるまでこんなことを続けるのか?”
“そもそも子供達を無事大人にしてあげられるのか?”
そんな悩みを抱えたまま、慣れない子育てに調子を落とし続けている番に不安を覚え始めた時だった。
ある日、最初に産まれた不可思議な息子が未知の方法を使い、今まで捨てていた獲物の肉を食えるようにしたのだ。
不思議な物で獲物を細かく切り、未知の方法で火を起こし、食おうともしなかった肉を食べられる物に変えた。
恐ろしかった。しかし、何よりも嬉しかった。
不思議な息子のもたらした方法により、父ラージャンは久方振りに番と共に満足を実感した。
そこに来ての今日。息子は肉どころか、取る意味のない
「…………」
膨れた腹を晒して眠る二匹の息子達を、父ラージャンは番と愛おしげに見つめている。そうしてこれからの生活に、温かな光が見えた気がした。
川に血肉や臓腑を投げ、獲物をおびき寄せて取る。
それは有効だ。そして、有効過ぎた。
川を下り流れた血の臭いが、一匹のモンスターを引き寄せた。
「キュイー!」
そのモンスターは、獲物を求めて川を遡り始めた。
■
翌朝。此方をチラチラ見ながら何やら会話らしきものをしている両親を横目に、俺は新たな道具づくりに勤しんでいた。
(俺を見ながら喋るなんて……もしかしたら、俺を捨てる相談をしているのかもしれない)
そんな冗談を内心で考えるが、想定したもしもは起こりうるし、想定していないもしもは当然の様に起き、挙句に不意を突いて襲い掛かってくる。
そのもしもに備え、俺はサバイバルの用意を加速させる。
程良い木の棒を複数用意し、それに細く頑丈な草紐の糸を強く結び付ける。そうしてある程度伸ばした草糸の先端に、大食いマグロ位の肉食魚が丸飲み出来るサイズの細く硬い棒の両端を鋭く削り、真ん中に溝を掘って“イ”の字に結び付ける。
(これで釣りが出来る。餌は……練習のついでに釣るか)
縄張りを見回りに行く親父を見送り、俺は石の裏や地面を掘って虫を確保し、葉っぱを編んで作った籠に入れて行く。そして捕まえた虫を、小魚用に作った小さ目の直針の両端が出るよう真っ直ぐに刺し、川に向かって落とす。
(直針を使った釣りに合わせは無用。針を餌ごと飲み込ませ、泳がせるのがコツ──だったかな)
うろ覚えの知識に不安を覚える俺、その隣に座って不思議そうに竿を眺める弟。
直後、水面を漂っていた虫が魚に飲まれるが、焦らずそれを眺める。
弟は水面を走る糸と俺を交互に見るが、俺が慌てていない様子を見て問題ないと判断したのか、座り直して見に徹するようだ。
魚が泳ぎ、やがて糸が張る。魚が糸に気付いて暴れ出したその瞬間を狙い、竿を引く。
すると、イの字に結んだ直針が魚の内臓や喉を起点としてTの字に突っ張り、針の両端が刺さり抜け辛くなる。これが直針での釣りだ。
(よしきた、間違ってなかった! 後は針が
糸に吊られてぶら下がる魚を陸に移す。弟はそれを見て飛び跳ね喜んでいる。面白いだろ、釣りって。
そうして小魚を数匹釣り、ぶつ切りにして魚を餌に置き竿を三本置いて大型の魚が掛かるのを待つ。大きめの石で竿置きと重しを用意したが大丈夫だろうか。
魚が掛かるまで暇なので、弟に釣りを教えて見た。すると筋が良かったのか、俺のサポートありとは言え、俺の真似をして魚を釣ってみせた。弟は天才かもしれん。
針を外してやり、釣れた魚を弟に渡す。すると弟は自分の成果を自慢するかの様に、母の元へと掛けていった。
(自慢かぁ……言葉が通じないから、母がプレゼントと勘違いしないといいが……)
そんな事を考えて置き竿を眺めていると、後ろから弟の泣き声が聞こえてきた。
見ると、口をもご付かせた母が泣きながらゴロゴロと暴れる弟に焦りを見せていた。やっちまったらしい。
(慰めに──っそんな暇ないか!)
見ると、置き竿が大きく
すぐさま置き竿を掴み、その時を待つ。──魚が暴れ始めた、今だ!
(しゃあ、ヒット! クッソ重いッ……大物だぁ!!)
頑丈な枝と糸に甘え、力任せに竿を引く。手応えからして折れたり切れたりする心配は薄いが、いつまで持つか。
そうして大食いマグロと格闘していると、後ろから弟の声が聞こえた。見ると、残り二つの竿が大きく撓っていた。まさかのトリプルヒット。だが手が足りない。
(しょうがねぇ、弟! 母! 後は任せた!)
一瞬だけ竿から手を離し、二本の竿と弟&母を交互に指差した。するとそれで理解したらしく、弟は楽しげに、母は困惑しつつも竿を掴み、俺の真似をして引っ張り始めた。
すると、子供とは言えラージャンの力は凄まじく、大食いマグロを難なく釣り上げる事が出来た。母は言うまでも無い様子。
(イェーイ! 昼メシゲットだぜ!)
ビチビチと高速で振動する大食いマグロを前に、俺と弟は飛び跳ねて喜びを表したのだった。
それはそれとして釣り続行。大食いマグロ三匹程度じゃあ、全員の腹は満たされない。
(大トロも好きなだけ食べたいし、大食いマグロの副産物も楽しみだからな)
そうして置き竿に餌を付け、川へと放り投げる。すると、何故か魚の切り身にカエルが食い付いてしまった。
(カエル……目当ては大食いマグロだから、困るな)
目的の獲物とは違うので、竿を振りカエルをバラそうとしたその時だった。
「キュイー!!」
川下から巨大な魚影が急接近。カエルを直針ごと丸飲みしてしまったのだった。
★オマケ
■主人公
・狙い通りにガッチン漁を成功出来て満足。二度は同じ場所でやらないつもり。
・父親にクソデカ期待を背負わされているが、本人は一切気にしていない。
・釣りは食べる分だけ派。食べるのを楽しみに釣りをするタイプ。
・思わぬ大物にアホ面晒して驚いている。君の獲物やで。
■父ラージャン
・若気の至りでG級まで上り詰めたヤバい個体。ハンターとの戦闘経験が複数有る。
・己の強さを知って尚挑んできた母ラージャンに惚れている。
・自立した頃に「狩りなんか必要ねーんだよ!」と戦い殺した敵を食らい生きてきた。今は後悔している。
・川を遡る巨大な魚影を確認し、急いで帰宅している。
■母ラージャン
・食事より息子を優先する母親の鑑。無茶苦茶やらかす長男に心労を隠せない。
・大食いマグロから出たマカライト鉱石を大事にしている。光り物が好き。
・流れでやった釣りにハマり、主人公に専用の竿をお願いした。
・巨大な魚影に危険を感じ、近くにいた弟を抱いて避難した。
■弟ラージャン
・美味しい魚を腹いっぱい食べれて幸せな奴。
・兄の行動を逐次確認して真似する癖がついた。
・初釣果を食われて泣いて、直後に大物を釣って笑った。
・母に抱かれる中、兄に手を伸ばし悲劇の弟ムーブをしている。
■巨大な魚影
・流れて来た血の臭いに誘われて川を遡った。
・騒がしい音を目印に泳ぎ、その先に見付けた巨大なカエルに思わず飛び付いた。
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良かった所も聞きたいけど悪かった所も知りたいのよね。
「個人的に嫌い!」とかも最初に言ってくれてたら糧にできるし。
アドバイスはチョー欲しい。根こそぎ欲しい。なんなら評価よりも欲しかったりする。
筆を折る気は更々ないので、ルールに抵触しない範囲で《できたら》よろしくお願いしまーす。